■02 そこから新しい文明が始まった■
正平の周囲3mから周りを取り囲むように人垣ができた。
正平の世界を選んだ人たちだ。
その数実に8万人。
7万人ほどが日本人で、あとはそれ以外の人達である。
日本以外の人々は総じてそのファンタジックな世界に惹かれてきた人々だ。
それも、一刻も早くその世界を見たいという種類の人たちであった。
しかし、その趣向が彼らを滅亡の危機から救ったのだった。
正平の周りにはいまだ裸の状態の人々がこちらに視線を向けている。
その光景は一種異様で、中学2年生である正平には恥ずかしいものだったが
それよりも大勢の人から注目される状況からくる緊張感の方が上回っていた。
正平はこの世界を選んでくれた人々に感謝と、励ましの言葉を送った。
それは、中学2年生にしてはなかなか立派な挨拶で、近衛の人から徐々に拍手の波が広がって行った。
正平の習得した魔法は3つ。実はかなり実用的なものだった。
魔法がどのようなものかは実は誰もしらない。
<列車・顕現> MP2000/1車両
<レール・顕現> MP25/1m
<駅・顕現> MP9000/1駅
正平の最大値 MP500000(半日で全回復する。ただし精神力の消耗は別)
人間の最大値 MP10
これを魔法と言っていいのか、これが出来た所で魔法の世界と言えるのか難しいところである。
しかし、エルフ達に見せてもらった魔法は炎を出したり、植物のつるを操ったりと
非常にファンタジーなものだった。
とにかく魔法を発動することにした。
大衆が見守る中それが行われる。
まずは、レール。
二本の鉄のレールが出現し、その下に石の敷物と大きな砂利が敷かれていた。
正平が手をかざした先へグングン真っ直ぐに伸びていき、途中塞いでいた木は消滅し、
丘に沿って伸びること無く、丘自体も消滅し、渓には鉄橋がかかり、山はトンネルが掘られた。
完全に真っ直ぐ伸びるため先が見えるのだが、あまりにも先の方まで伸びたために
最終地点がとうとう見えなくなった。
実際は見えなくなったところで魔法の効果が届かなくなっていた。
それを見ていた大衆からはどよめきが上がった。
予め、この列車関連の魔法しか使えないと最初の挨拶で説明していたのだが、
かつての地球で、いったん文明がリセットされると何度も喧伝されていたため
(ぎりぎりまで文明を味わい、最初で最後の先遣組に志願させない為でもあったのだが)
少なくとも自分の代で、もう文明に触れるのは不可能と思っていた人々は
見慣れた文明の一端を垣間見、大きな希望と、正平を選んだ自分の選択眼の正しさに
喜びを抑えられなかった。
レールは隣にももう一つ設置し、上下線分設置した。
あとで、増やすと面倒な為に最初から2本設置することにしたのだった。
そして次に駅を出現させた。
大した造りでは無かったが、0からスタートする人々にとってはこれ以上ない拠点と言えよう。
改札などの機械的なものは一切なく、ただ、向こうのホームまで続く階段と通路があり、
とうぶん雨風を凌ぐためには十分と言える。
駅が出現した時にわざわざレールも4本に分岐されていた。
これは、駅に停車する列車と通過する列車の為のものだ。
そして、最後に列車である。
レールの上に、ブルートレインのような列車が出現した。
これには、本当に大きな歓声が上がった。
なぜなら、その列車で暮らせるのだから。
中は、すべて寝台が設置されており、いきなり近代レベルで寝泊まりできるスペースが出現したのだ。
その後も次々と列車を出現させていく。
全てに動力はついているようだが、運転席のある車両だけが操縦できる。
もとの世界の列車のように電力で走るというわけではなく、どうやら魔力を消費して走るらしかった。
大容量をもつ魔力バッテリーが内臓されており、正平は魔力を満タンまで補充できた。
10両編成が完成するごとに、裸の人々を中へ入れて、操縦方法を教え少し先の方まで運転させた。
一つのベッドに最低でも2人以上乗ってもらい、早い段階で全員にいきわたらせるようにした。
ベッドには掛け布団があり、衣類の代わりに利用した。
正平は、何度かこの魔法を使っており、ゲートからはかなり遠い場所で
この魔法を試していた。
