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生徒会長のおしごと

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  (ど、ど、ど、どういうこと? どこがどう繋がれば、俺に白雪さんをくださいって言えるんだ)


  あまりにも奇想天外な言葉に思考をかき乱される。その張本人はといえば俺の反応を固唾を呑んで見守っている。


  (しかも赤碕のやつ、どこに行きやがった!!)


  どさくさに紛れて逃げたのか、赤碕の姿はどこにもない。生徒会のドアの前には一緒にいたのだが、もしかすると俺を囮にした可能性がある。


  (落ち着け、落ち着け、まだ白雪さんのリアクションのターンがある。まだ慌てるような時間じゃない)


  普通、俺に対し白雪さんをくださいと言われれば、何かしらのリアクションもといツッコミがあるはずだ。

 

  しかし、白雪さんはその衝撃発言を当たり前かのように受け入れていた。


  (白雪さーん、早くツッコんでください。今この現状を打破できるのはあなたしかいないんです)


  俺が打つ手がなくあたふたしていると、その様子に見かねたもう一人の生徒会メンバーがめんどくさそうな表情で藤堂会長に目を向けた。


  首元くらいまで髪を伸ばしており、前髪をまっすぐ揃えたパッツン髪で眼鏡をかけた美人インテリ系女子だ。


  「会長、いい加減にしてください。私達は白雪綾女さんを生徒会のメンバーとして勧誘するのに、どうして誤解を生む発言をするんですか」


  へっ・・・・ああ、そういうことか。白雪さんをくださいというのは生徒会のメンバーとして勧誘したいという意味だったんだ。白雪さんと俺が付き合っているかのような意味合いで言っているのかと思いヒヤヒヤさせられた。


  「だって白雪さんがいてくれれば、ただでさえ少ない生徒会のメンバーを増やせるんだし、案外ストレートな言い方の方がいいんじゃないかなーって」


  「・・・・会長」


  「ひぃ、許して麻衣子(まいこ)ちゃん。これには狙いがあって、生徒会の悪評を返上しフレンドリーな一面を見せなくてはいけなかったんです」


  麻衣子と名乗るその人は藤堂会長を睨み付け、その圧力に藤堂会長はぶるぶると震えているような気がした。


  「生徒会は三年生から二年生へと世代交代してから、生徒会は規律は絶対順守と聞いてたんですけど、随分とアットホームな場所なんですね」


  「実は規律に厳しいとか、あれ全部嘘なの」


  そうあっさりと否定されたら、言葉に詰まってしまう。


  「いやー、わざわざ怖い噂を流させるために、いろんな人と協力して、生徒会が物凄く権威ある場所として知らしめることは成功したんだけど。なぜか生徒会に人を集めようと勧誘しようとしたら、みんな断っちゃって困ってたの」


  「そうですね。会長が独断で行動しなければ、このような事態は避けられたと思いますが」


  麻衣子さんに正論を突かれたらしく、藤堂会長はかなり参っているようだった


  というかこの人あれだわ、行動力は凄いあるのにそれを正しい方向に持って行けない人だ。



  「というか、その協力してくれた人を生徒会に引き込むことは出来ないんですか」


  「それがさ、協力してくれた人達は他の部活動に専念してて、生徒会に入ってくれなかったの。」


  「なるほど、つまり生徒会に人が集まらなくて困ってるから、白雪さんを生徒会に欲しいってことですか」


  「そそ、話が分かる子は大好き。君も生徒会に入ってみない」


  「・・・・遠慮しときます」


  もし入ったら瀬良と由来先輩に死ぬほど憎まれ口を叩かれて恨まれそうだから絶対にやめておこう。

 

  なんとか生徒会の思惑は理解できたけど、まだ一つだけ分かっていないことがある。


  「白雪さんはどうして、この生徒会を手伝っているんですか」


  白雪さんはあまり人と話すのは得意な方じゃなさそうだし、生徒会の接点があるとは思えなかった。


  「実は昨日の昼休みのことなんだけど。私、この学校のこと詳しくなかったから、昨日の昼休みに少し散策していたら特別錬の屋上で藤堂さんと出会ったの」


  特別錬の屋上とか初めて聞いたな。白雪さんは基本的に昼休みは教室にいるんだけど、そういえば昨日は見かけなかったな。


  「藤堂さん、生徒会に人が集まらなくて仕事が全く終わらないよって言ってて、とても深刻そうにしていたから放っておけなくて」


  「そうなのよ、白雪さんってば“私にも何か手伝えませんか”って大きな声で言ってきてくれたから、私とても感激しちゃった。それに頼んだこともきっちりやってくれるし、白雪さんは最高の逸材よ」


