■03 ドワーフ■
正平は、遠方に見える隆起を目指して線路を延ばすことに決めた。
強力な魔力の波動が正平を中心に台風のような規模で拡大していった。
辺りを伺う野獣達はその異常な力に慄き、遠方までその身を後退させた。
次に、線路の延長線上に魔力が流れ始めた。
それはあたかも大雨が降ったあとの川の濁流のように。
やがて、草原の駅で終わっていた幾股にも分岐した線路は2本に集約され、
そのまま遠方へ伸びていった。
魔力には余裕があったが、同時に精神力を消耗し、軽いめまいを起こした。
ただ、正平だからめまいで済むのであって、普通の生物ならたとえその魔力を持っていたとしても
発動後は発狂し死ぬレベルである。
黒字に金の模様を纏った二両の正平専用電車で出来たばかりの線路を走り始めた。
中に乗るのは、正平と近衛の3人である。
ちなみに、正平の家族は両親に妹1人だけで、新しく造ったVIP車両で暮らしている。
VIP車両は1日1台だけ造り、有益な発見や大きな成果を上げた者を優先してあてがうことにしている。
家族と近衛以外は1週間限定としている。
VIP車両はブルーの外装で全ての駅に1台設置され、残りは全て草原の駅に配置されている。
草原の駅の一番外側の線路を1本伸ばし、そこに延々とVIP車両を追加していっているのだ。
駅のホームから乗りこむ事ができ、車両ごとに分離し、1車両につき1家族が暮らせるようになっている。
正平専用車程ではないが、それでもホテルの1室レベルの室内に初めて入った家族は、
忘れかけていた人類の文化を思い出すような思いだった。
そしてそれを一度味わうととても手放したくない。駅の構内での雑魚寝や寝台車に比べる事も出来ない。
そしてそこからすらあぶれた人にとってはまさに天国である。
さらに必死に働こうとした。
もはや、正平は人々にとって神と同義であった。
実際世界の創造者なのだからその通りではあるのだが。
正平自身は、A列車やシムシティのようなテレビゲームをリアルで体験している気分だった。
段々、人々が自分と違うもののように感じ、無理してまで彼らのために能力を使うつもりは無くなっていた。
実際、精神を消費するのは並大抵ではない。可能なだけ、許容できるだけで、
人間が死ぬレベルの苦しみを味わっているのだ。
彼が魔法を使うのは、彼自身の好奇心や実行したいという気持ちがその苦しみを上回った時だけである。
あるいは、その苦しみを僅かばかり忘れた時であった。
それなら徐々に線路を延ばせばいいのかもしれないが、ものすごい距離をちまちまやるのも
別な苦痛があった。一気に伸びる爽快感を知ると面倒になるのだ。たとえ苦しみと引き換えであっても。
線路は何処までも続いた、なぜなら超絶の苦痛と引き換えに遥か地平線まで一気に伸ばしたためだ。
何処までも広がる草原の景色と、遥か地平線から連綿と流れる優しい風を受けて
ゆっくりと電車は進む。正平がのんびりと楽しみたかったからだ。
同乗するのは、近衛の3人。内1人はエルフのニエルである。
機織りの技術をとっくに伝え終わったのだが、ニエルが正平に忠誠を誓い、
正平もそれを許したために11番目の近衛となった。
正平自身、普通の人間よりも確実に役に立ちしかも美しいエルフが
自ら役立ちたいと言ってきたので断る理由もなかった。
ニエル自身も偉大な創造者に仕える事が出来て非常に満たされていた。
この事は、ニエルが一度集落へ帰り伝えている。
集落のエルフ達も非常に喜んだ。
しっかり仕えるようにニエルも念をされた。
エルフの集落へ派遣された人間の技術者も集落が気にいったらしく仲良くやっていた。
ほぼ毎日卵を産む鶏はエルフ達に大事にされていた。
有精卵のいくつかが羽化してひよこが誕生していた。
エルフの子供たちがひよこと戯れる姿は美しくも微笑ましい。
草原を走る列車の前車両はいくつかの窓を開け放し、気持ちのいい風が車内を通り抜けるのを
楽しんでいた。
あまり森から出ないエルフには草原の風が珍しくも心地良い。草原の風も悪くないと思っていた。
人間二人の近衛はそれぞれ、日本人と白人の20歳ぐらいの男性である。
彼らもまた正平に絶対の忠誠を誓っていた。