それで、なんとなく気にいらなかったのですぐに消滅させた。
同じ魔法で消滅させる事もできたのだ。
ちなみに、この世界では生物はだれしもMPを持っている。
ただし、才能のように個人差があり、人間は平均して10ぐらいであった。
そしてこの力は12時間で全回復するらしい。
正平のMPは現在50万ぐらいである。それは彼がもはや人間ではなく創造神であると言う事の証左といえた。
正平自信も未探索の領域にレールを掛け、一番最初に創った車両に乗り込み、どんな地形か見て回ることにした。
ある程度離れたところで、大きな湖の近くに来た。
水も奇麗で飲めそうなので、そこを拠点にすべく2つ目の駅を造った。
そしてまたしばらく行ったところで、広い沼地が広がっていた。
近くに稲のような植物が生えていた。
ひょっとすると元の世界の物と同じよな物で食糧となる穀物かもしれない。
そういう期待もこめて、3つ目の駅を設置した。
次に鉄橋を渡り、トンネルに入った。中は光源がない為真っ暗だった。
そのまま結構な距離を通過し抜けた先は、左手に巨大な湖、ひょっとしたら海かもしれない
水平線が見えるほどの巨大な水たまりが広がっていた。
魚介類が調達できるかも知れない。
トンネルを抜けてしばらく砂浜が伸び岩場に差し掛かったところに4つ目の駅を造った。
さらに先へ行くと、水たまりが突如終わり、草原が広がっていた。
家畜を飼うには非常に良さそうなところだ。
もう少ししたところで、レールは終わっておりここら辺に5つ目の駅を造って
今回はここで終わる事にした。
それぞれ
1、始まりの駅
2、美しい湖の駅
3、稲穂の駅
4、海の駅
5、草原の駅
と名付けた。
草原の駅に8万人全てを集めて、今後の方針を決める事にした。
草原の駅には駅を設置する直前にレールを並列に複数置いた為、
出来た駅はかなり巨大なものになっていた。
家畜用に出した、消費する魔力を抑えることで造り出せる貨物列車に収容し
すでに放牧を開始していた。
そこら中に生えている草をちゃんと食べていた。
住む場所も重要だが、もっとも重要なのは、水と食料であった。
水は問題なさそうだが、食糧の調達が目下の急務である。
家畜は食糧として大量に消費されることが予想されていたために、
かなり多めに持ってきていた。
それでも、8万人もいればそれほど持たないことは目に見えていたし、
食糧の現地調達か可能かどうかも不明なので増やしたかった。
海の駅の近くの広大な水たまりは塩分を含んでおり、暫定的に海とした。
湖は真水であったために、これを飲み水とした。
今のところ、飲み水が調達できるのは、始まりの駅の清水と、美しい湖の駅の湖だけである。
ここを拠点とし周囲の探索をすることが決まった。
服は、ブルートレインにあった掛け布団を体に巻くようにして使った。
これらは、居住区が列車や駅から外れた人、探索の任務を帯びた人に優先的に充てられた。
他の人は葉っぱと蔓を使って局部だけでも隠せるようにした。
そして、刃物として使えそうなモノが見つかり次第、羊の毛から服を作る予定である。
エルフの居住区を知っているのは、まだ正平だけである。
これは正平がエルフと連れてきた人間両方に配慮した為である。
エルフとの交流で知ったことは、出会えば多分人間が殺されるだろうと予想してのことだ。
正平の言う事はたしかに聞くが、厄介事になるのは目に見えていた。
正平は、<列車・顕現>の魔法を重ねがけすることでいろんな種類の列車が出せることに気付いた。
それにより、タンクを積んだ車両が出せた。これで、水を吸入し、水の調達が面倒な遠隔地にも
拠点を置く事ができるようになった。
家畜を消費しない、鶏の卵は非常に貴重な食糧元であった。
出現させたレールなどを駆使して、フライパンのようなものを造りそこで卵を焼き
僅かずつを全員に配った。
牛の乳も重要な栄養源となった。
早急に現地で調達できる食糧を見つけなければならない。
野生の動物に、魚、自然になっている果物なんかをまずは見つける必要があった。
海で魚介類を食べられる魚介類を調達する班を1組10人、100班。
かれらは先に森へ行き、道具の調達した。
