戦場をかける少女
「この辺りに、戦争はありませんか?」
少女はなんのことなしに問いかけた。
舗装された田舎道の左右、ここから見える地平線の果てまで青々しい草原が続いている。夏の日差しがアスファルトを焦がすようにジリジリと照りつけて、視界の先では陽炎によって道が歪んでいる。
人の良さそうな初老の男性が、軽トラックの窓を半開きにして、困ったように口を半開きにしながら、その少女を見下ろす。この辺りでは見かけない制服。背中には革製のギグバッグ(ギターケース)。
「この辺りに、戦争はありませんか?」
エンジン音に吐息を混じらせて、少女は再度問いかける。
男性は後頭部をかいて「あー」と低い声で悩むそぶりを示すと、少女の背負っているギグバッグを指差してこう続けた。
「じゃあなんだい、その後ろのは武器ってわけか。お嬢ちゃんも大変だとは思うが、この辺に戦争はないよ。ここ数ヶ月人が死んだって話も聞かないんだ。東京や京都の方に行けばまだあるかもしれんが、それももう落ち火だな--」
「そうですか」
男性の言葉を遮るように少女が頭を下げた。有無を言わさぬ圧力がその変わらぬ表情にはあった。
「あー‥‥‥乗ってくかい?」
男はお茶を濁すように少女の大粒の双眸から目をそらすと、後ろの荷台を指差す。このままこの年端もない女の子をこんな過酷な環境の中置いていくのは後味が悪い。
しかし、男の提案に少女は静かに首を横に振った。
「いい、必要ない」
この熱射の中、額に汗ひとつかかず、表情一つ変えないこの少女に男性は気味の悪さを感じて「そうかい、それじゃ気をつけてな」とハンドルを握ると、早々とアクセルを入れて走り去ってしまう。
それから一人取り残された少女とギグバッグ。
雲ひとつない青空の下に、そよ風が草っ原をかき分けて彼女の短い髪をさらさらと撫でるように通り過ぎると、そこから微かな潮の香りが鼻腔を掠めた。
--近くに海があるのか。
少女ははっきりとしない思考の中考える。
そういえばしばらく何も口にしていない。喉も渇いたし足も痛い。
別に感情がないわけではない。人より少し表に出すのが苦手なだけ、と言い訳してみる。あのおじさんにも悪いことしたなと、微塵には思っている。
背中の銃は思いし、仕事はないし--
そしてポツリと一言。
「暑い」
第一章 出会うってだけじゃ 物語は始まらないんだよ
「生き倒れ? こんなド田舎に? 誰だ、そんな能天気なお客さんは」
買物から帰ってきてすぐさま煙草に火をつけた若い女は、庭にせり出したハンモックに寝かされている少女を見下ろした。
背丈と制服からして中学生くらいだろうか。艶のある黒髪のショートカットに、まだ幼さの残る目鼻立ち。その小さな口からは静かな呼吸音。
そこは田園風景が広がる古き良き平屋の民家だった。木板の壁にサーブボードと水中銛が飾ってあり、ラジオからは軽快なラジオDJに、時折ノイズが走ったかと思うとニュースチャンネルと混線して入れ替わる。
遠くにセミの鳴き声と、たまに通り過ぎる車の走行音、激安スーパーの袋がかさばる音とひたすら首を振り続ける扇風機。
「海岸で拾った」
答えたのは渡り廊下の縁側に座りながら釣り具の手入れをしている青年だった。精悍な顔つきではあるが、二十歳も迎えてないようなあどけなさ。落ち着いた表情で、帰ってきた女に目もくれず淡々とロッドを乾いた布で磨いている。
「魚は釣れないくせに、女は引っかけてくるのか。まったく色好きおってけしからん」
手癖がお前の親父とそっくりだな、と言いながら女はルーチンワークのように歩きざまに青年の頭をひっぱたくと、今日の収穫であるバケツの中身を確認した。
「やっぱ空じゃないか!」
今度はゲンコツが振り落とされた。
「殴るなよ。釣りどころじゃなかったんだ」
頭を抑える青年の指さす方に、少女の荷物なのか見慣れない革製のギグバッグが柱に立てかけてある。
「それがどうした」
女が不機嫌を隠さず腕を組んで青年を睨めつける。ほとんどタンクトップのような黒シャツ一枚という恰好で、一部非常に目のやり場に困るのだけど、本人に自覚はない。
「中身」
青年の溜息。作業をあきらめて静かに釣竿を廊下に置くと、ギターケースを手に取って、そのファスナーを下した。
中から出てきたのは黒い鉄の塊。二つに分解されても重々しく細長いその躯体に、トレンドマークのような手肩のあたる部分の木製部品。
「AKじゃない。なんでこんなかわいらしいお嬢ちゃんが?」
幾年もの間、世界中で今も幾万人もの血を吸い続けているアサルトライフルーーAK47。
改めて眠れる少女を見下ろすまだハイスクールも迎えてないような年ごろ。セーラー服から延びるか細い手足からは到底創造できない。見た目通り学校の軽音部で遊んでりゃいいものを。
「変なことしてないでしょうな」女は少女の体を嘗め回すようにじっくりと観察して、文字通り舌なめずりをした。
「やめろおっさん。年をとってる証拠だぞ」
言い返しながら小銃のマシンガンを確認して、手慣れたように組み立てていく。
「貴様ぁ、上官に対していいご身分だな」
女が笑みを浮かべながらポキポキと手を鳴らすが、青年は意にも介さず嘆息。
「上官のように扱ってほしいならもう少し上官のように振舞えよ、夢子」
「ほう、いい度胸だ」
と、女が上から覆いかぶさろうとした時である。
「ここ、どこ?」
少女が目を覚ました。さっと体を起こしたかと思うと見覚えのない場所に眠り目を擦って必死で状況を探ろうとしている。艶やかな黒髪は寝癖で翻って、なんともマヌケだった。
「あ、起きた」
と一緒に、女ーー夢子は咥えていた煙草をぽろっと青年の頭に落とした。
「あ、熱っ」
さらに青年の悲鳴もさることながら、少女は寝ぼけているのか、慣れないハンモックから抜け出そうとバランスを崩す。くるりと回転するようにひっくり返ったかと思うと、鈍い音を立てて頭から地面に落ちた。
「‥‥‥いたい」とかわいらしい声。
同じタイミングに違う事象で二人、プルプルと頭を抱えている光景。
夢子は二本目の煙草に火をつけると、名も知らぬ少女に近づいてゆく。多少のイレギュラーにはびくともしないこの不良上官に青年は辟易したようにその背中を見つめた。
途端、鋭い殺気。
「おいおい、か弱い女の子がそんな怖い顔するなよ」
夢子がおどけたように笑いながら、さらに一歩詰める。
「っーー!」
少女はギシギシと軋む木板の廊下を一蹴りで夢子から距離をとった。跳躍が一般人の比でない。明らかに警戒していた。
それからスカートの中に手を突っ込むと、その太もものガーターベルトからーー
「ない」
思わず少女から漏れた声。
ない。少女が慌てたように何度確認しても、そこに自身のハンドガンはなかった。
「お前の獲物はここにある。ほら、整備もしておいた。あまり無茶な使い方するなよ。銃身がまがってたぞ」
青年のひらひらと振っている手には少女の探しているソレ。
「M9か、いい趣味してやがる。だけどサブで持つならもう少し小さいほうがいいな」と夢子が青年の手から乱暴に奪い取って構える真似をする。やめてよジャイアン。
ギっと鋭い眼光。
睨め付けるその視線には銃を奪われたという恨みがましい念がこもっていた。その瞳には自分たちはどのように映っているんだろうと青年は思った。やっぱり悪漢?