それは近代の会社の上司と部下のような関係ではなく、中世の王と騎士のような関係であった。
あるいはそれ以上かもしれない。
近衛の家族には全てVIP車両が宛がわれている。
エルフのニエルにも1車両専用車を下賜されたが、そこはいまだに利用されず
ずっと正平と供に行動していた。
ニエルは正平の家族ともそこそこ仲良くしている。
ニエルは正平と同じ年代に見える。だが実際の年齢はかなり年上だそうだ。
変わり映えのない草原の景色も、遠方では見たこと無い動物を見かける。
細い幹に大きく広がる枝はの部分を持つ木が疎らに生えている。
サバンナに芝生を敷き詰めればこの光景になるのかもしれない。
強烈な魔力の波動のせいで危険な野獣だけでなくあらゆる生物が遠くへ逃げてしまった為に
動物を見かけることはなかった。ただ、遠方にそれらしい群れを確認することができた。
列車だけでなく線路にも魔力が通っている為に、近くまで動物が来る事はないが、
膨大な魔力の波動はレールを造ったその瞬間だけなので、そのうち見える範囲には来てくれるかもしれない。
車両の先頭で、淡く輝く魔法陣が描かれた小さな台の上に手を掲げて運転する近衛の白人が
件の山が目視できるところまで来た事を告げた。
彼は流暢な日本語を話せる。それどころか英語とその他4ヶ国語を操れる。
この世界では正平が日本人の為に日本語が基準となる。
その為、習得した高水準の語学力が生かされる機会は無いが、その知性は存分に発揮されるだろう。
ただ、すでに亜人が確認されている為に、正平以外に交渉できる人間としての期待もされている。
線路は、山のふもとを辺りを通過していた。
山は非常に高く、巨大であった。周りがまっ平らな草原であるから、より大きく錯覚してしまう。
そのコントラストは幻想的で、かつての地球のエアーズロックの存在感を感じさせる。
あるいはそれ以上の。
線路は、山を少し超えた先で途切れていた。
そこまでは走らせずに、中ほどまで走らせたところで停止させ、
そこに第7の駅を造った。
ここまでの距離が非常に長かった為に、真ん中にも一つ造っておいたのだ。
線路と平行して存在した川も途中で離れていき、この駅の近くには何もない。
この第6の駅は、「第二草原」と名付けた。
そして、第7の巨大な山の駅は後に「ドワーフの街」と名付けられる。
1 始まりの駅 清水が湧き、エルフの集落がある。
2 美しい湖の駅 透き通った湖がある。主要な飲み水
3 稲穂の駅 沼地があり、食糧になりそうな稲穂の仲間が原生している。
4 海の駅 海と隣接している。塩分が含まれているので海扱いされている。
5 草原の駅 草原が広がっている。線路に平行して一本の川が流れている。
6 第二草原 草原が広がっている。なにもない。
7 ドワーフの街 巨大な鉱山がある。ドワーフが住んでいる。
山へは道のようなものが続いていた。
何者かが何度も利用しているような風である。
それをたどって行くとこちらに既に気づいているらしい亜人の集団が警戒しつつこちらをうかがっていた。
世界の創造者、正平である。人間達と取引してやってほしい。正平は彼らにそう伝えた。
日本語だが、魔力を帯びたその言葉は、エルフとも人間とも違う言語を操るドワーフ達に
ドワーフ達が使う言葉以上に彼らに意味を伝えた。
すぐに平伏しだす彼らを止め、まず近衛を紹介し、
次に人間と取引して欲しいというこちらの要望を伝える。
ドワーフは承諾してくれた。そして正平達を歓迎すべく宴が広げられることとなった。
ドワーフの出す料理は酒が中心で、塩辛いものが多かった。
彼らは男は例外なくひげをたっぷり生やしており、頭のてっぺんからつま先まで強靭な筋肉が覆っていた。
だからといってバカではない。人間と同じぐらいの知能と卓越した匠の技術を有している。
魔法も、炎を操るタイプのものを習得しているらしい。
エルフ程はないが、人間よりは魔力を持っているようだ。
濃い味付けの食べ物はエルフには辛いようだが、人間には酒の肴にちょうどいいものだった。
そして、この世界に来て初めての嗜好品、酒だった。
きつく結構な癖がある酒だったが、正平の近衛で改めてよかったと心から感謝する人間2名であった。
ドワーフの鉱山では、鉄鉱石のほかに魔石も出土されるらしい。
