夫の様子がおかしいです 7
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ふにゃりと、子供のような笑みを浮かべて、エルヴィールがすぅっと眠りに落ちた。
アルフレッドに夫らしいことをしろと言われて、悩みに悩んで、一緒の部屋で休むことにしてみたはいいが、エルヴィールは迷惑だっただろうか。
(いやだが、新婚早々別々の部屋で休むのも、おかしいと言えばおかしかったわけだし)
その原因を作ったのは、ほかならぬ自分であるのだが。
(やはり、違和感があるな)
エルヴィールは、パーティーには一度も参加したことがないと言っていた。
だが、フランセットはエルヴィールは仮面パーティーのようなものに参加して男漁りをしていたと言っていた。
ということは、エルヴィールは嘘をついたのだろうか。
(いや、だが、嘘をついているようには見えなかった。それに、噂通り男漁りをしていたのだとしても、なぜ、仮面パーティーのようなものにこだわる必要がある?)
そもそも仮面パーティーは、既婚者や婚約者持ちが、周囲に知られず享楽にふけるために作られたような場だ。
未婚の、婚約者もいないエルヴィールが、わざわざそのような場を選ぶ必要はどこにもない。
今の時代、女性の処女性にこだわるような風習もないし、結婚相手が決まる前の恋愛は自由だ。
羽目を外しすぎるのはよくないが、パーティーで恋人を見つけたところで、エルヴィールが婚約者のいない未婚女性だった以上、それ自体は咎められることではない。
おかしな噂がたって、健全なパーティーで恋人を探せなくなった後ならいざ知らず、一度も普通のパーティーに参加したことがない、というのはおかしいのだ。
(それに、この前の話も、おかしかった)
妻との関係を修復すべく、髪を褒めてみたら、髪が洗えるようになったからとよくわからない回答が戻って来た。
つまりは、それまでまともに髪を洗えていなかったということにならないだろうか。
だが、それはなぜ?
いくら貧乏でも、風呂くらい入るだろう。
ましてやエルヴィールは浪費家で、派手好き……らしいと聞いていた。そんな彼女が髪も洗えない状況を良しとするとは思えないのだが。
寝入ったエルヴィールの髪に、指先でそっと触れる。
絹糸のように滑らかな、美しい銀髪。
だが、結婚式を挙げたあの日。彼女の髪はここまで美しかっただろうか。
「俺は……、やはり、大きな間違いをしていたんだろうな」
手を伸ばせば触れることができた距離にいながら、本人を素通りし噂が作り上げた虚像を信じた。
目を向けなければならなかったのは、目の前にいる真実だというのに。
「ごめん……」
懺悔のつもりで、彼女の髪の先にそっと口づける。
まだ、間に合うだろうか――
彼女とはじめから、やり直したい。
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