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rm26 交流戦望外の好成績について

 ようやく昨日は雨で梅雨を体感したが今日はまた晴れ間が広がった。傘よりも合羽よりも今は帽子のほうが必要かも知れない、という事で渡海雄は新しい帽子を買ってもらった。水色のカウボーイハットみたいなつばの広い紐付きの帽子だった。


「へへへっ、似合う?」


「ええ、とっても。ところで交流戦が終わって今日からまた通常のリーグ戦に戻るわね」


「そうだね。今年の交流戦は、結構よく勝てたよね」


「そこは非常に良かったわ。規定によって交流戦勝率一位ではないって事になっているけど数字的には一位だし、ここまで順調に行くとは思わなかったわ」


「交流戦、最初の相手は西武だったね。ここは上手く勝てたように見えたけどその後かなり持ち直してて、タイミング良かったのかな?」


「メヒアや中村と言ったパワフルなバッターがあんまり良くなかったけど後に復調して、それと去年の盗塁王金子もカープ戦の途中からようやく復帰で下位打線が弱い時に当たれたのは幸いだったわね。それと先発も、エースの菊池はローテーションの関係で回ってこなかった上に変則リリーフタイプのガルセスとかいうのを出してきたり」


「一戦目の野上は良かったけど薮田が好投見せたのも大きかったよね。しかし交流戦の薮田はエースだったねえ」


「オリックス戦で金子に投げ勝つとか実にショッキングな展開だったわ。先発に関してはようやくジョンソンも復帰したし、薮田や中村祐太といった実績の少ない選手も奮闘してくれたわ」


「とは言うもののジョンソンはまだベストコンディションじゃないみたいだよね」


「球速なんか見ても、本来の実力を披露するにはもうちょっと時間がかかりそうよね。まさに復帰の途中。でも左の先発が一人いるだけでも流れは良くなってくるものよ。ついでに二軍では戸田も好投してるとか。去年のありえないタイミングでの離脱もあって信用はしてないけど」


「先発候補が今のところまだ余っていると言うか、埋蔵量に余裕あるのは幸いだね。一方でリリーフ系の二軍成績だと、佐藤とか今井が健闘してるね」


「だからこそ一軍にも呼ばれたわけだしね。今井は一応登板機会を得たものの佐藤は何もなしで、所詮はその程度の枠なわけだけど。それにしても永川の数字が寂しいわね。燃え尽きたような数字で引退もありそう。ついでに梵なんか数字は悪くないのに出番が少なくて東出栗原とか廣瀬と同じルートかしら。本人にやる気があるならトレードとかも、と思ったけどそれならオフに済ませてたか。で、話を戻すけど西武戦を勝ち越したカープは次にロッテと対戦したけど、ここも勝ち越し。一番印象的だったのは育成枠から昇格したドミニカ人バティスタだったわね」


「いきなり昇格して代打で使われたと思ったらホームラン。次の試合も代打でホームランという衝撃的なデビューだったね。今はかなり数字落ち着いたけど」


「起爆剤としては申し分ない存在だったわ。しかも六年契約らしいし、長い目で育成していけばいい事よ。二軍にはもう一人、メヒアというハイアベレージを記録しているドミニカ人もいるし、彼らの成長によってはベテランの新井やエルドレッドの枠がシームレスに埋まるかもね。清宮とかじゃなくても」


「ロッテの次は北海道に渡って日本ハム戦。ここでもバティスタの爆発なんかもあって三連勝したね」


「日本ハムは大谷がいないし四割打ってた近藤も怪我でほとんど出番なかったりと満身創痍だったわね。今年は低迷しているけど、なるほど先発陣も含めて全力には程遠かった印象だったわ。あれが真の実力とはまったく思っていないし、それもタイミングよね」


「そして今年パリーグ首位の楽天相手には負け越し」


「まあ、これもね。投手陣はよく頑張ったけどそれ以上に美馬とか抜群だったし、もうちょっと打てればとは思いつつ終わってみると仕方なかったかなってところ。この時点でかなり勝ち越していたという余裕もあったし、そんなにカリカリせずに見られたわ」