少女は今度は背中に手を回すとーー
「いや、銃とられたんならナイフも取られているだろう普通‥‥‥」
青年の手にはフルタングナイフが一丁、とこれから同じような展開を省略するために、ダガー二丁に、その他小型ナイフ三丁、手榴弾、携帯スタングレネードなどなどをボトボトと廊下に転がしていく。
というか絵面がやばい。なんだここ、悪の根城か。任侠映画で見たことある。
それを見て、さらに少女の殺気は増していくーー
もう彼女の手元に武器はない。だが止むことのない敵意の末に、最後の手段は徒手空拳だろうか。
「真彦ぉ。おまえ、この娘を武装解除するときに、一度のこの娘の体中をまさぐったってことだろう?」
夢子がニヤリと意味深に青年を向く。悪魔みたいな女だった。
火に油を注ぐようなことを‥‥‥このエロオヤジ、と青年ーー真彦は嘆息しながら「そんなつもりは」なかった、と言い終える前に蹴りが飛んできた。
すんでのところで避けた真彦の見たものは、少女が廊下に転がったフルタングナイフを器用に足で跳ね上げ、そのまま右手で掴んで振りかざしてくる姿。
黙っちゃいられない、と真彦も足元に落ちているダガーナイフを手に取ると、時代劇の剣劇のように刃と刃を交差させた。
火花が飛ぶかと思うほど、キィーンと鼓膜を触る金切り音。
「はいはーい、ストップストーップ! それ以上やるとレッドカードだぜお客さん」夢子がパンパン手を叩いた。「このボロ屋でそんなに暴れられたらいい加減屋根が落ちてきても不思議じゃないんだ。あんまり本気になるなよ二人とも。クールにいこうぜ」
けしかけた奴の言うセリフじゃない! というか本気で殺しにきたんだけど。だが、きっといくら言ってもこの女には通じないだろう。
夢子は真彦と少女のそれぞれの右腕を掴む。すかさず少女が夢子の脇腹めがけて蹴りを入れようと足を浮かせてーーそのまま止まった。
「--っ!」
掴まれた腕の痛みに少女の目がほんの僅か細くなる。振り払おうにも微動だに動かせない力。
あきらめたように力が抜けて握っているナイフを落とした。床に刺さるわけでもなく、鈍い音を立ててあっけなく転がる。
真彦もそれに倣ってナイフを手放したところでようやく解放される。
少女は何があったのかわからないといった表情で、それでもほとんど眉一つ動かさないが、夢子を見つめた。
「おい、お嬢ちゃん。目を覚ましたのなら、これを冷蔵庫に入れるのを手伝え」
夢子は乱暴にスーパーの袋を少女に放ると、何事もなかったように「朝飯にするぞ」と言った。
**
「ほら、遠慮せずに食え。腹が減ってんだろう?」
響くのは食器のぶつかる音と夢子の声。
今のところ大人しくテーブルについている少女は疑心暗鬼な顔をして、並べられた料理と目の前に座る二人の顔を交互に見比べていた。
熱中症と極度の空腹、疲労にもかかわらず少女の表情は揺るがない。あれあら一度も口を開かない少女に、夢子も困り果てたように溜息をつく。
「別に毒なんて入ってないぞ。眠らせて、とって食おうなんて思ってないから早く腹におさめときな」
そう言って箸の先端を少女に向ける。
「夢子、行儀が悪い」と言って真彦が味噌汁に口をつけた。「それに怖がってるんじゃないのか?」
「何を」
「夢子を」
振り下ろされるゲンコツ。
「それが怖いって言ってんだけど‥‥‥痛っ」
すると夢子がおよよと泣き出す。
「いつからそんな生意気に成長したんだ‥‥‥昔のお前はどこへ行くにも無邪気に喜んでくっついてきたくせに」
「記憶を捏造するな。何かあるたびに嫌がる僕をシューティングレンジに連れ出しては、耳が聞こえなくなるまで撃たせ続けたのはどこのどいつだ」
「そのおかげでEUやらOAUから声がかかってるんだろう? 感謝されこそすれ恨まれる筋合いはないっ」
「かかってるのが声だけだったならなっーー」
と、ここでふと少女が二人のやり取りを見ながら、ぼーっと固まってることに気づいた。
「おーいどうしたお嬢ちゃん。やっぱ気分でも悪いのかー」
熱でもあるのかと夢子が少女の額に手を当てようと近づくと、彼女はそれを振り払うように箸をとって食事に手をつけ始めた。
「なんだこいつ」と言葉とは裏腹に夢子がニヤニヤと笑みを浮かべる。
メニューはいたってシンプル。白米に、鮭の切り身、味噌汁。特徴のない朝の和食。
少女は今までの積もりに積もった緊張がはじけたように口いっぱいに白米を詰め込むと、モグモグと咀嚼しながら飲み込むのも待たずにおかわりを要求するように茶碗を真彦に差し出した。
「反抗期の次は成長期かい、お嬢ちゃん」
夢子の戯言を無視して、真彦が炊飯器から二敗目をついで「ほら」と渡してやると、少女はコクンと頷くように礼をして受け取る。それからまたかき込むようにまるで栄養補給だけを目的としているかのごとく箸を動かし始めた。
その様子を見ながら真彦は夢子に耳打ちする。
「で、これからどうすんの?」
「何が?」
「いやこの状況」
「変か?」
「変でしょう。ずっとこっち見てるし」
「そりゃお前が変なことするから」
「だからしてないって」
「してないなら堂々としてればいい」
「え、僕が悪いの? これ」
無駄だった。
真彦が食べ終えた食器を片付けようと席を立ちあがると、同じくして食事の途中で箸が止まっている少女の視線とぶつかってしまった。
「‥‥‥どうした?」
帰省ラッシュの車間距離くらいの間を空けて尋ねた。何かを訴えようとするその瞳を見据えて。
「どうして訊かないのですか?」
やっと口を開いたかと思えば、なかなか澄んだ柔らかい声だった。
「なにを?」
「わたしのこと」
機械的なほど不愛想に答える少女。
「なんだ、訊いてほしかったのか?」
少女はふるふると首を横に振った。小動物みたいなやつだった。
「なら訊かないさ。どんな人間でも隠したいことの一つや二つあるだろう」
自分で言ってて他人事じゃないよなぁと考えながら、真彦は食器をキッチンの洗い場まで運ぶと洗剤で泡立て始める。また食器がぶつかる音と今度は水飛沫の合唱。
「まぁ、あたしたちも大手を振って外を歩けるようなご身分じゃないからな。お互い不可侵の秘密主義ってのも案外居心地は悪くないのさ」と夢子はどっかの洋物の映画からとってきたセリフを吐いて、自分の食器をかたずけると真彦と並ぶようにして、次々と渡される濡れた皿をタオルで拭いていく。真彦が「ん」と皿を渡すと、夢子も「ん」と受け取るのだ。
その二人の背中を、少女はジーっと観察しながら思案する。
--この人たち絶対に変。
倒れていたところを介抱してくれただけでなく、見ず知らずの自分にこうして食事まで提供してくれた。それも一瞬でも敵対行動をとった相手に。
