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1-4.異形の車中

目的地を目視で確認できてから、もう何時間たったろう?

ずいぶん長い時間、車で走っている気がする。

とっくに着いていても良いはずなのに、一向に夕霧邸(ゆうぎりてい)に辿り着かず、窓の外を見ても同じような坂、カーブ、木が並んでいるようにしか見えない。


疲れが出てきたのか、眠気と共にあくびが出た。

そんなふうに気が緩んでいた時だった。


"ボトッ"。ボールか何かがルーフ(自動車の屋根)に落ちた音がした。


そして"ゴロゴロ"、"ゴトッ"。転がるような音が頭上から後ろにかけて聞こえだした。

"ぐちゃ"。なにかが潰れるような嫌な音が発した。

なんだろう?と思い、恐る恐る後部座席から後ろの窓を振り返り見た。


そこには車のトランクに、木のようなものが根を張るように張り付いていた。

昔の怪談によく出てくる柳の木のように、長く垂れ下がった葉は黒ずんでいる。

そして幹の部分は……あぁ、おぞましい……。


つい先程出会ったばかりの人物である"徳松(とくまつ)さん"の顔にとてもよく似た形をしていた……。

そしてニタっと不気味な笑顔を作り出し、目のように見える穴はこちらをじっと見つめた。

バックドアガラスのサイドから霧が見え、「あぁ、またいつもの夢か……」と嫌な気分になった。


しかし、今回はいつもと何か違うことに気がついた。

いつもは現実とは全く関係ない場面から夢だと気がつくが、今回は現実からそのまま夢に移行している。

そして睨むような目が霧から現れない。

(あや)駿(しゅん)。これは夢だよな?なぁ、こっちを向いてくれ!」

そう話しかけると、二人はこちらを向いた。


しかし、彼らの顔もまた木の"徳松(とくまつ)さん"に変わっていた。

「うわぁあああああああ!!??」

"これは夢だ"と理解し、自分に言い聞かせてもなお、あまりの恐ろしさに悲鳴を上げてしまった。


そしてバックドアガラスから"バリン!"という音がなり、頭に今まで体験したことがないような激痛が走った。

「あっ、あああ……」

血が額からポタポタと(したた)る。

目線を上に向けると、額のあたりから木の根っこのようなものが貫通していた。


「がぁああああああああああああああ!!!!!!!」

木の根のような部分は脳みそを養分として成長するかのように、チクチクと脳のあらゆる部分に根を張り出したようだ。

断続的に頭に激痛が襲い、俺は気が狂いそうだった。

その様子がおかしかったのか、前と後ろからケタケタと笑い声のようなものが聞こえだした。


「これは本当にいつもの悪夢だろうか?」

「こんな痛みが本当に夢なのだろうか?」

いつもなら少し冷静になりこんなことを考えられるが、痛みで発狂しそうな俺はそんなことを考える余裕はなかった。

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