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激動の花火大会 前編 

ちょっと長くなりそうなので中編も予定しています。


 *追記 時間に矛盾が発生したので修正。

   30分オーバー→オーバーしてしまった。


 *追記2 屋台のおっちゃんの台詞が抜けてたので追加しました。

 

 冬場は観光地として有名な沫雪市、しかしながら今年の夏の夜は大いに賑わいを見せていた。


 この町に咲くは夜の花、今年の花火は三十%増量。一風愉快なキャッチコピーの元、多くの人がこの町に集まってきた。


 そのため花火大会の打ち上げ場所やその近くは様々な出店が集まり、金魚すくいに射的に型抜き、バラエティー豊かでなんでもござれだ。


 人々が織りなす喧騒を前に、2人の少年少女は活気にあふれた雰囲気に吞まれそうにになっていた。今できる最善を尽くしているはずなのに、思うように事態が進まず不安が募っていく。


 花火大会当日、約束を交わした二人は未だ出会えずにいた。


 黒い髪をしたごく普通の少年と、白い髪をした普通からかけ離れた少女。さながら二人はロミオとジュリエット、脚本通りの結末ならばこの恋はたやすく引き裂かれるだろう。



 (どうしよう、このままだと白雪さんに会えない)


 (どうしよう、このままじゃ康一くんに会えない)


 ここが2人の恋のターニングポイント。残り僅かの時間で二人は巡り合うことができるのだろうか。



 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 午後7時。 花火打ち上げまで残り2時間。



 合流場所は古めかしい神社の鳥居前、まだ夕方前なのに人が途絶えないくらいには賑わっていた。由良先輩調べだと、長い階段を上らないと行けないオンボロな神社が一番綺麗に花火が見える場所らしい。


 どこを見ても花火大会を楽しもうとしてる人が行ったり来たりで、とても賑やかだ。煩わしい人々の喧騒、やっぱガラじゃないなと苦笑い。


 今まで由良先輩に誘われたって断ってたのにな。まあ、途中で抜け出すのは決定事項なので本当に申し訳ないと思う。


 事前に約束していた白雪さんに、光山先輩と……池田。どこかしらから聞きつけてきた瀬良と由良先輩の計五人と出会うことになっている。


 約束の時間はまだ時間は30分も余裕がある。このままトラブルがなければ無事にたどり着けるだろう。


 それよりも俺は途中で白雪さんとうまい具合に抜け出せるのだろうか。というかここ以外でどこかで花火が見れる場所を……


 久々の人混みで気を張っていたためか、人の不機嫌そうな声につい足を止めてしまう。


「ちょっと困るよ、お姉さん。こんな平和なご時世なのに無銭飲食なんて」


「いやー、ちょっと財布を忘れちゃってさ。ねぇおじさん、うら若き乙女を助けると思ってツケにしてくれない?」


 「駄目だね。食べた分はちゃんと払ってもらわないと」

 

 「だめかー」


 若い女性と屋台の店主のおっちゃんが金銭問題で揉めていた。このような催しで事は、ままあることだ。時間も限られているし見なかったことにしよう。


 高身長のスラッとしたのような女優のようなスタイルをしているため、下心が隠せないナンパ目的の男が金を出してくれるだろう……


 (うわ……面倒くさ……)


 どうやら、そう簡単な話ではないらしい。その女性は祭りでも売ってなさそうな、ひょっとこのお面を顔につけていた。


 ナンパなんて基本的に顔の良し悪し、つまり顔が良ければ何でもいい。素性がしれない、ひょっとこのお面を被った女性と関わりたくないのは当然のことだろう。


 ほんの少しだけ助けたい気持ちがあるのだが、今日という今日はトラブルに巻き込まれたくない。というか俺もナンパ目的の下心で近づいたと思われたくないし。


 (俺にはもっと重要な事がある)


 意識が高いサラリーマンが使いそうな言葉だなと思ったが、実際俺には関係ない事なので早足で通り過ぎることにしよう。


 と割り切ろうとするが、ここまで分かってしまった以上無視することはロクデナシ。俺だって血も涙もないわけではない。


 (あの人の近くにお金落として逃げれば、察して使ってくれるでしょ)