魔石は宝石の一種で、カットすることで初めて力を発揮する。
その大きさとカットされた形によって、得られる魔法が決まる。
正平もエルフから貰った魔石を自らのインスピレーションでカットしたのだ。
カット方法や、その形は秘伝とされている。
ドワーフの創った素晴らしい工芸品をいくつも見せてもらった。
その中で一番目を引いたものが、サイコロ状の物を生産する不思議な機械だ。
なんでも魔力を固めて好きな時に魔力を取り出せるブロックを造り出すという機械。
大体MP6を消費して、MP5回復するアイテムができるらしい。
また、理論上は同じ形で、MP60を込めてMP50を回復することもできるし、
MP600まで込めることもできるらしい。
ただ、ドワーフの最大MPは30ぐらいなので、そこまで込める事はできない。
出来あがったサイコロ状の物は、鈍く銅のような金属で僅かに光を発しているようである。
正平はふと閃いた。
サイコロ状以外の形状はできないかときいたら、割と簡単に変えられるらしい。
それならばと、この機械を譲って欲しいと言った。
ドワーフは渋った。新しく製作すること自体は大した苦労ではないが、
製作するのに膨大な魔力が必要だったのだ。
その理由を聞いた正平は、さっそくこの機械を使って、サイコロ状の魔力の塊を大量に造って見せた。
最初は加減していたのだが、面倒になって行き、魔力の注入量を上げていった。
途中から、出来あがったものが銀白色の輝きを持ちだし、さらにしばらくして黄金に輝き始めた。
この出来あがったモノと交換してくれるように言った。
魔法を使ったわけではないせいか、あの精神の消耗はそれほど起きなかった。
大量のサイコロ。マジックポーションを見たドワーフは二つ返事で譲ってくれた。
ドワーフにとって重要なのは、それを造るときに大量に必要な魔力の方であった為だ。
出来上がる形状を正平は指定した。3段階の魔力に応じて変わるようなギミックも追加してもらった。
出来あがったモノには、表に電車と線路の絵、裏には数字が刻まれていた。
そう、貨幣である。
都合のいいことに、魔力の出力によって質も色も丁度、銅、銀、金に変わった。
もちろん銅でも銀でも金でも無い。使えば魔力が回復するポーションだ。
後に分かることだが、大量に所持すると獣が近寄らなくなることに気付いた。
それはポーション自身の魔力によるものだが、まだこの時点では気づかない。
形作られる数字だけ変えて全て銅にすればいいのに、正平はなんとなく拘った。
しかし、これは後から考えると正解であった。
取引に応じてくれる道具やドワーフ達が欲している商品などを聞いた。
応じてくれるという道具は一気に生活や生産性を改善する可能性を示唆するものばかりだ。
ドワーフ達が欲している対価の幾らかは、すでに調達可能なものだ。
たったのMP3で小さな炎が出せる魔法の力を習得できる魔石から造った宝石を買った。
実はこの魔法習得できる宝石は目減りするものではなく、これを使って何人でも習得可能なのだ。
MP3だから、普通の人間にもほとんど仕える。各駅には炎を管理する者が
昼夜見張っているが、それぐらい炎を起こすのは大変な作業だった。
つまり、この魔法は非常に有用である。
魔法は加工された魔石、即ち魔法石を媒介することでMPを消費し効果を顕現させる技術である。
もちろん元の世界である地球にはそのような法則も技術も存在しなかった。
魔法石は補助輪のようなもので何度か使用している内にそれなしでも発動できるようになる。
ただし、なれない内は余計に魔力を消費してしまうというものだった。
正平の創った3つの魔法石で使えるようになる魔法はどれも尋常でない魔力が必要な為に
正平以外が持っても仕方なかった。しかし、今回譲って貰った魔法石は
人間達に人類史上初めて自ら行使する魔法となるのだ。
新たな通貨をMP貨幣、又は単純に貨幣と呼び、見た目が銅、銀、金のそれぞれ1枚を
5MP通貨、50MP通貨、500MP通貨と呼ぶ事に決めた。
又は単純に、銅貨、銀貨、金貨とも。
今まで暫定の貨幣扱いである巻貝。を貝貨と改め、1MP通貨の価値とした。
