エクスカリバーと泉の精
勇「盗賊の親玉を追ってきたけど、森で迷ってしまった。おっ、あそこに泉があるぞ、ちょっと休んでいこう」
(勇者躓く、持っていた剣を泉に落とす)
勇「ああ! 俺のエクスカリバーが!」
(うろたえる勇者)
勇「どうしよう、どうしよう。潜って取りに行くべきかなぁ、俺、泳げないんだよなぁ」
(ローブを身にまとった人物が泉から現われる)
勇「もしかしてアレは、噂に聞く泉の精!?」
精「あなたが落としたのは、この銀のエクスカリパーですか? それとも金のエクスカリパーですか?」
勇「い、いや、どっちも落してないんだけど」
精「では、ふつうのエクスカリパーですか?」
勇「普通って何だよ! ってか俺が落したのはエクスカリパーじゃなくて、エクスカリバーだから! いい?
”パー”、じゃなくて”バー”だから。何だよエクスカリパーって某RPGのパクリかよ!」
精「そうですか。では正直な貴方にはコレ全部差し上げましょう」
勇「要らない要らない! 投げても1ダメージしか与えられないじゃん!」
精「う~ん、残念です。銀のエクスカリパーを5本集めれば、おもちゃの宝箱と交換出来るのに」
勇「チョ〇ボールかよ!」
精「金のエクスカリパーなら1本ですよ?」
勇「要らねーよ!」
精「そうですか。町の子供はみんな欲しがるのに……」
勇「そんなのは良いから、エクスカリバーを返してくれよ」
精「分かりました。では貴方が落としたのはコレですか?」
(バールのような物を取り出す)
勇「なんだ? それ」
精「バールの様な物です」
勇「バールかよ! 確かに”バー”って言ったけど、そうじゃないんだわぁ。それなら”パー”の方が良かったよぉ」
精「おっ、上手い事言いますね~」
勇「うるさいな! とにかく、バールなんて要らないよ!」
精「あれ? 知らないんですか~? 一部界隈ではエクスカリバールなんて呼ばれている最強武器の一角ですよ?」
勇「どこの界隈だよ!」
精「それに、このバールの様な物が有れば、家のドアとか鍵の掛かった宝箱なんか開け放題ですよ?」
勇「いやいやいや、それ犯罪だから」
精「あれ? 勇者ですよね? しないんですか?」
勇「しないの! この世界の勇者はそんな事しないの!」
精「そうですか~」
勇「とにかく、早く本物のエクスカリバーを返してくれよ」
精「分かりました。では貴方が落としたのはコーラ味ですか? ソーダ味ですか? それともナポリタン味ですか?」
勇「今度はガリ〇リ君!?」
精「いいえ、ガリガリバーです」
勇「どうでも良いわ! もうわかってやってるだろ!」
精「貴方が落としたのはどれですか?」
勇「だから落しても無いし、要らないの!」
精「良いんですか? スティックに当たりマークが有ったらもう一本もらえるのに」
勇「どこで交換すんの!? 今日日コンビニに持ってくの恥ずかしいんだけど!」
精「コンビニ? って、なんですか?」
勇「いや、何でもない。急に頭に浮かんだだけだよ。とにかく! いい加減エクスカリバーを返してくれって!」
精「それは出来ません」
勇「何でだよ!」
精「それは私が盗賊だからです!」
盗賊は逃げ出す。
勇「あっ! 待て!」
地面を見て何かに気づく勇者。
勇「これは、血? それにしても色が薄いな」
地面の液体を舐める勇者。
勇「ナポリタン!」
おしまい