8.平常な日常6
「ミスター・カズト。次は、遺跡です。車が用意できてます。」
「ありがとう」
用意してある車は白黒ツートンのパトカー塗装だった。勿論のこと運転手付きである。
「アカデミーは、遺跡に隣接してます。この王国の重要拠点ですから警備も厳重です。遺跡の発見までは只の危険な洞窟だったのですが……ハハハ。」
ウアスの乾いた笑いに、和人は気の毒だと思ったのだったので、別の話題を振ってみる。
「そう言えば、ムトラ島には世界一危険な、おばさんが運転してる車があるとか」
「ミスター・カズトもあれを御覧になったのですか?AI車の宣伝ですよ。長老会議でもモディおばさんに運転させちゃイカンと話題になったのですが、あの車なら安全だから良いだろう、って事になってまだ走ってますよ。」
弾性車体を取り入れたその車は“カルゴ”と言う車種で、AIが乗員防護を行う。
まず、最初の被験者がモディというおばさんだった。
見た目は丸っこい小さな車で、耐ショックの為に外板が膨らむ構造だ。
運転が上手いとは言い難いモディおばさんのカルゴは、一ヶ月程で1.5倍程に大きくなり、周り中に危険をアピールする事になった。
多少、ぶつかろうが問題にしないが普通なら中の人間が怪我したりするだろう。しかし、膨らんでいるせいでボヨ〜ンと当たり怪我が無い。
海に落ちても、モディおばさんの車は沈まないので、緊急信号を出して救助を待てばいい。
少なくとも、ムトラ島に海面落下でモディおばさんを超える強者はいない。この島で一番高い10m余りの崖から落ちて、カルゴは息を引き取ったがモディおばさんは助かった。
今の二代目は、先代同様丸く膨らんでいるらしい。
「自動運転のルートカーが導入されれば、安心なんですが海外に行く人には自動運転でない免許も必要なんです。」
和人は、テスト場となっているラトス島と世界のギャップを感じて笑った。小さな島で数える程しか道路が無いから、テスト場には最適であったが、外の世界に行けば考えも変わるだろうと。
やがて、山腹に一つの建物と城門の様なものが見える。
「ミスター・カズト。もう直ぐ到着です。」
ニュースになっても、没になってる技術って面白い。逆折り傘とかハイブリッドコンピュータは実現してます。現在の量子コンピューターはアナログコンピューターだとか。