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■04 半年経過■

8万居た人口は既に2万人を切っていた。


いくら正平の加護があっても高度に発達した社会にどっぷり浸かっていた人間が

容易く生き延びる事が出来る程自然は甘くなかった。


衣服すら満足に揃えられない環境では、木の葉を掠っただけでも命取りである。

そこから破傷風や未知の病気が発症し薬草すら見つからないこの状況ではどうしようもない。

その上見たこともない野獣に心細い装備で対抗しなければならなかった。

食糧だってかつての世界で好きな時に食事が出来た事自体、夢の様に感じられる。


エルフやドワーフとも交流が始まったばかりである。

正平が間にはいって種族間の仲を取り持つ事で徐々に環境を改善しているのである。

家畜もある程度の柵が造られたため、野獣に食われる被害はかなり抑えられるようになった。


人々は一致団結し、ゆっくりとだが徐々に問題を解決していった。

そして、(ようや)く人口の減少も歯止めがかかってきた。




<小さな火>MP3はかなり大勢の人間が習得しているが、

それでも連日練習場には長蛇の列ができている。

まだ、習得していない人が並んでいるのだ。


正平は、あれから線路も列車も駅も増やしていない。

魔法も<小さな火>MP3を習得してそのままだ。


焦る必要は無かった。

寿命が無限になった為か妙にスケール感が広がったらしい。

悲観する事なく、まずは現状を楽しむことにしたのだ。


いまだ大半を正平が斡旋する仕事が大半であるが、それでも徐々に

幾多の仕事が発生し、正平の支える手に加わる重みは軽減していった。


家畜は正平の管理下だったが、MP通貨で購入できるようにする検討をしてみた。

第二草原に広がる市場で、牛のつがいをオークションにかけてみた。

すると思いもよらないほどの高額で落札された。


落札者はエルフであった。

牛の出す牛乳を非常に好んでいたようだ。

彼は、牛を増やすつもりでいる。

その後人間の技術者をMP通貨で雇ったらしい。


あまりにも好評だったために、定期的に、家畜のオークションを行うことにした。


また、市場ではオークション形式も比較的ポピュラーである。

値段が安定し始めた商品は、露天や店舗に出店されているが、

新しく出始めた商品は値段が分からなく、

その為にそう言ったものを一括してオークションを行う広場が出来た。

人間、ドワーフ、エルフから毎日のように新しく、価値があるかどうかお互い不明な商品が出品される。

当然掘り出し物もでてくるので、人だかりが1日中できていた。


ドワーフにとっても非常に貴重な魔石が出品されたこともあったらしい。

その時は大量のMP通貨で人間が落札したらしい。


正平もそのオークションを見るのが好きな1人であった。

ある日、エルフから、魔法石が出品された。

どうも加工に失敗して、微妙な魔法になってしまったらしい。

中身は、<微消毒>MP1 という<解毒>MP20 の失敗作らしい。

話を聞くとオキシドール程度の価値はありそうだ。


本来極秘技術の結晶である魔法石なのだが、この程度なら別にいいらしい。

しかし、この世界の人類にとっては2つ目の魔法であり、

又この手の技術を持っていなかったドワーフにしても非常に欲しい魔法だった為に

オークションはこの2種族により白熱した戦いが繰り広げられた。


正平もこの戦いに参加したい気持ちでいっぱいだったが、水を差すことになりかねたい為に、

参加せず眺めることに決めた。


かつて無い高値がついた。落札者は人間の商人で、

最初のころから貿易などでたっぷりの資金を稼いでいた男だ。


しばらくすると、魔法の館なるものを建設し、

ここで1回の使用につき10MP通貨をとるという商売を始めた。

<小さな火>MP3以外の魔法も使いたい人々で連日長蛇の列ができた。


効果は小さくとも<微消毒>MP1は非常に実用的だった。

まだほとんど薬が発見されておらず、<解毒>MP20が使えるエルフには必要が無い為に

代わりの効かない貴重な技術であった。


その様子をみたエルフが、<解毒>MP20で同じようなことをしようと企むが