「この時点だと巨人とヤクルトがとんでもない大負けしてたよね」


「恐ろしい話よ。ヤクルトは主力に怪我人続出というある意味いつもの低迷パターンだけど、巨人は一時期やる事なす事全部裏目に出るような逆確変状態に突入してた感じで」


「菅野がちょくちょく炎上したり、外国人枠の運用もリリーフのカミネロを落として内野手のクルーズを上げたところリリーフが弱くなって逃げ切りに失敗とか」


「しかしその巨人とヤクルトも交流戦の終盤では復調したし、今後は楽じゃないでしょうね。外国人枠の使い方に関してはカープも今後問題となる可能性もあるし、対岸の火事で済ませていい問題じゃないわ。今は投手のジョンソンにジャクソン、そして野手のエルドレッドとバティスタだけど、バティスタを落として復調傾向と言われるヘーゲンズを上げるという手も考えられそう。ついでに二軍で猛烈な打棒を発揮している堂林もまた戻ってくるでしょうし」


「二軍の打撃成績だとバティスタとメヒアが飛び抜けてて、他には庄司も結構頑張ってる」


「庄司は守備位置が難しいわ。セカンドは菊池で、今は膝の状態なんかもあって代走や守備要員が必要とは言えレギュラーとしては厳しい。安部とか西川もいるし、いっそ打撃の粘り強さに磨きをかけて代打でも目指すか。とにかくこう見ていくとちょっと前までは未開のフロンティアが広がっていた野手も今ではかなり埋まったから、レギュラーじゃない選手は大変そうよね」


「外野も鈴木と丸は確定だしね。そう言えばオリックス戦は三連勝したけど、鈴木がサヨナラホームランという去年を思い出すような試合もあったね」


「そして丸は交流戦最後のソフトバンク戦で奮闘したし、まあこの二人ほど欠かせない戦力もないわ。という訳で終わってみれば十二勝六敗。阪神も勝ち越したとは言え少し差を広げる事に成功したし、とりあえず義務は果たせたわね」


「で、いきなりその阪神戦だけどどうなるものかな?」


「でもまだシーズンの半分ぐらいだし、例えばここで三連敗しようが別にそれで終わりでもないわけよ。まあライバルは今のうちに叩いてほしいって願望はあれどね」


「まだまだシーズンは長いものだね」


「そう。でも優勝争いしてたらそんな悠長な事も言えるけど、順位が低いとそんな呑気に構えてる場合じゃないだろって焦りも生じるものよね。具体的にはサンフレッチェの事なんだけど」


「サンフレッチェについてあれこれ言う時は笑えるもんじゃなく、今月もまた深刻な顔しないといけないねえ。しかし本当に厳しい。当たり前のように負け続けて、ついに十七位まで落ちた」


「降格フラグの一つとして広く知られているバーベキューも敢行したようだし、本格的に危険な匂いが漂っているわ。次の大宮戦どうにかしなきゃそれこそねえ。昨日の天皇杯でもJ3の鹿児島相手に先手を許す苦しい展開ながらもどうにか逆転勝利したけど、これが今の精一杯かしらね」


「正直負けるかと思ったよ。大学に敗れた仙台や福島県リーグに屈した札幌のように」


「でも札幌に勝ったいわきFCはアンダーアーマーがかなり金をかけて施設なんかを整えたクラブだし、今の位置を見ると全速力で前進してもまだ数年かかるけど、そういうやる気があるクラブが上がってくるなら歓迎すべきでしょう。だって『日本のフィジカルスタンダードを変える』よ。コンセプト」


「凄い気合だね。何でアンダーアーマーほどの企業がいわき市のよく分からないクラブに肩入れするのか不明だけど、頑張ってほしいよね。潤沢な資金でさ」


「どうせなら福島ユナイテッドを乗っ取るとかやってみたら、なんて言うとJの理念さんに怒られるから自重するわ。金と言えば、塩谷が中東に移籍したけど、キャリアや年齢を考えても仕方ない選択ではあったわね。長友が途中でイタリア移籍した年に苦戦していたFC東京が降格したのを彷彿とさせる海外移籍でサンフレッチェとしてのマイナスは計り知れないけど、早速ガンバ大阪に所属の丹羽にオファーを出したってニュースも入っている」


「丹羽ってどうなの? プレーを思い出そうとすると一昨年のチャンピオンシップ浦和戦で見せたあわやオウンゴールのバックパスしか出てこないや」


「ガンバでは別の選手が台頭してレギュラーは外れているけど、シーズン途中の低迷するチームがいきなりレギュラーを引き抜けるはずもないしこんなものでしょう。本格的に使える選手獲得するならシーズン前に済ませてるでしょうし」


「本当ならその必要はないってフロントは思ってたんだろうけどねえ。思えば今年の補強はほとんど成功してないよね。工藤も何となくパッとしないし」


「稲垣や中林もねえ。外国人に関しても、フェリペはちょっと上手いところを見せても全体的に弱いしアンデルソン・ロペスはそろそろ一年なのに未だに馴染む気配なし。個人の力量があっても覚醒を信じ続けるだけで良い段階でもないし、契約解除とかあらゆる可能性を排除すべきではないでしょうね」