 近づき過ぎると痴漢だと訴えられてもおかしくないだろう。リスクに対してリターンがあまりにも少ない。けれどこのまま誰も助けてくれないのは、かわいそうだと思ってしまった。


 通り過ぎた直後に女性の足元にお金を落とそう。あくまでもさりげなくだ。不自然に思われないよう人を探してる風に顔を左右に動かしたり、携帯をチラ見して連絡を待ってるフリなどして工夫を凝らす。


 悪いことは一切してないのに心拍数が上がってきた。ちょっと手が震えてきたかもしれない。


 あくまでも自然体を心掛け、平常心を忘れずに。姑息な野次馬のフリをして何気なく……


「ん、そこのお兄さん。このお姉さんと知り合いかい?」


 なにぃ!?このおっちゃん、洞察力高すぎるだろ!!


 野次馬のフリとかをしていたつもりだが、どうやらおっちゃんにはお面の女性と知り合いだと感じたみたいだ。


 それに気づいたお面の女性は、お金を握りしめた手をワラをも握り潰すような力で握ってきた。


 いや、なんでそんな必死に掴んでくるんですか、ヤバいめっちゃ痛い。握りしめてくる腕は今も悲鳴を上げている。


「はい、その……知り合いです……。」


 この事態をうやむやにしたいがため、咄嗟に噓を吐いてしまった。それが不幸の始まりだと知らずに。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー



「いやはや助かったよ、私の弟くん」


 お面の女性はかつての旧友のように馴れ馴れしく話しかけてきている。しかし、こんな厚顔無恥の、お礼を言う時すらお面を外そうとしないド変人は今すぐ絶縁したいくらいだ。


 って、誰が弟だよふざけやがって。恩を仇で返されたもんじゃねえか。


 後ろの屋台のおっちゃんの顔見てみろよお前。まるで明日捨てる可燃ゴミを憐れむような表情されて最悪なんですけど!


「あなたの弟じゃないんですけど」


「本当にそっくり。いけ好かないとことか、気難しいそうなところが瓜二つって感じで」


「はぁ……」


「まあまあ、そんな世の中に失望した顔しないで。私がとっても面白いもの見せてあげるから」


 お面の女が自信ありげに用意したものは瓶底メガネだった。ひょっとこのお面をしていたんだし、芸能人でこの祭りのゲストとして呼ばれた可能性も無きにしも……


「ひょっとこ瓶底メガネー!」  


 俺はこの女のセンスと人間性に失望した。ひょっとこのお面の上からの瓶底メガネをかけただけ。例えるなら、卵かけご飯が出来るくらいで料理が趣味と言い張るぐらいの失望だ。


 期待はしていなかったはずだ。人に面白いと言ってしまえば、それだけ期待のハードルは上がる。


 もしかしたらお笑いのプロで予想をはるかに上回る、空前絶後のギャグセンスを期待した俺こそがアマちゃんだったということだ。


「というか今流行ってるんですか?今時瓶底メガネだなんて?」


「いやさっき拾った」


「さっさと捨ててください」


「そう言われたら愛着湧いてきたから持っておこー」


 体は大人で中身は子供。ここまで極まると、人の気持ちを考慮しない傍若無人なんだと割り切るしかないだろう。


 まあでもこれで義理は果たしたし。もうこんな変な女、置いていっても問題ないだろう。


 隙を見て離れようとしたが、またしても強引に手首を掴まれてしまう。


 しかも、この女は異性に躊躇することなく無遠慮気味に手を引いてきた。しかもそっちは神社方面じゃないんだけどなー。


「あの俺、約束があるのでお先に失礼……」


「いやいや、旅は道連れ世は情け。私達はこの時点をもって運命共同体、さぁ行こう行こう」


 掴まれた手は離さない、というより強く握りしめられた手は外れなかった。それどころか現在進行形で目的地とは違う方向に引きずられいく。


 この女、とんだゴリラじゃねえかよ!!ああぁああぁ!!このクソアマがぁああああ!


