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だいまおう!第2話 3

「聞いた事の無い名前だ、それに魔物の匂いもする」

「ふん、魔界の入り口に蓋をしといてどの口がほざく」

「……なるほど、魔王か」


 ナルの体の周りをバスケットボール程の大きさの火の玉が多数回り始める。ヒュッと勇者はエクスカリバーを振ると再び前方でかまえなおした。ナルの不適な笑顔が硬く固定される……


「お前は正義か?」

「ほざけ、我は悪を唱う為にこの地に降りてきた……貴様とぶつかる為にな!」


 ヒュッと腕を動かしその掌を勇者に向ける。体の周りを旋回していた火の玉は導かれる様に勇者目がけて放たれる。しかし勇者は少しも動じず全ての火の玉を真っ二つに切り裂く。火の玉は光の粉となり砕け散った。そしてその剣先をナルの眉間に向ける。


「この剣には退魔の能力がある、勝ち目は無いぞ? それでも戦うか?」

「くどいぞ」


 ニヤリと頬をゆがめて笑う。再びボボボッと火の玉が辺りを取り巻く。戦う気は満々と言う事だ、だが明らかに分が悪い。でもこの戦いを止める事はできない……ルドルフはグッと下唇を噛む。何故ならそれを承知でナルは勇者に勝負を挑んだのだから。

 勇者はその様子を見て取った後にエクスカリバーを一振りする。


「そのまま魔界に帰って貰うぞ。いでよ、七天使の一人、ウリエル!」

「勇者よ、町中で争いなど見にくい事を」

「町中に出たのが魔王だって言うからしかたがない」


 切った空はぱっくりと裂け、そこから3mがある巨大な老人が現れる。右手に本を抱えた姿、背中からは光り輝く羽が生えていた。ナルはチッと舌打ちする、相変わらず苦し紛れの笑顔は絶やさない。


「蓋してくれてる奴の一匹ね、やっぱりそういうの出して来ると対抗させて貰うしかないわ、マモン!」


 大地に巨大な漆黒の穴が空きそこからその穴よりも巨大な人型の“何か”が出現する。マモン、名前くらないなら誰でも知っている七つの大罪の一つ、Greed《貪欲 》を司る悪魔だ。細い手足は大木程の太さがある、それほどに巨大で背の高さは空に届きそうなほど。背中からはぼろぼろに窶れた鳥の羽が生えている。


「随分と大掛かりなモノを」

「ホッホッホ、程度見かけ倒しよ、わしに任せればなんの心配も無い」


 勇者にウリエルが諭す、ウリエルの本を持たない方の手が開かれるとそこに炎が灯る。


「神の炎ならば……焼き切れぬ事も無い」

「そうか、頼んだぞ」


「……小娘か、俺を娑婆に呼び出したのは」

「小娘いうな、しっかりと魔王の地位を築いてる、二対一だとキツいから協力して貰うわ」

「偉くなったモノだな、弱小で泣き虫だった頃が懐かしい、もっとも弱小なのは変わってない様だが」


 最後のマモンの言葉は無視しナルは勇者に突っ込む。火の玉が集まり刀の様な形状になる、そしてその剣を振り下ろす瞬間ジュッと音がして湯気がもうもうと立ちこめる。しかしすぐに衝撃波が大地を伝わり靄を取り払う、ナルは真っ黒の刀身の剣を勇者に振り下ろしていた、そしてそれを勇者も両手で受け止めている。


「その剣は一体どこから……」

「いま作った、マモンは無限の金属を与えてくれる……まぁインスタントにしては出来過ぎね」


 ヒュッヒュッと軽く剣を振ってみせる。一方マモンはウリエルと交戦中の様だ、交戦中と言ってもウリエルが高速でマモンの周りを飛び回りながら火であぶっている状態だが、実際身長が高すぎて素早く飛び回るウリエルを捕捉しきれていない様だ。


「これって実際マズい状況じゃないか?」

「えぇ、マズい状態ですねぇ」

「止めなくていいのか?」

「甘ったれるなよ」


 鋭い目付きでヨハネに睨まれる、キツい口調がルドルフに突き刺さる。甘ったれるなって……ボクの事か? グッとルドルフは唾を飲み込む、甘ったれるなってどういう事だろうか。ナルは身長差もあってかジリジリと後退しながら勇者と剣を交えている。ニヤリと笑う口元がいっそう辛そうだ、勇者は相変わらず的確に、冷静な表情でひたすらナルを斬りつけている。遂にナルの手から剣が弾かれ宙を舞う。勇者は迷い無く剣を振り下ろした。


「いけませんねぇ、少々迷惑をかけてしまったのはコチラに問題がありますので謝罪させて貰いますが」


 ヨハネが勇者とナルの間に潜り込んでいた、その剣は見事に拳の指の間に挟まれぴったりと動きを止めていた。

 軽く微笑むと言う。


「流石に収集が付かなくなりそうなので身勝手ながらコチラから終わらせて頂きます、なに、ご安心ください。また近いうちに伺いますから。マモン、帰りますよ」


 そのときルドルフの視界が霧がかかったかのように曇る、その中で最後にヨハネが勇者に会釈する所が見えた気がした、そして気付けば城の中で間抜けな顔で呆然と佇んでいる自分の姿があった。


「え? あれ?」


 理解できないままルドルフは辺りを見回す、そして真っ先に眼に入ったのが頭を下げているヨハネと立ち上がっているナルだ。


「申し訳ございませんでした」

「戦いに水をさした、それがどういう事か分かっているな?」

「はい、承知しております……」

「ふん、ならばいい……私はこれから魔力を練り込む、次の満月まで後10日、それまでに万全な状態で勇者に挑む、ルドルフ!」

「え?あ、ボクか?」

「10日後勇者に挑むから、それまでに戦いのスキルを積むのは勿論けどもう一つやっておいて欲しい事があるわ」

「おう、なんだ?」

「一人でいいから、適当な戦力になりそうな奴を仲間に引き込んでおいて、いくら私が万全でお前が強くなろうとも勇者に勝つことはできないからね、そーいう事」


 何と言う無茶苦茶な難題を……まぁ無理も承知、というかこれを承知し、達成しなければ勇者に勝つことはできないと踏んだのだろう。ルドルフは頷く、ここも勝負の内だ、これができないならばつまりボク達は勝負に負けたと言う事なのだから。


「じゃあ頼んだわ、あ……そうだな、もう一つお願いしたい、これから部屋にこもりきりになるから」

「飯だろ? 分かったよ」


 ため息まじりのその言葉にナルは満足げに頷いたのだった。



 

あのさぁ、明らかにここまでで一話だよね……ぬかったね、それだけ

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