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am07 第4次スーパーロボット大戦について

 秋晴れの一日、前週末からしばらくは秋祭りが行われているが今日はその一環として近所の神社の境内にて相撲大会が開催された。全員参加が原則という学校の方針に従って渡海雄と悠宇も出場。近隣の小学校から集まった締め込み姿の力自慢や、明らかに大人たちに強制されて参加したと思しき体操服の上に専用のパンツを履いただけの同級生たちと力比べする事となった。


 そして今、戦いは終わり、二人は境内にある石段の一角を占領していた。頭の上にウルトラセブンやら聖闘士星矢Ωのお面を被せつついつもよりほんのちょっとだけ遅い昼食にかぶりついていた。


「ゆうちゃんおめでとう! いやあ、凄かったねえ! 決勝戦とか山みたいな相手をうまくまあ回り込んでこう、くるっと投げて倒すんだから」


「まあ、ざっとこんなもんよ。体格が立派でパワーのある相手であっても要は相撲の動きをうまくやれたら勝ち目はあるものだから。白鵬だって現在の角界で一番体格に恵まれてるってわけじゃないでしょ。それにしてもとみお君はやる気なかったわね」


「いやいや、やる気がなかったわけじゃ決してないんだよ。ただ相手の方が強かったってだけで。前までいたところじゃ相撲がこんな盛んじゃなかったからあんまやった事ないし、どうも苦手なんだよね。それよりさ、焼きそばおいしいね」


「こっちのケバブもいいわよ。食べ終わったらりんご飴でも行く?」


「うん、いいね。しばらくお祭りは続くしわたあめはまた後にしとくよ。ところで、前のお話の続きをするよ。第3次からEXとうまくシリーズを発展させたスパロボだけど、まあEXはいわば本筋から外れたお話だからね。一九九五年、満を持して登場したのが第4次スーパーロボット大戦なんだ。そう言えばEXのエンディングでも『第4次出しますのでお楽しみに!』みたいなのが出てたし、まさにウィンキースパロボの決定版と言える大作だよ」


「へえ、第4次ねえ。えっと、これもスーパーファミコン?」


「そう。まずシナリオ面では、第2次から続くDCだの異星人だのが攻めてくる一連のストーリーの完結編となるんだ。出てくる作品の数も最多、と言うか今までに出てきた作品全部に加えていくつかの作品が新たに参戦って感じだからそれはもういっぱいだよ。しかも当時の感覚で割とマイナーな作品も出たらしくて。ダンクーガってのだけど、パイロットは美男美女揃いでロボットも格好良くてね。ただ見た目の割に能力がしょぼいのが残念だけど」


「ああそう。ところでストーリーはどんな感じなの?」


「えっとね、またDCが復活したんだ。それに加えて異星人、第3次の時とはまた別の組織が攻めてきて、その他にも色々な敵が出てきててんやわんやだよ。そうそう、第4次では各原作の敵組織がDCとかに組み込まれないまま独自勢力として活動するパターンが増えたんだ。一応第3次でもZガンダムに出てきたシロッコとかいう胡散臭い人が独自の戦いを繰り広げてたけどね。今回はガイゾックだのポセイダル軍だのティターンズだの、原作準拠の組織が色々出てくるんだ。まあこれ以降はそういうパターンが飛躍的に増えていくけどその嚆矢と言ってもいいんじゃないかな。それと忘れちゃいけないのが、第4次には主人公がいるんだ」


「おお、主人公! でもEXにもマサキの章とかで主人公がいるんじゃなかった?」


「ああ、それもそうか。えっと、何って言うのかな。平たく言うとマサキはマサキなりの考え方とかバックボーンがあってそれに従って行動してたけど、第4次は『主人公はあなた』みたいな感じでその辺はあんまり作り込まれてないフラットな感じなんだ。性別と性格、それに顔を選んで、さらに誕生日や血液型も選べるんだ。作中では『AとB、どっちを選ぶ?』みたいな選択肢を主人公に決めさせる場面がちょくちょくあって、それで自分が参加してるみたいな雰囲気を出そうとしてるんだ。それと、一番重要な選択肢を忘れてた。少なくともスパロボにおいてはここが初出で今後大いに影響力を発揮する発明品をね」


「何て大袈裟な言い回し。でもそれって何?」


「それはね、スーパーロボットとリアルロボットというくくりだよ。今までみたいなマジンガー、ゲッター、ガンダムではいい加減例外も増えたし、例えばガンダムシリーズの中でもそれぞれの作品の個性を尊重しようって流れも出てきたから。これによって例えばBGM、それまでは最初のガンダムもZガンダムもGP01もZZガンダムも全部同じBGMだったけど、今作からはそれぞれが元の作品で使用された曲が流れるようになったんだ」


