デートと懺悔 1
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「奥様、旦那様と仲良くなられたんですね! よかったです!」
クロードと氷菓子を食べに行くと報告すると、ジュリーは目をうるうるさせて今にも泣きださんばかりに喜んだ。
どうやら、わたしがクロードとの離婚を狙っていると聞いてから、密かに心配し続けていたらしい。
「奥様に対する旦那様の最初の態度はひどいと思いましたけど、旦那様は悪い方ではないんです。きっと、いろいろすれ違っちゃっただけだと思いますから!」
だから、離婚はやめてと言いたいんだろうなぁ。
でも、わたしはまだクロードを信用できない。
彼が小説の「クロード・フェルスター」とは違うという保証はどこにもなく、彼を信じるだけの材料をわたしは持っていないのだ。
……そりゃあ、わたしだって、離婚して一人で生きていくより、ここで生活した方がいいかもしれないってちょっとは思ってるよ? 今のままの環境なら無理に出て行く必要はないかもって思うし。だけど、今の状況がずっと続くかどうかはわかんないでしょう?
ガブリエルから聞いて、クロードが会っているというフードをかぶった女の存在も気になる。
そのフードの女が浮気相手でないとは限らない。
せめてクロードが考えていることがわかれば判断材料になるが、彼が何を考えているのかはわたしにはさっぱりわからないのだ。
いつ浮気するのか、いつ態度が豹変するのか、いついじめられるようになるのか……。そんなことを考えながらの生活は精神的に疲れる。
ここにいて大丈夫だって、安心できるって確証が持てない限り、わたしの頭の中から離婚の二文字が消えることはないだろう。
「はい、奥様。今度は少し右を向いてくださいませ」
わたしのサイドの髪をせっせと編み込んでいるジュリーに言われて、わたしはほんの少し右に頭を傾ける。
今日クロードとデートだと聞いたジュリーは、朝からご機嫌でわたしの支度をしていた。
ジュリーが選んだドレスは白で、クリームイエローの帽子を合わせるそうだ。
だから髪はシンプルにサイドを編み込んでハーフアップにするだけにとどめておくらしいのだが、編み込みにリボンを巻き込んで可愛くすると言って、ジュリーはさっきからものすごく丁寧に髪を編んでいる。
「可愛い奥様に旦那様も惚れ直すこと間違いなしです」
……いや、そもそも惚れられてなんてないわよ。
ジュリーは少々妄想癖の嫌いがあるのだろうか。彼女の中では、わたしとクロードがちょっとした喧嘩をしていただけの夫婦だと思われている気がしてならない。
でも、余計なことを言えばジュリーを心配させてしまうだろう。
ここは黙っておくのが賢明だ。
支度を終え、玄関ホールへ向かうと、クロードがフロベールと立ち話をしていた。
わたしが階段を降りて来たのに気づいてクロードが顔を上げ、目を見開いて固まる。
「ほら、見とれていますよ。きっと惚れ直したんですよ」
ジュリーが楽しそうに耳打ちしてくるものだから、恥ずかしくなってきてしまった。
……見とれているわけじゃないと思うわ。単に、そう……着飾っているのが珍しかっただけで!
心の中でそんな言い訳をしつつ、わたしは少し早足で階段を降りる。じっと見つめられるのに耐えられなかったからだ。
「お待たせいたしました」
「いや、待っていないが……」
わたしを見下ろしていたクロードが、すっと視線を斜めに反らした。
心なしか頬が赤い気がするのは、きっと気のせいだろう。
「い、行こうか」
手を差し出されたので、遠慮がちに手を握る。
「いってらっしゃいませ!」
ジュリーがにこにこと満面の笑顔で見送ってくれた。
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