いまなら後ろから襲えば隙だらけだ。どういうわけかあの戦闘のあと、何事もなかったように武器の一式をすべて返してくれたので、スカートの中にはすでにハンドガンが収まっている。それを使わずしてもナイフ一丁で背中を向けている相手など一刺しで仕留められるだろう。
人は嘘つきだ。
だからこの二人もいつ自分に牙をむいてくるかずっと身構えていたのに、現在目の当たりにしている無防備なまでのやりとりを見せつけられてすっかり毒気を抜かれてしまった。
--ここがお菓子の家なら、いっぱい肥えさせて食べる気だ! なんてぽわぽわ妄想が浮かぶくらいには自分自身油断しているに違いない。
手元のナイフを抜くか抜くまいか逡巡していると、いつのまにか白いひげを生やした夢子がくるりと振り向いて、少女に問いかける。
「それでお嬢ちゃん、これからどうするのさ。見たところ路銀も行く宛てもなさそうだけど」
「路銀ってまた時代錯誤な。あと牛乳はコップで飲めよ夢子」
真彦が牛乳パックを取り上げてコップに注いでやる。夢子はそれを乱暴に受け取ると、喉を豪快に鳴らしながら一気に飲み干した。右腕で口元を拭うとお代わりを要求してくる。最近ますます野性味が溢れすぎて頭が痛い。犬用のミルクでも混ぜてやろうか。
「キミ、捨てられた兵士でしょ? 仕事探しにこんな田舎組んだりまで来たんだ。まさか観光ってわけじゃないのだろう? ご苦労なことだ」
夢子は他人事のようにそう言って、再度その白い液体を喉に流し込む。「おかわり」「もうこれが最後だぞ」
「仕事‥‥‥」
少女はそう呟くと、ハっと思い出したかのように真彦と夢子を見上げた。
「この辺りに、戦争はありませんか?」
まるでそれ以外教わったことがないみたいに。同い年の子供なら化粧や洋服に興味を持ち始める頃だろう。
夢子は少女の腕や脚を盗み見る。深い傷はない。それが彼女の兵士としての生存能力の証なのか、偶然か。しかし、目立たない傷は裂傷となってところどころ薄く刻まれていた。それも若さですぐに消えるのだろうがーーそれは明らかに最近、ここ一か月の傷跡だった。
ここ数年、大きな市街地戦は耳に入ってこない。
「戦争はない」
それを聞いて、少女は諦めたように俯くと、静かに立ち上がろうとした。
「が」と、その一言で動きが止まる。
夢子が手に持った中身入りのコップを少女の目の前に差し出すと、急に表情を引き締め声のトーンを落とした。
「仕事はある。それもお嬢ちゃん、キミに適した仕事だ」
少女のジトっとした半開きの視線がコップと夢子を行き交う。沈黙が二人の間を横切って、余計な緊張感が生まれた。
「お嬢ちゃんはやめてください」
少女がコップを受け取ろうと手を伸ばすと、夢子はさっと引っ込めて自分で飲み干した。
「お前が飲むのかよ」
**
『こちらSierra、十一時の方向に移動中のターゲットEを補足。座標二・七・一地点を通過。およそ三十秒後に第一次空砲。対象が誘導に従わない場合は五秒おきに続報を‥‥‥α地点まで残り二十秒。応答せよ』
多少のノイズとともにインカムから聞こえてくるのは女の声。
「こちらYosemite。了解。そちらのタイミングでカウントダウンを要求する」
どこかやる気のない返答。
九、八、七‥‥‥と読み上げられる数字に呼吸を合わせて、男は軽快なボルトアクションで弾を一発込める。
そして鳴り響く乾いた射撃音。
数秒もしないうちに『成功』と聞こえてきた。打ち終わった薬莢を放出し、念のために次弾を装填した。
『ターゲットEは目標通り進路を修正。最終地点まで残り四十五秒。チャンスは一度だけだぞお嬢ちゃん。外したらお仕置きだぞ』
そこは深い山の奥。四方八方同じような緑の景色に視界も悪く、お天道様も木々の枝葉の陰に見え隠れしていた。気温もさることながら、同空間に留まる湿気がいつも以上に不快にさせて疲労を誘う。獣道以外は草木に覆われ歩くこともままならない。
山の頂上に伺える鉄塔から一瞬、望遠レンズが太陽光を反射して輝いた。男はその光に向かって、不満げな顔をして言う。
「おい、いいのか夢子。別にあの娘にやらせなくても僕たちだけで片付くだろう。それにわざわざこんな遠回しな方法‥‥‥」
『こら‼ 真彦ぉ! コードネームを使え!』
個別チャンネルでの会話。もちろん少女には聞こえない。
「いやそっちも使えよ、オーバー」
インカムの向こう側で「生意気に育ちやがって‥‥‥」と恨み言。
『別に深い意味はないよ。使えるものは使う、使えないのならそれまでってことで』
「彼女を計る気かよ」
『大した距離じゃないし参考にもならんけどな』
そうこうしているうちに別の回線ノイズが入ってきた。
共通チャンネルが開かれる。
『こちら|MountainLion。作戦位置につき対象を確認できません。再度、対象の座標と移動速度を要求します』
落ち着いた少女の声。凛としたというのがふさわしいか。風がなびく音が混じる。
夢子ーーシエラの返答後に少女の乾いた『らじゃー』が聞こえてきた。そのあとに『コードネームが全部MacOSなのは何故ですか‥‥‥』とブツブツ言っている。
『そろそろだよ、お嬢ちゃん。目標まで十秒』
『お嬢ちゃんはやめてください。それと目標を視認』
少女は獣道から三百メートル離れたなだらかな丘にいた。草の上に制服が汚れることなど気にもせず倒れるように仰向けになって握るのはM24SWS--夢子から渡された狙撃銃である。覗くスコープの先は何も映らないその獣道。
風向き、風速、気圧、気温、湿度、些細な変化にもそれぞれを肌で感じて、垂直方向の微調整を行わなければならない。角度が一度でもズレれば、目標から五メートルは外れる。
『調整』
少女のつぶやきが草木に溶けた。指先をトリガーにかけて、神経をとがらせるようにゆっくりと息を吐く。自然と同調する。夢子のカウントダウンさえ集中する意識の奔流に掻き消される。
弾丸が届くまでおよそ〇・三秒。
息を止めてーースコープの十字線に対象が入り込む直前、引き金を絞った。
そして。
目では到底捉えきれない速さで放たれた七・六二ミリの弾丸は、轟音を撒き散らしながら、猛スピードで走るイノシシの硬い頭蓋骨をいとも簡単に粉砕した。
**
「技術革新っていうのは風情もへったくれもないよなあ」
夢子が悪態をつきながら、ハンドルをバシバシと叩く。
エアコンで程よく冷やされた車内。足元にわずかな振動と小気味よいスムーズな加速感。
『アラート。異常なハンドル操作を検知。これよりセーフティモードに移行。速やかにハンドルから手を放してください』
機械で作られたような女性の声がスピーカーから流れる。
「よく喋るし」
「一応この車も支給品なんだからあまり乱暴するなよ」
アクセルに足を下ろしているわけでもないのにそのスピードは一定を保たれている。ていうかアクセルペダル自体が存在していない。
