神社にて
「危ない!!」
これが俺の生涯で最期に聞いた言葉だった。思えば後悔だらけの人生だった。一歩踏み出す勇気が無く、いつもやらずに後悔していた。それが原因でたった一人の親友も失った。そして居眠り運転の車に轢かれて終わる。なんて悲しい人生だろう。ああこんなんじゃ自分が死んでも泣いてくれるのなんて親くらいのものだろうなぁ―――。
ドンッ
痛い・・・。さようなら母さん、さようなら父さん、さようならヒロシ(金魚)・・・
・・・気がつくと車に轢かれて吹っ飛んだはずの俺の体は別の場所に倒れていた。
「ここは・・・」
俺は轢かれたはずじゃ・・・。そしてここはどこだろう。と思って見渡してみたら近所の神社だった。体も痛くない。セミがミンミンと鳴いている。
「おい、聴いてるのかよ」
不意に呼ばれて振り向いてみたらそこには下山がいた。たった一人の親友だった男だ。
「は?何でお前がここにいるんだよ?」
「お前何言ってんだ?どうせ帰っても暇だからどっかで話そうぜっていってここに連れて来たのはお前だろ?」
どういうことだ・・・。
「そういやニシ、アレ明日ちゃんと返せよな。」
ニシ、俺のあだ名だ。
「アレ・・・?」
「おいおいとぼけんなよマリオだよマリオ」
「あっ・・・」
マリオ・・・。そうか、やっとわかった。
俺は俺と下山が絶縁状態になってしまうころにタイムスリップしてしまったんだ。俺と下山は、俺がマリオを失くしてしまったがために絶交してしまった。下山がマリオを返せ、と言っているということは少なくとも絶交する以前に戻っているらしい。
「あ、ああ。それなんだが・・・」
過去の俺はマリオを失くしてしまったことを嘘で誤魔化した。結果としてそれはバレ、俺と下山とは絶交することになったし、俺は後悔した。正直に謝ればよかった、と。正直に謝れば許してくれたかもしれない、と。・・・神様がもう一回やり直すチャンスをくれたのだろうか・・・。
「・・・」
「・・・どうした?」
顔に血が上る。手が震える。正直に告白するということがこんなにも恐ろしいものだとは。目まで充血してきた。不意に風が吹いた。木々がゆらめく。今しかない、と思った。
「実は・・・失くしちゃったんだよ・・・」
言った。言えた。
「おいおいマジかよ・・・」
「ああ・・・」
「・・・」
沈黙が流れる。セミの鳴く声がやたらと耳に響く。緊張のためかやたらと汗が出てくる。口の中に進入しようとする汗を手でぬぐう。不意に目の前が歪む。な、なんだ・・・?目に汗でも入ったのだろうか、と思い目を手でぬぐうが一向に歪みは収まらない。それどころかどんどん歪んでいく。目の前が真っ白になっていく
「おいおいまさか、ちょっと待てよまだちゃんと謝れてな――」
「最善は尽くしましたが・・・・」
「うぅ・・・」
母さんのすすり泣く声が聞こえる。体の痛みは無い。もう俺は死んでしまったのかもしれない。ただひとついえることは、何故か自分の姿を第三者の目で見ている俺がいるのと、俺抜け殻のそばには白衣の男と、父さんと母さん、そして下山がいたっていうことだ。
結局誰かしら死ぬ話しか書けないから困る