vm20 森保一日本代表監督就任について
猛威を振るってきた熱波だが、週末には収まる見込みという。それはありがたいと思いきや、台風接近に伴うものだという話だから穏やかでない。オウム関連の死刑も終わって平成の終わりも近付きつつある今日このごろ、でも渡海雄と悠宇にとっては生まれる前の出来事なので何をどう言うべきか答えはなかった。
「あんなのがひとつなぎの時代の中でガンガン活動しまくってて今の今まで生存していたのよね。改めて凄まじい時代だったんだなって思うわ」
「オウムが明確な殺人を始めたのが一九八九年、平成元年。それから一九九五年まで多くの犯罪を重ね、そして今年処刑。そして来年には平成が終わる」
「こうやって時代は変わっていくものなのかもね。ところでカープとサンフレッチェだけど、本格的に同時優勝も見えてきつつあるみたい」
「まずカープはほぼ確定だよね。このゲーム差だし。もし引っくり返されたら球史に残る大逆転になる」
「ただこの間の巨人との三連戦を見るに、その可能性も霧散したと見たほうが良さそう。巨人はここまで七連勝してて、三連勝したら二ゲーム差というところまで詰めていた。追撃体制としてはこの上ない状態でしょう。それで一戦目は序盤のビハインドを追い付いて延長で逆転まで行ったにも関わらず、ツーアウトから下水流がサヨナラホームランを放って勝負あり」
「逆転された時はきついなと思ったけど、まさかあんなドラマが待っていようとは。そして二戦目は頼みのエース菅野が六失点と撃沈」
「三戦目は序盤に大量リードを得たもののホームラン攻勢に屈して逆転負けで、結局追い上げどころかもはやどうやっても勝てないという絶望的な試合を連発するだけに終わった。迫ってきたからこそ、ここでどうしようもないほどに差があると見せつけられたのは大きい。はっきりと見えてきたわ。三連覇!」
「本当によくやってくれているよね。特に打撃が」
「打線はもはや言うまでもないでしょ。特に凄まじいのは五割に近い出塁率を誇る丸。いや、やばいでしょこれは。しかも長打率も山田や筒香を大きく上回ってるし。まさかここまで凄まじい選手に成長するとは思わなかったわ」
「去年MVPに選ばれたけど、今年は更に超越していったね」
「連続NVPもあるかな。打者としてはもはやリーグナンバーワンと称してもいいレベルだし、投手陣に対抗する者がいるかと言うと……、大瀬良?」
「うーん。確かに頑張ってるけどさ」
「もし大瀬良が最多勝と防御率の二冠達成とかなったらともかくね。そう言えば交流戦の頃は大穴だった投手陣もどうにか整ってきたから幸いよ。大瀬良とジョンソンを軸に、野村、九里、岡田はそれぞれ怪しい部分もあるもののそれなりに。高橋昂也は素質はあるけどまだ足りないものがあると露呈したけど、そろそろ薮田だって上がってくるはず。まあ逃げ切るには十分でしょ」
「そしてリリーフだけど、今の陣容を改めてじっくり見てみるとびっくりするよね」
「連覇によってリリーフ陣の酷使が続き、今村、ジャクソン、中田、一岡と成績を落とす投手が続出した。とは言えこれは事前に予想出来た事態。だからドラフトで即戦力はないのかなと思ったけど素材連発で、外国人のカンポスは二軍でも凡庸で補充にならず。ここをどうにかしないと厳しいと見ていたんだけど、まさかフランスア、永川、アドゥワ、飯田とか、こんな面々がブルペンを守っているとは。開幕前こいつらがやってくれると思っていた人がどれだけいたか」
「フランスアなんてシーズン途中に育成枠から昇格して、先発としてはいまいちだけどロングリリーフとしては面白そうだと思ってたらあれよあれよと勝ちパターンまで昇格して、しかもむっちゃ結果残してるという」
「左で百五十キロをビシッと低目に決めて変化球もなかなか決まってる。想像以上に良い投手だった。いきなり回またぎとか厳し目な使われ方なので最後までもつか不安になったりするけど、今のピッチング出来るうちは大丈夫」
「リリーフと言えば新外国人のヘルウェグも補強したけど」
「二軍情報を見るに球威は本物、そしてノーコンもガチっぽい。枠はあるし、日本の野球に対応して上手く最後のピースになってくれれば。それこそセットアッパーとかやれるぐらいまで活躍してくれるとありがたい。まだまだ不安だからね」
「そう考えると中崎のタフさはありがたいよね」
「本当にね。それと補強って話だと、久方ぶりにトレードが成立したわね」