夢子の運転席の前面には、センサーパネルに映し出された円状の光の輪っか。どうやら緊急時に人間が運転する際にはそれがハンドルになるらしい。ゲームセンターで似たような画面の前で人が踊っている光景をなんとなく見たことがある。アレだ。
すべてが電子制御になり、人間が物理的に動かすことは不可能だった。
ただしブレーキペダルだけは存在しているため、緊急的ではあるが停止させることはできる。
「私は自分で運転したいんだ。エンジン音もしないし、トロいし。それにこんなわけのわからないロボットに命を預けていると思うと居心地が悪くて仕方がない」
法定速度を寸分たがわず遵守しながら緩いカーブに侵入する。
「夢子の運転よりよっぽど安心だ」たとえ実用前の試験運用車でもだ。
車窓越しに肘をつきながらため息。真彦はスマートフォンをいじりながら後方ミラーで少女を確認する。
セダンの後部座席に、シートベルトをしておとなしくちょこんと座っている少女。律儀に靴を脱いで正座しているのである。というかずっと見られている。背中に無言の圧力がジワリジワリと、それはそれは何かを訴えかけるような無表情だった。
「どうした。仕事内容に不服か?」
振り返るのもなんとなく怖い。何より空気が重い。しかし、このまま無言かと思われたが返答があった。
「わたしの武器は狩猟をするためのものではありません」
少女がギグバッグを大事そうに胸に抱えて抗議してきたのだ。
思わず真彦と夢子が顔を見合わせる。「喋ったぞ」「お、おう」
「だから私のM24を貸したんだろう。どうだった?」
世界中の軍や警察部隊で採用されている何の変哲のない狙撃銃。夢子は自信満々な面持ちで問いかけたーーだが返ってきた答えは。
「持ち主と違ってとてもいい子でした」
「真彦、車を止めろ。私が教育してやる」
「無駄だ。目的地に着くまで何もできない」
「そこをどうにか」
「コントがやりたいのか?」
なんともアホな会話だった。
代わりに夢子がまたしてもバンバンとハンドルを叩くものだから先ほどと同じアナウンスが車内に流れる。
少女はその音声にいちいち体をビクっと反応させると、警戒したように後部ドアのスピーカーあたりを黒い靴下のそのつま先で突いていた。こいつも最新技術には弱そうだ。
通り過ぎるのは観光案内の看板と熊出没注意の標識。海沿いをなぞるように国道を進んでいくと港町特有の船舶団の波止場や三角屋根の倉庫群がちらほらと顔を出す。海鳥が車と並走するように空と海の境界線を器用に飛んでいるのを、少女は黙って目で追っていた。相変わらずギグバッグを胸に抱きかかえたまま。
何を考えているのだろうか。
仕事と言ってこの娘を連れ出したのがつい先ほどのこと。
どこから来たのかは訊かない。どんな生き方をして、生き延びたのかを知ろうとするなんて、あまりに無意味だ。
理由も、正体も明かさずに夢子に乗せられるがままーー
「次はどこへ行くんだ?」
と真彦は少女に問いかける。仕事には支払われる対価が必要で、それさえ果たされればこの少女はまた別の地へと旅にでるのだろう。今回のイノシシ退治は闇営業みたいなものだから報酬はけっして安くはない。荷台に包んである死骸を雇い主に引き渡せば完了だ。夢子は小遣い稼ぎと言いながら時折けったいな仕事を持ってくる。
一応、作戦待機命令中の身なのだけど、本部への弾薬の管理報告はどうするんだろうか、とか深く考えてはいけないのである。
「とりあえず遠く」
そっぽを向くように窓から視線を外すことなく少女は独り言のようにつぶやいた。
どうやら会話はしてくれるっぽい‥‥‥だいぶ心の距離が離れているけど。
別にこの少女に好意を向けてほしいわけじゃないが、この短い道中くらい敵意で車内を充満させないでほしい。死んじゃいそうだ。
この娘の興味の持つようなものーー夢子なら酒と煙草でも与えておけば飛びついてくるのだが。猫がマタタビで喜ぶように、何か好きなもの一つで期限が良くなればいいのにーーと考えを読まれたのか、後ろから座席を蹴られた。
「わたしは大人です。物では懐柔されません」
「‥‥‥」
察しがいいとはまさにこのことか。
大人はそんなことで蹴ったりしませんとか、言える雰囲気でもなし。
存外この少女も暴力的だった。まあ当たり前といえば当たり前か。兵器として育てられた子供たち。感情のコントロールの仕方も知らないうちに、気づいた時には銃を手にしていた少女。
条件反射でいつ手をかまれてもおかしくはないだろう。彼女の左太腿に吊っている銃の引き金はけっして重くはない。
「海がそんなに珍しい?」
今度は夢子の質問。
しかし、少女は瞬きをするだけで答えなかった。
車は太平洋を一望できる屋外駐車場に入ると、『目的地に到着しました』とのアナウンス。他車が一台も停まっていないにもかかわらず、白線を認識してゆっくりと停車した。
遠くに船舶の集団と、水平線の彼方に微かな島影。波打ち際にはテトラポットが敷き詰められ、海水浴をするには些か危険であろう。
少女は黙って車のドアを開くと、ギグバッグを背負って、落下防止のガードレールまでテトテト走っていく。
「おいおい、その勢いで落っこちるなよ」
夢子の忠告を無視して、少女はガードレールに前のめりになってその絶景を見据えた。
目を閉じれば絶え間ない波風と海鳥の鳴き声。空と海は混ざり合うことなく、水平線のどこまでも瑠璃色の虚無が続く。
この年頃の娘なら、無限にも感じる広大な景色にはしゃぐのも無理はない‥‥‥相変わらず無表情だけど。
真彦はその少女の姿を尻目に、どっかのセンチメンタルになりたがる軽音部の学生が一人で作詞に来たように見えなくもない、とかそんなことを考えた。絵だけでみればなんとやら。
「嵐が来ますね」
そう呟く少女の瞳は、普通の人間には感じ取れない何かが見えているのか。
「お前‥‥‥わかるのか?」
「いえ、さっき天気予報で言ってました」
ずっこけそうになった。なんだその思わせぶりは。
「おい、真彦ぉ! 仕事しろ。これ運ぶの手伝えっつーの」
背後から気怠そうな声。
セダンの荷台には血抜きを済ませたイノシシがブルーシートを雑に巻かれた上状態で寝かされていた。体表に漂う獣特有の鼻につくような匂い。右眼上部分が拳大の空洞がポッコリと、体毛が一部血で固まっていた。
「そういえばなんでこいつの名前がEだったんだ?」と真彦。
「ん? そりゃイノシシのイーだから」
「‥‥‥」
夢子の得意満面の笑顔を無視して、そのブルーシートを丸ごと引きずり出す。すごく重い。
大体、成人男性の平均と同じくらいの重さはあるだろうか。
「じゃ、よろすくー」
と、夢子は報酬を期待するような足取りで、町役場らしき古びた鉄筋コンクリートの建物へと小躍りしながら吸い込まれていく。え、これ一人で運ぶの?
