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野外実習の始まり

雪女死ぬほど好きなので流行って・・・・流行って・・・・(心の叫び)

 

  突然だが、俺は3という数字は大嫌いだ。


  その理由は綺麗に2つに割ることができないからだ。もし割れば1.5という中途半端な数字になってしまい、それはとても許されないことだった。


  そうこの1.5という数字が一番の問題だ。それをもし切り捨てることが出来れば1になるが現実はそう上手くはいかない。


  人というのはなにかと助け合いだ。たとえ0.5という無駄な物さえも救わなければならない悲しい存在なんだと思う。


  結局何が言いたいのかと言われれば、こうなる。


  「康一、康一、康一。バスの席は断然私の隣の席がいいよね。あっ、でも康一ってば意外とシャイなところがあるから、くっつきすぎないくらいの距離感が好きそうなんだけど、久しぶりに私の隣に座るんだし、今日くらいはお互いの愛を暖めあうということで一つの席に康一の上に私が座ることが出来れば、私としては凄く嬉しいな。康一も私に心を奪われているから、“ふっ、お前といるだけで俺は幸せだぜ”とか思ってくれるよね」


  「チェンジで」


  答えはバスの乗車のための席決めだ。うちの学年は全部で三クラスあって乗り込むためのバスは二台。そして運が悪いとことに俺は一組で池田は二組、二台のバスに三クラスを乗せようと思ったら必然的に二クラスの半分が一つのバスに雪崩れ込んでくる。


  何が悲しくてこいつと同じバスに乗らなくてはならないのかと、数学の神様が嫌いになってしまいそうだ。


  「うう、ひどいよ。ただ私は康一にあんまり会えてなかったから、康一成分を摂取したいだけなのに」

 

  「気持ち悪い発言は止めていただけませんかね」


  「まあまあいいじゃないか、池田さんもこういった行事が楽しいから少し興奮しているだけだよ」


  「その興奮が意味深な意味じゃないことを切に願うよ」


  現在の時刻は午前六時、池田にいつも叩き起こされているとはいえ俺は朝にめっぽう弱く欠伸が出そうになる。回りは全員体操服姿で、結構楽しそうにしている。


  俺は眠気と格闘しながら先程から黙って聞いていた白雪さんの様子を見た。池田の意味不明な言葉にドン引きしているかもしれない。


  と思っていたら白雪さんは嫌な顔を一つせず、池田に声をかけた。


  「あの、はじめまして。私、白雪綾女って言います」


  「えっ? わ、私は池田翔子です。確かあなた転校生よね」


  「はい池田さん。海外から転校してきたばかりで色々と迷惑をかけるかもしれませんが、よろしくお願いします」


  「し、仕方ないじゃない転校してきたばかりなんだし、私に出来ることなら聞いてあげないことはないわよ」


  少しツンツンしているが、結構まともに対応している。俺の時だけあんな頭のネシが吹き飛んだような話し方をするのか到底理解できなかった。


  帰国子女という、ステータスに圧倒されているのだろうか。


  (でも、なんか海外から帰ってきたって感じがしないんだよな)


  白雪さんの謎について、色々と考えた方がいいのかもしれないが、眠気に負けそうになり思考停止してしまう。


  「ところで席順はどうする。先生は早い者勝ちで好きなところに座れって言ったけど」


  「私は康一の・・・・」


  「ここは公平にグーとパーだして決めた方がよくないか」


  何を言うかは分かりきっているので、池田の声を遮るように声を上げた。


  「グーとパーってどういうことですか」


  「こうやってグーは握りこぶしを作るように突きだして、パーは手のひらを広げてさっきと同じように突きだす。あとは合図したときにどちらかを出してグーとパーが二人づつになるまで続けるんですよ」


  俺は簡単に白雪さんにゲームのルールを説明する。池田はかなり不満そうにしていたが、他の二人は異存がないようだ。


  「「「グーとパーで分かれましょ!!! 」」」


  結果は俺と瀬良、白雪さんと池田という風に分けられた。


  「うう、康一と一緒が良かった」


  「変わろうか、池田さん。別に僕は一向に構わないのだけど」


  「お前マジでやめろよ」


  変な協定を作らせないよう、しっかりと釘を刺しておく。あいつと隣になったら、絶対に気が休まらないだろう。


  そろそろバスの出発時間も近づいてきていた。その証拠に引率の先生は来ている生徒の人数を確認し始めている。


  (あれ、たしか藤堂会長か。先生と打ち合わせしてるみたいだな)