 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 午後7時30分   花火打ち上げまで残り1時間30分

 

 なすすべなく引きずられた俺は、お面の女にがっちりと腕を組まれて逃走出来ずにいた。不幸中の幸いか、この女の移動ルートは遠回りであるがギリギリ神社に行けそうな道順だった。


 傍からみれば浮かれたカップルに見えるだろう。実際は俺が逃走できないように腕を組まれているとだけだが。


 (うう、早く白雪さんに会いたいし、皆がいる神社にも行かないといけないのに……)


 約束した時間はすでにオーバーしてしまっている。一刻も早くこの女から逃げ出す算段を考えねばならない。


 回った順はフライドポテト、唐揚げ、モダン焼きのコレステロール満載のトリプルコース。それどころか支払いは全て俺持ち。


 そもそも年下に奢らせてんじゃねーですよ。学生なんて意外と金持ってんねーんだよ。残り少ない手持ちで買った唐揚げの味だけが俺の救いだ。


「嫌々そうに見えて結構お金払ってくれるよね。ツンデレ弟くん」


「…………」


「図星だからって無視は良くないと思うな。でもその気持ちはしっかり受け取っとくね」


 もうおしまいだわ。もし白雪さんに見られたら、もう全部おしまいだわ。やけ気味に貴重な唐揚げを少しづつ口に入れていく


「本当に時間が無いんですから、とっとと離してくれませんか?」


「実は私、先日弟を交通事故で亡くして……それでつい嬉しくて腕を組んじゃったんだ」


「……噓ですよね」


「正解!!」


 帰りてぇ、白雪さんのところに帰りてぇよ。こんな頭のイかれた女と一秒たりとも関わり合いになりたくねえよ。


「おっ、金魚すくいなんてのも風流だねぇ。ちょっと今から本気出す。おじさーん、私にポイ1つちょうだーい♡」


 そう言って俺への拘束を緩めず、金魚すくいの屋台に一目散に駆け込んだ。そして金魚を掬うポイを買った後、衝撃的な光景を目の当たりした。


 ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、紙で出きた柔いポイを繊細かつ大胆に扱い、いつの間にか金魚を入れるお椀は既に金魚で敷き詰められていた。


 その華麗な手捌きを見ようと、いつの間にか沢山の人だかりが出来ているではありませんか。無駄に上手いし本当に大道芸人なんだろうか。


「あの姉ちゃん上手すぎだろ!!」


「おねーさん、すごーい」


「いやはや、それほどではございません。っと、これで最後かな」


 最後の演目と言わんばかりに、ポイが派手に打ち上げると同時に金魚が宙を暴れるように飛んでいく。そして金魚は吸い込まれるように静かにお椀に落ちていった。

 

 鳴り響く拍手は称賛か羨望か、それを向けられているのはお面の女だったとしても不思議と悪い気分にはならなかった。


 信じられるか、この腕前で俺の腕を拘束しながらやってるんだぜ。取った金魚は計30匹しかもポイは破れてなく、ただ飽きたからやめただけ。まだ余力残してるんだからとんだ化け物だ。


 「お嬢ちゃんすごいね。こんなに金魚を取ったお客さんは始めて見たよ」


 「いやーこれこそカップルの力……かな……」


 二人しゃがんだ状態でかなり近い距離で、少し首を斜め下に下げながらの上目遣い。なんだろう、このお面の女の言動が過去一番に腹が立ったかもしれない。


 「「ヒューヒュー」」


 おい店主の親父とクソ野次馬、根も葉もないことで盛り上がってんじゃねーぞ!

 

 このままでは恥ずか死も辞さないので掴まれている立場を利用して、金魚すくいの店から脱兎の勢いで逃げ出した。ここで抵抗されたら本当に社会的に生きていけない自信しかない。