「美間とソフトバンクの曽根内野手がトレード。割と地味に見えるけど、これはどうなの?」
「どちらも一軍で芳しい成績を残しているわけじゃないし、地味と言えば確かに地味。その中で美間はスペック上は強打のサードだし、年齢的に先が見えている松田の後継者候補としてはうってつけの選手ではある。曽根は育成出身ながら昨年のフレッシュオールスターMVPに輝いた男。二遊間が本職で、今年は同じタイプでより若い川瀬の台頭もあって出番は限られていたけど、カープ二軍の二遊間はやや弱いところがあるので本人にとってはチャンスも増えるはず」
「ただ上って考えると菊池と田中だから大変だよね」
「ただ守備走塁の評価は高いそうだし、彼らが離脱した時のバックアップとしては面白そう。年齢的には去年のドラフトで大卒ショートを獲得したと考えて、まずは上本と枠を争う事になるかな」
「何より久々のトレードだからね。きっちり戦力になってくれるといいよね」
「そうよね。それにしても今年は補強期限となる七月になってからの補強が多いわね。DeNAとオリックスでベストナイン経験者の伊藤光らをトレードしたり、昨日なんて二件もトレード成立した。外国人補強も相次ぎ、他にも育成枠からの昇格や独立リーグからのNPB復帰などあらゆる手段で今シーズンの最終形態を整えようと各球団が躍起になっている」
「こんな直前でここまで盛況なのはあんまりなかったよね」
「アメリカでは下位チームが主力を上位に放出して有望な若手獲得とか、そういう駆け込みトレードが恒例行事となっているけど、日本も将来はそうなるのかしらね。ただ今のCSのルール上最下位でも普通に希望があるからそこまで極端にはならないかしらね」
「それで今の順位見ると、ヤクルト二位なんだね。去年は悲惨だったけど、今年はかなり戦えてる」
「山田復調に、アメリカ帰りの青木もよくやってる。とは言えカープ以外の混戦模様がずっと続いてて、ヤクルトだって借金持ちだからね。終わってみたら、という可能性はずっとある」
「一方でパリーグは、ここに来て楽天がある程度戻してきてるね」
「最下位独走だったけど、監督交代のショック療法が今のところ功を奏しているみたい。優勝争いは西武と日本ハムに絞られたかな。二位と三位には差があるから」
「でも三位争いも激しいし、そりゃトレードや外国人補強も活発になるよね」
「こっちでも去年最下位だったロッテが現在三位と健闘してるし、そういう順位の入れ替わりは望むところでしょう。ドラフトが機能している証拠よ」
「そう言えば巨人がまた不祥事起こしたね」
「もうそういう存在って事でしょ。ところでサッカーの話だけど、まず日本代表の監督に森保一就任が決定したわね」
「本当に決まったんだね。外国人とかじゃなくて」
「高卒の日本人監督は下村幸男、石井義信に続いて三人目。いずれも東洋工業、マツダ出身でまず国内のチームを率いて残した実績が評価されて就任となった現場叩き上げと呼べる人達ばかり。ただ下村も石井も土台が出来てないのに『この大会出場を目指せ』と即戦力的に就任して、結局ノルマ達成出来ず短期間で退任というパターンだった。日本サッカーの本流とは違うからそういう雑な使われ方されるわけだけど、今度はどうかな?」
「しかも東京オリンピックの監督とも兼任なんでしょ? とっても大変そう」
「ただオリンピックは開催国枠で幸いにも予選なく出場出来るからね。そう言えばオリンピックマスコットの名前が決まったわね」
「ミライトワとソメイティ!」
「あんまり調和していない中に調和を感じる、なかなか味のある名前よね」
「でもちょっと長いからもうちょっとシンプルだとなお良かったけど。トワちゃんとメイちゃん、ぐらいの。まあ商標とかも考えての事だろうし仕方ないのかな」
「ともあれこれからマスコットとして大いに頑張ってもらうとしましょう。話をサッカーに戻すと、ロシア大会を限りに本田や長谷部らが代表引退を宣言し、世代交代は喫緊の課題となっている。そこでオリンピック世代の若い選手と既存の主力を上手く融合出来れば、より上を目指せるはずよ。それだけの手応えがある大会だったからね、ロシアは」
「返す返すもベルギー戦の二点リードしたあの瞬間の高揚感と、やっぱり悔しいや。ベルギーは強かったけど、その強い相手に勝てたかもしれないという事実がそこにはあるんだから」
