rm30 カープ三連覇について
なんかまた台風が来るらしいのでとても困る。一体どんな恨みがあるのか。ともあれやっかいな来訪者が日本に訪れる前にカープは優勝を決めた。これで九回目のリーグ優勝となる。本当は連休中に仕上げたかったのだがここまでズルズルと引きずった感覚は正直ある。とは言えおめでとうございます。
「しかしまあ、もたついたねえ。さっさと決めればいいものを」
「でも優勝を決めた昨日のヤクルト戦は久々にすんなりと決まってストレスの少ない展開だったわね。ノーアウト満塁とかあったけど、結果的には抑えたし全く問題ない」
「初回から打者一巡の猛攻でさっさと五点奪うと、中盤以降もコンスタントに追加点を重ねて終わってみれば十点。投手もよく抑えて完封リレー。これを数日前にやってれば。いや、もはや言うまい。とにかくここでようやく実力を見せられたのは本当に良かった」
「九月は無駄に連敗があったり、強さに陰りが見られたとも言えるけど、とりあえず優勝は決めた。今はそれでいいんじゃないの。今後の事とか考えると明るい気分だけじゃいられないけどね。来年の今頃『思えば去年の終盤から予兆はあった』みたいに語られてないといいけど」
「そりゃそうなるかも知れないけどさ。別に今年だって三連覇は簡単じゃないだろうってところからここまで来たわけだし、今のうちから心配しすぎるのもね」
「まあね。実際三連覇ってかなりの偉業だもんね。かつて、七十年代から八十年代にかけての黄金時代でもそこまではやれなかったわけだしね。後は日本一になればってところだけど、やっぱりここ最近の流れ見ると不安になってしまうわ。去年みたいな消え方が続くようだと本当にね」
「ただ今年に関してはライバル自体が不在だったよね」
「カープ以外は低い位置で延々やりあって、たまに二位浮上したと思えば直接対決で叩きのめして。ここまで楽に優勝まで走れたシーズンもそうないんじゃない? その分最後に大苦戦したわけだけど」
「今となってはなんであんなに余裕だったんだろうとさえ思えるよ。ただ全体的にカープ以外でよく二位になってたのが巨人とヤクルトで、カープはこの二つをカモにしてたから楽だったってのはあるよね。中日が他球団相手でももっとやれてたらどうなってたか」
「中日は苦手だったわね。とは言え全体的な安定感では比べるべくもなく。さて、カープ優勝に導いた要素としては、まず圧倒的に打撃よね。しかも一部主力選手だけが頑張ってたんじゃなくて、もちろん丸と鈴木の驚異的な成績はチームを決定的に支えたんだけど、野間や西川といった若い選手もそろそろ本格的に戦力として計算出来る存在になってきたみたいだし」
「それと松山も規定到達しそうだね」
「松山はなかなか立派な成績よね。元々打撃だけでプロ入りを勝ち取った下位指名から三年ほど二軍で漬け込まれて実力を養った。そして四年目から一軍の足がかりを掴んで、それからは相手投手の左右によって併用時代が長く続いたもののしっかりと対応していって、三十三歳にして初めての規定だからね」
「しかし同じ年のドラフトに丸や安部もいて、それと小窪もか。この辺でいい指名があったからこそ今があるって感じだよね」
「ドラフトは数年後を見据えるもの。とは言え去年即戦力皆無はきついなとは思ったけどこうして優勝は果たしたわけだし、後は去年の選手たちがしっかり育ってくれれば十分十分」
「そういえば去年の選手たち、一軍で出た人はいないけど二軍ではどうなの?」
「まあぼちぼちね。中村奨成は打撃も守備も順調に成長中だし、山口遠藤ケムナといった投手陣も二軍で素材の良さを見せつつある。特に遠藤の評価は高く、意外と早く出てくる可能性もあるともっぱら。まあ来年は二軍のメイン戦力としてローテにも入ってくるでしょうし、五年後には一軍でもやれるようにってペースで問題ないわ」
「今年のドラフトはどうなるかな? もう一ヶ月切ったけど」
「そろそろ会議も開かれるはずなんだけど、それでどういう名前が出るかによってある程度推測の精度は高まっていくでしょうね。でもまだ志望届を出す選手も出揃っていない段階だし、安易に誰をどうとはなかなか言えないわ。ただ大雑把な傾向なら少しは言えるけど」
「どんな傾向?」
「まず今年のカープの一軍戦力で足りないな、もうちょっとここの層が厚くなればいいなってなったのは野手より投手でしょう」
「まあね。途中ではリリーフどうにかしないとって思ってたけど、今はむしろ先発こそ足りないなってなってるし」
「大瀬良とジョンソン、野村もどうにか防御率を見られる数字に減らしつつあるしこれは良し。逆に岡田はついに五点台に突入してしまった。とにかく打たれる時は大爆発するスタイルはどうにかしないとね。九里はよくやってる。昨日の優勝決定戦でも望外のナイスピッチだったし」