6つ目の駅、「第二草原」駅に、ドワーフからもらった貨幣製造機を設置し、
ここに市場を開くことに決めた。
さらに、7つ目の駅「ドワーフの街」駅の間の区間にドワーフだけが利用可能なダイヤを設ける。
そして、運賃として10MP通貨を徴収することとする。
すでに製作した、MP通貨を使ってドワーフの道具と交換した。
なぜ、ドワーフの街に市場でなく、一つ離れたところに造るのか。
一つにドワーフ達としても住処の近くを別種族に荒らされたくは無かった。
もうひとつの理由として、通貨を利用する文化を電車賃を通して理解させたかった為だ。
MP通貨自体にMP回復という大きな利用価値があるのだが、
その使い道はあくまで価値の担保としてであり、なるべく通貨として利用して欲しかった。
その考えを根付かせる一端というわけである。
現状は、食糧や道具を調達し、その何割か徴収。それを全体として役立つ仕事をしている人に
分配するという、民間人と公務員が半々な状態になっている。
調達したモノはその間で物々交換するという具合である。
それを補助するように貝貨が使われている。
火の見張りや家畜の世話、成果がでるのがとうぶん先な畑の開発などは、公務員的な立場である。
彼らが得られるのは公平ではあるが同じもので、仕方ないとはいえ不公平感はぬぐえない。
そこで、この貨幣を利用するのだ。
公務員的な仕事にそれぞれ値段を付けて、定員以上集まれば賃金を下げ、定員を割れば賃金を上げる
という仕組みに変えることにした。
そして、食糧調達班は、調達したモノを売らせる。しばらくの間は正平が買い取り貨幣を渡し、
買い取ったモノを市場に並べる。物々交換でも貨幣でもどちらでもいいが、
保存の効く貨幣が中心に取引され始めるだろう。
さらに貨幣を集めるメリットとして、VIP車両のホテル代にすることとした。
最初は安めに、人気が集中するたびに値段を少しづつ上げる計画である。
MP通貨からMPを取り出すにもまた魔法が必要だった。
ドワーフはほとんどが習得しているが、それが習得できる魔法石はあえて貰わなかった。
それはまだ必要ないだろうと思ったからだ。
自身も大量のMPをその身に宿しているのでMP通貨から取り出そうとは思わなかった。
かくしてMP通貨経済が回り始めた。
まずは、草原の駅で市場を開かせた。
そして余剰分は第二草原駅へ持って行った。
そこでは、数人のドワーフが市場を開いてくれていた。
人間も何人か常駐してそこで市場を開いている。
タンク車両から水を調達できるようにしてあるが、
ドワーフはこの水にも値段を付けた。
水代わりに酒を飲むドワーフにとって水は貴重なものだった。
鉱山でも水は調達できるが濃厚なミネラルを含み超硬水であった。
飲みすぎると腹を下すほどの。
軟水である川の水に大きな価値を見出したのだ。
銛、スコップ、のこぎり、釘とあらゆる金具を売りにだしてくれた。
こちらも、ミルク、卵、羊の毛に余った海産物。すっぱい果物などを提示した。
どちらも最初は物々交換だったが、徐々にMP通貨で取引するようになっていった。
そして値段も落ち着き始める。
ドワーフは時折酒も商品として持ってきてくれた。
これが、人間側にとっては非常にありがたい商品だった。
娯楽の少ない世界においてこの嗜好品は貨幣を稼ぐ大きな励みとなった。
徐々に貨幣での取引が定着し始めると、値段も安定していった。
それに伴い、ドワーフと人間の交流も徐々に広がって行く。
ドワーフ達は、第二草原駅までしか足を運ぶ事は無いが、
人間に対しては非常に友好的に接してくれていた。
いつの間にか12人目の近衛が誕生していた。
ドワーフの女性ケットである。人間の幼女のような姿をしている。
非常に力持ちで引きしめられた筋肉を体の内側に隠しているようだ。
エルフの近衛について言及された際に、ドワーフ達も同じように
正平の側近を付けたいと申し出たのだ。
ドワーフは暑苦しいからと断ったら、ケットならどうかと言ってきたのだ。
暑苦しくなかったし、エルフの側近もいることだから、別にいいかと承諾した。
ケットは明るく元気な子で、幼女の外見と違い中身は大人の知性が秘めた女性であった。
市場がうまく機能しているのをみて、エルフのニエルもエルフ達を参加させたいと申し出てきた。