  「本来なら私達がやらなくてはいけないことを、白雪綾女さんに協力していただいて深く感謝しています」


  生徒会の二人は白雪さんに対し、友好的な態度で接している。白雪さんって意外と誰かを引き寄せるカリスマがあるのかもしれない。


  「白雪さんって、今あなたがいる部活に入っているのよね。だったら生徒会に来てくれるように言ってくれない」 


  これどうしよう。ここで白雪さんを引き止めたいけど、もしここで白雪さんが生徒会を離れたら、学校生活に支障があるかもしれない。


  「こういうのは白雪さん本人の意思で決めることじゃないんですか。俺は白雪さんがしたいことに従います」


  と格好つけたが、実際に白雪さんが生徒会に入ったら死ぬほど後悔する。


  白雪さんは思案し、自らの思いを打ち明けた。


  「ごめんなさい、生徒会には入れないです。私を必要としてくれた人を裏切ることはできませんから」


  俺は肩の力がどっと抜けてひと安心していると、会長は想定外の出来事だったのか絶望したような表情を浮かべていた。


  「どゔじよゔ麻衣子ちゃん。このままじゃ私死んじゃうよ。過労死だよ、過労死」


  「会長の自業自得なんですから、仕方ないでしょう。せめて二人に見られている時くらいは生徒会長の威厳というものを保ってください」


  生徒会の問題ではあるが、あまりにも会長が泣き崩れていたので、さすがに放っておけなかった。


  「なんとか生徒会の部員を正式に増やすことは出来ないんですか」


  「難しいですね。何せ会長が無駄に広げてしまった噂ですから、そう簡単には消せないでしょう」


  「それなら僕が生徒会の名誉挽回に協力しましょうか」


  全員の視線が生徒会の扉の前に集まる。そいつは、とっくに逃げたと思われた赤碕だった。おそらくだが、俺を囮にして生徒会室の前から様子を伺ってたんだろう。


  「あなたは確か・・・・新聞部の赤碕小松でしたか、生徒会の要注意リストに上げておいた人ですね」


  「とても心外だね。僕はいかに、ここの生徒の関心をより求めるような記事を書こうとしているだけなのに」


  麻衣子さんは眉間にしわを寄せ、赤碕は要注意人物として扱われても当然のごとく堂々としていた。


  「はい、ストップ! ここで言い争っても意味がないじゃない。それよりも赤碕さん、協力してくれるのは本当なの」


  一触即発の空気が漂いそうになったが、希望を取り戻した生徒会長の一声でそれは消し飛んだ。


  赤碕は悪い笑みを絶やすことなく、今から会長に悪事を伝えるかのような素振りだった。


  「簡単なことです。新聞部の記事でこう書けばいいんですよ、今の生徒会の噂は悪意ある何者かによって作り出された悪評だったと」


  「なるほど、でもそれだけだと生徒会に入ってくれるとは限らないんじゃない」


  「なら明日の野外実習の時にでもそれを言えばいいじゃないですか、少なくとも会長の美貌なら多少の嘘は騙し通せると思いますよ」


  赤碕の提案は生徒会にとって魅力的かもしれないが、あの畜生のことだから確実に裏がある。だからこそ麻衣子さんは人目で分かるほど不服そうな態度だった。


  「かなり癪に障りますが、もし上手くいけば生徒会に良い人材を引き込めるチャンスでもあります。会長、どうされますか」


  「うん!それ採用!! いやーありがとね、赤碕さん。愛してる」


  会長はそんなことは些細なことだと割り切っていたのか即承諾。赤碕は計画通りと浮かび上がるような笑みを隠せないでいた。


  二人は仲睦まじく握手をしているが、その悪どい内容だけに嫌な顔になってしまう。


  白雪さんはこの手の話は苦手らしく、首を傾げてもおかしくない表情だった。知らない方が幸せなことって、たくさんあると思うから純粋な白雪さんでいてほしい。


  「というか野外実習が明日なんだから、話す内容とかも今すぐに考えないといけないんじゃ」


  「あっ!?」


  「おっと、僕はこれから色々と忙しくなりそうなので失礼しようかな」


  赤碕は一目散にと生徒会室を飛び出す。会長はあまりにもぎこちない様子だった。


  「ごめん、二人とも生徒会の仕事手伝ってくれないかな。もし手伝ってくれたら何でも言うこと聞いちゃうから」


  俺はもう乗りかかった船だと感じ手伝うことにした。白雪さんもそのつもりだったらしく、麻衣子さんの指示を真面目に聞いていた。


  俺と白雪さんは生徒会の仕事に最後まで付き合い、夜に差し掛かろうとする時間まで手伝うことになったのだった。


 





おまけ

  帰り道の二人


康一 「あー疲れた。あの会長、とんでもない人だったな。初対面なのに生徒会の仕事任せるって肝が座った人だよ、本当に」


白雪さん「でも、とても凄い人だよ。私もあんな風に誰かと話しかけたいな」


康一 「白雪さんから見てさ、会長はどんな人なの」


白雪さん 「藤堂さんは姐御かな」


康一 「えっ!? 」


姐御肌と言いたかったらしく、この後滅茶苦茶顔を赤くした。




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