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am06 ゴワッパー5ゴーダムについて

 連休連発の日々も終わり、今日などは急に涼しくなってまさに秋本番か。しかしいつどこで敵が現れるとは誰にも分からない。今日もまた渡海雄と悠宇は南郷宇宙研究所に顔を出し、とりあえずコンピュータルームに集まった。悠宇の右手にはデイリースポーツ。見出しには広島初悲願と書かれていた。


「ねえねえ見た昨日の試合! ついにカープが長い長い負の歴史を乗り越えてAクラス入りを決めたのよ! やったやった! ああ、まさか浅尾をああも連日打てるなんてねえ。エルドレッドがここで存在感を見せるなんて、これで残留待ったなしかしら。投手陣も二日連続で危なっかしい場面はあったけど致命的にならないぐらいには踏ん張ってくれたし。それにしても中日の高木監督は本人も就任した時からこうなる事は薄々分かっていたはずだけど損な役回りを引き受けて、切なくなる事もあるけどこれも勝負だから仕方ないのかしらね。だから私が中日ファンじゃないから言えるんでしょうけど高木監督は悪く言いたくないのよね。そりゃあ順位は酷いし采配だって言いたい事は色々あるってのは理解できるけど、年齢も年齢だし本来はもっと別の人であるべきだったものを変な事情に巻き込まれた感じがちょっとね。それに岡田とか高橋とか面白い若手が出てきてるし来年以降はまた立派にチームとして立ちふさがるかもしれないわって、聞いてない? もしかして私の話を聞いてないのとみお君?」


「いやあ、終わったなあゴーダム」


「ああ、やっぱり聞いてなかったのね。まあいいけど。それで、何を見てたの?」


「ああ、ゆうちゃん。これだよ、これ。ゴワッパー5ゴーダム。今から四十年ぐらい前、一九七六年のアニメだけどニコニコ動画で半年ほど公式に配信されてて、それがこの間の月曜日配信分でついに最終回を迎えたんだ」


「ゴーダム? 初めて聞く名前ね」


「まあ有名な話ではない感じだからね。でも面白かったよ、かなり。ご覧の通り、このアメフトっぽい服を身に纏った五人組がゴワッパー5で、奥にいるごつくて鼻の丸いロボットがゴーダムって言うんだ。合わせてゴワッパー5ゴーダム」


「ふうん」


「まずこの絵では青い人が大きく写ってるけど実はリーダーはちょっと奥にいる、赤と白のユニフォームを着た岬洋子って女の人なんだ」


「それはいいわね! このアニメってどんな感じなの?」


「あっ、うん。まず岬洋子はメンバー最年長で中学三年生なんだ。唇は赤いしまぶたも色が塗られていて、それに何より声だね。凛々しくて大人びてて、でもそれだけじゃなくて優しさと言うか、包容力みたいなものも感じさせるいい声だと思うよ。格闘も強いし判断も正確だし、まさにリーダーとして適任な人間だよ」


「いいわね。素晴らしい設定ね。じゃあところでこの青い人は何なの?」


「青い服を着てるのは津波豪。設定上は小学生だけどすっかり声変わりしてるし体格も全然子供っぽさはなくて格好いいヒーローって感じだよ。性格的にもルックス的にも、まあこういう番組では普通こっちが主人公になるけどこの作品には岬洋子がいるからね。ただ途中からは洋子のポジション奪ったかのようにリーダーっぽくなるけど。それでも全体的に言うと豪は積極的に最前線へ繰り出していく戦闘リーダーでもっと大局的な判断は洋子って感じかな。黄色は亀山大吉。まあ見ての通り太ってるけどそういうキャラだよ。緑は小石川五右ヱ門さん。小学二年生」


「おお、若いわね」


「でもその若さを感じさせないチームの頭脳なんだ。まあ多少臆病なところもあるけど。そしてピンクだか赤紫はチーム最年少の河口のり助さん。あろうことか小学生に上がる前という若さ! まあそんな年齢だから未熟なキャラって言うのかな、うっかり失敗して敵に捕らえられたりする事もあるけど基本的にはバリバリに戦える実力者なんだ。それとこのユニフォームを着た状態だとちょっと分かりにくいかもしれないけど普段の私服を着た状態だと髪型とか目つきとかついでに声とか、まあもう総合的に見てかなりかわいいし案外主役回も多い。まあ髪型はみんなおかっぱだけど。とにかくそう言う事だからのり助さんはさん付けだよ。僕らより若くて、しかもマスコットとかじゃなくて戦ってるんだから割と真剣にリスペクトしてるんだ」


