デートと懺悔 5
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これでめでたしめでたしと行かないのが、現実の難しいところである。
翌朝、わたしは隣ですーすーと気持ちよさそうに寝入っているクロードの顔を見ながら、ふむ、と考えた。
昨日はクロードに誘われて夫婦の寝室を使ったけれど、彼は紳士らしく「君の気持が伴うまでは」と言って、ただ同じベッドで眠っただけだった。
おそらく、わたしがまだ戸惑っているのに気づいたのだと思う。
昨日はクロードに請われるまま、わたしがプライセル侯爵家でどのような生活を送っていたのかを話した。
さすがに前世の話はできないから、エルヴィール・プライセルとして生きた十八年の話だけである。
クロードは難しい顔をしながらわたしの話を聞いていたけれど、すべて聞き終わると、あまりに世間の噂と乖離があることに愕然としていた。
そしてまた謝罪してきたので、わたしはそんな彼にただ笑うしかなかった。
このまま何事もなければ、クロードとならいい夫婦になれるだろう。そんな予感もしたけれど――わたしだって、問題を忘れたわけじゃない。
……昨日はわたしの話しかしなくて、クロードにブラック・フォックスとフードの女のことを聞き忘れたわ。
クロードの様子から、フードの女は浮気相手ではない気がしている。
もし彼が浮気をしているのなら、あんなに真摯にわたしを見つめることはできないだろう。
だから浮気は疑っていないのだが、問題は闇賭博である。
……クロードが賭博なんてするとは思えないんだけど、でも……。
ただ単に、酒屋として利用したというのも解せない。
何故なら彼は、飲み歩くようなタイプではなさそうだからだ。
夕食のときも、ワインを一杯か二杯程度しか口にしないし、夜に出歩く様子もない。
そう――夜に出歩いていないのだから、ブラック・フォックスに出入りしたのも昼間ということになる。昼間に酒屋? まあ、中には昼間から酒を浴びるように飲む人もいるだろうが、クロードには当てはまらないだろう。では、何の用事だったのか、という疑問が残る。
……うーん。
ベッドに上体を起こして考え込んでいると、もぞもぞと隣が身じろぎする気配を感じた。
「おはよう……どうした?」
少し寝ぼけているような、ぼーっとしたかすれた声。
「おはようございます。まだ、起きるには早いですよ」
「だが、君は起きている……」
本当に寝ぼけているのだろう。クロードがわたしの方に手を伸ばして、きゅっと手を繋ぐと、ふんわりと子供のような無邪気な笑顔を浮かべる。
「不安そうな顔、しなくても……君は、俺が、まも……」
そして、寝た。
すーっとまた夢の世界に落ちたクロードに、わたしはそっと掛布団をかけなおしてやる。
何を言いかけたのか知らないが、幸せそうな顔をしているのでいい夢を見ているのだろう。
まだ考えなければならないことはあるけれど、クロードの寝顔を見ていると眠くなってきた。
「……まあいっか」
今考えたところで、答えが出るわけでもない。
わたしはクロードの隣に横になると、ジュリーが起こしに来る時間まで二度寝を楽しむことにしたのだった。
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