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ng08 2017年開始について

 そして訪れた新たなる時代、二〇一七年。まずは今年を無事に生きて迎えられた喜びを感謝したい。多少体調が悪いとしても。というわけで風邪の初期症状に襲われたまま元日を迎えた渡海雄だったが、挨拶のため悠宇の家まで赴いた。


「ゆうちゃあん、明けましておめでとうございます」


「誰!?」


「ひ、酷いなあ、僕だよ僕」


「だからそんな渋いお声のお友達なんて……、とみお君?」


「そうだよ」


「驚いた。風邪でも引いたの?」


「風邪そのものって言うか風邪気味ってところ。昨日の夜から変だったんだよね。それで紅白も途中で切り上げたんだけどね。ゴホッ」


「もう、そんな咳き込んで。無理しちゃ駄目じゃない。今日のところはお家に帰って暖かくして寝てないと」


「いや、大丈夫だよ。葛根湯も飲んだし、多少のどがきついしふらっとしない事もないけど動けないわけでもないし、いいじゃない?」


「だーめ、許しません。もうそろそろ治るだろうと油断したらぶり返すのが風邪ってものだから。私嫌よ、とみお君の葬式に行くなんて。だから誰がどう見ても完治しましたってなるまではしっかり休みなさい」


「そこまで思われると、お手上げだな。じゃあ、またね。それと、今年もよろしくね」


「うん。こちらこそよろしくね。きっと早く元気になってね!」


 そうして三が日はまったくの寝正月となった渡海雄だが、その甲斐あって病は無事に体内から消え失せた。そして一月四日、改めて二人は会う事になった。


「というわけで、新年早々迷惑をかけちゃったけど、一度風邪を引けばもうしばらくはかからないと大雑把に見込んで、これからも頑張るぞ」


「私も馬鹿だと思われないように一度くらいは風邪引かないとね」


「まったくもう。実際に風邪引いたら大変なんだからね。親にも迷惑かかるし」


「ふふ、それもそうか。まあともかく、いつもみたいに新年を迎えるにあたってのお話を開始しましょう」


「そうだね。まず去年は、カープ優勝したけど今年はどうなると見る?」


「当然目標は連覇となるけど、これは決して簡単な事じゃないわ。確かに去年、結果的に二位とは大差をつけて優勝した。けど二年連続で選手が同じような成績を続けられるものではない。相手からのマークもきつくなるしね」


「去年は主に打撃が良かった印象があるけど、打撃は水物とも言うしね」


「ただ選手個々で言うと明確にキャリアハイを残したのは鈴木誠也とか安部とか、意外と少なかったりするのよね。菊池はここまで隔年傾向で今年は悪い年に当たるとか、新井は年齢的にもさすがにきつそうとか色々あるけど」


「新井ねえ。復帰した一昨年の成績でも想像以上だったのにまさか更に上げてくるとはねえ。MVPはびっくりしたけど」


「プロ野球にドラマを見る人からすると新井MVPは決して驚きじゃなかったでしょうね。個人的には菊池だったけど、確かに新井もよく頑張ったわ。でも四十歳に過大な期待をかけるのはしんどいでしょう」


「ポジション的にはエルドレッドや松山が代替になるかな」


「エルドレッドはシーズンフル出場出来るとは思わないし、松山も使い方がある程度限定されるタイプ。ここにもう一人、予備の外国人でもいいし岩本か堂林か誰か出てきてくれたらより盤石になりそうなところだけど。岩本はもうきついかな。代打専門が生き残る道か」


「外国人と言えば、サードはルナ退団して補充もないよね」


「ルナは、残念だったわね。貢献はあったけどあそこで大怪我は。現状は安部が第一候補になるでしょうけど、去年ほどの好成績を計算していいものか。他には小窪や堂林もいるけど、個人的には西川に期待したいわ。鬼滅じゃないけど光るものがあるだけにどこまで磨けるか。まあどっちかというと二遊間の選手かとも思うけど、菊池と田中がいるからねえ」


「菊池に丸、田中に鈴木もだけど、ホームランも盗塁も二桁行く選手が揃ったからねえ。これらのポジションに食い込むのは簡単じゃない」


「年齢も程よい中堅層だしね。去年のドラフトで投手中心だったのもそういう理由がありそう。つまり今野手を指名しても現在の主力と被ってしまうからもったいないと」


「でもポジションが完全に埋まってるわけじゃないからね。サードとか。外野もまだ一角残ってる」


「外野手に関しては野間がどこまでやれるか。スピードは本物だし、後は打力がつけば。やる事が多い捕手に関しても打力に劣るベテランの石原が多く使われるのは仕方ないけど、それこそ會澤辺りが出番を増やしてくれたら。それと船越も二軍でなかなかの成績だったので期待したいところ」