「優勝したフランス相手に負けただけで三位、日本を叩き潰したあの鋭いカウンターにはブラジルもイングランドも餌食となったし、大会最優秀ゴールキーパーに選出されたクルトワからここしかないというゴールを二発も決めたのは多少は慰めにはなったけど、うん、やっぱり私もまだ思い出すわ。しかしこれを体験出来たのは西野監督がいくつもの苦渋に満ちた決断をこなしたからこそ。森保監督も同じような苦しみを味わう事になるでしょうけど、とにかく強く戦っていくしかないわ」
「今の段階でも早くも怪しげなライターなんかから疑念の声が上がったりしてるしね」
「気にしすぎない事よ。そういう声に反発するって形も含めてね。そして城福監督率いる今のサンフレッチェだけど、基本的には変わらない。ガンバ相手には楽勝だった一方、最下位の名古屋相手には引き分けに終わったけど基本を変える必要はない」
「FC東京なんか結構迫ってるように見えるけど?」
「最後まで独走優勝なんてそうはいかないでしょ。むしろ追いつかれてからが本番ぐらいに考えないと」
「そのためにベリーシャだって獲得したんだろうしね」
「オフェンスはすでに人材いて、むしろ守備陣の人数が不安に思ったりもしたけど、それでも補強って事はもっと必要だと考えたんでしょうし、これが良い補強になってくれると嬉しいわね。オーストラリアのリーグで実績を残した一方で気性の激しさでも知られていたようで、その辺がどう出るか。コソボ出身ってのも珍しいし、活躍してくれるといいわね」
「これでブラジル、タイ、コソボと久々に国際色豊かなチームになってる」
「世界のゲームだから世界中から人が集まったほうがむしろ調和ともなる。とにかく、カープとサンフレッチェのダブル優勝なんてまさに千載一遇のチャンスだけに、バシッと決めてほしいわね」
このような事を語っていると、敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので二人は素早く戦闘服に着替えて嵐が近付きつつある街へと繰り出した。
「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のマスクラット女だ! この汚い青色をした星を正しく染め変えるのだ!」
水中での生活に適応しているネズミの仲間、齧歯類の姿を模した女が川辺に出現した。日本においても特定外来生物に指定されているが、このマスクラット女も地球にとって危険な外来生物であり、早々に排除しなければならない。そして間もなく、そのための力が出現した。
「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ!」
「もしも明日が雨だとしても、私達は人々を守るために戦い続けるわ!」
「何を戯言を。行け、雑兵ども!」
問答無用で繰り出されたメカニカルな雑兵の群れを、渡海雄と悠宇は粛々と撃破していった。そして残る敵はボス一人だけとなった。
「よし、これで雑兵は終わりか。後はお前だけだマスクラット女!」
「お互いにテリトリーを守ってくれれば戦う事もないのに」
「正義を広めるには目を開けない蛮族の排除も必要だ。お前達には間もなく死んでもらう」
そう言うとマスクラット女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。あくまでも戦闘行為を止めないのならばこちらとしても抵抗する以外に道はない。渡海雄と悠宇は合体して、巨大な暴力に対抗した。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
水を切るように滑るマスクラットロボットの軽快な動きに苦戦しつつも、だんだんとリズムを掴んでいった悠宇がついに背中を取った。
「よし、今よとみお君!」
「うん。サンダーボールで勝負する!」
渡海雄はすかさず黄色のボタンを押した。右手首から発生したプラズマのボールがマスクラットロボットを包んだかと思うと、一気に爆発して機体をショートさせた。
「何というパワーだ! 忌々しいが脱出するしかないとは」
機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によって、マスクラット女は宇宙へと帰っていった。まだまだ夏を満喫するには間がある。
今回のまとめ
・とりあえずカープ優勝はほぼ確定だろう打力が違う
・投手陣は相変わらず苦しいが意外な選手の台頭はそれで面白い
・森保監督はここからが地獄なので心を強く保ってほしい
・サンフレッチェも順調だが所詮まだ半分に過ぎない