「もー、そんな不機嫌そうな顔して、せっかくのお祭りだし楽しまないと損だぞ☆私たち今日だけのカップルなんだから☆」


 マジでウざい。なんだろう瀬良を女にしたような、この上ないウざさと図々しさとしたたかさがある。


 こいつを瀬良女バージョンと仮定すると、次に主導権を握られたら俺は永遠に目的地にたどり着けなくなる。 


 「ちょっといい加減にしてください。俺は人を待たせてるんです。あなたの相手なんてしてられないんですけど」


 「もしかしてデートの予定とかあったりした?」


 あながち間違ってない推測に、つい口をつぐんでしまった。沈黙は無言の肯定なんて言葉は滅びればいいのに。


 「いやーお熱いですねー。熱々のおでんくらいには煮詰まってますねー」


 ウざい、この女バージョン瀬良モドキ。そのお面を引っぺがしてお前の口に沸騰したおでんを突っ込んでやりたいよ。


 というか誰かに見られていないよな。こんなやつでも知り合いにでも見られたら致命傷どころの話ではない。


 畜生な赤崎がいる新聞部に告げられたり、最悪の場合は白雪さんに見られる可能性だってある。


 一応警戒はキッチリしているが。今のところは……うわいたし……けどギリギリ致命的ではないと思う。


 あいつら、いつぞやのサッカー部のバカ二人組じゃん。こんな所で油売ってないでサッカーの練習しとけよマジで。

 幸いにも同じクラスメイトじゃないし、俺の影は薄く存在感が皆無なため無視してくれるだろう。


 考えてる間に彼らは近づき顔が視認できる距離なる。当然ながら自分には目もくれていなかった。そう、自分には。


 サッカー部主将?の男の熱い視線はお面の女に向けられていた。彼は俺が見たことないくらい動揺していた。


「綺麗だ……」


 噓だろ、なんでお面越しで顔の綺麗さとか分かるんだよ。お前には一体何が見えてるんだよ。副主将?も呆れてないで止めろや、このバカのストッパーじゃねえのかよ。


「そういう貴方も体つきが男らしくてカッコイイわよ」


 (おいーーーー!何言ってんだこいつーーーーー!!)


 こんな初対面で『綺麗だ……』なんて惚けてるやつなんてバッサリ『無理、キモい』とかで返せよ。男なら誰でもいいのかよこいつ!


 しかも俺には分かってしまった。この女は適当にお世辞を言ってるだけだと。遊ばれているにも拘わらずサッカー部主将は心打たれているようだった。


 わざわざ関わらなくてもいいのに、新しいおもちゃを見つけた子供じゃないんだぞ!


「頼む、俺と付き合ってください!」


 全力で頭を下げるその姿は土下座。膝を地面に下ろし、肘を曲げ、深々と地に頭を擦り付ける姿は正しく土下座だった。


 その狂気にまみれた真剣さに、女は『いいこと考えた』的な、ろくでもないを事を企んでいるようにしか見えなかった。


「実はこの子が婚約者で、しかも親から強制されて嫌々付き合うしかなかったんです」


 突如として泣き崩れる、その大根役者のような台詞と演技には違う意味で涙が出そうになる。このホラ吹き女を誰でもいいから黙らせてくれ。


「結婚したのか……?俺以外の奴と……」


 もういいって、この流れは初だけど大体この後の展開が簡単に想像できちゃうんだよ。


「おい、そこの陰キャマン」


 誰が陰キャマンだよ。ネーミングセンス0のアホの子丸出しの〇貞野郎がよ。サッカー部主将は睨み付けて来るが、怯まず真正面から睨み返した。


「俺が勝ったら、その綺麗なお姉さんをお持ち帰りするぜ!!」


 (お前、言葉の意味分かって言ってんだろーな!!)


 成り行きとはいえ、またしてもこいつと勝負することになるのか……。というか勝負なんて、受けてる場合じゃねえ!時間がマジでやばいんですけど!!


 俺は果たして白雪さんに会うことができるのだろうか。そして二人で抜け出せるのか。


 不安だ……。


 

 おまけ

  うろ覚え


 光山先輩「はあ、小松さん何処にいったんだろう?」


 由良先輩「おい、ちょっといいか?」


 光山先輩「あれ森本さん。今日は塾じゃなかったっけ」


 由良先輩「偶然休みだ。それよりもつかぬ事を聞くけどいいだろうか?


 光山先輩「僕も聞きたいことあるんだけど、なにかな?」


 由良先輩「確か名前は……武田か?」


 光山先輩「光山です」

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