9.平常な日常7
和人いわく、パトカーから降りると目の前に、土色の壁が聳えていた。隣のビルもレンガ色をしている。
和人には隠したいのか、隠したくないのか曖昧な外観に感じられる。カモフラージュなのかな。
土色の壁には大型トラックが出入り出来る程の扉がある。そして、それ以外が無かった。
「開けてくれ」
「ウイース!」
とんでもない厚みのある兵士がグイっと扉を開く。一人でだった。
「凄いですね」と和人が感心する。
「彼らはコンテッサナイツですからね」
「コンテッサ?」
「アーディ様の騎士ですよ。彼一人でほぼ国軍に匹敵しますね。
<戦神>ファイタス、<知神>シュライ、<守神>ラーイの三神と呼ばれていますよ」
三神って、和人には奇人変人と同等に感じられる。
「すると彼は、ファイタスですか?」
「…その通りです。正直、あの扉を開けられるのは彼だけですよ。」
「彼だけ?」
「こないだ、開閉装置が壊れまして。修理中なんです。」
和人はウアスを見返る。
「大丈夫何ですか?」
「お勧めはしません。」
「………」
「これまで、見ても分られた方はおられませんし、ただの洞窟ですよ。」
和人の興味がそそられた。見ても解らないってのは驚きだった。そんなことがあるのか。
「撮影はいいですか?」
「かまいませんよ。ただ、石の採取とかはダメです。見て分からなくて、サンプル採取とか言われても壊れると再現できるか分からないですから。」
ウアスの案内のままに、洞窟に入っていく。ウアスは左手を掲げ、その手に明るい光が灯る。
「私のピクティンの得意技です。子供たちは魔法みたいだと喜んでくれるんですが……」
ウアスの表情は影になって、良くわからないが声はちょっぴり残念そうだ。ピクティンは基本機能は同じだが、得意技となると少しずつ違うらしく。入り口にいたファイタスのピクティンは筋力アップらしい。
とは言ってもポンポンと三つの光球が宙に浮ぶと、少しは誇らしげだった。
現在の量子力学でも宇宙が壊れる理論があります。正に、ルールの改変ですね。