「へえ、それは凄いわね。ところでスーパーとリアルってどう違うの?」


「平たく言うと今までで言うマジンガーZやゲッターロボみたいなのはスーパー系でガンダムみたいなのはリアル系って分類されたんだ。ゲーム的に言うと固くてパワーがあるけど命中率が低かったり燃費が悪かったりするのがスーパー系で、素早くて武器も使いやすいけど攻撃力はやや低いのがリアル系とか、移動力のあるモビルスーツとかオーラバトラーを先行させて大量に配置された雑魚を削っておく。そしてHPの高いボスには精神コマンド全開にしたスーパー系の強力な必殺技を連発、みたいなね。まあそういう使い分けは昔からなされていたのは言うまでもないけどそれに名前を与えたと言うのが正しいのかな。スーパー系とリアル系って区分がスパロボにおいて使用されたのは第4次が最初のはずだよ」


「ふうん。それで主人公もスーパー系かリアル系かって選択肢があるのね」


「そう。それで最初の主人公機の能力が変わってくるし、途中でもっと強力な機体に乗り換えるんだけどこれもスーパーとリアルでまったく別のロボットとなるんだ。スーパー系のグルンガストは変形が出来て必殺技は強力かつ派手だけど射程は1と短い。リアル系のヒュッケバインはガンダムみたいな見た目で武器の射程も長いけど攻撃力はグルンガストに劣る。正直どっちが強いかと言われると分身やらマップ兵器もあるヒュッケバインなんだけど、まあこれぐらいならまだいいんだよ。それより問題なのはシナリオの違いなんだよね」


「ああ、やっぱり機体がどうってだけじゃなくてシナリオも変わってくるのね」


「スーパー系ならこっち、リアル系ならあっちみたいなシナリオがあるんだけど、まあ隠しキャラを多く仲間に出来たりするし率直に言ってリアル系のほうが有利だね。世界観のベースもガンダムだから普段の会話でもアムロとかブライト艦長の出番が多かったり。シナリオでもね、コンバトラーとかライディーンはいきなりライバルキャラと戦って倒して自陣に加わる、みたいな感じであんまり再現はされてないのは確かだね。今はそんな事ないよ。でも当時は扱いがおざなりだったと言われると正直否定は難しいね」


「まあ色々改善された部分もあるのね。ところで難易度はどんなもの?」


「まあ、敵が山ほど現れて割とシビアなシナリオもあるね。その中でやっぱり活躍するのはマップ兵器持ちで、特にZZガンダムのハイメガキャノンは鬼みたいな射程を誇るので重宝するよ。それと強すぎてえげつないのがGP02のアトミックバズーカ。これが手に入るのはリアル系だけって話だから穏やかじゃないよ。そうそう、第4次ではグラフィックや音楽も結構進化してて、ロボットはほとんど書き直されてるんじゃないかな。全体的に頭身がちょっと高くなって、表面の処理も良くなってるね。音楽では、宇宙の新BGMである『100光年の勇気』とか、それまでの静かな曲とは一変してタイトルの通り前向きな曲だけど、これもいいね。そして最終盤に流れる『はるけき彼方で』はついにここまでたどり着いたんだなあって達成感を味あわせてくれるような幻想的な雰囲気を持っていてなかなかの名曲だよ。でも本当に遠いんだよね。『栄光の落日』とかさ、育て方間違えて地獄見たから。というか詰んで最初からやり直したから」


「それは大変ね」


「まあ他にも敵のターンに攻撃受けた際、自分で反撃とかを選べるようになったり、強化パーツを装備出来たり、切り払いや底力みたいなパイロットの技能が出てきたり、キャラクターやロボットの図鑑があったり、後のシリーズでは当然となったシステムが数多く採用されてるんだ。後カラオケモードもね。グレンダイザーとかザンボット3とかダンバインとか名曲が歌い放題! ここで流れる映像も歌詞に合わせてロケットパンチやブレストファイヤー繰り出したりと、一種のプロモーションビデオとしても見られるよ。ヤクトドーガをぶった切ったりして活躍するダンクーガを見られるのは『バーニングラヴ』だけ! とまでは言わないけど、本当に期待してたんだよダンクーガ。格好良いのになあ、途中でコンバトラーかダンクーガをリストラって鬼畜選択あるけど、あれ毎回ダンクーガ左遷させてたね」


「ううん、それはかわいそうね」


「でも救済の日は意外に早く訪れたんだ。当時はプレイステーションやセガサターンみたいなスーパーファミコンの次の世代のゲーム機が出てて、スパロボも次世代機に参戦したんだけどその第一弾が第4次スーパーロボット大戦Sって言って、プレイステーションで出たんだ」