「捕手はドラフトでも坂倉を指名したね。高校生だからすぐ出てくるものじゃないけど。やはりここを固定出来たらより強くなるもんね」


「簡単にはいかないけどね。近年は他球団でも併用されるケースが多くて、それだけ負担も大きいポジションって事よね。さて投手陣に話は移るけど、今年の課題はここよ」


「先発だと、まず黒田が引退したもんね」


「規定到達で二桁勝利した選手が抜けるという単純な戦力計算でもマイナスだけど、精神的な面も大きいわ。ジョンソンは当然やってくれると信じてるけど、野村は微妙なところだしね。少なくとも勝ち星に関しては去年が出来すぎだった」


「六回投げて後は打線がしっかり打ってリリーフが抑えてって感じだったもんね」


「やはり自分の力だけで抑えこむ、完投能力があったほうが計算が立つという意味では重要よね。誰かが抑えないと試合は終わらないものだからまあ、野村は去年ぐらいのピッチングをしてくれればタイトルとかはいざしらず、立派な戦力よ。ただ問題はそれ以降」


「岡田、福井、大瀬良とかその辺りか。薮田もかな?」


「戸田もね。シーズン途中によく分からない消え方をしたからあんまり計算に入れたくないんだけど。正直やや駒不足に見えるわ。補強もなかったしね。まさかルーキーの加藤や床田にいきなり期待しすぎるのも違うし。ヘーゲンズ先発メインって線はあるかしら」


「二軍成績見ても期待出来そうな選手はあらかた出尽くした感じあるし」


「やはり去年ぼちぼち投げてた中から誰か出てこない事には連覇なんて覚束ないわね。リリーフは、まず去年はヘーゲンズ、ジャクソン、中崎という形を割と早い段階で作れたのが勝因となったわ。後にヘーゲンズが今村に変わってもしっかり機能してたし、それ以外の大瀬良や一岡、敗戦処理として九里もイニングを埋めてくれたわ。まずはどういう形で勝っていくかを定めるのが肝要」


「抑え中崎は確定だよね。後はジャクソンも」


「そうね。最初は今村、ジャクソン、中崎という去年後半の形になるでしょうね。でもリリーフって大変だから、去年酷使し過ぎて疲労が残って今年はいまいちってよくある話よ。その場合に誰が埋めるかがチームとしての強さよ。一岡とかフルシーズン戦えないロッテの内系っぽいし。左という事ではオスカルや飯田、と言いたいところだけど現状首脳陣は左右にこだわらずパワーある投手を使って、それは概ね成功していたけど左で使える選手が出てくるならそれに越した事はないわ」


「それと新外国人のブレイシアを獲得したけど」


「基本は予備でしょうけど、ジャクソンやヘーゲンズがどこまで持つか分からないからそれなりに出番はあるはず。でもやっぱり補強ほとんどなしでここまで来たのが甚だ不安よ。現状維持は後退と同じ。ましてや二位の巨人はFAで三人獲得してるわけだから」


「やるものだよねえ。一昨年はヤクルト、去年は広島に優勝を譲っているから今年は何としてもって意欲を感じるよね」


「優勝したいって意欲があるところが優勝するのは自然な形だからね。そこで汚い手段を使うようだとまずいけど、今回のFA三人も決してルール違反じゃないしね。三位のDeNAは山口を抜かれたけど新外国人投手はなかなか評判がいいみたいだし、阪神も糸井を獲得した。去年のように独走とはならず、より混戦度合いを深める可能性が高いと見るわ」


「楽しみだね」


「そうね。そしてサンフレッチェ。こっちはちゃんと補強するからいいわ。特に大晦日に発表された大ニュースはびっくりしたわ」


「バンクーバーにいたFWの工藤壮人獲得ね。まさにラブレターフロムカナダ」


「元々は柏に所属してて、日本代表の経験もあるわ。ストライカーとして何が得意ってタイプじゃないけど、結構何でも出来るのが売り。しかも年齢は案外若くて、ついに退団してしまった佐藤寿人の再来となってくれれば幸いよ」


