表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新選組秘録―水鏡―  作者: 紫乃森統子
44/219

第七章 速戦即決(6)


 土方と沖田との間に挟まれる形で腰をおろしていた伊織は、ぐるりと集合した面々を見渡した。

(やっぱり、馬詰さん父子は来てないか……)

 平隊士、馬詰神威斎、信十郎の父子の姿が、未だ見えなかった。

 この父子、緊急出動のこの日に、脱走を試みる。

 予めそのことを知っていた伊織は、一応までに二人の名を井上隊に記していたが、元より頭数には考えていない。

 実際、現時点でその二人だけが会所に到着していないのだ。

 これはまず、間違いなく脱走したのであろう。

「編成を発表する!」

 土方が声を張り上げた。

 ざわめいていた隊士たちが、瞬時にシンと静まり、土方に注目した。

「まずは近藤隊! 局長以下、沖田総司、永倉新八、藤堂平助、武田観柳斎、浅野薫、安藤早太郎、新田革左衛門、谷万太郎、奥沢栄助」

 名を呼ばれた隊士は、それぞれ短く返事をする。

「次に土方隊。原田左之助、斎藤一、島田魁、林信太郎、川島勝司、谷三十郎、伊木八郎、尾関弥四郎、松原忠司、酒井兵庫、近藤周平、そして高宮伊織」

 土方隊として名を呼ばれた伊織も、皆に倣って返事をした。

「これ以外の者は皆、井上隊に配属する」

 土方の声が一括りしたとき、伊織はふと、隣の沖田の様子を伺った。

「沖田さん?」

「! あ、はい? 何です?」

 声をかけると、沖田は少し慌てたように伊織に顔を向けた。

 心なしか、いつもよりぼうっとしている気がする。

「沖田さん、何かちょっといつもと違いません?」

 気遣って尋ねると、沖田はすぐに普段の表情に戻った。

「何言ってるんですか、高宮さん。別に変わらないですよ? 高宮さんこそ、今日は様子がおかしかったじゃないですか。左頬も腫れてるし」

 逆に沖田から指摘され、伊織は反射的に頬を押さえた。

「土方さんに怒られましたね? まったくー、一人で暴走するからですよ?」

「……すみません」

「あはは。いいですよ。土方隊で頑張ってくださいね」

 沖田は以後も変わった様子は見せず、伊織はそれ以上の詮索はしないことにした。

 会津藩の兵を待って、新選組は会所に留まる。

 祇園祭りの囃子も、徐々に盛大さを増してきていた。





【第七章 速戦即決】終

 第八章へ続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