**
「これだけ?」
夢子が目をパチクリさせながら、万札を数え直す。
ひーふーみー。終わり。あと小銭が少々。
「いやぁ申し訳ないね。最近この辺りにいた害獣が一斉に隣町に移動してくれたおかげで駆除対策に費用が回されなくなったんだよ」
お世辞にも涼しいとは言えない事務所の受付で、頭頂部だけはやけに涼しい中年小太りの男が額の汗をハンカチで拭きながら申し訳なさそうな顔をしている。奥の方でデスクワークをする職員の数人がちらちらと視線を送りつつ、なるべく関わらないようにとパソコンの画面にかじりついていた。素直な人たちで微笑ましいくらいだ。
「終わったか? 夢子」
入口の自動ドアが開くと、ブルーシートを重たそうに引きずる真彦のうんざりした表情。駐車場からの距離だけでもこの炎天下、相当の体力が消耗させられる。臭いし。
「遅いぞ! サンタさん」
「こんな夢のないプレゼントがあるか‥‥‥」息も絶え絶えになってブルーシートを事務所の床に投げると、備え付けの革製のソファへとへたり込むように身を投げた。
「はぁー、まったく情けないぞ、真彦青年! このくらいの任務でへこたれるなんて私の部下失格だ」
夢子が頭に手を当てて大袈裟にのけ反る。付き合ってられん。汗でシャツが張り付いて気持ちが悪い。
真彦は逡巡するように事務所の自動ドアを見やると、その向こう、上り階段の途中、日陰で一人ぼーっと海を眺めている少女に行き当たった。足をパタパタさせて、仕草はやはりただの子供にみえる。
「おや、新しいお仲間かい?」
中年の男が少女を遠目に夢子に尋ねた。
「あれは気にしないでくれ。まだかわいい子猫だから。それとも口止め料が必要かい?」
「いや、気遣いは無用だよ。本当に。公務員ってのはつらいね」
ははは、と乾いた笑い。
「まじめというのは良いことだ」
「まじめだったらわざわざキミにあんな仕事を繕わないよ」
中年の男はブルーシートからはみ出ている足を見下ろしながら溜息を吐く。
夢子たちがこの田舎町に来て三週間。軍用武器の持ち込みについて審査していた際に、戎具特別管理課としてたまたま捕まったのが運の尽きだった。
「‥‥‥面倒事だけは起こさないでほしいね」
夢子が小遣い稼ぎと称して危険な仕事をこの周辺に持ちこんでこないように、こうして野良猫に餌を与えるように野暮なタスクを作っていたのだ。
「そんなことよりアレは届いてる? そろそろ物入りだからね」
「残念なことに届いているよ。手続きは済んでいるから、その書類にサインしてさっさと持って行ってくれ」
男が分厚い紙の束を夢子の目の前に差し出す。
真彦は先見の明、もとより察してかそろりそろりと受付から離れた。
自動ドアが開いた瞬間、外から茹だる熱気と蝉時雨のフルコーラス、海鳴りが同時に体表面に到達して、一気に体が重くなったかのように怠くなった。
入口階段に座る少女と、すぐ側の階段の手すりに立てかけられたギグバッグ。
真彦はその横、だいぶ間を空けて腰掛けると「暑くないの?」とどうでもよさそうに聞く。
「夏なのだから暑いのはあたりまえでしょう」
まってくこちらを向く気配がない。
「可愛くない返事どうもありがとう」
横目で少女の表情を盗み見るも、まったく変化がない。タフなのか鈍感なのか。
無言なのも居心地が悪いので適当に話題を振ってみる。
「そういえば地球の裏側じゃあ夏にサンタが来るんだよな。サーフボードなんかに乗って」
「それでは良い子にしていれば冬と合わせて年に二回もプレゼントを貰えるということですか? 羨ましいです」
「‥‥‥」
もっぱら空が青かった。深く考えないことにした。いい天気だ。
「海がそんなに珍しいのか?」
さっきの夢子の言葉を反芻する。もちろん深い意味はない。会話のとっかかりだと思っていい。
「べつに」
少女はスカートの裾を握りながら大海原からプイっと視線をそらすと、真彦に向かって「あまり話しかけてくんな」と目が言っていた。目が言うのである。
「海の上は嫌というほど経験しています。でも見るのは初めてです」
それが何を意味しているのか。楽じゃない生き方をしてきたことだけは、濡れた靴下を履いた時の不快感のようにじんわりと伝わってきた。それを素知らぬふりができるほど心は賢くはなれない。
「なら良かったじゃないか。初めて見る海にしては絶景だと思うぞ。空がこんなに晴れているならきっと軌道上の人工衛星だって見えるんじゃないか?」
無限というなら、この空こそ無限だ。海水の量にも限界があるように、星の数にも限界があるはずだけど、現代人は未だにどちらもそのすべてを把握しきれないでいる。
「人工衛星さんには普段からとてもお世話になってますからね。一度はお礼しておかないとバチがあたります」
少女が手のひらを太陽にかかげ上空を仰ぐと、指と指の間から差し込む光線に目を眩ませる。生暖かい風が少女の頬を通り過ぎて、その柔らかい黒髪を微かに揺らす。
セーラー服から延びるか細い腕にはうっすらと裂傷の跡と無数の擦り傷。PTAが見たら大騒ぎだろう。マスコミも巻き込んで盛大にやってほしい。このまま児童相談所へ強制送還だ。
なんて。
真彦のおぼろげな視線を察知してか、少女は「なんですか?」と睨め付ける。
「‥‥‥何でもない」と思わず目をそらす。
どうにもこの少女は勘が鋭い。まるでこちらの思考でも読み取られているみたいに、周囲の気配に敏感だ。まじで猫並み。
「人の身体を舐め回すようにジロジロ覗くなんて、どうせ不純なことを考えているに違いありません」
と言いながら別段恥ずかしそうにするでもなく、青空に視線を戻す。
けして不純ではない。無粋ではあったかもしれないけど。
真彦は大袈裟に溜息を吐くと、一呼吸おいてから「あんまり僕をいじめるなよ」と、立てた膝に顔をうずめる様に座りなおして、もう一度溜息を吐いた。
それから何秒経っただろうか。あるいは数分経ったのかもしれない。耳にへばりつくような波の音と、遠くの方でヘリのプロペラ音が過ぎ去っていく。微かに混ざる梢のせせらぎに、相変わらず灼熱の太陽が買い表面を蒸発させるのに忙しい。
それはテープレコーダーのサビたスピーカーが音割れするように、お互い同時に聞こえた。
--暑い。
**
「聞こえる」
先に反応したのは少女だった。すっと立ち上がって辺りを見渡すと、ガラスの破片から氷の結晶を探り当てる様に耳をすませた。
周囲の雑音の中に微かに聞こえる、けたたましいエンジンの駆動音。
やっと真彦の耳にも届く頃になると、遠くの方で黒塗りに光らせた人員輸送用車両ーーハマーH1が三台、国道を対向車線から大幅にはみ出しながら走行しているのが見えた。舗装されていないような悪路であれば砂煙を舞い上げる勢いだ。
「嫌な予感」
「同感です」
すると同時にーー
「真彦ぉ」
