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oi08 鶴竜連覇について

 五月もそろそろ終わりで、梅雨も音を立てずに忍び寄っている予感。しかしそれはまた未来の話さと、渡海雄と悠宇は今日もまた半袖のまま瞳を重ねていた。


「今月のスポーツ界も色々あったねえ」


「でもそういうまとめ方だといの一番に来てしまうのが例の日大アメフト部の一件になってしまいそうなのがちょっと嫌なんだけど」


「関西学院大学との試合中、プレーと関係ないところで後ろからタックルして怪我させたというプレーそのものもさる事ながら、日大の体質も問われる事態となってしまった」


「監督とか偉い人は『選手が勝手にやった』で終わらせたいみたいだけど、そんなわけないでしょ。その後も理事長とか謎の老婆とか変なのがいっぱい出てきて大変よね」


「あのお婆さん、やっちゃいけない事やってるんだけど正直気持ちは分かる」


「あんな無関係の人が余裕で入り込める危機管理能力もどうかと思うけどね。とにかく、もう無難な着地なんて期待する段階じゃないんだから、全部出しきるしかないでしょ。偉い人が鉄砲玉に押し付けて自分達の世界は守れたとしてもブランド低下はもはやどうしようもないわけだし。さて、どうでもいい話題はここらで終わらせるとして、鶴竜連覇したわね!」


「うん。連覇は初めてなんだってね」


「優勝した後は低迷するのがパターンだったからね。しかし鶴竜、今年に入って三連続で優勝争いに絡んで、そのうち二つを優勝だからね」


「去年は怪我が相次いで引退すら近いのかと思ってたけど、そこからよく巻き返したよね」


「巻き返したどころか、過去を凌駕しているんだから本当に素晴らしいものよ。千秋楽の白鵬戦も、一度勢い良く土俵際まで攻め込んだものの残されてどうするかってところから、また攻めて今度はしっかりと寄り切った」


「安定感が高くなってるよね。今までは平幕には結構安定して勝ててたけど役力士相手になるとボロボロ取りこぼして気付いたら九勝とか十勝に終わってるケースがちょくちょくあったけど、うっかり引いてしまったという取組も少なくなってる」


「最終的にはたき込みで勝利となっても、それは逃げたのではなく終始攻め立てた最後にはたいて勝利って内容のほうが多い印象で、やはり強くなった。とは言え年齢的にはすでに三十を超えているから単純な筋力というか、そういう意味のパワーアップではなくて精神面の強化がなされたと見るべきでしょうね」


「これで通算五回目の優勝だからね。ここに来て角界の第一人者として本当の意味で君臨するようになったみたい」


「正直これまでは横綱としては存在感が薄かったけど、こうやって実績を積み重ねたらもう立派な晩成型の技巧派としてしっかり大相撲の歴史に名を刻めているでしょう。ううん、嬉しいな」


「そしてまさしく第一人者であった白鵬は、今場所ちょっと失速してしまったね」


「巴戦もちょっと期待したけど、やはり休場明けの場所にそこまで願うのは大横綱であれ厳しかったかしらね。年齢的にももう三十三、衰えても仕方ない数字。とは言え今場所もやっぱり優勝争いに絡んできたんだからやはり強いわ」


「そして栃ノ心も強くなったよねえ」


「今一番勢いがある力士よね。いや今年の初場所は鶴竜には軽くひねられてたし正直単なる勢いかとも思ってたけど、こうも続けられるともう実力と認めるしかないでしょう。ジョージア出身、元々パワーに定評あったけど怪我から幕下まで落ちるなど苦労してきた力士で、そういう経験が三十歳になってから相撲の実力に直結してきたって事でしょうね。大関昇進は当然の内容」


「特に十二日目の白鵬戦は凄かったね」


「パワー勝負なら横綱をも凌駕すると証明する一番。しかし十四日目、そんな相手に巧みな立ち回りで有利な体勢を築いた鶴竜もさすがだった。まああそこで鶴竜にも勝ったら大関どころか横綱昇進レベルだし、さすがにそれはまだ早いって事でしょう」


「とは言え、今の角界から三人ってなるとやはり今場所優勝争いしたこの三人ってなるよね」


「途中から大関不在だったとは思えないぐらい白熱した展開で、非常によろしかったわ。後は高安の捲土重来にも期待。稀勢の里は……、期待するだけ酷かしらね」


「また全休となってしまったけど、もう仕方ないのかな」


「もう次に出る時は当然進退を問われるわけだし、まさに背水の陣で臨むしかないでしょう。もう一年休みまくりなわけだし、すでに綱の責任とかそういうレベルじゃないから。それと怪我と言えば遠藤。今場所途中休場したと思ったら戻ってきて、でも筋肉は全部切れてるからもう悪くならないとかいうやばい理由だったらしく案の定復帰後は全敗。無茶させる場面でもなかろうに」


