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新選組秘録―水鏡―  作者: 紫乃森統子
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第二十七章 多事多端(10)

 

 

 咄嗟に三浦かと身構えたが、どうも違うようだ。

 二人分の足音に、話し声。

(……ん?)

 声のする方へ目をやる。

(山南さんと、伊東さん……?)

 こちらには気付いていないようだが、和やかに談笑しているように見える。

「あの子は若いが、少し侮れないところがあります。人を斬ったこともなかったのが、池田屋では、腹を切った宮部の介錯をしたという。導き方次第では、どう育つか」

「ほほう、随分肝が据わっているんだね。流石は土方君のお小姓、なかなか面白い」

(んお?! 私の話!?)

 伊織は咄嗟に縁側から障子戸の陰に潜む。

 まさか盗み聞きされて困るような話をしているわけでもないだろうが、何となく、身を隠してしまった。

「会津の出だと聞いたけれど、それで彼はいずれは会津に戻るつもりなのかな?」

「……分かりません。でも、戻れるのならば戻ったほうが良いのでは、と私は思っていますよ」

「思想も定まらず、ただ闇雲に動いていたのでは、彼自身の為にもならない。世の中の事に目を向け、その上で己が何を為すべきかを知る必要がある。まだ若いなら呑み込みも早いだろうし、私の講義に一度誘ってみようかな」

「ああ、それは良いかもしれませんね。伊東さんの講義は皆に人気があるし、彼もきっと良い勉強になるはずだ」

「ははは、流石に参謀付き小姓に寄越せとは言えないからね」

(えッ……)

 やはり身を隠して正解だったかもしれない。

 連立って歩き去っていくのを障子の陰からちらりと盗み見る。

「あの二人……」

 山南と伊東とが既に打ち解けている。

 今の話題はさておき、同じく勤皇の同志として気の合うところがあったのだろう。

 事実、伊織の知る限りでも、あの二人の間に何か通じるものがあったようだと推察出来る逸話が存在している。

(伊東さんが、山南さんを悼んで詠んだ唄が……)

 そこまで考えて、伊織は抱えた洗濯物をぎゅっと握り締めた。

 

 

【第二十八章へ続く】


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