終戦
「俺も望むところだ」
その目からは、力強さを感じた。
白川の目には、もう涙はなかった。
私に自分の考えを理解させる。
その想いが、伝わってくる。
でも無駄なのよ・・・
そんな目をしたところで、私の考えは変わらない。
その結論に至った答えを言った。
「私はね、母子家庭で育ったの」
白川は、動揺した顔をする。
でも気にせず話を進めた。
「それでね、私はお母さんに返しきれないほどの恩があるの」
白川は私の話を何もいわず聞いているのを確認し、続ける。
「だから私はその恩返しのために何事も人の何十倍も頑張ってきた。これが私。」
何の偽りもない答え。
これで向こうは、自分が間違った発言をしたことを認めるだろう。
白川は、落ち着いた表情で
「だからあんなにすごいわけか・・・」
「そういう事」
「でも・・」
白川は、少し間を空けて冷静な面持ちで言った。
「お前は、一つ見失っている。」
「またそれか?」
流行語でも狙ってるのか?と言いたくなるほど、口にするその言葉に腹が立つ。
「だってさっきお前の目を見たとき分かったんだよ。すごい優しい目をしてるなって」
「は?何言ってるの?いつそんな目してたのよ?」
「俺が泣いたとき」
ああ・・・
「あの時ね、そりゃあ高校生にもなった男が情けない面して泣いてるから、哀れで
見てられなかったからよ」
「いや、そんなんじゃなかった」
「じゃあ何だって言うの?」
「私のために、泣いてくれる人がいてくれて良かった。そういう顔だ。」
何言ってるのこいつ?
言ってる意味が意味分からない・・・
「私にそんなもの必要ない」
はっきりとそういった後、理由をいう。
「私は、お母さんに幸せになってもらえればいい。それだけ。」
「ならなんで、私の事をかばってくれたの?って聞き方をするんだ?」
「それは・・・」
とっさに答えが出てこなかった。
確かに・・・なんでそんな聞き方したんだろう。
白川は確信をついたような口ぶりで言った。
「それってつまり、自分の事を肯定してくれたことを嬉しいと思ったからだろ?」
まあ確かに、そうかもしれない。
今まで、自分に味方という存在はいなかった。
だから少しながら嬉しかったのは、間違いない。
「そうね。その気持ちはあったといえば、あったわ」
白川は、ニヤッと嫌な笑みを浮かべて言った。
「お前は自分の事を少しでも理解してる人間がいてくれて嬉しかった」
「違う」
「だから、俺が絡まれてたときに助けたんだ」
「助けたんじゃない。ただあいつらが私に対して誹謗中傷をしてきてからだもん」
白川の言ってることは間違ってる・・・
「私は一人で何でも出来る。生きていける知識と経験を積んできたんだ」
必死で白川の言う事を否定した。
なんか自分の心の中を見透かされてるような気がして気持ち悪かったから・・・
白川は真っ直ぐ私を見つめて言った。
「本当に、誰からも理解して欲しいと思ってない人間は、嬉しいなんて思わない。
お前は、自分をかばってくれた人間が責められてるのに耐えられなかったから、わざわざ自分から厄介ごとに首を突っ込んだ。もうそれが全てを物語っている。」
私はもう何も言い返すことが出来なかった・・・




