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そうだ、浮気調査をしよう! 3

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 ジュリーという味方を手に入れたわたしは、フェルスター伯爵家で最低限の暮らしを手に入れることに成功した。

 訴える、とジュリーに言わせたことが功を奏したのか、ひとまず生活空間もここ、夫婦の寝室を占拠することができたのだ。


 小説では、結婚してすぐに三階の狭い使用人部屋の一つに押し込められたとあったけれど、当面はその心配はなさそうである。

 使用人もジュリー一人ではあるけれど、身の回りの世話をしてもらえるようになったので助かっていた。食事も持って来てくれる。質素だけど。


 出された食事については、正直毒物の混入が疑われるので、ウエディングドレスに縫い付けられている宝石をいくつか換金してもらって、ジュリーに銀製のスプーンとフォークを買ってきてもらった。

 それ以外にも、着替えがないので、安物でいいからとドレスやワンピース、下着類を買ってきてもらったので、ずっと皺だらけの、ついでに宝石をちぎり取ったからボロボロになったウエディングドレスを着なければならないという苦行からは解放されている。


 ……さて、次はっと。


 クロードと離婚する方法も考えなくてはならないが、その前に必要なのは金策だ。

 最低限の食事はジュリーが運んできてくれるけれど、生活のためのお金なんて渡してもらえないから、必要なものは自分で賄わなくてはならない。


 が、いくら高そうな宝石がいくつも縫い付けられているウエディングドレスとはいえ、いつか宝石も底をつく。

 ジュリーの仕送りのためにも、お金は必要だし、今後わたしが自由にできるお金がなければ、離婚後に路頭に迷うことにもなりかねない。


 そこでわたしは、ジュリーにわたし名義の銀行口座を開設してもらってきた。

 今後、お金を稼いで、余った分はここにプールしていくのだ。


「奥様、こんなにたくさんのレース糸、どうするんですか? それからこのピアスも……金具だけですけど」


 ジュリーに大量のレース糸とピアスの金具を買ってきてもらったわたしは、にやりと笑う。

 前世でハンドメイドアクセサリーにはまっていたわたしは、元手が少なくてすむけれど、比較的売れ行きの良かったレースで編んだ飾りをつけたピアスを作ることにしたのだ。

 この世界にもピアスはあるのだけど、ピアスと言えば宝石という固定概念があって、価格が高いので一般市民まではまだ普及していない。

 そこへ、安価で可愛いピアスを登場させたら、売れるのではないかと考えたのだ。


「ふふ、できてからのお楽しみよ! できたら商業ギルドまでおつかいを頼むことになるけど、いいかしら?」

「それはいいですけど……あの、わたしも見ていていいですか?」

「もちろんよ」


 ジュリーはわたし付きのメイドになったから、他の使用人の近くにはいづらいらしい。だから極力わたしの使っているこの夫婦の寝室で生活をしてもらっていた。続き部屋もあるから、そこを寝室に使ってもらっている。

 わたしは今のところ、様子見もかねて、この部屋から一歩も外に出ていない。

 バスルームもあるし、食事も運ばれてくるから、外に出なくても生活可能なのだ。まあ、軽い軟禁状態のようなものなので、気分はあまりよくないが……実家での生活を思うと、天と地ほどの差もある。


 ……実家はひどかったからね~。でも、わたしがいなくなって、誰が邸の家事をしているのかしら? あ、クロードに援助してもらえることになったから、使用人でも雇ったかしらね?


 ま、あの家のことはどうでもいい。

 もう二度と関わるつもりはないのだ。クロードと離婚したら、もしジュリーが望むならジュリーを連れて、さっさとここからおさらばするのである。


 ……そのためには、まずお金‼


 先立つものがなければ何もできない。

 今のところ、「訴える」という脅しがきいたのか、義母や使用人たちからいびられることはなさそうなので、今のうちにできるだけの準備を進めなくては。

 わたしはさっそくジュリーが買ってきてくれたレース糸の中から赤と緑のレース糸を選んだ。


「例えばだけど……」


 ピアスのモチーフだから、一つ作るのも時間はかからない。

 あっという間に、左右でワンセットの薔薇の花のモチーフが出来上がった。


「え、すごい!」

「小さいから簡単なのよ。で、これを……こうやって、ピアスの金具につけて……どう?」

「すっごく可愛いです‼」


 ジュリーが出来上がったピアスを見てにこにこと楽しそうに笑う。

 ただ見ているのも暇だろうし、わたしは予備のかぎ針をジュリーに渡した。


「やってみる? これを販売する予定なんだけど、ジュリーが作った分はジュリーの収入にすれば、仕送りも楽になるんじゃない? もちろん、材料費はひかせてもらうけど」


 もともとこの売り上げの中からジュリーの給金上乗せ分を渡す予定だったけれど、加えてジュリーも作って販売すれば、彼女の手元に入るお金も増えるだろう。

 わたし付きのメイドだから、わたしが用事を頼んでいないときは暇なので、暇つぶしにもいいはずだ。


「いいんですか⁉」

「いいわよ。ジュリーにはこれからもいろいろ頼みたいし、自分の分の稼ぎが入ると思えば楽しいでしょう?」

「はい!」


 家族への仕送りがあるから、ジュリーはたくさんお金を稼ぎたいらしい。

 もともと器用な方なのか、わたしが編み方を教えたらするすると編み出した。


「いくつか作ったら、商業ギルドに持って行って契約してきてほしいの。まず、他の人が真似しないように、レースモチーフのピアスの特許契約と、販売契約ね。販売は、手数料を取られると思うけど商業ギルドに任せた方がいいわ。わたしたちには売るためのお店がないもの」

「なるほど、わかりました!」

「売値は足元を見られないように注意が必要よ。そのあたりはわたしが最低限確保したい販売価格と、それから最初にふっかける販売価格を書いておくから、それで交渉してきてくれるかしら?」

「が、がんばります!」


 ジュリーも、自分が作った分を売ることになったからか、びっくりするほど真剣な目をしている。安く買いたたかれるとそれだけ手元に入るお金が少なくなるとわかっているだろうから、交渉を頑張ってくれるはずだ。

 わたしたちはその後、いろいろな形のモチーフをくっつけたピアスを三十セットほど作って、ジュリーにそれをもって商業ギルドへ向かってもらった。


 結果は、ジュリーの圧勝!

 わたしが吹っ掛ける予定で出した売値から少し下げた価格……つまり、充分すぎるほど利益が出る価格で、商業ギルドとの契約をもぎ取って来たのである。





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