ng10 2018新春記念 サンフレッチェ大型補強について
あけましておめでとうございます。今年はよりアグレッシブかつフレキシブルにやっていきたいと思いますので、引き続きご愛顧のほどよろしくお願いします。
本作のスタートが二〇一三年の七夕なので、今年で五周年となる。しかし決して長いとは思わない。例えばスポーツチームの応援ブログとか好きな歌手のファンサイトを十年以上続けてる人はそれこそ星の数ほどいるわけだし、これもそういう風に続いていけばいいなと願っている。
「という訳で今年もよろしくね、ゆうちゃん」
「こっちこそよろしくね、とみお君。ところで去年中途半端に止まってる話もあるけどそれはまた今度って事で、いつも通りにやっていきましょうか」
「うん、そうだね。しかし去年のシーズンが終わってからここまでのカープとか、正直語りようがないんじゃない?」
「うーん、そこよねえ。ドラフトにしても数年後どうなるかってもので今年どうこうじゃないしねえ。補強関連にしてもFAは言わずもがなとして、トレードや戦力外選手の獲得すらもなし。唯一外国人投手としてベネズエラ人のカンポスを獲得したぐらいだし」
「この投手はどうなんだろうね。せめて左ならと思ったけどやっぱり右みたいだし」
「リリーフタイプで、はまると面白いんじゃない? ただまずは外国人枠争いがあるからね。まず去年いた外国人だとジョンソン、ジャクソン、エルドレッド、バティスタ、メヒアが残留」
「まあ残るべき人達が残ってるね。ただ他の四人は一斉に残留決定と出たけどジャクソンは契約までちょっと時間かかったよね」
「他四人は既に複数年契約だったけどジャクソンはそうじゃなかったみたいだから。それとメジャーリーグの球団が興味を持っているみたいな記事もあったし、その辺で交渉が色々あったんじゃない」
「巨人のマイコラスなんかそれで帰っていったもんね」
「カンポスは敗戦処理止まりだったブレイシア枠なのか、それとも一年目のヘーゲンズレベルでやれるか。元々今年はアメリカの球団にマイナー枠で入団が決まってたところをカープが獲得したって話だし、実力はあると信じたいけどね」
「まあ頑張ってくれるといいよね。結局補強ではなく現有戦力の維持や成長に期待ってなるのかな」
「まあいつもの事よ。一昨年の戦力から黒田が抜けてジョンソンとヘーゲンズは戦力としていまいちだったけど、先発だと薮田が伸びてきたり大瀬良が規定到達したり中村祐太が一定の活躍を見せたり。リリーフだと一岡の本格化や中田の復活などで終わってみればなかなかの投手陣を形成してくれた。だから今年もそうなるといいわね」
「出てきそうなのは誰になるかな?」
「若手だと去年優勝後に一軍デビューを果たした藤井と育成枠出身から力を伸ばしてきた辻空かしらね。リリーフってどうしても使い捨てみたいなところがあるし、いつまでもいると思うな中崎今村ジャクソンってところに新風を吹かせる存在となってくれれば。それと加藤も、一試合だけノーノー寸前まで行ってポテンシャルはありそうなところを見せたから期待してるわ」
「でもあの試合以外はあまり冴えなかったよね」
「態度なんかもあって叩かれがちだけど、所詮は大卒一年目。これからの選手よ。そりゃあ五年ぐらい経っても今のままなら勘弁してくださいってなるけどね」
「福井とかその辺の事?」
「ああ、福井ねえ。同じタイプでもっと若くて力ある人がいっぱい入ってきて、どうするのか。左の戸田も期待が薄まりゆく選手だけど、今年が最後のチャンスってぐらいの気迫でファイトしてくれれば。ローテーションは六人。決して隙がないわけじゃないんだから」
「左で言うと二年目の高橋昂也とかどうかな?」
「今の一軍に足りない左の先発だし、去年終盤のピッチングを見ると早い段階での台頭を期待したくもなるけど、まだ二軍でやる事は多いと思うの。一年間投げきるとかね。だから去年の藤井みたいに消化試合で一軍初体験とか、それぐらいのペースでいいでしょう」
「野手では、やっぱり坂倉かな」
「うん、期待しないはずがないわ。あの成績はおかしい。ただキャッチャーというポジションの特異性もあるから、どこが正しい立ち位置なのか難しいわね。一軍は會澤にベテランの石原、三番手として磯村もいる」
「でも二軍には今年から中村奨成がいる」
「そこよ、そこ。贅沢な悩みといえるけど、最終的にどういう形にするのか、チームの舵取りは難しそうよね。まあどっちかが野手コンバートが一番すっきりするとは思うけど、それが判明するのはもう数年後でしょうし」
「でも安易に野手コンバートとか言っても別に枠があるわけでもなく、結局は茨の道だよね」
