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なぜかほんわか

二年も投稿してなかったことにも関わらず、今まで見てくださって本当にありがとうございます。

 




  「うーん、美味しいぃ。ここの喫茶店って知る人ぞ知る名店よね」

 

  先程の怒り狂った態度はどこへやら、池田はケーキをハイペースでお腹の中に入れていく。数えたくはなかったが今ので注文したのは今ので三皿めだ。そんなに食ったら太るぞ、なんて言ったらキレ散らかすのは間違いない。


  ちなみに食べているのは俺と同じケーキのプチフォンダンショコラだ。


 このまま忘れてくれて帰ってくれたら、万事オールOKの万々歳なんだがな。



  「で、何で康一は白雪さんと二人きりっでデートしてるの」


  ケーキの魅力という甘い希望は露へと消え去る。白雪さんと一緒に歩くのが嬉しくて、誰かにつけられていること気がつかなかった。警戒心が緩んだ結果とはいえ救いようのない致命傷だ。


 何も今日に限ってこんなところまでストーキングしなくてもいいじゃないか、チクショウめ。とにかく時間を稼がないと……


「早く答えないと康一の恥ずかしい秘密バラしちゃうよ。」


 認めたくないが腐っても幼馴染だ。俺にほんの少しの考えるスキすら与えない。


  「それは、その、なんだ、あれだな・・・・」


  「まさか、またデートの約束をするために白雪さんを呼んだんじゃないよね」


 ヤバイ、こいつ勘が鋭すぎる。何で俺に関することだけは頭の回転が速いんだよ。 核心に迫る言葉が的確に突き刺さり、口を開くにも開けない。


 状況はまさに四面楚歌、八方塞がりの頭打ちでテーブルに頭打ちつけたいくらい状況が終わっている。俺は白雪さんをちらりと見る。コーヒーをすする尊い姿は本当にエモい。エモ!エモ!


 こうなったらヤケクソだ。今の池田畜生を何とかするには、白雪さんに全てを託すしかない。


「そ、そんなわけないじゃないですか、そうですよね白雪さん。」


 この瞬間、俺は自分の判断ミスに気づいた。純粋さ100%とほんのわずかに天然が入った白雪さんに、本当に託してよかったのかと。


「えーと、康一君が誘ってくれた喫茶店のケーキとっても美味しいよ」


 完璧、完璧ですよ白雪さん。きれいに論点がずれていて反論が難しくなっている


 結構な無茶振りだったのにだったのに、あろうことか人を信じ疑うことなく喜んでくれている。さすがの池田も、白雪さんの淡雪のような綺麗な心にたじろいでいる。


 ……なんだろう下心で誘った自分が醜い人間に思えて嫌気がさしてきた。



「って今この瞬間がデートじゃない!しかも熟年夫婦みたいに息が合ってるし!」


 反射的に両手でテーブルを叩き立ち上がる池田、偶然か必然か喫茶店のマスターがこちらを見つめる。気まずいのか、池田はそそくさと席に座り直す。


 何やってんだこいつと煽ってやりたい気分だが、俺もデートだと意識してしまってちょっと顔が赤くなっているかもしれない。手元にあるコーヒーに手をつけ、思考をリセットすることに専念した。


 (あー、苦すぎず、酸味も強くないから結構好みのコーヒーかも)


 余裕を持ってコーヒーを味わっていると、池田の顔がおぞましく見えた


「なんかムカつくから康一の恥ずかしい秘密言っちゃうね。」


 あー!!おま、お前ぇぇ!!人でなしか、妖怪人でなしお化け!! 


 (まずい、まずい、まずい)