「まあそう言われると確かに立派ね。私が小学生に上がる前なんて、ろくな事してなかったもの」


「僕もね。今思い出そうとすると幼稚園の裏にある土手みたいなところでつくしを見つけたとかそれが冒険の限界だったし。まあとにかく、同じ団地にいて冒険好きな五人が集まったのがゴワッパー5なんだ。そんな彼らがある日、冒険の一環として奇顔島なる場所に上陸したら実は中にロボットがあって、それがゴーダム。ゴーダムのコンピュータにはこれを作った大洗博士の人格が移植されてて、この大洗博士は知恵と勇気を兼ね備えたゴワッパー5の皆さんにゴーダムを授けて、侵略を始めようとしている地底人類と戦うことになったんだ」


「この白いライオンみたいなのが大洗博士ね」


「そう。他にもゴーダムより小さなメカも開発していて、それがそれぞれゴワッパー5のメンバーにも授けられたんだ。このミニメカを駆使して敵の基地に偵察に行ったり撹乱させたりするのは前半戦の見所でもあるんだ。出番が多いのは、穴を掘って移動できる豪とのり助さん、それに大吉も立派なドリルがあるパワーファイターとしてそこそこ活躍してたね。洋子は指揮官みたいなところがあるからあんまり前線に出てこなかったりするんだ。空飛ぶマシンをうつ伏せになりながら操縦する姿はなんか新鮮だけどね。そして一番扱いが悪いのは五右ヱ門さん。水中専用のマシンなんだけど、敵は地底にいて大抵地上に出現するから出番が少ないんだよね。だからゴーダム内で待機してる事が多いんだ」


「ううん、それはちょっとかわいそうね。でもそれならゴーダムを操縦するのは五右ヱ門なの?」


「それがね、実はゴーダムは大洗博士も操る事が出来るんだ。まあ一種の自動操縦だね。だから敵のロボットを倒す時も結構年配の博士が高らかに必殺技の名前を叫んだりしてて、これは異色の雰囲気を醸し出しているね。でも途中から敵の攻撃でコンピュータの回路が破壊されてデータが消滅してしまうんだ。その前後で敵幹部が交代したり豪がリーダーっぽくなったりと変化が起こるんだけど、とにかく大洗博士が破壊されてからはもちろん自動操縦とか出来なくなって、その代わりに内部の工場でパーツを作って変形合体する『ゴーダムチェンジ』という新たな戦法を編み出したんだ。工場の責任者はもちろん頭脳派の五右ヱ門さん。しかも待機の多さが幸いして『先行した他の四人がピンチに陥った所で颯爽と登場した五右ヱ門さん操縦のゴーダム登場で窮地脱出』とか、そういう活躍も出来るようになっていったんだ。まあでもだんだんミニメカの出番少なくなって結局洋子なり豪が操縦ってのが多くなるんだけどね。それと大洗博士の頃はずんぐりむっくりした機体のイメージ通り硬くて強くて要塞が動いてるような重厚さがあったけど、途中からは軽やかに動いたりゴーダムチェンジで臨機応変に立ち回るようになったって違いはあるね」


「そう考えると途中から色々変わる部分も多かったって事なのね。ところでゴワッパー5のみんなが戦っていた敵はどんなだったの?」


「うん。まずは地球の中は空洞でその空洞に今の僕たちみたいな人類とは違う人類とかが住んでいるかもって話があって、前回話したスパロボEXもまさにこの地球空洞説に基づいていて、地下にある異世界ラ・ギアスが舞台だったりするんだけどこのお話の敵である地底魔人国も地面の下にあるんだ。そしてその国を支配しているのが皇帝ジゴクダーってマグマの化け物。最終回までは顔しか出てこなかったけど実はケンタウロス型の体を持っていて、最終回では地上で大暴れするんだ。その配下で司令官として登場したのがマグダー。仮面と言うか、ヘルメットを着用していて知的な雰囲気だけどこっちには大洗博士もいるし体良くしてやられる描写とかも割と多いんだよね。だからか途中で度重なる失敗を理由に無残にも処刑されてしまうんだ。そして新たな司令官となったのがドッグガーン。筋骨隆々の肉体に加えてマグダー以上に残虐で苛烈な性格と声をしてるんだ。このドッグガーン登場でハードさが増した印象だよ。大洗博士もいなくなるし。でも最終回の一話前にヘッドショットで顔面消滅という壮絶な最期を遂げるんだ」