「おお、プレイステーションでねえ。それならさぞかし大幅な進化を」


「残念ながらそんな暇はなかったみたいで基本的にはSFCの第4次とグラフィックなんかは同じなんだ。ただ放っておいたらよたよたしたCG映像が流れたり、一部主役級キャラクターに声がついたりバランスが調整されて簡単になったりしてるんだ。お陰でダンクーガやEXで極悪すぎた反動か第4次では弱体化させられたF91なんかは明確に強くなってる。このダンクーガはいけるよ。カセットの容量の限界から組み込まれてたらしいリストライベントも削除されたし。でも音質が悪くなった気がするし、読み込みに時間もかかるしで一長一短だね。それと同じくらいの時期か、これのほうが先だったかゲームボーイで第2次スーパーロボット大戦Gってのも出て、ファミコンで出た第2次を第4次のシステムでリメイクしたものなんだ。第2次は軍の公式発表で第2次Gこそが真実の記録って触れ込みで第2次発売当時は影も形も存在しなかったVガンダムとGガンダムが新規参戦したんだ」


「それじゃあストーリーも結構変わってるんでしょう」


「そうだね。元々は一本道だったけどシナリオ分岐があったり。新規作品の扱いに関して、Vガンダムは主人公ウッソとクロノクルがライバルみたいになってて本来目立っていた女性陣は控え目。ルートによってはカテジナってVガンダム屈指の強烈なキャラクターが敵にならずに終わったりね。Gガンダムは主人公ドモンとDG細胞と師匠関連を抽出した感じで、特にGガンダムの扱いはこれが今後しばらくスパロボの定番となるんだ。『この写真の男を知らないか』から新宿で師匠と会って生身で戦って、実は師匠も敵で、ゲルマン忍者とか色々あって最後は写真の男ことドモンの兄でDG細胞に侵されたキョウジを涙ながらに倒して師匠と分かり合って奥義を継承して終了。ウルベ? シャッフル同盟? 何それ? みたいなね」


「ちょっ、ちょっと待って! ゴーディアン最終回ばりに専門用語連発されてもよく分からないわよ。DG細胞って何? 大体ゲルマン忍者って存在自体がおかしくない?」


「ああ、まあ、ある程度知識がないと確かに今のは意味不明かもね。まずね、そもそもGガンダムという作品はね」


 渡海雄がじっくり説明しようとしたらそれを中断せざるを得ない事態に遭遇した。仮面の瞳が敵襲を告げるために輝いたのだ。相変わらず空気を読まない敵に怒りを覚えつつもそれをぶつける機会に恵まれているのは幸いと言える。出店の隅にある死角に潜り込んで変身し、敵の出現位置へと走った。


「ふふふ、私はグラゲ軍攻撃部隊のホタテガイ女だ! 奇妙な出で立ちの建物に随分人類が集結しているが、ここを攻め滅ぼしてくれるわ!」


 鳥居の前に立つ堅固そうな女司令官はすでに雑兵を大量に引き連れていた。この危険な集団が屋台のちょっと怖いお兄さんや参拝に来た人々に危害を加えようとした瞬間、それを制す甲高い声が響き渡った。


「そこまでだグラゲ軍! お前たちにせっかくのお祭りを邪魔させないぞ!」


「祭りに喧嘩はつきものとは言え、あんまり乱暴が過ぎるとさすがにお引き取り願うしかないわね!」


「ふん、やはり出たか。さあ、者どもかかれ! 邪魔者を血祭りに上げるのだ!」


 ホタテガイ女の指示に従い、一気に襲いかかった雑兵たちであったが相撲によって闘争心が十分に温まっていた二人を相手にするには心身ともに力不足であった。寄る者は皆突かれ投げられ、あっという間に指揮官を残して全滅となった。


「よし、もうお前以外にいなくなったぞホタテガイ女!」


「まだ五年生や六年生の部だって残ってるんだから。悪いけどここらで終わらせるわよ」


「終わらせるだと? それはこっちの台詞だ。ここでお前たちを倒して全てを終わらせてくれるわ!」


 追い詰められてなお毅然とした声でそう言うと、ホタテガイ女は懐に忍ばせてあったスイッチを押して巨大化した。二人もまた互を信頼し合う心をもって巨大化して対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 境内にそびえる室町時代から存在していたという大木をまるで草原の雑草のように見下ろしつつ、巨大ロボット同士による第二ラウンドが開催となった。万一の事故をさけるために山の方へさりげなく移動しつつここらで良しと見たタイミングで一気にメガロボットは攻勢を強めた。


「行け! エメラルドビーム!!」


 渡海雄は目の前にある緑色のボタンを力強く押した。その指示に従ってすかさず両目から発射された強力な破壊力を誇るビームがホタテガイロボットの分厚い装甲を打ち破った。


「うぐうっ、何というパワーだ。この私の装甲をも打ち破るとは! 撤退するしかない!!」


 コントロールを失ったホタテガイロボットが爆発する寸前にどうにか作動した脱出装置によってホタテガイ女は悔しさを噛み締めつつ宇宙へと帰った。その後、相撲大会は無事に六年生の部まで挙行し終えた。

今回のまとめ

・第4次はまさに集大成と言える大作

・システム周りなど特に進化してかなり今のものに近づいている

・新規作品は多いがダンクーガとかダイモスとか微妙な扱いも

・相撲は好きだけどまわしを締めろと言われると躊躇する部分はある

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