夫の様子がおかしいです 5
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「奥様、旦那様は今日、こちらでお休みになるそうですよ」
「……はああ⁉」
それは、クロードがチーズケーキをくれた三日後のことだった。
ダイニングで夕食を取り終えてお風呂に入ろうとしたところで、ジュリーがいつになく可愛らしい夜着を差し出しながらそんなことを言い出して、わたしは思わず素っ頓狂な声を上げた。
「ここって、ここ⁉」
「はい、そうです」
「ここって、夫婦の寝室じゃなくてわたしの部屋だよね?」
「はい」
「なんで?」
「さ、さあ……?」
ジュリーも、「言われてみたらおかしいな?」みたいな顔で首をひねった。
だけどすぐに気を取り直して、わたしに可愛らしい夜着を押し付けてくる。
「まあ、いいじゃないですか! せっかく旦那様がいらっしゃるんですから!」
……いやいや、よくないけど⁉
商業ギルドで暴露したから、ジュリーはわたしがクロードとの離婚を狙っていることを知っているはずだ。
それなのに何故こうも嬉しそうなのだろう。
「奥様の憂いも晴れたことですし、旦那様もきっと奥様の魅力に気づいたんですよ!」
「何のこと⁉」
「え? ほら、旦那様の浮気調査してたじゃないですか? でも、浮気の痕跡はなかったんですから、奥様としては安心ですよね」
……あー、そう取ったのか~。
純粋で素直なジュリーに、わたしの真っ黒な腹の中を理解しろと言っても難しいだろう。
ジュリーは心の底から、わたしとクロードが仲良くなるかもしれないと喜んでいるようだ。
……冗談じゃないわ~……。
が、わたしはフェルスター伯爵家の嫁である。当主の妻だ。結婚したからには、世間一般的には世継ぎを生む義務が生じる。つまり、拒否できない。
……クロードってば、何を考えて……は! だからご機嫌取りにケーキを持って来たの⁉
どういう心境の変化か、クロードは跡継ぎだけはわたしに産ませるつもりになったのかもしれない。だから、好きでもない相手に歩み寄りの姿勢を見せたのだろう。
離婚狙いのわたしとしては、ここで妊娠させられるのは非常に困る。
何とか逃げる方法はないものか、と唸っていると、ジュリーにぐいぐいと背中を押された。
「さあさあ奥様! 今日は気合を入れてお肌を整えましょうね!」
ジュリーがこの様子だと、逃げ場はなさそうだった。
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