2/5
ティラミスの層は嘘でできている
ティラミスの層は
嘘でできている
マスカルポーネの白は
優しさを装った沈黙
言えなかった言葉を
エスプレッソに沈めて
眠れぬ夜の涙に
ビスケットを浸して
ため息の層を塗り重ねる
秘密は底に押し込んで
ココアパウダーで
綺麗に覆い隠す
夜を超えて
冷えるほどに
ほろ苦く薫り立つ
愛してると
同じ甘さと
同じ脆さの
魅惑のドルチェ
真実も虚構も
泡立てれば
滑らかになる
境界線は曖昧に溶けて
どっちつかずな
甘い毒が
苦い慰めに
深く絡み合う
誠実であれと
神は諭すから
ガラス越しの断面も
隙間なく装って
けれど────
隠しきれない味さえも
噛みしめて欲しい夜もある
エリュシオンの
ミントを添えて
銀のスプーンで
救えるのなら
——誰かを
ありのままで
愛せるだろうか
口移しの罪と共に
舌の奥に残る疼き
完璧な愛はきっと
甘いだけじゃない
重ね合わせた嘘も実も
ひとくちで飲み込もう
沈む想いが眠る廟
白と黒のカテドラル




