義母がいびってこないんですけど! 1
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……うーん。
ジュリーに義母へ手紙を届けてもらったわたしは、すぐに戻って来た返信を前に、首をぎゅーんと傾げていた。
「奥様、そんなに首を傾けたら首がつりますよ」
「そうねえ」
そうかもしれないけど、だって、あんまりにも不可解なんだもん。
わたしは、軽いジャブ打ちで義母に当たり障りのない手紙を書いた。
要約すれば、こんなピアスを作って販売しています。お義母様もよかったら。
というような内容である。
そしてわたしの予想では、手紙を破り捨てられるか、もしくは罵詈雑言の嵐のような返信が戻って来る……はずだった。
だけど、戻って来たのは、お茶のお誘い。
よかったら明日の午後のティータイムを一緒に過ごしませんか~? そこでピアスについてもいろいろお話が聞きたいわ~。という内容のお手紙だった。
……何故だ⁉
義母は、わたしを嫌っているはずだ。
なのになんで手紙の返信がこんなに友好的なのだろう。
……ここって、本当にあの小説の世界だよねえ?
少なくとも、クロードと結婚するまでの――わたしが前世の記憶を取り戻す前のエルヴィール・フェルスター=プライセルは、小説の通り実家で虐げられていた。
そこまでは小説に描かれている通りだったのに、何故結婚後の様子が違うのだろうか。
……わたしが小説のヒロインと違う行動を取ったから?
可能性があるのならばそれだろうが、かといって、それだけでこうも変化が現れるものなのだろうか。解せぬ。
小説では、小説は今から三年ほどあと……わたしとクロードが離婚したあとで、クロードや義母にはざまあ展開が待ち受ける。
いわゆる「もう遅い」的なざまあである。
クロードも義母も、わたしと離婚した後で、いろいろあって、エルヴィールが実家でいじめられていたこと、男を手玉に取っていたのは姉のフランセットであること、実は心根の優しいいい子(自分で言っていてちょっと照れる)であることを知り、後悔するのだ。
ついでに、クロードが浮気して妊娠させた子爵令嬢は、蓋をあければ散々な悪女で、それもあってクロードは「離婚しなければよかった」と崩れ落ちる。
エルヴィールを虐げていた義母は、クロードが新しく妻に迎えた子爵令嬢に逆にいじめられてひどい目に遭い、子爵令嬢の散財で、フェルスター伯爵家は傾いていくのだ。
だから、今の段階では、義母はわたしをとんでもない悪女だと思っているはずで、友好的なお手紙なんて届くはずもない……のだけど。
……うーん、でもまあ、返信が来ちゃったものは仕方がない。
もしかしたら、手紙は表面的なもので、お茶の席でいじめてくるかもしれないし。
「ジュリー、お義母様に返信を届けておいて」
同じ屋根の下に住んでいるのに、手紙でやり取りするのもおかしなものだけど、最初に手紙を書いたのはわたしだからね。
ジュリーは、そのくらい伝言でいいと思いますけど、と言いながら、わたしの返信を持って行ってくれた。
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