「とりあえずこの五人ともう一人って感じだったけど、最後までこれといった人材は出て来なかったね。高橋昂也とか期待してたけど」
「まだ二年目だし、今年の悔しさを未来に活かしてくれればいいわ。中村祐太は去年の成績をベースにもっと伸ばしてくれればと思ってただけに期待外れだったけど。そして今シーズンの期待外れ王といえば薮田。コントロール無残な上につまらない騒動で男を下げた。偏見は人類共通の敵だけど、そういう目で見られても仕方ない結果を残してしまった」
「とにかく名誉挽回には成績を残すしかないからね。薮田も来年は頑張ってくれるといいね」
「リリーフ陣に関しては連覇に貢献した今村ジャクソンが成績を落として、それでもどうにか踏ん張ってる中崎と救世主フランスア、そしてどうにか復調して勝ちパターンに入ってきた一岡でとりあえず形は出来た。先発陣もそれほどイニング数を稼げるわけでもない中、リリーフ陣の安定は勝利に必須だっただけに、よくまとめてくれたわ」
「後はアドゥワも、結局最後まで続いた」
「彼は本当にね、よくやったわ。去年の二軍成績が防御率十点とかで、そこから急成長したとは言えまずは二軍でどうかって世界だと思ってたし、一軍でもそのうちガツンと打たれてそれもまた勉強だってなるだろうと信じてたけど、フランスアに勝るとも劣らないサプライズだった。後はジャクソンの負傷にともなって浮上してきたヘルウェグだけど、やはり面白い投手だわ」
「球が速くて変化球も凄くて、そしてコントロールは乱れまくる」
「この鮮魚の如き活きの良さ、年々成績が落ちているジャクソンより魅力的にも映るけど、上がってくるのが遅かったのもまた事実。今シーズンの優勝にはまるで貢献していないと言い換えられるしね。それでも残留してくれるといいな。リリーフ投手は消耗品という世界。その中でヘルウェグはジャクソンにないもの、フレッシュさがあるから。そういう点で言うと新人はここである程度使える人が来るとありがたいけど。別にいきなりセットアッパーや抑えとかじゃなくてね、三十から四十試合で三点台ぐらいでチームを下支えしてくれるぐらいでもいいから」
「そのレベルの選手すら今では貴重だもんね」
「投手陣枯渇してる中で首脳陣はよくやったと思うわ。ただ来年以降はもっと今までと違う選手が出て来ないとまた既存の主力に負担がかかりまくるわけだしね。それこそ去年の今頃期待してた藤井とかが出てくると最高なんだけどな。それと手術明けの床田が体も大きくなって二軍でいいピッチングしてるって話だし、今年は無理しちゃいけないけどじっくり回復して来年こそはってところもある」
「とにかくまだ見ぬ新人とかも含めて誰か台頭しない事にはね。野手に関してはどうかな」
「現有戦力は十分。菊池と田中の打撃成績がもう一歩伸びなかったけど守備に関しては今でもクオリティ高いし、即戦力が今すぐ必要というものでもない。年齢的にそろそろ三十歳で、このポジションはその辺で一気に厳しくなるケースも多いから確かに将来を見据えての新戦力確保は考えられる。ただ一位入札を使うほどかは微妙なところ」
「二遊間は将来そうなるかもしれない話だけど投手陣は現在進行形待ったなしだもんね」
「野手は基本的にどこのポジションも今は大丈夫だからね。新井が引退してエルドレッドもいなくなりそうな一塁にしても松山にバティスタとメヒアのアカデミーコンビがいるしね」
「そう言えば丸がFA権取得したって話もあったけど」
「仮に抜けるとして、それは今年のドラフトでどうこうする問題でもないでしょ。数年掛けて育て上げた球界トップクラスの選手なんだから。付け焼き刃では無理。強いて言うなら外国人か。まあ基本現有戦力でもある程度はどうにかなると思うけどね。そういう意味ではセンターをこなせるスピードがある野間の覚醒は非常に大きい。このまま野間丸鈴木で固定してもいいし、抜けても野間でセンターを埋められるから、レフトなら多少守備が苦しい選手でもどうにかなる。そこが内野との違いよ」
「西川のサード守備みたいな?」
「打撃に関しては文句なしなんだけどね。まずは鍛えてもらうしかないでしょ。守備に関しては安部もやっと怪我から戻ってきた。今年は打撃がいまいちだったけど去年は規定三割を打った男。二遊間だけでなくファースト起用なども可能で使い道は広い」
「こう見るとやはり人材は豊富だね」
「でも二軍は、まず数からして少ない。まとめると投手陣は少数精鋭で即戦力狙えそうなタイプ、野手は若くて鍛えがいのある逸材を確保するのが基本線になるはず。無論他球団の動向もあるし、計算通りにいくものではないけど」
