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4の結び目 8‐エン結び‐  作者: 不和カプリ
プロローグ
1/6

0.霧の中の幸福と不幸

0.霧の中の幸福と不幸

――

私は見守っております。あなた方の成長(せいちょう)を。

私は見守っております。あなた方の衰退(すいたい)を。

私は見守っております。あなた方の幸福(こうふく)を。

私は見守っております。あなた方の不幸(ふこう)を。


4つの命の(まじ)わりを、私は常に見守り続けます。

たとえ命が()()てようとも。

――


一通の封筒(ふうとう)が我が家のポストに届いた。

差出人(さしだしにん)宛先人(あてさきにん)も書いていない、赤蝋で(ふう)をした少し古ぼけた封筒。その中にはこのような手紙が入っていた。


一見すると誰かの幸せを見守る内容のようだが、この手紙からは「幸せの絶頂から不幸のどん底に落ちる(さま)を見届ける」という気味の悪さを感じた。俺はその手紙をビリビリと破いた。


その瞬間、周りが白い(きり)に覆われた。

正面には人影(ひとかげ)がこちらを(にら)みつけている。


また()()が来たのか……。


そして、後ろからさらに恐ろしい()()の気配がした。


呼吸が乱れ始め、恐ろしさのあまりほんの少しだけ後ろを振り返ると、ふわふわと浮かぶ髪の束が視界に入った。


「まずい。()()()関わってはいけないものだ。」


本能が「逃げろ」と叫びをあげる。しかし、血と筋肉が固まったように体はまったく動かず、重さを感じる。


髪の毛が顔に刺さるように()()ちてくる。


呼吸ができなくなり、意識が遠のき……。


(くちびる)と体にぷにぷにとしたものが触れるのを感じた。


「おはよっ!光太(こうた)!」


「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!何やってんのぉぉぉぉぉ!?」

夢とは違い、柔らかなカールとパーマがかかった少し明るめのブロンズの長髪。その髪が光の加減で輝くように見える。(ひとみ)は深い緑色で、白く透き通った顔は健康的な美しさを持っている。


目の前にいたのは夕霧(ゆうぎり)(あや)、俺の彼女(かのじょ)だ。

どうやらさっきの悪夢は彼女の仕業だったようだ……。


「なんかうなされてたみたいだから、キスで起こそうと思ってね」

そう言って彼女は俺の(くちびる)人差し指(ひとさしゆび)をあてた。


こういうあざとカワイイところ……なんかずるいぞ!

寝起きは悪いままだが、彼女の小悪魔的な笑顔(えがお)がイタズラを許してしまった。


「ほら、起きて起きて!駿(しゅん)くんも車の中で待ってるよ。」

「え?ああ、もうこんな時間か……」


午前5時。朝日(あさひ)(のぼ)りかけ少しだけ明るくなってきている。

俺は今、七緒屋(なおや)から少しだけ離れた都会に住んでいるが、これから住むのは長野(ながの)山奥(やまおく)。田舎……というよりかなりの過疎地域に住む予定だ。


夕霧邸(ゆうぎりてい)……俺が()()しする先だ。


家の名前の通り、夕霧兄妹の実家で同居することになったのだ。

都会の一人暮らしで(つか)れ切り、いつも悪夢のせいで寝不足気味な俺も、この夏からまったりスローライフを満喫(まんきつ)できる。そう思った。


だが、そんな俺の願いとは裏腹(うらはら)に、ここから俺の奇妙な運命の歯車(はぐるま)がゆっくりと(まわ)(はじ)めたのだ……。

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