vm17 サンフレッチェJ1残留について
師走の声を聞いた途端にJリーグが閉幕した。優勝は川崎フロンターレ。一時期は鹿島が大きくリードしていたが終盤に伸び切れず、最終戦は磐田相手に勝ち切れず。そして川崎は大宮に五点叩き込んで鮮やかま逆転優勝を決めた。
ついに、ようやくと言うべきだろう。今まで長らく優勝の機会はあったが悔し涙ばかりを繰り返してきた。しかしついに扉を力強く開いた。おめでとうございます。
「いやあ、川崎だったねえ」
「そうね。今年もルヴァンカップ決勝でセレッソ相手に敗れるなど相変わらずかと思われたけどリーグ戦は最後までよく戦って、そしてついに得たタイトル。富士通が日本リーグ一部昇格してから雌伏四十年、川崎フロンターレと名前を変えてからも二十年。まさしく待ちに待った待望の瞬間だけに喜びもまたひとしおでしょうね」
「一方で鹿島は勝ちきれなかったね。最終戦もチャンスはいっぱいあったのに決めきれない」
「駄目な時ってそんなもの。二〇一三年もマリノスが優勝だと思ったのに最後の最後で伸び切れずに、ついには自らこぼしてしまった。実力とかじゃなくてもっと大きな流れと言うか重力と言うか、そういう力に引かれるかのように決まってしまう。今回の鹿島も大体そんな感じで、やっぱり画竜点睛、最後に決めるのって本当に難しい事なんだなって改めて思ったわ」
「しかしそのサンフレッチェ、今年は何とも厳しいシーズンとなったね。前節でどうにか残留を決めてくれたから昨日は安心して見ていられたけど」
「まあ残留出来ただけ御の字でしょう。今年はそこが一番恐ろしかったし、逆に『J2なら今年より多く勝てるし』と変な覚悟を決めた瞬間もあったけど、とにかく最後にどうにか体裁を整えてくれて良かったわ」
「結局、何が悪かったの?」
「まず選手が働かなかった。これが一番でしょう。優勝メンバーは年齢も上がって、元々怪我だの病気でボロボロな森崎は当然として千葉や水本があっさり振り切られたり、青山もおかしかった。そしてミキッチは退団決定」
「九年間もいたわけだから、これもまたひとつの大きな変革だよね」
「スピードのあるドリブル突破はサンフレッチェの武器となっていたけど、今年は前線に外国人多くて枠の問題もあったし、年齢的にもね。しかしこれが引退ではないので、故郷へ帰るのか日本の他のチームに行くのかは知らないけど、幸あれと願わずにはいられないわ」
「でも今の髭面は怪しげだね」
「宗教の人か、捕まった時のサダム・フセインみたいだけど、別に犯罪を犯したわけでもないしそこはいいでしょ。とにかく時は平等に流れ、かつての主力は年を取っていくのだから新たな血を加える必要はあった。しかしそれに失敗した。やはりこれが一番よね」
「工藤とか、残念ながら失敗と言わざるを得ないよね」
「獲得が決まった時は沸いたけどね、それだけに現状は寒いわ。チーム力の弱体化もあってそのポテンシャルを引き出すには至らなかったのか、この年齢にしてもう力が衰えているのか。怪我なんかもあったしね」
「まだ契約はあるから残るんだろうけど、来年以降も今年のペースだったらそれこそ大損だね」
「ただ外から招いて失敗した、だから内向きでポソポソ集めようってやり方はどうしても限界が来るものだから。実際皆川とか丸谷は一切希望のないプレーに終始して、彼らを使っていた時はチームも希望のない敗戦を繰り返していたわ。カープがCSで負けたのもそこよ。日本シリーズの第六戦、敗色濃厚だったソフトバンクがだったけど起死回生の同点ホームランを放ったのはFAで加入した内川、延長戦でDeNAをゼロに抑え続けたのが金で強奪したサファテ、そしてサヨナラヒットはトレードで獲得した川島だった。これをどう考えるかよ」
「それにソフトバンクは育成もしっかりしてるもんね」
「育成枠出身の甲斐が台頭する一方でドラフト一位の山下斐紹がトレードされたあたりも象徴的じゃないかしら。育成って、期待された才能がそのまんま伸びるとは限らない。下手な鉄砲を自覚して数を打つ謙虚さと数を揃えられる金の両輪がよく回っているからこそ、次々と戦力が出てくるもの。チームを強くする手段として金で頬を張るのは汚くて育成は綺麗とかそういうもんじゃないし、もちろん金がいくらでもあるわけじゃないからFAや強奪は簡単にはいかないけど、せめてトレードぐらいは活用して今と違うものを加えていかないと」
「でもトレードで取った人は駄目で放出した人が活躍とかなったら、ちょっと悔しいよね」
「実際過去においても長年の主力を放出して実績持ち獲得したけどさっぱり働かずとかそういう失敗はあって、叩かれた事もあったわ。今のやり方で連覇を果たしたのは非常に意義深いものだけど、それが唯一にして最良の方法であるわけでもないし。で、サンフレッチェだけどね、工藤が駄目だった理由を精査して、今後はより精度を高めた補強をするなら今年の失敗も意味を持つ。転んでもただでは起きない姿勢が大事」