サバイバル経験者を1班に最低1人を組み込ませ行動を開始した。
次に、自然に生えている果物の調査、生態学者をそれぞれの駅の1人づつ配置した。
そして、それぞれの駅から、森の方へ目印を付けつつ食べれそうなモノを見つける探検に出かけた。
どの駅からも10班ずつこちらもサバイバル経験者を最低1人入れて出発だ。
次に岩場から刃物の代わりになりそうな石を調達する班が3組。
葉っぱを束ねて服を造る班を20組。
燃料の薪を調達する班を10組。
試験的に居住区を造る班を全ての駅にそれぞれ2組ずつ。
あとは、家畜を見張る班に、その他の雑用や取り決めをする班などに分かれた。
組織図も正平を頂点に、サバイバル経験者やもともとの指導者であったものなどが
比較的ヒエラルキーの上層に来るように配置した。
班のトップである10人長、それをまとめる100人長、さらに上に1000人長
そして、近衛が事実上の10000人長という感じである。
ただし、今のところそれぞれの長が10人に指示を出しまた10人に指示を出すと言うだけである。
近衛は10人居るために、7人が10000人長、3人が正平の直接のサポーターである。
正平の家族だけが組織図から外れていた。サポーターの近衛1人が彼らをまとめてくれている。
100人グループの中になるべく一家族が収まるように配慮された。
しかし、1班ごとにやる事が決まっており、なるべく作業に沿った人選がなされる為
1班に1家族が収まる事は滅多になかった。
一時的な住居として10班、つまり100人ごとに1車両を占領した。
あぶれた班は、駅の屋根のあるスペース。それでも無理な場合はとりあえずホームである。
草原の駅は全ての車両が収容できるように造った為に、建物部分が大きく、かなりの人数が収容できた。
駅から東へ行ったところに川が発見された為に、いよいよ人類の拠点としての色合いが強まってきた。
線路や列車をじゃんじゃん追加したいところなのだが、
魔力を消費するとき同時に精神力のようなものも消費するらしく、
そうそう連続で出来ない事が判明した。
恐らく何度か使う内に慣れるのだろうが、消耗する精神が及ぼす苦痛は、
少なくとも普通の人間が死ぬレベルである。
刃物がなければ家畜の解体も一苦労である。それどころか殺すことすらままならない。
最初皆が口にできたものは、海で取れた海藻と小さな蟹に二枚貝、
いくつかの探索隊が見つけてきた果物だけであった。
それらはあえて全体で分けるようなことはせずに、1000人ごとのグループで分けることにした。
そして、それらを物々交換で他の物と交換できるという形をとった。
これによりある程度の成果主義をとるものとした。
食糧の調達班の割合が少ないグループが不利になってしまうために、取れたものの何割かを徴収し、
それらを調達班の少ないグループへ割合に応じて還元した。
貨幣の代わりになるものを探した。
とりあえず人類の歴史に倣って貝殻で代用することにした。
家畜はとりあえず正平の所有物とし、飼育員も特別な1000人のグループに振り分けた。
やはりまともな服がないのは致命的な問題だった。
鋭利の葉で傷だらけになる人、擦り傷からたちまち破傷風に掛かる人、
服が人類にもたらした恩恵の大きさを噛みしめさせられた。
正平はエルフの集落へ赴き機織り機を譲ってもらうことを提案した。
しかし、世界の創造者たる正平は人間もエルフも対等で同じぐらい大切に感じていた為に、
ただ譲って貰うということに強い抵抗感を感じた。
よって、連れてきた家畜とその技術者の派遣を交換条件に提示した。
エルフは、承諾し、鶏の10羽と交換するという約束をしてくれた。
草原にそれぞれ出来つつある粗末な柵の囲いの一つから管理者にこの事を伝え、
技術者1人と供に鶏10羽を持ちだし列車で始まりの駅まで運んだ。
そこで初めてエルフは正平以外の人間を見た。正平が間に入らなければ
その粗末な姿に脆弱な魔力、弱そうな躯体に確実に殺すほどの生物的な差を感じたが
正平という絶対者の頼みでしかも公平な条件に承諾した。
それでも、エルフの活動領域に正平と伴わず許可なく侵入した場合は、
命の保証は無いということを伝えた。
