想い
焦ったような顔をする佐藤。
「ちょっ・・ちょっと・・泣かない でよ」
そう言われ、俺は自分が泣いてることに気づく。
俺は焦って涙を拭うが、涙があふれてくる。
「ごめん・・・。涙が止まらなくて・・・・」
俺は、もう胸の辺りが熱くなってるのが分かった。
俺・・・・なんか今すごい変な気分だ。
俺を真っ直ぐ見つめる佐藤の表情が、優しい表情に変わっていた。
「わかったわ。あんたのいう事少しは信じてあげる」
その言葉にはどこか暖かさがあるのを感じた。
俺は少し安心した。
その表情は、孤独が嫌いな人のするものだ・・・
それがなんとなくわかり、いっそう涙が強くあふれていく。
「頼む。もう人と関わる事を無駄とか、関わる事をやめてくれとか言うの止めてくれよ。」
俺は涙を見られたくなくて、うずくまる。
涙があふれるたび何度も拭い、一旦おさまったところで・・・
「もうこれ以上自分の心に嘘をつくのは止めてくれ。君は孤独をもっとも嫌う人間なんだから」
佐藤は、黙る。
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自分に嘘をついている?
その上孤独を嫌っている?
何を馬鹿なことを言ってるんだか・・・
私はいつだって自分に正直だった。
5歳のころ、両親が離婚して、母子家庭として育てられた。
まだ幼くて、今みたいな知識も経験も何もなかった。
でもそんな私にも分かるものがあった。
それは、お母さんが女で一つで私を育ててくれた。
自分の時間をさいて、私が毎日楽しく過ごせるように頑張ってく れた。
ただでさえ長い時間仕事をして、疲れてたはずなのに、疲れている所を私に見せないようにして、私を大事にしてくれた。
だから私は、この時から大きくなったらお母さんを私が幸せにして、子供のときにしてもらった恩を何倍にもして返すんだって・・・
だから人よりも努力することを惜しまなかった。
誰かよりも優れている姿を見せることで、お母さんに自分の立派な姿を見せられる。
そうすれば少しは、お母さんへの恩返しが出来る。
全ては、私を自分の全てをかけて守ってくれたお母さんへの恩返しのため。
「だから私は自分に嘘はついていない」
はっきりとそう断言した。
でも目の前の少年は、否定する。
「佐藤、お前は自分というものを 見失っている。」
「まだそんな事いうか・・」
「おい、ケンカはやめ・・」などの野次馬達の声が聞こえたので、そちらを振り向くと・・
「お前ら、ここは止めないでやってくれ」
私にケンカを売ってきた馬鹿がそれを止めていた。
それを白川も気づいたようで、
「優輝・・・」
感動した面持ちで、口から漏らしていた・・・・
こほん・・
私がわざとらしく咳をすると、白川はこちらに向き直る。
「私とあんた、どっちが正しいか決着つけてやるわ」