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救国の勇者様は売れ残り花嫁を溺愛する  作者: 藤乃 早雪
第三章 断罪パーティー
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第18話 お怒りの第一王子

(兄上……ということは、レインベルク第一王子殿下!?)


 思わぬ人物の登場に驚いたローリエは、口をぽかんと開けてしまう。


 確かに、ローブの下から覗く目と髪の色はクレイユと同じだが、凛々しく厳しい顔立ちはクレイユにも、ヨーデル国王とも似ていない。彼は母親似なのだろうか。


「どれだけ連絡をやっても無視。使いを送っても追い返す。俺を出向かせるとは。偉くなったものだな、()()()()()()とやらよ」


 どうやらレインベルク王子は、連絡不精の弟に怒っているらしかった。


 そういえばマリアンヌが、王子から山ほど手紙が送られてきていると言っていた。

 結局、クレイユは返事をしなかったのだろう。どうやら兄弟仲は良くないらしい。


「王城には戻らないことも、結婚のことも、先日お会いした時に伝えましたよね。忙しくて忘れましたか?」


 クレイユは薄っぺらい笑顔を貼り付けて答えた。

 マリアンヌと言い合っている時とはまた違う、ぴりぴりとした空気が流れている。


「父上が許したとしても、俺は認めていない。大体、父上は優しすぎるんだ。お前は王族である自覚を持て」


 レインベルク王子は腕を組み、ぶつぶつと文句を言い続けた。


「結婚は王族の血筋か、せめて公爵家の令嬢としろ。相手はマルトゥール公爵の娘だと思っていたから今まで口出ししてこなかったものを。その女も、随分と図々しいな」


 王子の切れ長の目にギッと睨まれたローリエは、息が止まりそうになる。


(……同じ目だ。モントレイ辺境伯や、お姉様たちと同じ)


 汚いものでも見るかのような、冷たく、軽蔑したような視線。


「身の程知らずめ。お前のような女が本気で愛されるとでも思ったか? どうせ物珍しかっただけだろう。そのうち捨てられる」


 レインベルク王子は吐き捨てるように言った。


 ローリエは急に、先ほどまでクレイユの側で幸せに浸っていたことが恥ずかしくなり、俯いてぎゅっと目を瞑った。


 叶うのなら、今すぐ消えてなくなりたいという気持ちになる。


 王子の態度は何もおかしくない。国王陛下が優しかっただけで、これが普通の反応なのだ。


「断言してあげる。貴女みたいな女はどこへ行っても、一生愛されないわよ」


 ふと、モントレイ伯の屋敷を出る前に、姉に向けられた言葉が蘇る。


(そうだ。私みたいな女はどこへ行ったって愛されない。努力したってきっと無駄だ。今は良くても、迷惑をかけてばかりで、そのうち愛想を尽かされる――)


 うじうじ、ぐるぐると負の思考に陥ったローリエの手を、誰かがぎゅっと握ってくれた。クレイユだ。


「ローリエ。兄の言うことは気にしなくていい。人を愛することを知らない、残念な人なんだ」


 顔を上げると、クレイユはいつもと変わらぬ、優しい微笑みを向けてくれる。

 それから、強い口調で王子に言い返した。


「彼女を傷つけるつもりなら、この国なんてさっさと出ていきますよ。その時は、第一王子に追い出されたと吹聴して回りますけどね」

「確かに、そうすれば俺の支持は地に落ちるだろうな。表ヅラの良さだけは認めてやる」


 レインベルク王子は鼻で笑う。


「兄上はそれを買ってくれているのだと思いましたけど? 貴方はただ、僕を広告塔にしたいのでしょう」


 クレイユは「貴方はいつも正しいけれど、人の心が分からない。だから民衆にも嫌われる」と付け加える。


 第一王子が民衆に嫌われているという噂は聞いたことがないが、ローリエはなんとなく、本当のことではないかと思ってしまった。


 静かに火花が散る中、先に折れたのは兄王の方だった。

 二人の王子に気づいた周囲がざわつき始めていたので、早いところ話を終わらせたかったのかもしれない。


「もういい。その代わり、来月開催される国王の生誕祭には必ずお前も出席しろ。勿論、パートナーを連れてだ。そこで恥をかくと良い」


 王子は溜め息をつき、呆れた様子だった。


「ああ、アルベール兄さんの代役ですね」

「違う。お前はこれまで魔王討伐の大義名分のもと、出席リストから外されていただけだ」

「……生誕祭には、国中の貴族が集まるんでしたっけ」


 クレイユはしばらく考え込んだ後、ふっと不敵の笑みを見せて王子に言う。


「分かりました、パーティーに出ましょう。恥をかくのは一体誰でしょうね」

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