「今年の新加入選手で言うと、フェリペとか稲垣は一時期駄目だったけど最後のほうでようやく持ち味を発揮するようになったよね」
「チームとして彼らの使い方が分かったんでしょうね。稲垣は特に序盤はミスが目立ったけど、一気に残留を手繰り寄せた神戸とFC東京戦でゴールを決めるというインパクトある活躍を見せた。そしてフェリペも持ち前のテクニックを活用出来るようになってなるほど彼がと言える程度には頑張ってくれている。半年先に加入したのに未だに異物感漂うアンデルソン・ロペスと違って来年はもっと良くなるだろうとポジティブに思える存在よ」
「アンデルソン・ロペスはどうなるんだろうね。そうは言ってもチーム最多得点だし」
「そこが難しいところよね。一応今年までの期限付き移籍だけど、現状や今後の見込み、それに新外国人のリスクとリターンなどを総合的に判断してどう結論付けるか。個人的には契約延長不要と見るけど、代わりの目処が立たないのに放出するようだと危険な賭けにもなりうる。前線で言うとパトリックが頑張ってくれたけど、怪我もあって稼働率がどれほどのものか。特徴がはっきりしてる選手だし動けたら確実に戦力だけど、主軸確定と思い込むのはリスキーかも」
「パトリックはやれる事は概ねやってくれた印象だよね。丹羽と椋原もそうだけど」
「長年スリーバックやってきたからサイドバックの人材がなく、その構造的弱点を埋めてくれたわね。その場しのぎだけど、とりあえずしのげたから大成功よ。他は、中林は林が怪我した時に出たけどつまらないミスも目立ち、正GKのありがたみを思い知らされたわ。バーンズ? 知らない」
「そういえば今年は若手を中心に山ほど期限付き移籍で出したけど、彼らは戻ってくるのかな?」
「選手としては磐田でチームの要となった川辺を筆頭に昇格を決めた長崎の守護神となった増田、名古屋でサイドバックやってる宮原などポジション的にも実力的にも魅力的だから、素人目には是非回収してほしいものだけどね。というかこんな戦力を分散したハンデ戦でよく残留出来たものよ。逆に金銭や年齢の問題があるウタカや、監督交代してから移籍した清水なんかはお別れじゃないかなと思うけど。清水は森保監督時代はセンターバックで使われたりしてたけど、その蜜月も終わった今となっては居場所があればそこが都だから」
「監督はヨンソン続投だよね?」
「そう、願いたいけどね。現状はまだ確定の声を聞かない。今年の選手は森保監督のために集めたけどいまいち機能せぬまま森保退任となり、途中から呼ばれたヨンソンはそれを上手くやりくりして残留という最大の任務を果たした。なら来年はヨンソン好みの材料を用意するのが強化部の役目でしょう、普通に考えると」
「監督退任となればまた一からとなるし、それは勘弁してほしいけどね」
「そうよねえ。今年だって一歩間違えたら今頃沈鬱な顔で語ってたでしょうし、そもそも勝ち点を見ると例年なら降格やむなしの数字だしね。どう言い繕おうが今年は失敗した。これはもうはっきりしている。しかし最悪の結果だけは免れたのもまた事実。幸運にも機会は与えられたから、それをどう活かすか。まあギリギリ残留って大体巻き返せず早ければ翌年にも陥落するケースも多いんだけどね」
「そうならない事を祈るしかないね。それで今年降格したのは新潟と大宮、そして甲府だったね」
「終わってみると何となくそんな感じのする面子になったわね。サプライズがないのがサプライズと言うか。新潟とか十数年粘ってきたけどここ三年ほどは厳しかったし、両シルバ退団で選手からしてきつかった。得点力不足で沈んだ甲府もそうだけど、クラブの限界が露呈したかなと。ただ最後に意地は見せたし、またすぐにでも上がってくるかもね。逆に大宮は金はあるけどそれ以外はなくて、終わってみたら最下位降格。根本をどうにかしないとね」
「そして昇格は相変わらず下では強い湘南と経営危機から一転して初昇格を決めた長崎。そしてもうひとつは今プレーオフやってるね」
「湘南はもうスタイルが確立してるし、長崎も複数回プレーオフ出場経験があるし。ともに監督が長期政権で、目指す方向性が分かっているのは良いところよね。ただ長崎、シーズン序盤はフロントのゴタゴタでクラブの存続自体が危ういレベルだったけど災い転じてよね。昇格は出来過ぎにせよ、今年ようやく安定した基盤を手に入れたんだからそこを軸にどう発展していくかに注目よ」
「大変だろうけど頑張ってほしいよね。そして群馬が降格して栃木復帰」
「群馬もフロントにもやもやを抱えていたところだし、下手に残るよりは良かったんじゃないの。他だと、ワールドカップの組み合わせが決まったわね」
「ああ、またコロンビア。それにポーランドとセネガル。どうなんだろうね」
「ここまで予選を勝ち抜いたチームが弱いはずがないのは言うまでもないわ。でもワールドカップで勝ち抜くのが目標なら当然勝たねばならぬ相手。まあ、しっかり準備してくれるといいわ」