正平は、仕方がないと現状のエルフと人間の生物的、文化的な格の違いが理解できている為に承諾した。
その事を伴った近衛に伝えた。
エルフと人間の使う言葉は違った。
正平はエルフの言葉は分かるし、エルフも正平の言葉が分かったが、
どちらも言葉に魔力を持たせ単なる記号付けの音でなく、力を持った言霊として会話出来る為に
日本語で石と言っても水のつもりで発声すればそのように伝わるのだ。
それでもエルフは普段はエルフの言葉でしゃべっている。
しかし、感の鋭いエルフは相手が必死に伝えようとすれば、元の世界で違う言語を操る者同士の
ジェスチャーを交えた会話よりもよほど理解が早かった。
正平と1人の技術者と鶏10羽による初めての人間とエルフの交流を記念してささやかな宴が行われた。
食べるものは薄味で濃いものになれた人間の舌には物足りなさを感じすることもあったが、
この世界へきてまともな食糧がなかなか手に入らず腹をすかしていた技術者と
近衛達は久しぶりの満腹感に頬と涙腺が僅かばかり緩んだ。
技術者は自らの使命の重大さを十分理解していた。この世界で、いや人類史上初めての
人類以外との交流となるのだ。
ちなみに正平はもはや人間とは言えない。出自が人間の人間に味方してくれる創造神である。
技術者とエルフの交流が上手くいけば次の段階である物々交換を始めたいと思っていた。
まだ、試験的に代用通貨として海に落ちていた奇麗な貝殻の運用を始めているが、
まだ物々交換が主流だし、エルフ自体が物々交換を行っていた為、
最初の市場で行われるのは物々交換が主流となるだろう。
宴を終えて一晩泊まり、帰りには機織り機を運ぶ近衛と、
その使用方法を伝えるべく遣わされた美しいエルフを1人伴って始まりの駅にやってきた。
どの駅にも何人かの人が常駐しているし、駅を拠点に探索を行っている。
始まりの駅は、エルフの集落に一番近い為に、予め探索範囲を制限している。
その為に常駐する人数は他の駅よりも少ないが、それでも人は居た。
エルフを初めて見る人々はその美しさに目を奪われ、みな恭しく挨拶を交わした。
言葉はわからなくてもエルフはそれが友好的なものであることは理解した為にほほ笑みで返した。
しばらくして列車がやってきた。話に聞いていた正平の魔法で顕現したモノだ。
エルフは、その巨大さ、纏う魔力の膨大さに正平の偉大さを感じた。
人間なぞよりも自分たちの指導者になって欲しいと思い、人間に嫉妬を感じた。
正平一行は列車に乗り込むと一気に5つ目の駅「草原の駅」まで列車を走らせた。
窓から見える景色にエルフは楽しそうにはしゃいだ。
エルフは、元の世界では人間達がこれを造っていたと聞き、人間の評価を数段階引き上げた。
エルフは、人間を大事にする正平の意図を理解したのだった。
正平の乗る列車は他の列車とデザインが違う。
黒い外装に金色の模様で装飾されており、あたかも王の専用列車のような風体である。
内装も豪華で高級なホテルを思わせた。
製作に掛かる魔力も通常の十数倍かかる。
この列車は現在2車両だけ製作されており、
ロビーと食堂用の車両、寝泊まりするための車両となっている。
現在正平以外では家族が許可なく利用する事を許されている。
そして通常は、正平とその許しを得てお供する者だけが乗車を許された。
この技術者の交換と機織り機と鶏の交換は8万人の全ての人間に知らせていた。
それぞれ拠点とする駅に集まり、正平とエルフの乗った列車を歓迎しようとホームに多くの人が
詰めかけていた。
窓を開け正平とエルフは人々に手を振りそれに答えた。
エルフも友好的な振る舞いをする彼らに少なからぬ好感を抱いた。
それと同時に粗末な葉っぱでできた服を見て、哀れに感じた。
エルフはしっかり技術を伝えようと決めた。
エルフの名前を日本語や英語で表現するのは難しい。
そのため、近い音を拾いニエルと名載ってもらうことにした。
正平が付けた名をニエルは気に入ってくれた。
草原の駅につき、たくさんの人に囲まれて粗末な食事によるささやかな宴を行った。
翌日から機織りの指導が始まる。
岩場から刃物に変わる堅く鋭利な刃物を多く調達されていたが、
エルフから特別に鉄製のナイフを提供され、それを使って羊の毛を狩りだした。