「でも横綱と違って降格もあるし、必死にもなるよね」


「そういうのともまた違う酷使だったようにしか見えないのが何ともね。元大関ながらも怪我で十両に落ちて今場所は途中休場と全敗が合わさって幕下陥落が確実視されている照ノ富士もね。まだ年齢的にも先はあるだろうし、ここでくじけるか栃ノ心になるかの正念場よ。とにかく、次の名古屋場所がどうなるかも楽しみよね。さすがに三連覇は簡単じゃないけど」


「三連覇といえば、カープが首位で交流戦を迎える事となったね」


「うーん、これもどう言うべきか。はっきり言って強さはそこまで感じられないけど驚くほど二位から差が付いているので疑問符の多い結果よ」


「でも二位から五位まではかなりごちゃごちゃしてて毎日のように順位が入れ替わってるような混戦だから、それに救われてる部分もありそうだよね」


「五割前後で阪神、DeNA、巨人、中日が叩き合いしてる間に上と下が抜けつつある状況は、幸い上を取ったカープにとってはありがたい状況だけど、ただ気を抜ける相手はないだけに大変な戦いでもあるわ。ただでさえ100%のメンバーを組めない状況にあるんだから」


「確かに、離脱者多いもんね」


「まず投手陣に関しては昨年突如開花して最高勝率となった薮田と今年の開幕投手に選ばれた野村がいずれも不調で二軍落ちし、ジョンソンも現在出産に立ち会うため帰国中。特に新しい選手が出てきたわけでもないけど、よくやってる」


「大瀬良と岡田がよくやってるよね」


「特に大瀬良は今年やってくれたら本格的にエースとして稼働しそうだから非常に期待しているわ。後は中村祐太や九里もぼちぼち。まあフランスアとかお遊びもはさみつつ、十分戦える程度の戦力を保持出来ているわ」


「リリーフも、ちょっと不安だね」


「メンバー変わってないって事は疲労も蓄積されている。先発陣はまさに大瀬良や岡田など今までよりもっと伸ばせるであろう選手はいるけど、中崎や今村、ジャクソンらは今後良化させると言うより今の力をどこまでキープ出来るかって段階だし、やはり新星なくしては大変。アドゥワとかそういう話じゃなくてね」


「でもトレードとか新外国人も今更ないだろうし、去年のドラフトも即戦力はなし。今年は現有戦力で回すしかない」


「今年は東洋大や日体大に複数の有力候補がいたり、大学生社会人に使えそうな投手が揃っているという話だから、期待したいところ。一方で野手もやはり故障者続出。開幕時はバティスタがいなくて、鈴木誠也も間もなく離脱。これも復帰したってところで今度は丸が怪我に倒れる」


「主力中の主力ばっかりで、かなり厳しい戦いを強いられていたよね」


「野間が打てるようになったりしてるけどやはり根本的な迫力は不足している。鈴木だってまだ本調子じゃないでしょう。エルドレッドは引退直前のスラッガーの典型みたいな数字になっているし、新井の出番も限られる。代打要員としては十分すぎるほどに怖さがあるとは言え、打線全般に関してはどうにかまた立て直さないとね」


「そして交流戦でまず当たるのがパリーグ首位の西武」


「ここの打線もえぐいけど、五月に入ってやや勢いに陰りが見られる部分もあり、しかし楽観的に考えるのは禁物。ゲーム差を見てもやはりまずは五割を目指す。これが基本でしょう」


「そこは毎年言う事がブレないね」


「歴史的には大負けしまくってるし、そこは謙虚にね。セリーグの二位争いに関しても、今までだとどうしても直接対決であっちが勝てばこっちが負けるという形で入れ替わりが激しかったけど、それがなくなるからある程度は差が生まれるはず。結果的にどこがカープ追撃の一番手となるかにも注目したいわね」


「どこが勝つかと言うよりどこが離脱するかというレースだね」


「去年は巨人が撃沈して結局Bクラスに沈んだり、そういうのがまた今年も繰り広げられるでしょうし。それとサッカーだけど、現在J1は中断期間に入ってるけどサンフレッチェは無事に首位をキープしているわ」