エルフの集落をまとめる村長がそれを許さなかった。

ただ、結局MP20以上ある人間はほとんどいない為に<微消毒>MP1の方が需要があると思われる。


海辺では河岸が開かれていた。

比較的かつての地球で取れたような魚と同じ姿の生物から、見た事もない異様な生物と

さまざまな魚介類が取れた。


食べれるかどうかは不明だが、徐々に食べれる物と食べれない者、おいしい調理の仕方などの知識が

蓄積され始めていた。レンジャーなどが中心になって調べていたようだが、

その作業の際、結構な人間が命を落としているらしい。


やはり、元の世界の常識がなかなか通じないのが原因で、結局食べるまでは分からない。

それでも食べれる種類が増えるにつれ、訪れる人が徐々に現れ出し、

血抜きした魚は貨物列車に乗せられ、第二草原の市場まで運ばれる。


また、新鮮な魚を食べる為にここまで足を運ぶ人もいる。

並行して塩田も造られていた。


当然この技術が必要になる事は予想されていたので、人間のメンバーにそうした技術を持った人が

含まれていた。ただ、正平の世界解説ではそう簡単に海へ辿り着けるとは予想していなかった為に、

あくまで念のため程度であった。


ところが、世界へきて数日と経たないうちに海と遭遇できたのは幸運以外の何物でもない。

さっそく、砂浜と日光を上手く利用した塩田が造られた。


ただ、そのしょっぱい塩化物が本当に塩なのかどうかはわからない。

出来た塩は元の世界で食卓に並んでいたものよりも遥かにおいしかった。

ただ塩っ辛いだけでなくミネラルがふんだんに含まれていたのだ。


最初は草原の駅で出品していたが、後に第二草原の市場でも売られる事になった。

第二草原の市場で大人気の商品となった。

ドワーフは岩塩を使っていたが、これは結構貴重らしい。

エルフの食事は薄味だが、塩が手に入るなら使いたかったらしい。


機織りでの日産10人分の衣類だけでなく、エルフ手製の服や、ドワーフが獣のなめし皮から

つくった上着も手に入るようになった。

さらには、エルフの機織り機も購入できるようになり、人間のほとんど全てに服が行きわたった。


食糧も多くの果物の発見と魚介類と奇しくも人口の減少によって、

とりあえず大抵の人が毎日食事を口にできる程度までに上昇した。


当初の予想ではもっと人口は減少し、いまだに何日も空腹の日々が続くと思われていた。

しかし、いろんな幸運が重なった。

エルフとドワーフとの交流が持てた事。そしてそれを促したMP通貨の御蔭だと。


混沌とした集団をまとめるのは非常に難しい、食糧が十分に調達できなければ一層難しい。

絶対的な権力を持つのはまだ中学2年生の少年である。

彼が頂点となって共産主義を行うのは困難であった。

有識者はたくさんいたが、被支配層に含まれる彼らが同じ被支配者達を使うのは、使われる彼らも許容しがたい。


しかし、仕事の代価を全て貨幣にし、労力の価値を労働者に決めさせることで

支配者がなにかをすることなく上手く回り出した。

貝貨の利用もそうだが、すぐに貨幣経済に切り替えた正平は、大英断だったと言える。


このときは正平も知らないのだが、

他の世界の内、貨幣経済に比較的早めに移行したところは生き残り、

後回しにした世界は、ひどい有様である。

種が断絶したわけではないが、それまで人類が重ねてきた英知はぷっつり消えるほどの。


貨幣だけが原因ではもちろんないが、貨幣という観点から見た場合はこのような結果になったわけである。

ちなみに、12人中一番最初に貨幣経済に移行したのは正平である。


日本人は清潔好きであった。世界的に見て潔癖というレベルで。

ここまで文化レベルの下がった世界においてもこの性格が変わる事は無かった。


ドワーフの協力もあり、あぶみが完成した為に馬での探索が可能となった。

そこで、第4の海の駅から海の逆側を探索した一行がとんでもないものを見つけた。

それは、天然の温泉である。


駅からはかなりの距離がある。しかし、噂を聞いた人々は、その湯に浸かりたいと強く願った。

正平が線路を追加すればいいのだが、なんとなく直線にしか敷きたくなかったために、

別の方法を実行しなければならなかった。


