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甘いケーキのほろ苦さ

ぶっちゃけ失踪しようかと思いました。本当に申し訳ないです。

 

  “どれだけ欺こうとも、誤魔化したツケは必ず戻ってくる”


  いつになく静かな夜だった。 ベットに寝ている俺は由良先輩のアドバイスが脳裏に浮かび無意識の中、すこしだけ目が開いた。


  窓越しから見える景色はまだ暗い。もうそろそろ朝が来てもおかしくはない時間帯だと体内時計が教えてくれる。


  けれどそんな不確定要素で質の良い睡眠を犠牲にしたくない。そんな自らの睡眠欲には抗えず、再び目を閉じた。


  視覚が失われた結果、感覚が研ぎ澄まされ目覚ましい時計の針の進む音だけが耳に残る―――――――


  ガサッ


  背筋がゾクリとした。得たいのしれない異音はどこからともなく聞こえてきた。聴覚を研ぎ澄ませると同時に否が応にも眠気が覚め意識がハッキリとしてくる。


  ゴキブリかと思ったが違う、虫にしてはあまりにも質量を持ちすぎている。・・・・俺はそこで思考を止めたくなった。いや、考えることすら放棄したかった。


  聞こえるのは荒い息遣い。これは悪夢だ、と自信に強く言い聞かせる。だがそれ以上にその異音はベットの周辺から聞こえてくるのだ。


  もうこのリアルを避けられない。俺はおそるおそる音が聞こえてきた反対側に体を回した。



  ごぉーうぅーいぃーぢぃーーーーーーーーー!!!!!!



  「のわぁぁあぁぁぁあ!! 」


  そこには池田がいた。おぞましい形相で待ち構えていた。俺はもうこの池田(悪夢)から逃れられぬ定めなのだったのだ。



  ―――――――――


  「マジで池田のやつ、風邪で半年ほど寝たきりになんねえかなー」


  現在は学校。授業の前半は終わり、昼食の時間となり瀬良と二人で弁当を食べていた。愚痴をこぼし、不満溢れる俺とは対照的にあいつは随分と微笑ましい気持ちで俺を見ていた。


  「まあ、その、昨日池田さんを避けた康一にも責任はあると思うけどね」


  「人間一日くらい、会わない日だってあるだろ。常識的に考えればさ」


  愚痴りながらも適当に作った弁当のおかずを口に入れていく。冷凍食品の変わらない美味しさが俺の心の拠り所だ。


  「それにしてもお弁当、よく作れたね。いつものことだから池田さんが朝早くに家に入り浸ってるはずなのに」


  「あいつなら俺の両親に媚売ってるし、3分の2が冷凍食品だしすぐ作れるよ」


  俺の外堀を完全に埋めるためか、池田は俺の両親におべっかを使う、とまではいかないが良好な関係を築けている。そんなコミュ力をもっと他の場所に生かせばいいものを毎日、毎日、来やがって。

 

  「ところでいつ白雪さんを誘うんだい? 」


  突如として紛れ込んだ爆発物に、俺はむせそうになるのを我慢した。


  平静を装いながら、白雪さんが聞いていないか確認するために弁当を食べているであろう女子グループの方を見る。幸いにも白雪さんは、食べることに夢中で気づいていなかった。

 

  瀬良の方に視線を戻すが、それを面白がって観察している瀬良は絶対に性格が悪い。

 

  「やめろ、ただでさえ俺は悪目立ちしすぎってるっていうのに。そんなこともし聞かれたとしたら俺の立場無くなるんだよ」


  「だいじょーぶ、だいじょーぶ。もし聞かれたらごめんないをするつもりではいるからさ」


  呪詛を口から吐き出したいところだが、ここであえてスルーすることで無言の圧力をかけることにした。


  「全く、冗談が通じないな。由良先輩から教えてもらったんだよ。『あいつは妙に臆病風吹かすから逃げ道はつぶしとけ』って言われたからね」


  これでは怒るに怒れなくなってしまった。白雪さんを誘うと決意をしたのは、誰でもない自分なのだから。


  「とりあえず、考えてるところ。っと言ってもいい方法を思い付く自身はないけどな」


  生まれてから今まで、異性をデー・・・・遊びに誘ったことはいまだかつて無いことだ。そんな経験値0の俺が誘うにはよほどは勇気とトーク力が試される高難度ミッションだ。


  あれこれ考えてるところ、瀬良がやけに自信げな顔を浮かべていた。


  「大丈夫、僕にいい考えがある。試してみないか」


  とりあえず、聞くだけ聞いてみるが、これほどまでにない不安を感じていた。


 