開いた自動ドアから夢子が飛び出してきた。周囲を見渡してから「他の人間は見てないか?」と尋ねる。
「まったく」
真彦が振り向きもせずに手をひらひらと振った。周辺一帯から人の気配が消えている。さっきからうるさい蝉の鳴き声でさえ遠くに聞こえてくるようだ。
「あいたー、あのおっさんやりやがったなー」
夢子の棒読み。それからスマホ片手に楽しそうに微笑んだ。
「いつもの悪い癖がでてるぞ」窓越しに事務所のほうを見やると、既に人の影はない。あのとぼけたおっさんもどこへやら。書類を書いてる隙に逃げられたな。
「チップで我慢しておけば良かったものを。欲が出たな」夢子が目を細めた。
それらは乱暴な急カーブを描きながら駐車場に侵入してくると、慌ただしく真彦たちの前で急停止した。車体には大きく羽ばたこうとしている鷲のマークーー大正製薬みたいなやつだ。
途端に一代目のハッチが開いたかと思うと、そこから防護服に身を包んだフルフェイスの三人の男が最短動作で建物の入り口を囲うように配備される。各々の手には見るからに友好の印とは逆の真っ黒な鉄の塊ーーM16自動小銃。
そして助手席から出てきたのは偉そうな軍服に身を包んだスキンヘッドのサングラス男。でかい図体に不敵な笑顔を浮かべながら、座っている真彦に近づいて見下すように言う。
「話にあったのはこの子供か? ずいぶんひょろっちいが」少し訛りのある日本語だった。
真彦は欠伸をかみ殺して「なんの話?」と肩をすくめた。人間、落ち着きが肝心である。
それに対して後ろの兵士の一人が「いえ、対象は少女だと報告が‥‥‥」
「あ、そう」とスキンヘッドが隣の少女に視線を移す。セーラー服に革靴、それと側に立てかけられたギターケース。
どっからどう見ても女子中学生。男は完全になめきった感じで不用意に近づいていくのだった。
「大尉、お気を付けを‥‥‥」
その部下の助言を黙らせるように手を振りかざすと、仁王立ちしてさらに見下ろすように前のめりになった。
「もっと小さいじゃないか。こんなのがニッポンの兵士なのか? うちの九歳の姪っ子のほうがよっぽど色気があるぞ」と両腕を開いて嘲笑う。
階段二段ほど、少女にアドバンテージがあるはずなのに、彼女の頭頂部は男の胸の高さにも達していなかった。
ていうか完全に死亡フラグだった。
「わたしは学校の課外活動で立ち寄っていただけです。お構いなく。それでは、ご機嫌よう」
しれっとすげぇ嘘を吐いた。なんの躊躇いもなく。あまりに無感動なのでうっかり本気にしてしまいそうだ。
少女はギグバッグを背負って踵を返すと、男が呼び止めるのも構わず階段を降りてスタスタと立ち去ろうとした。
もちろん行く手をふさぐのは鍛えられた頑強な太い腕。
男は短気を絵にかいたように不機嫌な態度で少女の肩を掴もうとーー銃声。
しかも、ほぼ立て続けに三発。
真彦も始め何が起きたのか分からなかった。
いつのまにか少女の手には硝煙を上げる拳銃。時間差で空薬莢が三つ足元に転がった。
男の胸部に二発、防弾服が貫通しないことを察知してすぐに狙いを変え、下あごから脳頂点めがけて一発。これ以上とない正確な殺害。
だから言わんこっちゃないと真彦は目を瞑った。
死体となった男の体が鈍痛な音を立てて地面に倒れても、彼の部下たちは固まっている。現状を把握するために頭が混乱しているのかもしれないし、現実逃避も兼ねて思考停止したのかもしれない。
いずれにせよ隙だらけだった。
少女の引き金を引く力は緩まない。背負っていたギグバッグを片手でおもむろに真彦へ寄越すと、たちまちその小さな身体が残像となって消えた。
乾いた音という表現は確かにその通りだ。人の命をこれほどまでに簡単に奪ってしまう単純な空気の揺れ。
数発。
ほんの数秒で、その場に立っている影は少女だけになった。
出オチにしては雑すぎる。
真彦は後ろ髪を掻きむしってこれからどうすんの? と後ろに控える荷台のハマーを見て眩暈を覚えた。思わず受け取ってしまったギターバッグ
少女はそんなこと知ったことかと言わんばかりに、一台目の車両の運転席に鼻水を垂らしながら怯え切って座る、おそらく一番下っ端かと思われる将兵に一瞥もくれず、銃口だけをその彼に向けて引き金を絞った。
フロントガラスが割れる音と共に、また一つ死体が増える。
それが逆に起爆剤となって、ほかの車両の兵士たちが正気を取り戻していく。
ぞろぞろと飛び出してくるのが見える。警戒心を最大にしM16を構えながら、とにかく周辺の状況を把握するためにゆっくりと真彦たちとの距離を縮めてくるのだ。
おかしいなと真彦は空を見上げる。まるで自分たちも標的になっているようなそんな違和感を覚える。今手元に武器といえば少女から渡されたAKだけだ。他は全部あのセダンに置いてきてしまっている。
乗員不在のハマーH1を盾にして隠れるようにしゃがみ込む少女。真彦は体を低くして彼女に近づくと、車体を背に「どうするんだ?」と問いかける。
「‥‥‥」
返答はなしーーというか、見れば少女は目をぎゅっと瞑り耳を塞いで、まるで買い始めたばかりのハムスターのようにジッとしていた。
---まさか。
「投げるんなら一声かけろ!」
そのツッコミは少女に届くことなく虚空に散逸し、真彦は諦めたように彼女のそれにならって目と耳を塞ぐのだった。
瞬間、百七十デシベルの大音響と百万カンデラの閃光。スタングレネードだ。ハマー1台分の障害物を挟んだところで、少しでも気を抜けば意識が持っていかれそうになるのは変わらない。正面から食らえば数分間はまともに身動きも取れないだろう。視覚と三半規管がやられ、方向感覚を奪われる。
向こう側から屈強な男たちののたうちまわるような悲痛な叫び。それも真彦の頭上で、銃声が数発叫びをあげると順々に収まった。
瞼を開いて隣を見ても、もうそこに彼女の姿はない。
見上げれば案の定、ハマーH1の屋根の上に海風を受けながら凛々しく佇む少女と、硝煙と薬莢を吐き出す拳銃。男たちの呻き声と、混ざり合う金属の跳弾音。
またひとつ、消えていく。
限りなく引き伸ばされた時間感覚の中。
そしてそれが最後だった。
世界が思い出したように静寂を取り戻す。
今、彼女はどんな表情をしているのか。いつもの無表情なのか、哀しみの顔をしているのか、それとも笑っているのだろうかーー真彦の角度から伺い知れることはできなかった。ただ、代わりに見えるものがあった。
途端、頭上の少女がスカートを抑えて、珍しく慌てたように振り返った。
「見ました?」
「見えてない」
即答だった。それはもう清々しいほど白々しい即答だった。というか白かった。
「”何が”見えなかったんですか?」と少女の目が細くなる。
あ、やばい。やっぱり勘が鋭すぎんだよ。
「やはり生者を残すというのは大概良いことはありませんね」
