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【書籍化】円満離婚を勝ち取るため、浮気調査はじめます  作者: 狭山ひびき


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闇賭博と姉の秘密 5

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 ドレスを仕立てたり、パーティーマナーについてコリンナに訊ねたりしながら、あっという間に一か月半が過ぎた。

 今日はクロードの知人宅であるカルリエ伯爵家のパーティーだ。カルリエ伯爵家嫡男であるダニエルがクロードの友人だという。

 カルリエ伯爵は四十半ばの朗らかな伯爵だが、今日の主役は愛する孫娘(ただし、一歳なので肖像画しか参加しないが)で、パーティーを主催したのが息子夫婦のため、自身の友人知人は招かなかったらしい。ゆえに若い男女ばかりが集まるパーティーだ。


「ちょっと派手じゃないかしら?」


 パーティーの支度をすませたわたしは、鏡の前に立って、何度目になるかわからない問いをジュリーに向けた。


「そんなことありません! とってもお似合いですよ」

「でも……」


 鏡に映ったわたしは、華やかなピンク色のドレス姿である。

 オフショルダーで、上半身はすっきりとしているが、スカート部分は薄い生地を幾重にも重ねているためふりふりだ。既婚者なのにこんな派手なドレスを着ていって失笑されたらどうしよう。


「奥様はお若いですし、今はこのふんわりしたスカートが流行なんですって! ドレスを作ったマダムは上級貴族に大人気なデザイナーですし、流行を外すとは思えません。マダムが太鼓判を押したんだから、大丈夫ですって! むしろあんまり地味にしていくと悪目立ちしますよ」

「そ、そうかしら……」


 着飾り慣れていないわたしは、どうしても鏡の中の自分が盛りに盛られているようにしか見えなかった。

 今日は髪を全部上げて、シルバーの髪飾りで止めてある。

 首に輝くのは大きなサファイアのネックレスで、これはコリンナが貸してくれた。

 ピアスは、今日のために少し大きめの宝石を入れたレース編みの手作りのもの。

 流行しているのに、その流行のピアスを作った本人が身につけないのはおかしいと言われて、ピンク色のドレスに合わせて赤い宝石を入れて作ってみた。ガーネットだと思うけど、たくさん仕入れた屑宝石の中から大きそうなものを選んだだけで、宝石の種類までは調べていないからわからない。

 繊細なレース編みのグローブは肘まである。


「ほら奥様、いつまでも鏡と睨めっこを続けていたら、旦那様がしびれを切らせて部屋まで迎えに来ちゃいますよ」

「……そうね」


 そろそろ玄関に向かわなくてはならない時間だ。今更着替える時間なんてないし、ジュリーも許さないだろう。

 やっぱり派手じゃないかなあと思いつつ玄関に向かえば、わたしを見たクロードが目を見開いた後でふんわりと微笑んだ。


「すごくよく似合っている」


 ……だから、クロードはストレートすぎるのよっ。


 まっすぐ誉め言葉を言われると狼狽えてしまうから、もう少し手加減してほしい。


「その……旦那様も、素敵ですよ」


 クロードはライトグレーの薄手のジャケットにズボンという装いで、パーティーだからか髪は後ろになでつけていた。前髪が撫でつけられている分、いつもより表情がよく見えるし……、いつもと違う雰囲気にドキドキして落ち着かない。


「俺なんて君の隣に立つと霞んで見えなくなってしまうよ」


 今日のクロードの誉め言葉はまずい。ただでさえドキドキしているのに、これ以上褒められたら心臓がおかしくなってしまいそうだ。

 誉め言葉の嵐になる前に馬車に乗り込んでしまおうと、わたしはクロードの手を取った。


「い、行きましょう。遅れるといけないし」

「まだ時間に余裕はあるが、そうだな。道が混雑していることもあるし、行こう」


 わたしは見送りに出てくれたコリンナに挨拶をして、クロードと共に馬車に乗り込んだ。

 カルリエ伯爵邸は、フェルスター伯爵邸から歩いて十五分ほどのところにあるが、その距離でも馬車を使うのが貴族である。

 手を繋いだままクロードの隣に座って馬車に揺られていると、緊張からか、ドキドキが徐々に大きくなっていく。


「そう緊張しなくても大丈夫だよ」


 表情が硬くなっていたのだろう、繋いだわたしの手の甲を指先でくすぐりながらクロードが笑った。


「俺の友人の中に君を悪く言うような人間はいない。友人以外の招待客の中でおかしなことを言うやつがいたら、会場から追い出してやるから」


 人の家のパーティーなのに、会場から追い出すのはまずいだろう。

 おそらく今のは冗談だと思うのだが、真面目なクロードが言うと冗談に聞こえない。


「旦那様の側にいたら、大丈夫だと思います」

「ああ! 俺が絶対に守るよ」


 まるで戦地にでも赴くようだなと自分でもおかしくなってきた。おかげで少し緊張が和らいできて、笑う余裕も生まれる。


「君は笑顔が可愛い」


 またまたストレートに言われてわたしが赤くなると、クロードが口の端にちゅっと口づける。


「化粧をしている君も素敵だが、こういう時はちょっと残念だ」


 紅が落ちるからなんて言って笑うクロードに、わたしはもうどうしたらいいのかわからない。


 ……なんか、日に日に大胆になっている気がするんだけど⁉


 世の中の夫婦は、これが平常運転なのだろうか。誰か教えてほしい。





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