 ――――――――――――


  「あっ、これすごく美味しい! 」


  「そ、そう、よかったよ」


  あれから放課後となってから一時間程度経ち、白雪さんと二人である喫茶店にいた。ここは前に新聞部元部長であるタケル先輩と来たことがあった喫茶店、レディスノウだ。


  前来たときと変わらず、元プロレスラーと言っても言い過ぎではない体型のマスターがケーキを作っている。


 そんな中、白雪さんは美味しそうにイチゴのショートケーキを少量ずつ口へと運んでいく。女の子らしくゆっくりと噛んで食べている姿につい見惚れてしまいそうだ。


  しかし、このまま二人で食べて解散なんてことはできない。自らにけじめをつけるために軽く太ももをつねる。


  (ほんと、こんなで上手くいくのか? )


  瀬良が言ったことを記憶から引っ張り出してきて、思い返す。


  『女の子は誘われたいと考えるとき、意外とその時のムードを大切にしてる。そうだね、静かであまり人がいないところで、しれっと誘えばいいんじゃないかな」


  『つまり俺に二回も白雪さんを遊びに誘えってことか。そんなこと俺が出来ると思ってるのかよ』


  『うん、出来るさ。それにもし康一が喫茶店に白雪さんを誘って何か美味しいものを食べたしよう。そのあとにまた遊びに誘えば心理的にOKをもらいやすいと思うけどね』

 

  『なんかそういう思惑のある誘い方は気が引けるんだが』


  『言い訳はなし。あんまりなよなよしてると、口が滑って由良先輩にチクるかも・・・・』


  『分かった。分かったからそれだけは絶対に止めろよな』


  経緯はともかく、白雪さんが甘いものが好きであることが幸いしてなんとか一緒に来てもらうことができた。


  けどこれから先、どう誘うかは全くのノープランだ。


  頭を抱えそうになるのを誤魔化すために、半ば適当に選んだプチフォンダンショコラを口に運ぶ。ほどよい苦味が甘いチョコレートとマッチして飽きさせない味となっていて美味しい。


  てか食レポしてる場合ではない。そんなことよりも白雪さんをそれとなーく、さりげなーく、誘うことが何よりも重要だ。


  白雪さんはまだイチゴのショートケーキを食べている途中だが、意を決して話を切り出すことにした。


  「白雪さんその・・・・ すこし話したいことがあるのだけど、ちょっと、いいかな」


  「はい、なんですか」


 目の前には俺の話を聞いてくれようとしてくれる白雪さんがいる。白雪さんを見ていると、はち切れそうな心臓を押さえ込むのがしんどくて声が出しにくい。


  でも白雪さんと一緒に花火大会へ行きたい。その思いを伝えるため俺はプレッシャーにめげぬよう声を出そうとした。


  その時、喫茶店の出入り口の扉が勢いよく開く音が鳴り響いた。


  「やっと見つけたわよ、康一。ここのところこそこそ動いていると思ったら、まさかこんなところでデートしてるなんてね」


  なんで、どうして。そんな焦りが動揺を生み、考えを鈍らせる。


  この状況で一つだけ思いついたことは、まだ俺は池田(悪夢)からまだ完全に逃れられてはいなかったのだ。


 

残された歓談部二名 パート3


由良先輩「やれやれ可愛い後輩を後押ししたはいいものの、随分と割に合わないことをしたものだな」


瀬良「そんなことを言える先輩は男気があって格好良いと思いますよ。コンプレックスである“背が低くて可愛らしいところ”を帳消しにするくらいに」


由良先輩「・・・・瀬良、突然だが私とじゃんけんをしないか。負けた方が何でも言うことを聞くというルールでな」


瀬良 「分かりました」


瀬良 由良先輩「「じゃんけん・・・・」」




由良先輩 「グー!!!!! 」


瀬良の顔面にクリティカルヒット

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