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不穏を呼ぶ「白い包み」 2

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 カルリエ伯爵家のパーティーから一週間。

 わたしは商業ギルドでガブリエルと会っていた。

 黙って出るとクロードが心配するだろうから、執事のフロベールには商業ギルドに行くことを伝えてある。クロードは今日、用事があると言って朝から出かけていた。

 一人で出かけると心配させるのでジュリーも一緒だ。

 ジュリーは別室にて、カイザックとピアスの商談をしてもらっている。秋冬デザインの話と、今後の納入数などの話し合いだ。


「で? 今日はどんな用件? もしかして例の調査を進める気になった?」


 以前クロードがブラック・フォックスに出入りしているようだと教えてくれたガブリエルは、クロードが闇賭博場に出入りしているかどうかを探るかと訊ねて来る。

 わたしはゆっくりと首を横に振った。

 クロードがわたしを信じてくれているのだ。わたしも、クロードのことを信じたい。だからその件はこれ以上の調査を進めるつもりはなかった。


 ……クロードが、そんなところに出入りするはずがないもの。


 信頼には信頼を返したい。何故ならわたしたちは、夫婦なのだから。


「今日はその件じゃなくて別の件を頼みたいの」


 クロードはすぐに、カルリエ伯爵家でフランセットが会っていた男について調査してくれた。

 パーティーの途中で帰宅した中で、わたしが見た男の外見的特徴と一致するのは二人いた。

 一人がアングラード子爵令息。

 もう一人が、ル・フォール侯爵令息である。

 直接二人が一緒にいるところを見たのがわたしだけなので、相手をこれ以上絞り込むのは難しかった。わたしが会えばわかったかもしれないが、クロードが止めたのだ。


 クロードは引き続きフランセットが何をしていたのかを探ってくれると言っていたけれど、わたしの証言だけから詳細まで行きつくのはおそらく無理だろう。

 だけど、わたしはどうしても嫌な予感がするのだ。

 考えてみたら、わたしを毛嫌いして虐げていたフランセットが、ここ最近大人しすぎた。

 わたしが結婚したからもう興味をなくしたとも考えられるけれどどうにも腑に落ちない。

 パーティーのときにわたしを睨んでいたことからも、わたしへの感情が無になったわけではないだろう。


 だったら――、またわたしに悪意をぶつけてくるのではないかと不安で仕方がないのだ。

 わたしだけならまだいいけれど、わたしはもうフェルスター伯爵夫人である。わたしの評判がすなわちクロードの、フェルスター伯爵家の評判になる。以前のようにやられるまま黙っているわけにはいかないのだ。


「わたしの姉、フランセットの動向を探ってくれないかしら?」

「今度は姉か! 君は自分の身の回りの動向を調べるのが好きだな」


 ガブリエルは茶化すように笑ってから、ふと真顔になった。


「まあ、俺はこれでも君のことはそこそこ買ってるんだ。いい目をしていると思っている。だから何か引っかかることがあるんだろう。鬼が出るか蛇が出るかはわからないが……、そうだな、最初の調査は金貨一枚でいい。期間は一週間だ。そのあとの調査は内容によって応相談。これでどうだ?」

「かまわないわ。じゃあ、わたしが知っている情報……と言ってもたいしたことはないけど、この前のパーティーで引っかかることがあったの。その情報を出すから、こちらもわかりそうならお願い」


 わたしはカルリエ伯爵家で姉が男に白い包みを渡していたことを話す。

 ガブリエルは一瞬眉を寄せて、「金貨一枚じゃ安かったか」と舌打ちした。


「何か知っているの?」

「まだ確証が持てないから言えない。だが、そうだな……わかった、約束だ。最初の一週間は金貨一枚。これで調べられるところまで調べよう。乗り掛かった舟だしな。……あと、うまく転べば、うちとしてもメリットがありそうだ」


 よくわからないが、ガブリエルには姉の行動に思い当たる節があったようだ。


「一週間後……情報がまとまったらこちらから手紙を送る。手紙に詳しく書くわけにはいかないから、手紙が来たらまたこっちに寄ってくれ」

「ええ」


 ガブリエルはがりがりと首を後ろを掻いて、はあ、と息を吐いた。


「こりゃあ、もしかしてうちのギルドはじまって以来の大仕事になるかなあ……」


 冗談なのか本気なのかは知らないが、そんな不安をあおるようなことは、言わないでほしかった……。





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