「しかしさすがロシア、国土が広くてヨーロッパの飛び地でやったかと思えばほとんどモンゴルとか中央アジアみたいな場所でもやるみたいだし、移動大変そうだよね」
「コンディション調整も大事よね。前回大会は大企業の縁故でキャンプ地を決めたのがマイナスだったとか言われてるけど、今回はどうか。それとモンゴルと言うと大相撲の暴力問題が騒がれてるけど、昔なら事実を全力で隠蔽しての大本営発表でも良かったんでしょうけどね。貴ノ岩の態度が悪くて日馬富士はちょっと指導をしただけとか、例えそうだとしても現代社会では超えてはならない一線を超えてしまった」
「この件に関してはまだまだ解明まで時間かかりそうだね。報道で言われてる事が日に日に変わってたりするし」
「そりゃあ警察にお任せするのが一番よね。力士としての日馬富士は小柄ながらも鋭い動きで、負ける時はあっさり負けるけど勝つ時は見事に勝つ面白い横綱だったわ。それがこういう形で引退となり、鶴竜と稀勢の里は既に晩年の数字で来年の今頃もまだ現役でいられるかどうか。白鵬だって年齢的に先は長くないはず。ならば若手が頑張っていかないとね」
「世代交代か。ここが正念場だね」
このような事を語っていると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので、二人はすぐ戦闘服に着替えて敵が出現したポイントへと急いだ。
「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のクサガメ女だ! この汚れた星を正しい方向へと導くのだ」
人の少ない川沿いの道に出現したのは、これの幼体はゼニガメと呼ばれ親しまれている亀の姿を模した侵略者であった。しかもクサガメ、草ではなく悪臭を発するので臭亀がその名の由来と言う。確かに地球にとっての悪臭となる存在をのさばらせてはいけない。それを阻止する力はすぐに現れた。
「出たなグラゲ軍! お前たちの思い通りにはさせないぞ!」
「冬だというのにノコノコと出てきて。眠っていればいいものを」
「ふん、永遠の眠りにつくのはお前たちのほうだ。行け、雑兵ども!」
ぞろぞろと出てきた雑兵たちを渡海雄と悠宇は次々と潰していき、最後に残ったのはボス一人だけとなった。
「よし、雑兵は片付いたし後はお前だけだなクサガメ女!」
「これ以上戦ってもお互いの利益にならないわ。今からでも帰ってくれませんか」
「銭勘定で戦っているのではないのだよ。これは正義を示す戦いなのだからな!」
そう言うとクサガメ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。向こうに正義があるのと同じく自分たちにも譲れないものがある。渡海雄と悠宇はそんな覚悟で合体して、これに対抗した。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
強靭な甲羅を盾に攻めてくる攻撃を悠宇は上手くいなしつつ、どうにかひっくり返した。やはり形状的にも素早い動きとはいかないようであった。
「ならば今がチャンスよ、とみお君!」
「うん。メルティングフィストで貫くぞ!」
渡海雄はすかさず朱色のボタンを押した。プラズマのパワーによってヒートした右拳が敵の甲羅を溶かしてポッカリと穴を開けた。
「くっ、ここは一時的に撤退するしかあるまい」
機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってクサガメ女は宇宙へと帰っていった。そして最後の昇格チームを決めるプレーオフの勝者は名古屋であった。なんだかんだで収まるところに収まったと言えるか。
そしてサンフレッチェ激震について。上で色々語った翌日にはヨンソン退任、その次の日には後任に城福有力という報道がなされた。成功率一割未満の手術に成功したと思ったら転移が発覚したみたいな衝撃だ。
城福は甲府を残留させ続けた実績あるリアリストとFC東京を崩壊させた無能なロマンチスト、二つの顔があると言う。つまりはリミットも見えているという事で、それならヨンソンの作るチームを見てみたかった。
この国に法律がある以上、フロントがどれだけ信じ難い行動に出ても実力行使で止める術はない。出来るのはせいぜい文句を言う程度だが、まだ結果も出てないのにあれこれ言うのも趣味じゃないのでしばらくは見守ろうと思う。期限付き移籍連発と同じく案の定失敗でしたとなるにしてもそれまでは。
結局フロントを信じるしかないのだからこそ、フロントは信じるに足る言動を心がけてくれると嬉しいのだが。ヨンソン監督は英雄として広島を去るが、もし翌年泥に塗れたとしても今年の輝きは色褪せぬものであったろう。とりあえずありがとうございました。
今回のまとめ
・川崎優勝おめでとうございます正直出来るとは思ってなかった
・サンフレッチェは残留出来ただけで儲けもの
・抜本的改革がなされない限り近い将来の降格不可避か
・大相撲の件に関しては結局何が本当なのかを見極めるのが大変だ