「負けが込んでいるから当たり前だけど、森保監督への批判なんかも増えてるよね」


「三度優勝に導いたとは言え、それももはや過去の話。今どうかってなると、苦しんでいるわけだし。とにかく、夏には補強もあるでしょうし、それが最大にして最後のチャンスとなるでしょう」


「失敗は出来ないね」


「とか思ってたらパトリックを獲得するという情報が入ってきたわ。上手くはないけどパワー抜群というタイプで、その全盛期の実力はもはや説明するまでもないでしょう。ただ去年大怪我を負ったので、それがどれだけ戻っているかがポイント」


「スリリングだねえ。しかしこれで落ちたらどうするんだろう」


「サンフレッチェは二十一世紀に入ってから二度降格して、幸いにして二回とも一年で復帰を果たせた。されど三度目もそうなるとは誰も言えないわ」


「今年は名古屋なんかも苦戦してるね」


「現状のサッカーではJ2でも苦戦するのは目に見えているわ。それにしてもつくづく思うのは全ては繋がっているって事よね。今年苦戦しているのはなぜかというと選手の獲得や放出に問題があるというのはまず挙げられるでしょう。ではなぜそこに失敗したかとなると、強化部長が変わったからと言える。ではなぜ変わったかと言うと前任が社長になったから。じゃあなぜ社長になったかと言うと前の社長が辞めざるを得なかったから。ではなぜ辞める事になったか、とね」


「はて?」


「つまり心の問題よ。過去は変わらないけどそれを見据えて未来、歩む道を改める事は出来るはず。過ちを過ちと認める勇気を持たない過ちを犯してはならない。傲慢さを払い、謙虚な心で臨めるか。つまりはそこよ」


 サンフレッチェに関しては現状まともにやっても可能性は見いだせないので段々とスピリチュアルな方向へと傾きつつある悠宇であった。


 ともかくこのような事を語っていると敵襲を告げる光が瞬いたので、二人はすかさず人のいないところへと隠れてから変身して敵の出現したポイントへと急いだ。


「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のバテイラ女だ! この星を正しく巻き直してやるわ」


 にわかに雲が空を覆った海辺に出現したのは食用にもなる巻き貝の姿を模した軍隊の女であった。形が馬の蹄に似ているため漢字で書くと馬蹄螺となるらしい。しかしどのような姿形であっても地球人類にとって敵なのは同じだ。そしてその破壊活動を止めるべく、二人の勇士が現れた。


「また出たグラゲ軍! お前達の思い通りにはさせないぞ」


「こんなタイミングで来られても結局戦うしかないじゃない!」


「ふん。戦うために来たのだから戦うのは当然だろう。行け、雑兵ども! 手柄を上げるのだ!」


 次々と出現する機械の雑兵どもを渡海雄と悠宇は素早く撃破していった。そして残ったのは敵のボスのみとなった。


「よし、これで残るはお前だけだなバテイラ女!」


「あんまり食い物にしてるといずれ痛い目にあうものよ」


「いつまでその強がりを言っていられるかな。戦いはまだこれからだ!」


 そう言うとバテイラ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。戦いを終わらせるためには戦うしかない。覚悟を決めて二人は合体して、この暴力に対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 殻があって防御力の高い相手に半端なパンチやキックはそう通じるものではない。そこで悠宇は投げ技を用いてバランスを崩す事に専念した。そしてようやく相手を地面に倒した。


「さすがに粘り強い。でもようやくチャンスを作れたわ。とみお君!」


「うん! ゆうちゃんの作ったチャンスを逃さないぞ。エメラルドビームで勝負だ!」


 渡海雄はすかさず緑色のボタンを押した。瞳から放たれたエネルギーの炎がバテイラロボットを内部から焼き尽くした。


「くうっ、やる。ここまでのようだな」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってバテイラ女は宇宙へと帰っていった。もう戻ってこなければ良いのだが、おそらくそうはいかないだろう。キラリと輝いた六月の太陽が雲の切れ間からそっと顔をのぞかせた。

今回のまとめ

・交流戦は毎年これぐらいやれれば言うことなし

・三連勝は精神的に大変だから二勝一敗を繰り返していけば良い

・サンフレッチェは諸々の症状が完全に降格チームのそれ

・泥縄補強と言われようが這い上がるにはあがき続けるしかない

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