そこで、家畜オークションで馬を数頭買い取った人間が、MP通貨を取って送迎を開始した。

このサービスが大人気となり、温泉地にもいくつかの建物が立てられ、

通る道も徐々に整備されていった。


正平も温泉に入りに行った時、非常に気に入った。

しかし、路線の追加はしなかった。初志貫徹が好きな言葉だった。

この後も線路はずっとまっすぐ続いて行ったのだ。


しかし、これもまた正しい判断だったと言える。

この御蔭で電車ばかりに頼ることなく、いろんな交通手段が発達することとなった。

この馬車も正平の信念によって生まれたと言えるかもしれない。


実はエルフも清潔好きで、温泉に入るという風習を気に行った個体もちらほら現れた。

普段はもちろん水浴びをしている。


第二草原で井戸を掘る計画が持ち上がった。

食糧調達に振り分けられていた技術者たちが徐々に余裕が出てきた為に起こった現象の一つである。

ここはいまだに第2駅である美しい湖の駅から調達した水に頼っている。


しかし、人数も増えてきており、供給が需要に追い付かなくなってきていた。

そこで、現地調達するということである。


すでに、タンクからの水は無料ではない。需要が高い為徐々に値段が上がっていた。

ちなみにタンクの運用権利はオークションで落札される。

水は落札者であるタンク運用者が好きに決めている。

現在タンクは2車両あり、一応独占出来ないように取りきめられている。


井戸の管理と使用料をタンクの給水よりも十分安くできると見積もられている。

人間の技術者と採掘技術の優れたドワーフが協力して、掘り始めた。


何箇所か調査した後、人間の技術者が水脈を探し当て、立派な井戸が完成した。

エルフが水質を調査してくれ、とうとうタンクに変わる新しい水源を確保することができた。


これと並行して、風呂屋を造る勢力があった。

こちらも、エルフとドワーフと人間が協力して造ったものだ。


人間の構想をドワーフの石材で実現し、エルフの解毒魔法の亜種で、何度も貴重な水を使いまわせるように

魔法で管理するものだ。水をお湯にする為の火力はもちろんドワーフが管理している。

その機構を実現したのは、人間の技師であった。


エルフとドワーフのそれぞれの魔法がより効果的に作用する構造。

使える建材や素材はまだまだ限られている中で見事な風呂屋を実現した。


温泉まで行く事が出来ず、冷たい水を浴びるのが精々な人々にとって、

この施設は非常に素晴らしいものだった。


毎日入りに来る人間も少なくなく、風呂屋は大盛況であった。

そして第二、第三のお風呂計画も立ち上がるほどである。

同時に人間の衛生と精神の環境が大幅に改善された。


毎日でなくてもたまに入りに来れるだけでも非常に大きな効果があったのだ。

他の駅の近くにも設置して欲しいと言う要望がいくつも上がった。

企画者のエルフとドワーフそして人間は、その成果に非常に満足したのだった。


人間の人口減少も歯止めがかかり、新世界での初めての生命も現れ始めた。

赤ん坊が生まれた世帯には、正平の名で200MP通貨が送られた。

このころから食堂や屋台のような既に食べれるものを出す店も出始め、

1食分の相場は、5MP通貨前後となった。


貝貨はいまだに補助通貨としての価値を有していた。

海岸で巻貝を集める姿も見かける。


かつての人間の拠点と定め巨大な駅とたくさんのVIP車両を有する「草原の駅」も

3番目ぐらいの人口になっている。

2番目は、河岸と本場温泉で賑わう第4の駅「海の駅」

そして1番賑わうのはもちろん、第6の駅にしてもともと何もなかった「第二草原」の駅近辺。


本来森からでないはずのエルフも永住する勢いの個体がちらほらいるし、

鉱山と鍛冶が命のドワーフも同じようなのがいる。

第二草原は建設ラッシュが続いていた。


そして、この街はいまだに近衛とその側近がしっかり管理を続けている。

御蔭で乱雑に店などが立ち並ぶ様な事は無く、整然とした道ができあがっている。

駅の前の広場から、広い道路が真っ直ぐ伸びて、

そこから線路と平行に幅員を小さくした道路がいくつも左右に伸びていた。


大きな道路と、駅の近辺は全て商業施設が、枝はの小さな道の面したところには

個人の家が並ぶようになっていた。