羊の毛でもエルフを利用する野獣の毛の代用が十分可能だった。
羊毛関連の技術者が集まり、どんどん毛が狩られ羊毛が集まって行く。
折り機の技術者達はエルフから機織りの技術をどんどん習得していった。
僅か数時間でほとんど習得してしまった人間の技術者達を見て、
彼らが高い知性を持った生物であると理解した。
エルフはあまり情報を提供したがらない。聞かれれば答える事もある程度である。
そんなエルフが貴重で重要な重大な情報を齎した。
なんと、エルフ以外にも亜人種族がいるらしい。
ほとんど交流はないが、彼らの造るものの出来が非常に良い為に、
閉鎖的なエルフをして極たまに物々交換をするという。
鉄製のナイフも彼らが製作したものだった。
その種族の特徴を聞く限りそれはドワーフだった。
そして、エルフがその種族を口にした時、予想通りドワーフのイメージが言葉とともに流れてきた。
正平がこの世界で最初から知っていた種族はエルフだけである。
エルフにも話す内容に好き嫌いがあり、エルフや自然、地形や魔法とあまり関係ないことを話すのが
好きでなさそうだったため、他種族の事は聞いた事が無かった。
しかし、道具がどうやって造られたのかその調達方法に話が及んだ時にこの事実が発覚したのだ。
すぐさまドワーフと交流を持つべきという意見が出た。
当然正平が介入すれば、交流が成立するであろう。
ドワーフといえば有能な鉱山技術者であり、又有能な鍛冶師である。
金属が人類にもたらした恩恵は凄まじい。
列車とレールは見た目には金属なのだが、金属製の他の用途で利用すると暫くしてぼろぼろになる。
どうやら決まった用途で出された魔法は用途から外れると魔法の効果が弱まりやがて消えてしまうようだ。
その為どうしても現地で採集できる金属とその製品が欲しかった。
ニエルによると、旅のエルフは草原の何処か鉱山がありそこに集落を形成しているらしい。
旅をする変わり者のエルフが齎した情報だという。
草原はかなり広かったが、丁度線路を伸ばしている遥かな先に僅かな地形の変化が見て取れる。
ひょっとしたら、それが件の鉱山かもしれない。
早々、線路を伸ばすことに決めた。
機織り機による服の製作は日産10着程度である。
装備した人間の活動力は飛躍的に向上した。
機織り機は交代で休むことなく織り続けられた。
平行して、絞めた家畜の皮を利用し靴を製作した。
現在家畜はおよそ
鶏2000羽
羊1000頭
牛250頭
馬100頭
である。
あぶみ無しで馬に乗る事は困難である。
最近ようやくそれに耐えうるものが造られ始めた。
乗馬も徐々になされていく予定である。
草原には、遠方に敷いたレールと並行して川が流れていた。
ここから飲み水を調達しつつ、近くに畑の製作が検討し始められていた。
まともな農具はなく、木片を使った効率の悪い仕事であるが、
徐々に畑らしいものが出来始めると、それを見る者全てに大きな希望をもたらした。
食べる事のできる作物をいくつかエルフに聞く事が出来た。
それらを森から採取し、食糧にしつつ一部を畑に植えかえる。
種が採取できれば残らず耕して空気を含むフワッとした土に埋め込んでいった。
果物のなる木もいくつか発見された。どれも見たこと無い形状をしている。
味はどれも薄く酸っぱく僅かな甘みがある。そしてとても匂いがする。
品種改良されたものになれた現代人にとってはおいしいと感じにくいものだが、
現地で採れる貴重な食糧であった。
非常に温暖ですごしやすい気候であったが、抗生物質も薬もない世界では
家畜も人も抵抗力の弱いものから順に死んでいった。
ある程度覚悟していたことだが、順当に老人から亡くなっていく。
人々の価値観も徐々に変わり世界に慣れ始める。
死が当たり前の物として身近にある事をだれしもが実感していた。
野獣が出没する。
大した装備を持たない人々は簡単に犠牲になる。
家畜も目を離すと一気にやられることがあった。
正平が草原の駅付近に居る間は、
その膨大な魔力の気配に野獣は近寄らず被害はほとんど無かったが、
しばらく別のエリアで滞在すると一気にやられた。
柵が完成するまでは正平になるべく草原の駅付近を拠点に動くようにした。