少女はホールドオープン(弾切れ状態)になったハンドガンの弾倉を抜くと、腰のベルトに下げているシリンダーからあらたな弾倉抜き出して弾を込め、ジャカッと音を立てて真彦に銃先を向けた。
「ストップストップ。なんでも銃で解決しようとするな。対話ができんのかお前は」と両手をホールドアップする真彦。
「剣の達人同士というのはお互い口で語らずとも、刀と刀の切っ先が交わっただけで会話が成り立つと聞いたことがあります」
「ならまず武器を持った相手にしろ!」なんだそのゴミみたいな知識は。捨ててしまえ。
なんて、優雅にコントをしている場合じゃないーー真彦の視線が捉えるのは、静かになった車両の数センチ開いた窓の奥から覗く銃口。狙いは少女。
ディーゼルエンジンの排気ガスと硝煙の入り混じった靄に、僅かに写し出されるレーザーポインターの赤い軌跡。
真彦の脳髄に時が止まったような感覚が走った。勝手に体が反応する。「避けろっ、あぶな」い、と言いかけたところで、しかし少女は背後の敵を見向きもせず、またしても銃口だけを標的に向けて躊躇なく引き金を絞る。
ーーえぇ‥‥‥。
「話をそらさないでください」
とりあえずまた死体が増えた。こいつ後ろに目でもついてるのか? 少しくらい目を逸らして欲しい。
見方でもない人間を生かしておく義理も必要もない。それどころか少女本人にとって予定調和を乱す不要因子にもなりかねない。
少女の理論は概ね正しい。それは機械的なほど正しい。
かといってここで素直に殺されるほど、真彦は物事の摂理に従順には生きていないので、ここは全力でしらばっくれるしかないのである。生命線だって有限なのだ。
「というか、お前にも恥ずかしいっていう感情くらいはあるんだな」
「失礼ですね。貞操観念はバッチリです」
「そういうことを真顔で言うな」
だいぶ生気のなくなった駐車場で真彦は膝に手をついて項垂れる。欲見れば少女の額にもうっすらと汗。吐息を抑えるように、そのなで肩をゆっくり上下させていた。さすがに体力が無尽蔵であるということはないようだ。
頭に浮かんだ少女サイボーグ説が霧散した。ターミネーターだってこんな無茶はしない。
少女の瞳にはたしかに真彦が写っている。
「あちゃー、すごい暴れてるじゃない。後始末はどうすんだっつーの」
夢子の嬌声に真彦は一気に現実へと引き戻された。そういえばあの女、ずっと静かだったけどーー
「違うんだ。待ってくれっ」
聞き覚えのある、むしろさっき聞いたばかりの男の声。
振り返れば夢子が建物の入り口から出てきて、中年男の尻を蹴りとばしていた。無様に転がる中年の情けない悲鳴。目の前に広がる光景を見てまた悲鳴。気持ちは分かる。
少女は「騒がしいですね」と言って、ハマーH1の屋根から音もなく飛び降りると、一旦その銃口を引っ込めてくれた。
「逃げ遅れてたから捕まえてきた」だっさーいと笑って、男の丸まった背中に足を乗っけた。夢子は相変わらず一切の動揺もなく、まるでこの惨状を騙し絵か何かと勘違いしてるんじゃないかと、こちらが勘ぐってしまうほどにいつも通りだった。
「助けてくれっ。君たち二人を売るつもりはなかったんだ」
「ほほう、ではいったいあの娘にいくらかけるつもりだったのだ?」少女を指さして、踏んでいる足を強める。
「誤解だっ。私はただディスカードの保護を‥‥‥」
「嘘つけ。それじゃああなたたちが逃げる必要はなかったでしょうに」
夢子が呆れ顔で階段を降りると「こりゃひどい」倒れているスキンヘッドの死体を足で転がしたーーかと思えば、襟章を確認して「なんだ下っ端じゃないの」とがっかりする。
「なんで米兵がこのあたりをうろついている?」
その手には星条旗のピンバッヂがしっかりと。
「知らない。私は本庁からディスカードを見たら報告を入れろと指示があっただけで、それ以外は知らない。本当に知らないんだ!」
夢子の睨みに、中年は全身から汗を噴出させ唾を飛ばして抗弁した。
「どうして政府が。しかもそれでなぜ他国の軍人が襲来してくるの?」
「なんでだろうな‥‥‥」中年の目線が泳ぐ。
「私の目を見て話せ」
口元だけが笑っている。その瞳の奥には中年の期待するような猶予はなさそうだ。
「我々の所属は知っているな? 私たちは機嫌の良し悪しで仕事はしないけれど、何事も失敗することはあるんだ」
けっしてそんな物騒な組織ではないと真彦は叫んだ。心の奥底で。
「先日からこの山林一帯で共同演習をしているんだっ。実はそのおかげで害獣駆除にもなってるって‥‥‥ほら、さっきも言っただろう?」
「ふーん‥‥‥それから?」
「それ以上は知らない! 勘弁してくれ」
「お嬢ちゃん、どう?」
と急に話を振られた少女は、とくに興味のなさそうな声で「視線が右上に流れるのと、余計なことをしゃべらないよう慎重に言葉選びをしてるところから、おそらく嘘は言ってないけど本当のことも言ってない、といったところですね」とつらつらと宣った。
嘘発見器だ。
中年はその言葉に観念したのか「う、噂だがアメリカと手を組んで各地に散らばったディスカードの子供たちを集めているって」と声を絞り出した。
「なんのために?」
「知らない、噂だって言っただろうっ‥‥‥か、海外に輸出でもするんじゃないか?」冗談めかした乾いた笑い。が、少女を見てすぐに口を噤んだ。不用意な発言は身を滅ぼす。
しかし当の本人はどこ吹く風で、自分は関係ないといったふうに首を傾げる。
それから落ちている死体をまるで貝殻拾いをしているかのような身軽さで一つ一つひっくり返しては、使えそうな弾薬を吟味して抜き取っていった。逞しいことこの上ない。
銃創は頭及び首筋、どちらも防具では防ぎきれない箇所を正確に撃ち抜かれている。手際の良さは一等級だ。数だけでも軽く十は超えている。ハンドガンひとつ、しかも屋根の上から一歩も動かずプロの兵士の集団相手に‥‥‥
するとその中からうっすらと呻き声。
「You are fuckin' soldiers of wherever?(お前ら、どこの兵士だ?)」
運よく急所を外した男が体を起こして叫んだ。肩と腹部を撃たれ、満足に武器も構えることができない。見れば辺りにはまだ息の根のある兵士が数人。同様に肩や足の関節を撃たれ動けないでいる。
--これは。
真彦は再度虚空を見上げ嘆息。思いっきり国際問題じゃないか。アメリカーーなるほどあの車体に貼られている鷲のマークは大正製薬ではなく、ハクトウワシだったのか。
「真彦、すぐにここを離れるよ。準備しな」
夢子が、ぼーっとしている真彦の手元からギグバッグを取り上げて肩にかけた。その足でセダンへと歩いていく。少女はそれを見て手を止めると、刷り込みされたヒナのようにそのあと続く。
真彦が遠い目でそれを追っていると、ズボンのポケットが振動した。