大きな道の両脇にはなんと溝ができており、水が流れるように勾配が出来ていた。

近衛が測量師などを雇ったらしい。近衛にはある程度MP通貨を自由に使用出来るようにしている。

どういう風に使ったかは定期的に報告させるようにしている。


人間から選抜された近衛は基本的に超優秀であった。

それを理解し、なるべく自由に行動させた正平も何気に大したものだった。

新しく近衛に参加したニエルとケットは、今のところ正平に知識を与える役目であったが、

気負う事もなく楽しんでいるようだった。


正平につき従っていた近衛も人間も、語学力抜群の男と入れ替わりに最年少天才少女のジェシーが着いた。

他の二人が女性なので、人間からも女性を付けるという余計な世話であった。

ちなみに正平は、創造神という種族扱いされているが、本人は人間のつもりだ。


そんなわけで、正平は何処へいくにも3人の女性をつき従えている。

他の近衛の報告はすべてジェシーが受け持っており、ジェシーから大まかな状況をかみ砕いて説明させていた。


ある日、ドワーフから魔石、つまり魔法石の原石が献上された。

市場を開いてくれたことのお礼としてドワーフのまとめ役から送られたのだ。

正平はさっそくカットすることにした。


カットは魔力を使って行う。掌に載せ掴む。いろんなインスピレーションが浮かぶ。

これは魔法の効果よりは出来あがった魔法石の形を思い浮かべている。

出来あがるまでどういう効果をもたらすかは分からない。


ドワーフとエルフは浮かべるインスピレーションは、代々同じような物で秘伝である。

しかし、正平はそういうものは無い。

カットに消耗する魔法は地味に多く、空を見上げると正平を中心に雲が渦を巻いていた。


こぶしから一瞬閃光が放たれ、掌には美しい宝石、魔法石が残った。

<治療>MP50である。


エルフの系統に似ているが、ニエルはその宝石の見た目とその力に驚きそしてほれぼれと見とれた。

魔法石の出来はカットする人の魔力、技術、インスピレーション、そして魔石の質によって決まる。

高品質な魔石を送られたことに対して直接お礼に行くことになった。


ひさしぶりの「ドワーフの街」駅。その駅はほぼドワーフだけが利用している。

ここに直接買いに来る人間は居ない。ドワーフにせよエルフにせよ

別種族に荒らされるのを好まない者は少なくない。


始まりの駅でのエルフの店もいつしかさびれて消滅してしまった。

たまにエルフと手を組んだ人間が、大量に仕入れに時間を指定してやってくるぐらいである。


「ドワーフの街」駅を降りて、最初に見た時よりもはっきりと現れている道を通り、

ドワーフの長へ挨拶に向かう。

そこで、大事故が起きた事をしった。


たくさんの技術者が重体になっており、生き延びる可能性は半々の物が数十名。

その中には長も混じっていた。

ドワーフの近衛であるケットもその光景に蒼然となる。

どうやら、家族が含まれていたらしかった。


ちょうどさっき出来たばかりの<治療>MP50を彼らに使ってみる事にする。

その膨大な魔法の力は、1人を対象にしても近くの人間もついでに回復するという

とんでもない効果を発揮した。対象は即全回復した。


ほとんど無尽蔵の魔力を有する正平は、生きているドワーフ全員に対して魔法の治療を実行した。

死んでしまったドワーフを除いて全て完全回復した。長とケットの家族も無事だった。

ケットからも激しく感謝された。

予想はしていたにせよその威力を目の当たりにしてニエルは感心しきりだった。


長たちからは、その魔法に対する対価を払うと言った。

正平は魔石のお礼にきただけで、<治療>MP50もそれによって出来たと伝えた。

ならばと、長はまたいい魔石が見つかったら献上するということで話は決着した。


大量に使用したことで<治療>MP50は習得してしまった。

誰かに譲ってもよかったが、せっかくだし何かの商品にでもしようと考えた。

この魔法石の完成度もエルフやドワーフが見た処、最高傑作レベルで、

いわゆる一つのアーティファクトである。

列車関連の3つもそのレベルと言えなくもないが

使える人間も用途も限られすぎていた。


これを使った習得させて病院でも造るべきなのかもしれないが、