「スタメン数年安泰レベルがゴロゴロいるからね。内野だと菊池と田中に加えて安部も規定到達して、現時点でさえ西川があぶれる事態に陥ってるし。ファーストだって新井やエルドレッドがいる。まあ高齢だけどね、ただこの枠は若い日本人が専業となるんじゃなくてベテランや外国人でいいし」
「外野もMVPに輝いた丸と、怪我さえなければその栄冠は彼のものであった可能性も高かった鈴木誠也は盤石だし、松山とかバティスタとか強烈なのはいっぱいいる」
「まあこう見ると数年は問題なしってところよね。はっきり言って図抜けている」
「それで、順位はどうなるかな? 連覇したからには三連覇って」
「なるといいわね。その力はある。ただ若手が伸びてきている阪神やDeNAに近い将来覇権を奪われるのは、残念だけどいつかはそうなるはず。それが今年になるか数年後かは知らないけどね」
「巨人は」
「ホームラン王のゲレーロやFAで獲得した野上だっていい選手だけどね、優勝に導く使者を期待するのは酷。スタメンやエースのみで戦うものではないから、そういう選手が増えたところでまだ層が薄いように見えるわ。裏金時代は優秀選手を上から下まで囲い込んでたけど、やり過ぎた結果自家中毒で制度廃止だから世話ないわ」
「今の時代にモノを言うのは育成力だもんね」
「カープは最初から金がなかったし、ずっと育成メインでやってきたから現状は望むところ。裏金で強くなったソフトバンクはそこを上手く転換して金もある育成力もあるという非常に力強いチームとなった。巨人は、当然ソフトバンクを目指すのが良いでしょうけど、あそこまでなりきれていない」
「転換期って奴なんだね。中日とヤクルトは、やっぱりきついかな?」
「まあ、ねえ。ヤクルトとか百敗さえ見えてくるような大負けだったし、実際特に夏場以降は当然の権利であるかのように負けまくってたじゃない。小川監督復帰も新味ないし、あれを短期間で持ち直せるとはちょっと考えにくいわ」
「そうだね。中日のBクラスも長くなってるけど」
「まだ小粒。悪くない選手はいるんだけどね、もう二段階ぐらい強くなれば面白いかな。とまあ、カープはこんなところで次はサンフレッチェよ。ちょうど天皇杯もキックオフだしね」
「そうだね。これ見ながら喋ろうかって、何このアニメ」
「目が見えない人のサッカーって事で、原作はキャプテン翼の高橋陽一。製作が去年とは思えない雰囲気が独特の味となっているわね。で、サンフレッチェだけど、去年は酷かったわね」
「うん。ギリギリ残留だけは果たしたけど本当にギリギリだったし、今年もあんな感じだと正直きついな。実際どうなの?」
「今年どうなるかは分からないけど、ただ今オフここまでかなり精力的に動いていて、しかもなかなかの成果を上げているわ。ここまでは合格どころかそれ以上」
「タイ人とか獲ったよね」
「札幌にチャナティップという極めて小柄だけどアジリティ抜群の選手がなかなかの活躍を見せた事で一気に注目度が高まったタイ人選手だけど、その中でも国民的英雄と称されているらしいストライカーがティーラシンよ。身長も普通にあって万能タイプらしく、どれほどやれるか大いに期待したいわね。日本人は徳島から渡大生と馬渡和彰、そして大宮から和田拓也を獲得した」
「これはそれぞれどういう選手なの?」
「まず馬渡と和田は去年足りていなかったサイドバックの選手よ。特に馬渡はJ3から移籍を繰り返してここまで登り詰めた野心の男で、変な事で有名になったけど実力は大いに評価されているわ。J2のサイドで言うと争奪戦の末に鹿島移籍が決まったヴェルディの安西に勝るとも劣らないって評価だったし」
「ふーん、それは期待出来そうだね」
「そして渡はJ2屈指の点取り屋で、札幌や仙台との争奪戦を制しての獲得だったと言うわ。去年は期待された工藤が存外働かず、控えも人材がなかったため慌てて外国人補強連発したけど、今年はその反省が生かされているみたい。高さとパワーという決定的な個性があるパトリックも残留してくれたしね」
「外国人はどうなるのかな。ティーラシンとパトリックと」
「まず途中加入から試合出場ゼロだったバーンズは退団確定。ロペスもいなくなるらしい。ついでに去年はFC東京にいたウタカもね。フェリペは三年契約って話だから残るでしょ。去年終盤の動きが出来るようなら十分戦力だし、日本に慣れたならより素晴らしいプレーを見せてくれるものと信じたいわ」
「となると三人は確定かな」
「でもティーラシンは提携国枠とかで普通の枠とは別だし、つまりまだ余裕ありって事よね。開幕までにその枠を使う可能性は決して低くないはず」
「選手移籍に関してはまだまだ道半ばだもんね」
「他のチームなんかも全然決まってなかったりするしね。それと選手の動向で言うと期限付き移籍選手の復帰もあったわ」
「川辺が戻ってくるんだよね」