「他にも岡山から中林、甲府から稲垣、ブラジルからフェリペと補強を進めて、一方で若手を期限付き移籍に出しまくってるけど」


「これの成否を判定するには数年待つ以外にないわ。これでサンフレッチェに戻らずよその戦力アップに貢献しただけだと失敗だし、パワーアップして戻ってきた若手がサンフレッチェで躍動するようなら成功となる。まずは釣り竿を振って海に投げた。どんな魚が釣れるかどうかよ」


「最初は失敗に思えたものが数年後には成果になってる事もあるもんね。今は見守るのみか」


「とにかく、去年は全体的なバランスがあまり良くなかった。得点王となったウタカは本当に素晴らしい選手だったけど、チーム全体としては結局最後まで波に乗れなかったわ」


「しかもウタカは退団の可能性大なんでしょ。だから工藤とかフェリペとか獲得したんだろうけど」


「前線の補強は十分だけど、ディフェンスはどうか。去年はここに怪我人続出したのがかなり痛かったわ。センターバックに森崎和幸と清水が入ってた時期とか、きつかったわ。今年は誰で賄うか。そう言えば、千葉は出場停止とかにならなくて良かったわね」


「ドーピング問題ね。そういうのにも気をつけてほしいよね」


「塩谷に千葉はまず確定的か。もう一角は怪我が完治したなら佐々木だし、水本もいる。それと野上。ううん、やっぱり質はともかく量が不足しているような。それとボランチも、いつまでも森崎に青山でもないし、彼らがいないと丸谷になるわけだし、せめて吉野がいればって感じはあれど、まあどうなるかよね。一昨年とか『ドウグラスじゃ無理でしょ』と思ってたらあんなに戦力になったり、見極める力は高いものだから」


「信じたいものだね」


「最後はそうなるわね。今年からまた元の一シーズン制に戻ったし、長丁場のシーズントータルにおける力を発揮出来るかが鍵よ。そして最後はファイト! カープとサンフレッチェのダブル優勝とかあるといいな」


 こんな事を語っていると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いた。新年早々やってくれると怒りの感情をかすかに浮かべつつ、新春の平穏を壊してはならぬと覚悟を決めて二人は変身した。


「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のセキショクヤケイ男だ! この星の蛮族どもを残らず家畜化してやるのだ!」


 酉年にふさわしい敵が枯れすすきなびく高原に襲来した。セキショクヤケイ、漢字で書くと赤色野鶏で、本来野生にいたこの鳥を家畜、と言うか家禽化したのが今の鶏だと言われている。特に雄はその名の通り赤い羽で覆われていて、華やかだ。しかしこれは地球人類にとって危険な存在であり、生存のためには放ってはおけない。


「待て、グラゲ軍! お前達の思い通りにはさせないぞ」


「そろそろ出てくると感じていたけど、やはりそうだったわね」


「むう、出たか逆臣ネイに誑かされた愚か者ども。お前達にあるのはただ死のみだ。行け、雑兵ども!」


 ぞろぞろと出現した雑兵を渡海雄と悠宇は次々と打ち倒していった。そして残る敵はボスただ一人となった。


「よし、量の多い敵は片付いたな。後はお前だけだセキショクヤケイ男!」


「年が明けたばかりなのに騒動の嵐を巻き起こす不届き者。断じて許しがたいわ」


「ふん、戦いはこれからよ。さあ死ね!」


 そう言うとセキショクヤケイ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。それに対抗して二人は合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 冬空にきらめく金属が火花を散らしてぶつかり合う。巨体同士の激闘を制したのは、さすがの反射神経を見せた悠宇だった。


「とみお君、いける?」


「もちろん、ここでやらなきゃ男がすたるってもんだ。エメラルドビーム!」


 病み上がりでも闘志は人一倍。渡海雄はすかさず緑色のボタンを押した。瞳から放たれた緑色の炎はセキショクヤケイロボットを焼き払った。


「うおおおお! ここまでか。脱出する!」


 二〇一七年最初の地球の危機は救われた。しかし戦いはこれからだ。幼い二人はこれから何度も何度も危険な目に遭う事となるだろう。しかし挫けてはならない。日々を生きる事が明日を拓く唯一の手段となるのだ。


 ついでに今年の目標。去年は悠宇が喋る回が多すぎたので、渡海雄に頑張ってもらいたい。スポーツ系は放っておいても新鮮なネタが入るけど音楽系はそうでもないので、アンテナを広げる努力は必要となるだろう。

今回のまとめ

・風邪には気をつけて楽しく今年を過ごしましょう

・連覇は簡単じゃないが決して不可能ではないはず

・補強は常に必要なのでそこはいささか不安

・サンフレッチェは今年踏ん張れるか正念場の年になりそう

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