表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼方へ  作者: 春野 セイ
1/24

揺れ

17年前に書いた古い作品です。今、読み返すとかなり重々しく、関東大地震に関する描写等も生々しく削ろうかと思ったのですが、手書きで一生懸命書いた思い入れのある作品でしたので、改めて書き直してみました。なるべく読みやすく短くまとめて、少しずつアップしていきたいと思います。







 その日はとても良い天気で、俺は神保町の本屋に向かっていた。


 俺は字が読めないものだから、主人の長谷川はせがわは紙に本の名前を書き込み、


つかさ、遣いに行ってくれ」


 と、紙切れを渡した。


「これを店の主人に見せたらいい」

「はい」


 返事をして俺は店を出た。


 長谷川の旅館に奉公してから二年経つ。

 俺は学校に行った事がなかったので、帳簿をつけるような仕事はさせてもらえず、体を動かす仕事を命ぜられた。男手は俺一人だったので、力仕事は全部やらされた。

 かなり骨が折れるが、両親に死なれ、一人で生きていかなくてはならない俺に、そんな我儘など誰も聞いてくれなかった。


 主人の長谷川は無口で大人しい性格だった。彼は愛読家で、暇があれば本ばかり読んでいる。いつもなら女中に頼むのだが、今日は観光客が多く旅館の中は客でごった返していた。それで人手が足りなくて俺が行く事になった。


 紙切れを懐に入れ、神保町へ向かった。店を出てから三十分位経っただろうか、時刻は昼前だったろう、ピリッとした張り詰めた空気が一瞬走った。

 その途端、どかんっと大砲が落ちてきたような音がして、大きな揺れが襲った。足元がぐらぐら揺れだし、俺は立っている事も出来ず、びっくりしてしゃがんだ。


 誰かが、


「地震だっ。大きいぞ」


 と叫んだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