「未来は見えないからこそ楽しめるものだね。さて、カープは順調に優勝したけどサンフレッチェはどうかな?」
「かなり迫られている。正直今の流れだとすぐにでも抜かれそう。まあ去年の惨状からいきなりここまで来ただけでも十分に成果なんだけどね、まず控え選手がレギュラーと比べてやはり落ちるのがね。仕方ないとは言え、選手層に関しては苦しいところがある」
「川辺とか本来もっとやれる選手のはずだけど、なんとなくこの程度に収まりつつあるのかな」
「まだ若いしこれからなんだけどね。とにかく、こうなった以上はもう一度巻き直していくしかないでしょう」
「それと相撲だけど、こっちも色々ごちゃついてるね。貴乃花が辞めるとか」
「まあ彼にとって居心地の良い場所ではないでしょうね。状況的にも。相撲協会はそうするように仕向けたから今頃喜んでいるところかしらね。そして秋場所では白鵬が優勝。鶴竜は十日目までは最高それ以降は最低。稀勢の里も、内容はともかく肝心の勝敗で最低限の数字は残せたし良かったんじゃないの。扱いが横綱と言うよりカド番大関みたいだったけど」
「あんなに休んでからの復帰場所だもんね。こんなもんじゃないの」
「一応ノルマクリアはしたものの本番はこれから。平成を超えられるかがまずは一番の関門となってくるのかな」
このような事を語っていると敵襲を告げるサインが瞬いたので、二人は素早く物陰に隠れて変身した。そして嵐よりも恐ろしい侵略者が出現したポイントまで走った。
「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のヤブサメ女だ! この汚れた星に清浄なる柱を打ち立てるのだ」
茶色くて小さなウグイスに似た姿の渡り鳥を模した姿をした女がちょうど通りかかったかのように地球の野山に降り立った。疾走する馬の上から矢を射て的に当てる伝統的儀式の流鏑馬とは名前の由来も異なり、まったく関係ないらしい。しかしどのような由来であろうと地球にとって危険な存在が出現したのは間違いない。そしてそれを止める力はまもなく出現した。
「やはり出たかグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」
「まったくおめでたい相手よね。今日という日をあなた達に邪魔させはしないわ」
「ふん。貴様らこそ我らの偉業を邪魔するでない。行け、雑兵ども!」
木陰からわらわらと出現してきたメカニカルな雑兵を、渡海雄と悠宇は徒手空拳で次々と撃破していった。そして残る敵はボス一人だけとなった。
「よし、これで雑兵は片付いた。後はお前だけだヤブサメ女!」
「程よく過ごしやすい天気になってるんだし、そっちの都合だけで壊そうとするのは迷惑よ」
「ふっ、お前達は真の幸福を知らないからそうわめいていられるのだ。そしてそのような者は排除せねばならぬ」
そう言うとヤブサメ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。小型の鳥なのに巨大化したらアイデンティティ大丈夫なのかとも思えるが、そもそもモチーフになっただけなので気にするほどでもないか。ともかくこの暴力に抗うべく、二人も合体した。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
秋の空に翼を広げての空中戦が繰り広げられた。スピードとパワーは互角でも、悠宇は持ち前の反射神経を駆使して有利な態勢を作った。そして背中を取って一撃をかました。
「よし、今よとみお君!」
「うん。慌てず騒がず、レインボービームで勝負だ」
渡海雄はすかさず白いボタンを押した。波長が異なる七色のビームが一斉にヤブサメロボットを襲い、そのまま貫いた。
「ええい、これまでか。撤退する」
機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によって、ヤブサメ女は宇宙の彼方へと去っていった。ところでカープがリーグ優勝九回目なのでこれをV9と呼ぶのは分かる。しかし八十四年、前回日本一を達成した時にJ3などという呼び方でそれを讃えている資料を発見した。日本シリーズだからJなのか。それは当時の人に聞かないとよく分からないが、とにかく次の目標は目指せJ4となる。
今回のまとめ
・カープ三連覇達成はまさしく偉業おめでとうございます
・ライバル不在で延々と一人旅だったがどこまで続くものか
・サンフレッチェも今が正念場と心得てファイトあるのみ
・平成最後のってワードが頻出する時代になってきた