「最後は負けちゃったけどね」


「これを良い薬として巻き返すための鍛錬をこの期間中に積み重ねられると思えばそれもまた幸いとなるか。ただセレッソはサンフレッチェ対策の一端を披露したし、他のチームも当然研究を進めてくるでしょう。根本的に今までが出来過ぎなのはやはり変わらないし、ここから楽にはいかないでしょうね。城福監督の修正能力が問われるわ。前半戦は残り二試合だけどその相手がガンバと名古屋という低迷組なのもかえって不気味」


「当然この期間中に戦術を浸透させたり出来るもんね」


「金もあるしね。金と言えば神戸がイニエスタを獲得したのもなかなかの快挙。ポドルスキもいるし、選手は立派よね」


「後は結果が伴えばね」


「結局選手の実力の総和でチーム力が決まるものじゃないし、いい選手だけじゃなくてそれ以外の選手や首脳陣、フロントまで含めた総合力がないと優勝なんて覚束ないわ。もちろんそれはサッカーに限らない話で、カープやサンフレッチェもこれから問われるのはまさにその部分よ。それにつけても神戸はね、いいところだったわ。サッカーの内容は大した事なかったけど、これから頑張ってくれるといいなって思うわ。また、行きたいわね」


「ふっ、そうだね。それでそんな神戸を率いた事もある日本代表の西野新監督が発表したメンバーに青山が選ばれたと思ったら負傷で離脱」


「大山鳴動して鼠一匹どころか……。まあ、いいんだけどね、と言うにはいささか強がりが過ぎるか。率直に言うととっても残念。だけどこうなった以上はもう仕方ないわ。それもまた運命だったと諦めるしかない」


「残念だねえ。サンフレッチェ関連だと浅野がまだいて、それと槙野もか」


「離れた人達はねえ。とにかく、今回は監督のゴタゴタもあった中でどこまでやれるかが見もの。今大会は本田や香川、長友に岡崎らのラストダンスとなる公算が高いからそれをじっくり見物するとしましょう。入れ込みすぎず、他人事のように見たほうがむしろ楽しめるってものだし」


 このような事を語っていると敵襲を告げる合図が輝いたので、二人はすぐに戦闘モードに移行して敵が出現したポイントへと走った。


「ふはははは、俺はグラげ軍攻撃部隊のシーボルトミミズ男だ! 我らの邪魔をするやつはどいつだ!」


 緑に覆われた山の中、メタリックなブルー、あるいは紺色、もしくは紫色のとにかく濃い色をした太くて長いミミズの仲間の姿を模した侵略者が出現した。釣りの餌にも使われるようだが、まさしくこの男の出現に釣られて出現した者が二人いた。


「出たなグラゲ軍! お前達の思い通りにはさせないぞ!」


「いい加減諦めてくれればいいものを、法律違反よ」


「グラゲの法に反したお前達を殺してもそれは罪ではなく正義の遂行にほかならぬ。さあ行け、雑兵ども! 悪を誅せ!」


 大量に出現した雑兵たちを渡海雄と悠宇は冷静さを失わずに次々と撃破していった。そしてついに残る敵はただ一人だけとなった。


「よし、これで雑兵は全部片付いた。後はお前だけだなシーボルトミミズ男!」


「自分の正義が全てだと思い込むのは危険よ。目を開いて真実を見つめて!」


「悪逆に耳を貸す俺ではないわ。正義は最後に必ず勝利するのだからな!」


 そう言うとシーボルトミミズ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。どうも話が通じる相手ではなさそうだ。悲しいが戦わねばならない。二人は覚悟を決めて合体し、それに対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 巨体と巨体のぶつかり合い。シーボルトミミズロボットは独特のうねるような動きで柔軟に攻撃を回避したが、持ち前の反射神経を発揮した悠宇が徐々に対応していき、ついに打撃を浴びせて動きを止めた。


「よし、今よとみお君!」


「うん。フィンガーレーザーカッターで勝負だ!」


 一瞬の隙を逃さず、渡海雄は群青色のボタンを押した。両手の指先から発された十本の熱線が交差して、敵の細長い身体を細切れにした。


「ぐううっ、さすがに悪の抵抗は激しい。また来るぞ!」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置でシーボルトミミズ男は宇宙へと帰っていった。一体誰があえて戦いたいと願うだろうか。しかしこうして野心を抱く侵略者が訪れる限り、二人に安息の日は訪れない。

今回のまとめ

・連覇までしちゃったよ鶴竜今年になって本当に安定してる

・カープはどうして首位独走しているのかよく分からない

・サンフレッチェはこれからチームの総合力が問われる段階でどう戦うか

・イニエスタとポドルスキが神戸みたいなチームにいる異常を生で味わいたい

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