取り出したスマートフォンには『妙義アリサ』の文字。
真彦は嫌そうな顔をしながら通話ボタンを押して耳に当てる。
『やっとつながった。もう』
それを聞いただけで切りたくなった。芯の通った気の強そうな声。多少恨みがましい不機嫌な声。
『業務連絡だよ、真彦くん』
そう言って真彦の返答を待たずして淡々と一方的に必要情報を並べていく。
『宇佐神教官にも伝えておいて』
「自分で言えよ」
『いやよ、怖いもの』正直なやつだった。『それよりなにやってたの? さっきから何度も電話してるのに』
闇営業からのドンパチとか言えない。
「メールでいいじゃないか」
『真彦くん、絶対に見ないでしょ』
「まあそうだけど」
『‥‥‥こっちは今日本に戻ってきたばかりなんだから、あんまり疲れるようなこと言わないでよ。キミがお出迎えしてくれたっていいのに』
「なんで僕がそんなことをしなきゃいけないんだ」とか言わないのである。
『声に出てるから』
げ。
ということでクドクドとお小言を貰いながら、真彦は夢子たちに追いつく。
その間、電話の向こうで『真彦にいちゃんと話してるの?』と聞こえてきたのは気のせいだろう。
「それじゃ切るぞ」
『ちょっと、まだ話は終わってな』言い終える前に終了させた。あとが怖いけれど。
夢子と少女は金勘定していた。先ほどの報酬の分配のはずなのに、少女の手には明らかに中年から受け取った額より多い諭吉が握られていた。
「給与証明はいる?」
「いりません。それよりもわたしの銃を返してください」
「冷たいなあ。もう少し可愛げがあったほうが仕事しやすいんじゃない?」
ギグバッグが少女に手渡される。
金の切れ目が縁の切れ目とはこの際明らかに誤用であるが、この場を言い表すには字面だけみれば最もふさわしい言葉だ。
「それではわたしはこれで」
少女はギグバッグを担ぎなおすと、いやほんともう何事もなかったかのようにそう言った。その志操堅固たるに畏怖さえ覚える。
「やっぱり一人で行くのか?」
近くに海浜公園、その奥に臨めるのは閑静な住宅街に続く国道と、険しい山道に通じる狭道の分岐点。
「これ以上関わってお互い情が移ってしまったら、この先もし出会ってしまったときにやりにくいでしょう? わたしはそうでもないですが」と、さらりと言うものだから真彦も二の句が継げない。
「お嬢ちゃん、いろんなところで仕事探ししてるでしょ? しばらくはやめたほうがいいね。余計なハエがまとわりついてはキミも困るだろう」
「お嬢ちゃんはやめてください。あと虫は平気です」
「そゆことじゃねーよ」真彦がつっこんでしまった。
ディスカードーー兵器として養成された戦闘のエキスパート。彼女たちがどんな教育を受けて、どんな生き方をしてきたのかなんて、さきの戦闘を見ればおおよそ想像はできた。そんな圧倒的な戦力、みすみす逃す手はないだろう。ディスカードを拾い集めている組織の噂なんていくらでもある。
「すぐに追手が来るだろう。僕たちも捕まると大変なことになるから、このままここを離れるけど」
「そういうことですか。わたしは大丈夫です。追われるのには慣れています」いままでも。この先も。
少女の腕や脚の傷が何よりも証拠。
夢子が眉をひそめて「あんまりそういうのをまっすぐ見てやるなよ」と窘めた。
心が腐る前にーー
それは中途半端に呑み込むにはあまりにも猛毒だった。
「ですのでわたしはここを後腐れなく立ち去ったほうがいいのです。ほら、発つ鳥跡を濁さずって言うじゃないですか」
真彦は駐車場の惨状を見渡して「いや、散らかりまくってんだけど」とか言わないのである。空ではもう屍肉を嗅ぎつけた鳶の群れが飄々と遊泳していた。
「それでは本当にさよならです」
引き留めるという選択肢はない。むしろここで少女を仕留めておかなければ後で後悔することになるのではと、開かれたセダンの荷台に乗せてある武器に一瞬目が行くーーそれと見覚えのない長布に包まれた何か。
なんだあれ。
真彦の口から何か出かけたとき、少女は「お世話になりました」とぺこりと頭を下げると、名残惜しさを一欠片も見せることなく軽い足取りで颯爽と走り去ってしまった。
けっして他人に懐かない迷い猫。でもその迷い猫は結構おしゃべり好きなやつだったらしい。
背負っている武器の重さを感じさせない俊敏さでフェンスを乗り越え、その小さな背中はどんどん小さくなって、そして次第に消える。一度くらい振り返ってもいいのに。
「よかったのか? あいつを行かせてしまって」
真彦は少女の残滓に向かって問いかける。
「んー、欠員補充の手続きが省けると思ったんだけどね。うむ、どうしようもないさ。まぁこんな仕事だし、無理強いはできまい」煙草に火をつけながらほとほと悟ったような口調で言った。
やけに素直だな。普段なら他人の意思などお構いなしに振り回すくせに。宇佐神夢子の辞書に『無理強い』という言葉があったことにさえ驚き。
「結構気に入ってたんじゃないか?」
「自分に言ってるの? 真彦」
「まさか」
まもなくして遠くにあったヘリの音が近づいてくる。パラパラと空気を切り刻む音。速度からして今から逃げても無駄だろう。
迷彩色の重厚な鉄の塊。それは強い日の光を浴びるとニビ色に姿を変え、まっすぐこちらに向かって飛んでくるのが見えた。機体の前後に二つの巨大なプロペラを回転させる大型の輸送ヘリーーCH-47・チヌークだ。
その躯体が上空二十メートルほどまで滑空し静止すると、強烈な下降風にあおられ髪の毛とか服が激しく波打つ。
おもむろにハッチが開くとそこには白いスーツ姿の妙齢の女が一人。軍用ヘリには似つかわしくない恰好だった。
「夢子ちゃーんっ!」そのあとはプロペラ音にかき消され何を言っているか分からなかったが、何やらブチギレているだけは分かる。
「なんて言ったと思う?」と夢子。
「事情聴取とか‥‥‥金の無心かも?」
「あたしもそれにさんせー」もちろんがんぼー。金なんてないけどー。
汗ばむ太陽と分厚い入道雲。
おとなしく人を待つセダンと、一機のチヌーク。
そんな能天気な二人が見つめる先、底知れぬ笑顔の般若がそこにはあった。
第一部 出会うってだけじゃ 物語は始まらないんだよ 了
ここまでお読み下さいまして誠にありがとうございます。感謝感激です。
とりあえず第一章が了になっているのですが、章タイトル通りまだ物語が始まっていません。物語の”序”の部分といったところでしょうか(笑)
現代の日本とは少しずれた世界線の日本という設定で、全然説明していない部分があると思いますが、これからストーリーの中でひも解いていければ・‥‥と願望です。
引き続き第二章を進めていきますので、長い目でお付き合い頂けると嬉しいです。
評価、感想お待ちしております!(執筆スピードがあがります)
To Be Continued.