1-1.悪夢の霧と恋の行方
1-1.悪夢の霧と恋の行方
夕霧 彩と出会ったのは高校1年の頃。体力がない俺は、スポーツよりも科学が好きで自然科学部に入部した。
彼女とはそこで知り合い、入部から1週間で恋仲になった。
彩の声は心地よく、長く感じる辛い悪夢に悩まされていた俺の心を和らげてくれた。彼女と出会ってから、その悪夢が短く感じるようになったのだ。その時から、彼女には何か特別なものがあると感じていた。
その頃から、悪夢に変化が現れた。霧の中から黒い影が現れ、その影の青い瞳が俺をひたすらに睨む。睨まれるのは嫌だったが、不思議と敵意や悪意は感じなかった。
高校3年の進路調査の時、特に行きたい進路が見つからなかった。そんな時、彩から「実家が観光地を経営しているから、一緒に仕事をしてほしい」と誘われ、移住を決めた。彩と自然に囲まれて過ごすのも悪くないと感じたからだ。
気になるのは彩の兄、夕霧 駿だ。駿は筋肉質でワイルドな好青年。背が高く、茶色のウルフヘアが特徴的だ。少し話しただけで、彼は女の話ばかりする俺様系男子で、やはりかなりモテるらしい。文化系の部活に所属していた俺も、彩と付き合い始めてからこの兄貴に鍛えられ、モヤシ体型が少し成長した。厳しいところもあるが、とても頼れる兄貴だ。
そんな兄貴だが、彩と駿の仲は昔から良すぎるほどだった。
俺と彩のデートから帰ると、二人がペアルックを着ていたり、喫茶店でパフェを一緒に食べ合ったりしていた。同級生から聞いた噂では、夜の公園でキスをしていたとか……。「俺がいるのに、こいつらブラコンか!?」と思うと、現実で悪夢を見ている気分になる。
彩と過ごす時間は、俺にとってかけがえのないものだった。彼女の優しさと微笑みは、俺の孤独な心を温めてくれる。彼女の存在が、俺の中の不安や恐れを和らげ、日々の生活に光をもたらしていた。だからこそ、彼女を奪われたくないという気持ちが強く、駿との関係が気になって仕方がなかった。
俺がこの兄妹の実家に行くもう1つの理由は、二人がイチャイチャしている理由を知り、彼らの関係に割り込んで、彩と駿の恋人みたいな関係を絶たせることだ。
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