読書をしなさいっ!〜先輩に頼まれて〜
「先輩、何読んでるんですか?」
僕の所属していた読書同好会には、元々は6人会員がいたはずだった。だが、忙しさを口実に1人、また1人といなくなっていき、結果僕と後輩の女子1人だけしか残らなかった。
そしてその後輩は、ことある事に僕にちょっかいをかけてきた。
ある日は、すれ違いざまに大声で挨拶をしてきたり。
またある日は、ベンチに座って読書をしているところに突然現れて自分語りを始めたり。
端的に言おう。邪魔だ。
「先輩〜、無視しないでくださいよ〜!」
今も尚、少し考え込んでいればこれだ。
これ以上は僕の読書意欲の妨げになりそうなので、応答する事にした。
「フィリップ・K・ディックのアンドロイドは電気羊の夢を見るか?だよ。」
すると、まるで水を得た魚のように彼女の雰囲気は変わり、目を輝かせて話題に乗ってきた。
「あぁ!あれですか!真実というものがなんなのか考えさせられる、いい小説ですよね〜!」
憎めないのが、彼女はまるで小説とはこれっぽっちも縁がなさそうな風貌をしているのに、名の知れた傑作小説からそうでないマニアックなものまで、僕が話題に出す小説は今のところ全て知っている所だ。
だが、話す時に妙に勝ち誇ったような顔をするのは、とても腹が立つ。
やはり「読書同好会」という名目をたよりに、読書仲間を探しにここに入会したのだろうか。
正直な話、僕は彼女のような口うるさい性格があまり好きじゃない。その上、この同好会には2人しか居ないせいで、彼女の話し相手は必然的に僕になってしまう。
話し下手な僕では彼女の話し相手にはなれないし、なってやる義理もないので基本は無視をしている。
「そういえば君は、彼氏とかいないの?いるんなら今すぐそっちに行って欲しいんだけど。」
軽くあしらうつもりで言ったのだが、予想外の答えが返ってくる。
「彼氏ですか…私、実はちょっとまえにフラれちゃったんですよねぇ…」
「あぁそう。そりゃごめん。」
確かに、彼女に彼氏がいたと言われればそう見える。
改めて見ると、彼女は性格は置いておいて容姿は整っている。
長い黒髪を下ろしていて、人目を引く程の抜群なスタイル。そして驚くほど似合っているメガネ。
メガネ女子というものは、僕の経験上あまり騒がしい人がいないはずなんだが……
「てか、先輩反応薄くないですか!?私傷心中なのに、さらに傷ついちゃいますよ!?」
「悪かったって。」
「あーあ!傷ついちゃったなー!」
「…悪かったって。」
「そんな悪い先輩を許す代わりに1つ条件があります。」
「できる限り聞くよ。」
「ふふ、じゃあ私と付き合ってください!」
「え?無理です。」
「やった!……って、え?」
彼女は一体全体どういう意図で僕に告白してきたかは分からない。だが、僕は自分の身分をわきまえているつもりなので、全くもって恋愛感情が湧かない。
それに、彼女の容姿から察するに付き合っていたという彼氏も、さぞ格好良かったのだろう。そんな彼氏以上のことが、パッとしない僕には出来そうにない。
「待ってください。ダメ……なんですか?」
「だからそう…」
「これでも、ダメですか?」
そう言うと彼女は何を思ったか服を脱ぎ始めた。
なので僕はさっさと帰ることにした。
「ちょっと待てい!私今脱いでるんですよ?要するに誘ってるんですよ?それなのに何もしないどころか、見もしないで帰ろうとするって先輩ホントに男子なの?オスなの?性欲ないの?」
「だって…別に興味無いしなぁ。」
「興味無いないで片付けられるわけないでしょうが!」
「まぁ落ち着けや。とりあえず服着てからだ。」
「落ち着いたか?」
「うぅ、はい。すいませんでした…」
「じゃあまず聞きたいのが、なんで突然告白してきたんだ?」
「好きになるのに理由っているんですか?」
「む……たしかに。」
まさかの返しに面食らったが、むしろ彼女の純粋な顔を知れて良かったかもしれない。
「ずっと、先輩が好きだったんです!彼氏がいたってあれも、告白するための嘘で…」
「じゃあ、さっきの告白、オッケーにする代わりに僕からも条件をつける。」
「はい……?」
「もっかい脱げ。」
「はいっ!?!?」
「抱かせろ。」
「っ!?」
彼女の顔は、みるみるうちに赤く染まっていき。
「先輩のえっち!すけべ!いいから読書をしてください!」
付き合ったはいいものの、まだまだ先は長そうだ。
自己満