それならとおなじものを始まりの駅に開いた。
この駅は、エルフに配慮して、探索を終了した拠点であったが、
ニエルがエルフ達にこの件を話、彼らも乗り気になった為に、
市場としてのみその場所を人間側に開放したのだ。
駅の近くの木々を倒し、根っこを掘りぬいてちょっとした広場を設けた。
そこに、エルフは商品を持ち合って市を開いた。
人間も一人か二人そこに常駐するようになり、
ドワーフの市場と、エルフの市場を往復するだけで
ちょっとした財をなした者も出始めた。
基本的に列車は、人間には無料で乗れるようにしていたのだが、
全体にそこそこのMP通貨がいきわたったので、乗車運賃を取り始めた。
1駅間を5MP通貨とした。
このときにドワーフの街と第二草原の区間も10MP通貨から5MP通貨に値下げした。
エルフ達はMP通貨からMPを取り出す術は持っていたが、
そのように使うよりもドワーフの製作した道具を買う目的で使った方が遥かに有用であると知った為
交換の対価としての通貨そのものに価値を見出した。
一部のモノ好きなエルフが電車に乗りたいと言い出したので、エルフにもMP通貨を払い利用する術を
教えた。ついでにドワーフにも他の区間の利用許可を出した。
しばらく後に、エルフも直接第二草原駅まで買い出しに行くようになり、
そこで店を開くエルフも出始めた。
ちなみにまだ草原の駅は人間だけの市場となっている。
その理由は、正平の牧場などが介入している為に、煩雑にしたくなかったからである。
その代わり、第二草原駅は、完全に自由な取引がなされていた。
第二草原駅は常に食糧が調達できるくらい賑わい始めた。
ここでは、人間の近衛の1人が何人かの部下を連れて市場を仕切っていた。
彼らは、エルフとドワーフの文化を学び、それを伝える役目を負っていた。
治安をまもり汚物の管理なども行い始めている。
区画の整理をし、市が雑多にならないように、広い道を設定したり、
廃棄物が散乱しないように、捨てる場所を一か所に決めたりした。
3種族が混在する第二草原に家が出来始めた。
貨物車を製作した為だ。
これをMP通貨でまるまる利用可能にしたことで、
石材や木材がこの草原の真っただ中に簡単に運んでこれるようになったのだ。
エルフが木材を、ドワーフが石材をそれぞれ運び込み、店舗兼住居とした。
最初はそれぞれの種族が単独で建築していたのだが、
徐々に技術や素材を交換し別種族が協力して建て始めた。
他の駅でもロッジ程度の家は出来始めていた。
それは、ドワーフとの取引により調達可能となったオノやのこぎり、ミノのおかげである。
近代的な大工はそれでかつての家を建てる技術はほとんど持っていなかったが、
それをすでに予想して結構な数の宮大工がメンバーに含まれていた。
ようやく彼らの本領発揮とばかりに、徐々に家が立ち並び始め、
VIP車両とはいかなくても、比較的まともな人間らしい生活が広がり始めた。
■人類初の魔法習得■
交流が始まる少しまえに、魔法石を一般公開した。
<小さな火>MP3
この世界の魔法の仕組みを人々に説明したのだ。
そして、普通の人間に魔法を使わせた。
これは、大きな驚きを持って受け入れられ、
何人かはこの世界を選んだ事に心の底から喜んだ。
当初、使用料を取ろうと思ったが、
なるべく早くより多くの人に魔法を体験してもらいたかったので、
一番人口の多い草原の駅に公共施設として自由に利用できるようにした。
早くて3回、遅くとも20回使えば魔法石無しでも使えるようになるみたいだ。
もちろん、正平も<小さな火>MP3は習得済みである。
ドワーフから購入した、魔力計なるものも誰でも使えるように公共物として設置した。
これは、自分のMPを知ることができるのだ。
最大MP1000まで計測できる。
当然、正平のMPはカウンターを振り切るので測れない。
しかし、人間程度なら十分である。
最大MPは平均が10であって、結構個人差があった。
なんと、最大MP50をもつ一般人も中には居た。
彼は、元王族らしい。何かあるのかもしれない。
彼らには造幣機械の管理を任せることにした。
又自らのMPで造った貨幣は自分の物にしてよいとした。