 ここの店のケーキもコーヒーもとても美味しいが、思考が現実逃避しそうなくらい現状がまずい。なにがまずいって記憶障害で覚えてない古い記憶のほうが多いってのに。


 ブラックボックス化した曖昧な記憶ほど怖いものはない。例えるなら、俺は持ってないが隠していたHな薄い本が誰かに発掘されるような怖さだ。


「それってどんなことなんですか?」


「えーとね、康一の恥ずかしい事たくさんあるから何を言っちゃうか、迷っちゃうなー」


 ……はい、終わりました。まさか白雪さんにとどめを刺されるとは微塵も思いませんでした。これが醜い下心を持った人間の末路か。


 これで白雪さんに嫌われでもしたら、首にロープをかける覚悟くらいはするのかもしれない。半ば諦めかけた時、喫茶店のドアが開く音が聞こえてきた。


 こんな人の命運が尽きそうな一大事に誰だ、と思いチラリと顔を見てみる。その人物を見て思わず頬が緩んでしまう。


  「あれ、康一君じゃないか?」


 そこに現れたのは元新聞部部長である光山先輩だった。まだ運のツキに見放されないことを心の底から紙に感謝した。


「康一くんのお知合いですか?」


 そこで白雪さんの注意が光山先輩に向かい、俺の尊い犠牲は必要ではなくなった。


「え、ああ、はじめまして、僕の名前は三年の光山 武です」


 あれっ、ちょっと微妙に空気が悪いように気がするな。ちょっと首を傾げそうになる。


「えっと、白雪さん、突然なんだけど、この前の新聞部のこと本当にごめん。ぼくがしっかりしてれば良かったんだけど」


 ああ、そういえば新聞部の赤崎が白雪さんに対して変なスキャンダル記事書いていたな。自分の中ではある程度整理はついてたんだけど、光山先輩もあのひどい記事に対して思うところはあったみたいだ。


 とうの白雪さんは、きょとんとしていて何について謝罪されているのか分からず戸惑っていたみたいだった。


「先輩、言わなくても大丈夫ですよ。」


 申し訳なさそうな先輩が見てられなくて、つい庇ってしまった。白雪さんはきょとんとしているが、あの記事のことで傷ついている可能性だってある。きっと許さないでいるほうがいいんだろう。


 でも誰かが一歩的に攻めるのは間違いだって、今ならそう思えるような気がした。


「ちょっとー康一~、私をのけ者にして話を進めないでよ~」


「え、ああ悪い悪い。ケーキ三皿も食べる食いしん坊の相手をしないといけなかったな」


「……ねえ、白雪さん知ってる?子供の時の康一って結構泣き虫だったんだよ。何もないところで転んだ時なんて……」


「おい、言って良いことと悪いことがあるだろうが」


 俺の秘密を暴露しようとしたと池田の口を手を使った物理的な手段で塞ぐ。聞こえたかは定かではないが、そんなやり取りを見て白雪さんも光山先輩も笑っているような気がした。


 うう、うっかり池田を怒らせてしまった。なぜかこうしたほうが良いという直感を信じた自分を恨んだ。そんな時、ふと光山先輩のカバンが大量の紙が詰め込まれてのに気が付いた。


「そういえば光山先輩の先輩のカバン、何が入っているんですか?」


「ああ、これ花火大会のチラシだよ。配るよう頼まれてたんだけど、結構余っちゃって」


 ああぁ!しまったーーーー! バカーーーーーーー!


 こんなときに花火大会のチラシなんて見せたら、みんなで行こうって流れになるでしょうが!

 案の定、池田の目が嬉しさで光り輝いていた。


「康一、康一、今年の花火大会一緒に行かない?いいでしょ、いいでしょ。」


「おい、引っ付くな。バカ、離れろ」


 白雪さんに勘違いされたら、どーすんだよ。俺の計画お前のせいで全部パーじゃねえかよー。


「よ、よかったらみんなで花火大会に行きませんか?みんなと一緒なら楽しいと思いますし」


 ただし池田てめーはダメだ。なんて言えるわけもなく、俺は苦し紛れにみんなに提案した。


「うん、私も花火大会初めてだから行ってみたいな」


 やったー、白雪さんにいい返事もらえたぞ。瀬良や由良先輩のフォローむなしく、みんなで行くけどね。


「僕もいいのかい?」


「もちろんですよ。先輩がいてくれたほうが心強いです」


 8割が本心からの嬉しさだけど、残りの2割がツッコミ要員の人材補強のためだなんて言わないほうがいいだろう。


 光山先輩は俺のひきつった顔で気づいてしまったのか、ちょっと申し訳なさそうにしていた。


 池田の襲来から予定が狂ったが、個人的にはうまく誘えたと思う。瀬良や由良先輩にヘタレ呼ばわりされるのは覚悟しておこう。


 ふとため息から頭によぎるものがあった。本当にこれでよかったのだろうか、と。


 何か大切な何かを見落としてる気がしてならない。白雪さんの顔がほんの少し曇っていたことが気がかりでならなかった。

おまけ

  白雪さんは聞いてみたい


 白雪さん「あの、マスターさん。ケーキとても美味しかったです。また今度食べに行きたいのですが、よろしければ一押しのケーキを教えてくださいませんか?」  


 康一(あまりにも突然の勇気ある質問!?)  


 マスター 「当店のオススメは厳選した栗を使用したモンブランでございます。幅広い年代の方々に美味しく味わって頂けるよう、お酒はあえて使っておりません。白き雪山のような見た目から味わえる甘くしっとりした生クリームとそれを飽きさせない自然な栗の甘さのハーモニーをお楽しみいただけると思います。」  


 康一 (めっちゃ丁寧に返してるー!)

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