「それと京都で試合経験を積んだ吉野もね。特に磐田に三年も貸し出した川辺は即戦力としていきなりチームを掌握するぐらいの大活躍してくれるといいわね。一方で野津田や宮原、そして増田は残った。それぞれ仙台、名古屋、長崎という現実的に考えて残留争いとなった時直接的にバッティングしそうなチームにいるのがいささか不安だけど。一方で茶島と皆川はJ2に期限付き移籍となり、丸谷は大分に完全移籍とチームを離れる選手も」
「それなりに出番あった印象ある選手たちがいなくなるんだね。あっマリノス先制」
「まだ始まったばかりだけどいきなり動いたか。で、退団組は本来チームの中心としてやってくれなきゃいけなかった年齢の人達だけど、試合に出た事で大体底も見えたわけだから概ね妥当と言えるでしょう。皆川みたいなタイプの選手は不可欠だけど去年の皆川はそうでもなかった。マッチングってのもあるし、ふさわしい舞台で力を発揮するならそれが選手にとって一番幸いよ」
「頑張ってくれるといいよね」
「そうね。それと一番苦しいところに加わって頑張ってくれた椋原も岡山へ移籍。実力的に特別秀でていたってわけじゃないけど時期が時期だけに印象の良い選手だった。他は、新加入はユース選手だし、大体こんなところかな。いえ、一番の変化を忘れてたわ。監督よ、監督」
「城福浩だっけ」
「決まったものは決まったから仕方ないわ。モットーは人もボールも動かし、そしてやってる選手たちや見てる観客の心をも動かすムービングフットボール。緻密な理論をベースにした情熱的な語り口から一部では熱狂的な支持者を生み出す一方、理想に現実の指導力が追いついていないとも評される男よ」
「それ、大丈夫なの?」
「監督のキャリアとしてはまず年代別代表の指揮官として名を売った後にFC東京の監督となり、カップ戦のタイトルを獲得したものの二〇一〇年には降格に導いてシーズン途中解任。その後、甲府では予算の制約を受ける環境の中で現実的サッカーに徹して残留を続けた事で評価を持ち直したの。東京時代は理想にこだわりすぎたけど、その失敗から学んでリアリストとして目覚めたとね」
「ふうん、それなら……」
「でも再びFC東京の監督就任した二〇一六年にはまた実現不能な理想にこだわった結果、失敗して途中解任。しかも前年チームを躍進させた外国人監督をわざわざ切ってまで迎え入れたのにこの体たらくだからね。そこも絶望的な状況から残留に導いたヨンソンを退任させたのとやや被るし、何のわだかまりもなく受け入れられる心理じゃないのは正直なところよ」
「ヨンソンは結局清水の監督になったね」
「清水だってギリギリ残留だったし、その中で実績を残した指揮官が目の前に転がっていたんだから群がるのは当然よ。プロだしね。とにかくサンフレッチェ、今年のフロントはよく働いて良さそうな素材をたくさん集められました。では城福シェフがいかに料理するか。全てはそこにかかっているわ」
「吉と出るか凶と出るか。でも去年工藤獲得した時も結構興奮したけどご覧の通りだったし、どうなるかなんて分からないよね」
「そもそもまだコーチ陣すら固まってないしね。とりあえず森保時代はもう過去のものとなったのだから、今までにない新しい何かがないと浮上はないでしょう。それこそ今までレギュラー安泰だったベテランのポジションがなくなるぐらいの何かが」
「とは言えベテランがスタメンにいるのはそれ相応の力があるからだしね。青山や柴崎、千葉もそうだし去年苦労したGKなんかも。そりゃあいつまでも頼りきりじゃ駄目だし、衰えが見られる部分もあるけど」
「まあ所詮は去年十五位のチーム。課題が多くて当然よ。その中で新加入選手がどれだけやれるか、若手の台頭はあるか、新監督の采配はどうか。様々な観点から楽しめるシーズンとなるはず。まず最初の目標は残留を決める事。全てはそこからよ」
「そうだね。おお、天皇杯セレッソ優勝か」
「永大に勝った時以来なんだってね。でもサンフレッチェが天皇杯優勝したらこれ以上のインターバルとなるわけだし、また来年そういう光景が見られたら最高じゃない」
「期待したいね。それじゃ、もうこんな日が沈んできてるから」
「うん、じゃあね。今年もきっといい年にしましょうね」
斜めに差す青紫の光を右手に受けて、二人は離れていった。日中はあんなに朗らかな陽光を放っていたのに一度落ちてみるとあっという間に厳しい表情になる。二〇一八年はこうやって始まった。
今回のまとめ
・愛の泉か寿命が尽きぬ限り書き続けられると思う
・カープは現有戦力を削りながらどこまで行けるだろうか
・三連覇は難しいだろうが他と比較するとまんざら不可能でもなかろう
・サンフレッチェの補強はかなり満足だが監督が使いこなせるか