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トラブルメーカー

 

  「はい、じゃあ五人組作って」


  先生がお決まりの言葉を伝えると、クラスごとに出席番号順に並んでいた生徒は、班を作るために移動し始めた。


  「はい私、いっちばーん。ずっと一緒だよ康一」


  「しっしっ」


  まず始めに来たのは、嬉しそうに近づいてきた池田だった。


  コバエを追い払うかのように手を動かすが、池田はまるで堪えていない。


  「そんなに焦らなくても康一は人望がないのだから、ゆっくり行ってもいいと思うんだけどね」


  次に来たのは瀬良だ。ふてぶてしそうな態度は相変わらずだが、もう慣れてしまったところもある。


  「人望がありふれた高校生なんて、そうそういるわけないだろ」


  「あの生徒会長の姿を見ると、そうも言ってられないんじゃないかな」


  瀬良の視線に目を向けると、たくさんの生徒が藤堂会長の元にへと集まっている。あれを見る限り生徒会の悪評は消滅してるかもしれないが、人だかりの中にいる藤堂会長もなにかと大変そうだった。


  「いいの、いいの。俺は人が少ない方が落ち着けるし」


  「おかしいな、最近の若者はハーレムジャンルが大好きだと聞いてたのに」


  「ひ、ひどいよ。康一は私のことをこんなにも好きだって伝えてるのに」


  「お前らちょっと黙って」


  いつものことはいえ面倒なものは面倒だな。あれ、そういえば白雪さんはどこに行ったんだ。見回したけれど姿を確認出来なかった。


  まさか藤堂会長に誘われたのか。確かにあの人の行動力ならやりかねないな。今からでも遅くはないから探しにいこう。


  そう思案していると、意外にも白雪さんが赤碕を連れて、こちらに向かってきたいた。それに二人は何かを話しているようだった。


  珍しい組み合わせだな。あの二人の接点はほとんどないし、一体どうなっているんだ。


  「康一くん、赤崎さんを班に来てもらっても大丈夫かな」


  予想していなかった言葉だったので、反応に困ってしまう。白雪さんは別段と嫌そうな顔をしていないから、弱味に漬け込んだみたいではないみたいだが。


  当の赤碕は言いづらそうにしていたが、もしかしたら単純にここの班に混ざりたいだけかもしれない。


  瀬良はどっちでもいいらしく、にこにことしている。だが池田はそれをよく思っていないのか、不機嫌そうに頬を膨らましていた。


  少し戸惑ってしまったが、まあ悪いやつではないと分かっているんだし、班に来ても大丈夫か。


  「いいよ、別に。よろしく赤崎さん」


  「えええっ!?」


  池田は信じられないといった感じで、急いで俺に詰め寄ってきた。


  「ちょっと、ちょっと、ちょっと、どういうこと康一。こいつは康一にひどいことしようとしたんだよ。許せるわけないじゃない」


  「まあ顔見知りだし、別にいいんじゃないか」


  昨日、白雪さんの居場所を教えてもらった借りもあるしな。それに赤碕も池田がいる以上、大したこともできないばずだ。


  赤崎さんは呆然としていたが、白雪さんは我が身のことのように嬉しそうにしていた。


  「良かったね赤崎さん」


  「ええ、その、よろしくお願いします」


  憎たらしい様子は見受けられない。なんか、いつもより毒が薄れているから調子が狂うんだよな。いつものならもっと気難しい言い回しを使っているくせに、今日はやけに素直だった。


  「まあこれで班を作れたわけだし、いいんじゃないかな。よろしくね赤碕さん」


  まあなんやかんやで瀬良が上手いこと皆を纏められそうだし、なんとかなりそうだな。


  なにがともあれ、俺、白雪さん、瀬良、赤碕、池田。野外実習の班はこのメンバーに決まったのだった。


 

 

 ――――――――――――


  あれからキャンプ場の散歩コースの所をごみ拾いをしていた。今日の夕方ごろまでずっとこの作業をするみたいだ。


  今は丁度昼過ぎ、昼食は各班ごとに適当に時間を見てキャンプ場にある食堂に足を運べということらしい。


  俺達の班がごみ拾いをしている場所は、キャンプ場の散歩コースだ。坂道を歩いてきたのもあって結構高い場所で傾斜もあるため、もし落ちたらひとたまりもない。


  「きゃー、こわーい。康一、たすけてー」


  「瀬良にでもくっついてろ。このすっとこどっこい」


  だからといって、必要以上の接触してくる池田は論外だ。瀬良も、なんだか微妙そうな表情で見守ってるし。


  「康一くんと池田さんって、楽しそうに話していて仲がいいんだね」


  白雪さんそれはあかん、それ言ったらあかんやつや。


  池田はその言葉に気づくと、迅速に反応していた。


  「それはなんでかと言うと、私と康一は幼なじみなんだよ。幼なじみなんだよ」


  「あー! あー! 聞こえないー!! 」


  馬鹿の一つ覚えみたいに反応した池田は、同じ言葉を二回も繰り返し随分と嬉しそうだった。


  くそっ、これだけは誰にも知られなくはなかったのに。白雪さんに非はないが、池田が調子に乗るには充分だった。


  「なんでそんなに恥ずかしがり屋さんなの。もう康一ったら」

 

  「俺だって好きで、お前と幼なじみになったわけじゃないんだよ」


  「幼なじみにしては、二人の距離感は離れていそうですけどね」


  赤碕はこないだの仕返しとばかりに、正論を口にした。


「なによ、マツコのくせに生意気な。陸上部で培われた秘伝のひじ打ちを喰らわせてやる」

 

  仲が良いのか悪いのか、二人とも必死になって攻防を繰り広げいる。ていうかなんだよ陸上部のひじ打ちって。せめて陸上部らしく足を使えよ。


  「おい、崖になってるからふざけるのも大概にしろって」


  危ないと感じ注意すると、赤碕が俺の隣へと滑り込んできた。そして次の瞬間、池田のひじ打ちが赤碕の脇腹に炸裂した。


  「えっ? 」


  「うぐぅっ」


  「あっ!? 」


 三者三様に反応するも、赤碕の隣にいた俺も押し出されてしまった。


  “急斜面の坂道にへと”


  「池田ああぁああぁ!!ふざけるなあああぁああぁ!! 」


  俺と赤碕は急斜面を転がり落ちてしまった。

 







 

おまけ


豪華な食事


藤堂会長「いやー麻衣子ちゃん、楽しみだね。もうすぐ昼食だよ。先生に頼んで野外実習の食事を豪華にしてもらったんだよ」


麻衣子「会長、どれくらい予算を使ったんですか。無駄遣いは止めてほしいと常々言ってきましたよね」


藤堂会長「そんなに使ってないよ。なんと、たったの4万円だよ」


麻衣子 「会長・・・・」


藤堂会長 「ひぃ・・・ごめんなさい、ごめんなさい。ただ私は生徒のためを思って行動しただけなんです」


麻衣子 「本当は・・・・」


藤堂会長「先生がお酒とツマミ代を豪華にするついでに、生徒の食事も豪華にしてって頼まれたから」


このあと会長は麻衣子に死ぬほど耳をつねられた。



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