「なるほど確かにハードな展開ね」


「それでちょっと話が飛ぶけどゴワッパー5の協力者として志摩仙太郎というお兄さんがいるんだ。戦闘方面では頼りにならないけど大事な理解者でもあるんだ。でも志摩さんが地底には人類がいて今にも攻めてくるって主張しても最初の頃は敵の特性、つまり地底魔人国にはネンドロイドというね、チテイバーなる微生物によって魂を吹き込まれた土人形を兵士として使ってるんだ。このネンドロイドはやられると単なる砂となって証拠が残らないから志摩さんの主張はなかなか受け入れられずに苦労するんだ。その辺とか色々凝ってるのがいいよね。それと毎回のように冒頭で地震とか噴火みたいな大惨事が起こって一般人は大量に亡くなっているし、時には結構ショッキングな展開もあるんだ。地底魔人の存在を知らしめようとした博士とその息子で豪の同級生が乗った飛行機が行方不明になって残骸が発見されたが原因は不明みたいに報道されて終了した回とかやるせなさが凄いし。地底魔人はやる事はしっかりやるんだよね。こういうのでたまに欝アニメとか言われたりするけど、確かにそういう場面もあるけど基本的には明るく前向きなお話だよ。冒険で始まり、そして最終回はゴーダムと別れてまた新たな冒険を始めようと、うまくまとまった終わり方だったし」


「冒険か。そうね、それと主題歌もいいわね。なかなか軽快な感じで」


「エンディングもかなり軽やかでこれもいいよね。ついでに国際機甲師団なるゴーダムとは違う普通の防衛隊もいて、基本やられ役だったけど終盤にチテイバーを殺すウイルスを開発してからは一転攻勢、地底魔人の工場にぶち込んでネンドロイド製造不能にさせたり頑張ってたのも印象的だったね。それと金曜日に最終回が配信されるゴーディアン。これもゴーダムとは違うベクトルで凄い作品だったなあ。ゴーダムは前述の通り冒険で始まって冒険で終わるけどゴーディアンは西部劇で始まってスタートレックで終わりそうなんだから。ゴーダムはリアルタイムでは苦戦して放送期間が短縮されたみたいだけど、ゴーディアンは逆におもちゃが好評で本来の三倍ぐらい延長を余儀なくされたらしくてその分迷走と言うか、色々な要素を含んだ作品となったみたいなんだ。それとゴーディアンのほうが後の作品なのに作画はゴーダムより崩れてたり、例えば第一話の光の表現方法とか実験してたけど『あれ、塗り忘れかな』『なんでいきなり白黒アニメになったの』みたいな違和感にしかなってなかったり。まあ一見すると酷い作品かも知れないけど案外楽しめたんだよねゴーディアン。いきなり坂本龍馬的な人物が出てきたり何でもありな感じが」


 ゴーダムだけでも結構時間を使ったのにゴーディアンを語るなど、そんな余裕があろうはずもなかった。コンピュータルームにも響くけたたましいサイレンの音はまぎれもなく敵襲を知らせていたからだ。二人は素早く戦うためのユニフォームに着替えて戦場へと走った。


「ふっ、この俺はグラゲ軍攻撃部隊のレミング男だ。この惑星は随分奇妙な生態系を有しているようだが、是正せねばならぬ」


「勝手な事を言うなよグラゲ軍!」


「私たちの星は私たちのものであってあなた達がどうこう言う筋合いなどないわ!」


「やはり現れたか。まずは貴様らを血祭りに上げ、それから逆臣ネイを捕らえるのがこの私の使命。早速死んでもらうぞ」


 広大な草原をぐるりと囲むように雑兵たちが姿を現すと、一斉にその輪を縮めて二人に襲い掛かってきた。やはり戦いは避けられないようなので二人は全力を出して大勢の敵軍を一気に葬った。


「どうだ、もう雑兵はいなくなったぞレミング男!」


「あなたにも使命があるように私たちだってこの地球を守るって使命があるわ。負けられないのよ」


「言われるまでもないがそれは私とて同様。ゆえにどちらかの敗北をもってしかこの戦いは終わりようがないのだ。そして私は勝つ! この最終手段によってな!」


 レミング男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化したのでそれに対抗するために渡海雄と悠宇もその肉体と心を一つに融合させた。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 草原を横切る秋風もこの二つの巨体を前にしてはその歩みを止めざるを得なくなる。それと関係ないけどレミングが集団自殺するのはデマらしいね。とにかく、戦いは一瞬の攻防が明暗を分けた。


「よし、一気にとどめだ! ホーガンdー! じゃなくって、ええと、これだ! スプリングミサイル!」


 敵の接近より早く、渡海雄がオレンジ色のボタンを押すとメガロボットの左足に仕込まれたミサイルがレミングロボットの胴体を打ち貫いた。


「ええいこれが逆臣ネイの力だと言うのか! この俺が撤退するしかないとは!」


 レミングロボットが四方八方に爆散する直前に作動した脱出装置によって辛うじて命拾いしたレミング男は宇宙の彼方へと消えた。今日もまた平和が守られたと微笑んだ二人の帰り道、土手には彼岸花が赤く花をつけていた。

今回のまとめ

・そんなゴーダム最終回は九月の終わりぐらいまで無料配信中

・のり助や洋子もいいけど大人たちの働きもまた良い

・ゴーダム自体は前半の戦い方のほうが強そうだったりもする

・カープAクラスまで待たせすぎたがとにかくおめでとう

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