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  1話 女神様、ぱんつを熱く語る

「そもそも、ただチート能力をあげるというのがありえません!」


「はぁ……」


 上下緑色のジャージに包んだ男、マサオ(29)は、女神ヘカーティアを前にして戸惑っていた。



 今朝、ヒキニート:マサオ(29)は、トラックに跳ねられてしんだ。


 と思ったら……

 目が覚めたら、この白一色の空間に連れて込まれ、わけもわからないうちに女神と名乗るこの女性の愚痴を聞くはめになってしまったのだ。


 女神は、戸惑うマサオ(29)のことなど気にも留めず話を続ける。


「才能がない人間は努力をして道を切り開きます!」


「はぁ……」


「また、才能があったとしても、人は夢や希望を叶えるために鍛錬を重ねて初めて、壁を乗り越えることができるもの!」


「はぁ、そうですね……」


「そして、そのように努力や鍛錬があって初めて、人は輝きを増すのです!」


 女神は拳をぎゅっと握ると、力強く演説した。


 どこかで聞いたことがあるような台詞に、マサオ(29)は頭を抱えた。


「いや、まあ……そうですね」


 女神は熱心に語りかけていた。

 久しぶりの客……もとい、訪問者に喋りたいことが沢山あるのだ。


「ですから貴方達、勇者達も、神からチート的な能力をもらう代わりに何か代償を払うべきだ、と私は思うのです!」


「はぁ……」



 マサオ(29)は何で自分がここにいるのか段々とわからなくなっていた。


 はじめ、女神から説明された話だと、異世界に魔王が現れ危機に瀕しているから救って欲しいということだった。


 しかし、そのままの人の身では、強大な存在である魔王には太刀打ちできない……

 そこで、チート能力を与えるから、その能力をうまくつかって魔王を討伐して欲しい……そういう話だったはずだ。


 それがどういうわけか、

 勇者はずるい……だの

 神様からチート能力を無償でもらうのは申し訳なく思わないの?……だの


 何だかわけもわからないイチャモンを付けられ始めたのだ。


 挙句は、何だかお説教でも聞かされているような気分にさえなってきた……


 いや、別に異世界を救いたくないとかいうわけではないのだ。


 むしろ、魔王を倒す勇者になると言う話は、その手のライトノベルが好きなマサオ(29)には願っても無い話だ。


 まあ、そもそも、そういうことに抵抗の無い人間を選んでトラックで轢いているわけだが……おっとこれは失言。


 だから、勇者になって魔王を救ってくれと言われた時、悪いとは思いつつ、正直、マサオ(29)は心が躍った!


 だが、聞いているうちに何やらおかしな方向へ話が屈折してきて……?


「さあ、そういうわけで、勇者となる貴方には、そのチート能力と引き換えに代償を払ってもらいます……」


「だ、代償……?」


 一体、何を言い出すんだ、この女神……

 世界を救う話はどこへいったんだ?

 マサル(29)は訝しげな表情で女神を見つめた。


「貴方は、女性のぱんつを頭に被るのです……」


「は?」


「その女性の資質によって、ぱんつを被るごとに、貴方の能力は強くなっていくでしょう。たとえば筋肉のついた女戦士のぱんつを被れば、貴方の筋力がプラスされるでしょう……」


「え……」


「何かスキルを持った人間であれば、そのスキルを奪うことができます……」


「うわー……」


「逆に言えば、スキルを奪わない限り貴方は普通の人間です」


 マサオ(29)は思った。

 何だか、色々と問題のありそうなスキルだ……

 てか、そもそもそのぱんつはどこから調達しろというのか?

 まさか、その女性と交渉ないし、盗み出せということだろうか?


 いや、まさか……

 仮にも女神を名乗るものがそんな犯罪を推奨するなんて……


「あなたには特別にもう一つ、チート魔法【ピックポケット】を授けましょう……」


「ぴっくぽけっと?」


「ええ、ピックポケットです。対象を指定してその魔法を唱えると、対象の人間が現在身に付けている下着を『確実に』盗み取ることができます……」


「これはひどい……」


 女神が犯罪推奨してきた……


「ちなみに……」


「??」


「私は、はいてませんから、奪おうとしても無駄ですよ?」


「いや、BBAババァの性癖など聞いていな…………いや、何でもないです……!」


 マサオ(29)は、慌てて自分の言葉を訂正した。

 女神がニコニコしたまま、すごい邪悪なオーラを漂わせているのがわかったからだ。


「以上です。それでも勇者として異世界を救っていただけますか?」


「ひとつ質問があります……」


「何でしょう?」


「その場合、男性の下着を被るとどうなりますか?」



・・・・・・



 それから数十年後――


「ぷっ!」


「クフフフ……」


「アーハッハッハッハ! アーハッハッハッハ! ひー、おかしい! 腹筋崩壊すりゅ! 助けてー!」


 白一色の神聖な空間に、女神の下品な笑い声が木霊していた。


「マサオちゃん、やってくれたわ! くくく、最高よ!」


「魔王討伐に成功して英雄にまで昇りつめたのに!」


「あの勇者、スキルコレクターのへきがあったせいで、女子のぱんつ集めまくるんだものね! あれには笑わせてもらったわ!」


「自分がやられたら、最低最悪だろうけど、他人事として見てる分には最高に笑えりゅ!」


「しかも!」


「マサオちゃんの褒めるべきは、男性の下着もちゃんと奪って被ったところね!」


「正直、あの質問あった時どうしようかと思ったけど、『男性下着なら女性下着の倍の効果を与えましょう』と言って正解だったわね!」


「まさか、『ぱんつ狩りの勇者』として魔王軍からも恐れられる存在として後の世まで恐れられ、果ては魔族達への抑止力として効果を残し続けるとは!」


「うぷぷ……しかも最高に笑えるのは、男性下着を被ってもそんな力得られないのに、マサオちゃんが嬉々としてブリーフやらトランクスやらを被ってたこと!」


「もちろん、キチンと男性下着でも強くなっていた! バカー!」


「フラシーボ効果っていうのかしらね? 笑っちゃうわー! それとも本当に男性下着が好みだったのかしら? ぷぷぷぷッ! 超ウケる!」


「でもまあ、いいんじゃないかしら? お陰で魔族の子供の情操教育として定番になったものね! 勇者の話は!」


「あまり人間をイジメ過ぎると、勇者がやってきてぱんつを剥いでもってっちゃうぞ! ……って! それはそれで笑えるんだけどねー!」


「子供の頃に植え付けられたトラウマってなかなか消えないのよねぇ……今じゃ大人の魔族ですら、人間を見ると股間を抑えて震え上がるんだもの! これで少なくともあと500年は、魔族も悪さをしなくなるわね……」


「うんうん! 今度から転生勇者は、この方式でいきましょう! 勇者になる人間はぱんつを被らないといけない! うん、これよ!」


 女神は満足して頷いた。



 そして女神の言う通り、『ぱんつ狩りの勇者マサオ』の伝説は魔族の中で言い伝えられ、魔族が人間の国に侵攻してくることは以後なくなった。


 まあ、反面、勇者マサルは、『ぱんつを狩る者』として、人間社会でも恐れられるようになったのだが……


 ちなみに、次の異世界の危機から勇者候補者にこの『ぱんつでパワーアップ』方式を提示するようになったが……


 マサオ以降、ぱんつを被るなどという変態行為、誰もやりたがらず

 すぐに廃案となるのだった――



不定期連載です!

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