  よく見ると藤堂会長が先生に混じって何か話をしている。そういえば昨日生徒会のことについて話すとか言っていたような。


  「康一くん、どうしたの。もうすぐ出発するからバスに乗ったほうがいいよ」


  ま、いいか。あんまり行事とか好きじゃないんだけど、しょうがないか。


  「ごめん、白雪さん。すぐ行くよ」


  期待を無理やり胸に膨らませ、バスに乗り込んだ。




 ―――――――


  バスは問題なく目的地近くの駐車場に到着し、そこから野外実習が行われる場所まで徒歩で向かっていた。


  行き先はエゾの森と呼ばれるキャンプ場だ。


  「うーん着いたあ。ここで康一と私があんなことやこんなことまで繰り広げれるのね」


  降りて早々に池田の戯れ言が聞こえてくる。今日も全面的に無視しよう。そうしよう。


  「バスで二時間半かかる場所でゴミ拾いだなんて、学校側も結構面倒なことをしてるよな」


  「それでもキャンプ場を貸しきりにして、しかも一泊させてもらうのも無料ににさせてもらっているらしいから、なにか事情があるんじゃないかな」


  「込み合った話は、面倒くさいな」


  瀬良は野外実習を楽しみにしているが、俺はそういう気分になれなかった。


  こういう行事の何が嫌だと言えば、一人になれる時間を作りづらいからなんだよな。狭い空間に何人も入れられるかと想像しただけで嫌になる。


  せめて一人になるために夜間くらいは抜け出したい。


  「うわあ、すごい綺麗だね」


  白雪さんの反応につられて目の前を見ると、たくさんの自然に囲まれた壮大な景色に目を奪われた。まだキャンプ場には入っていないというのに様々なな木々が生い茂っており、その迫力に呆然としてしまう。


  見とれてしまっていたのか、意識を戻すともうキャンプ場の前まで到着していた。


  「よーし、お前ら出席番号順に並べ」


  と引率の先生が点呼をとり、もう一度人数を確認している、結構大変そうだった。


  「まず、野外実習についてのことを話したいが、それは先生よりも新しく代わった生徒会の会長に任せようと思う」


  先生は少し後ろに下がって、生徒会の登場を待ち受けている。


  どよめきがあちこちから聞こえてくる。今の生徒会のメンバーの正体は分からず、しかも相当な悪評があるのだから仕方ないだろう。


  そんなどよめきに乗じて、生徒会長の藤堂会長がさっきまで先生が話していた場所に登場した。生徒のほとんどが藤堂会長に見とれているのか、どよめきがピタリと鳴り止まる。


  「みなさん、はじめまして。私は新しい生徒会長の藤堂花音です。 私の力不足で生徒の皆さんの不安を煽ってしまったことを深く反省し、謝りたいと思います」


  「ですがこれからは皆の気持ちに寄り添い、誰もが楽しめるような学校生活を送れるよう努力し続けたいと思います。ですのでご協力してくれたら私凄く嬉しいです」



  「「「うおおぉおおお!! 会長万歳!! 」」」



  あまりの大声に皆が一斉に驚いていた。


  どうやら一部の男子生徒が騒いでいたらしく、先生はうるさいっ、と咎めている。今時うおおぉおお、とか滅茶苦茶胡散臭く感じた。しかも会長は最後のほう口調が崩れてアドリブみたいに聞こえたし。


  しかし他の生徒達は、それに感銘を受けて誰かが握手をし、それにつられにつられ大きな拍手が会長を包み込んでいた。


  きっと生徒会はクリーンで真っ白な生徒会を目指しているのだろうと思いたい。その後も話している最中は色々と怪しいところがあったものの、無事、野外実習の予定を無事伝え終えていた。


  「では野外実習を開始したいと思います」


  なにがともあれ、野外実習が始まったのだった。

 



 

おまけ

生徒会の裏側


藤堂会長 「いやー終わった。無事に生徒会の信用を取り戻せたみたいだし、安心、安心。」


麻衣子 「それにしては所々、セリフが少し怪しかったように見えましたが」


藤堂会長 「そ、そんなことないやい! 」


麻衣子 「でしたら、『男女間のせっ・・・・責任は持たないようお願いします』とはどういう意味で・・・・」


藤堂会長 「わー!! わー!! 」


麻衣子は心底呆れていた


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