あまり魔法に頼りすぎるのは良くない気がしたので保留にした。


しばらくすると第二草原の市場に武器が並ぶようになった。

ドワーフの創る武器は、優秀で質が非常に良い為、容易には別種族に渡したくなかったらしい。

しかし、前回の一件で方針を変えたとのこと。


正平はもちろんのこと、治療を一緒に手伝ったエルフのニエルや、

人間のジェシーにもドワーフ達は非常に感謝したらしい。

その為、製作した武器の一部を市場に流すことに決めたとのこと。


実は探索隊の死亡原因の半分は野獣と戦ったことによるもので、

それなりの武器があれば助かった可能性が高かった。

まず、いつも通りオークションに出品された。どれも高値がついたが、その価値は値段以上と言えた。


正平もなんとなく近衛隊全員分の武器を買ってやった。

これは、直接造って貰ったもので、形を統一してもらった。

代価は何度も拒否されたが正平はちゃんと支払った。


12本の剣は、もはや芸術品であった。切れ味の鈍らない魔法がかけてあり

血糊で錆びたりすることは無いらしい。ちなみに正平は嵩張るので貰わなかった。




■とある創造神の世界■


家畜は残り数頭まで減り、寄りそう人間は50人を切ろうとしていた。


一度最高まで引き上がった文化を元始レベルまで戻して生き残るのは並大抵ではなかった。

まず水場を発見するのが遅れた。

そして家畜に対する人間の割合が大きすぎた。


持ってきた家畜以外の食糧がなかなか見つからず、ついには内部で分裂してしまった。

いくつかの派閥に分裂し、それぞれのリーダーが勝手に旅立ってしまった。

家畜も一緒に持って行かれた。


残ったのは、創造神と一緒のグループ。

旅立った者たちは創造神の恩恵を知らなかった。

それまで一度も遭遇しなかったモンスター。

創造神の一行から離れてしばらくすると唐突に出現したのだ。


まず、家畜がやられ次に人間がやられた。いつしか全滅。

他のグループも大体おなじ。

数人が生き延びたようだが、服すらまともに調達できていない状態である。

まもなく彼らも絶命する運命であろう。


創造神含めてだれも気づかなかったが、

創造神は不思議な力で自らの周りをモンスターから守っていたのだった。


長い旅の末に小さな湖とその畔にイチゴのような果物が実っている木を発見した。

彼らはやっと安息の地を見つけたのだ。

みんな感動と嬉しさのあまり涙を流した。


体中傷だらけでひどいにおいがしていた。

ここまで水源すら確保できていなかったのだ。

朝露や僅かな水たまりで凌いでいたという。


この世界に魔法があるかどうかは不明である。

別の一行が確認した生物は全て敵対的で狂暴なモンスターのみであった。

創造神がいったいどんな能力を持っているのかは不明であるが、

魔法以外ならおそらく正平と似たようなものであろう。

新世界に来て僅か半年。20万人居た人口は50人になっていた。


・・・


光を吸い込むような艶のない暗黒色で扉を象ったかのような造形の魔法石。

<異次元表示偵察>MP1200

正平がオークションで落札した魔石から新たに作成した。


正平が見たのは、別の創造神の世界だった。

この現実を知ったのは、正平と近衛の13人だけである。

もし自分よりも上手く世界を運営しているところが映し出されたら悔しい気がしたので

側近だけで見ることにしたのだ。しかし、そのあまりに壮絶な光景に言葉を失った。


同じ様に発展しているなら公開しようと思ったが、封印することにした。

ここまでひどい状況を晒すような真似をしたいと思わなかったのだ。

近くで見ていた近衛達も同じ気持ちだった。

加えて、この世界を選んだ自分と造った創造神にどこからともなく感謝の気持ちが湧き出した。


別の世界を覗こうとしたが上手くいかなかった。

どうも見た世界に強い精神的なショックを受けてしまったらしく上手く発動しなくなった。

しばらく時間を置くことにした。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 支線建設くらい現実の鉄道会社でもやってるでしょうに・・・
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