尊敬
あの事件を境にクラスはとてもギクシャクしていた。
皆不穏な空気を漂わせている。
現在は昼休みなのだが、空気は授業中のようにどこかピリピリしている
教室はとても空気が悪くて居心地が悪かった。
「ねえ、あんたなんで私の事かばってくれたの?」
急に隣からそう聞こえてきて俺はびっくりしてそちらに向く
「ああ、なんかね・・・」
あまりにも急にだから言葉が出てこなかった。
声をかけてきた佐藤は、つまらなそうな顔していった。
「私に興味を持ったのか知らないけど、関わるとろくなことないよ」
その目には感情はこもってなかった。
その一言は、俺を少し苛立てた。
それと同時に感じたのは、とても冷た い何かだ・・・
「なんでそんな事いうんだよ・・」
俺はなんか辛かった
人より優れた力を持っていて、影では人より努力してる人間がなんで・・・・
佐藤は、特に変わった様子を見せずに言った。
「私は人から理解されようとも思わないし、理解しようとも思わない。そんな時間あるなら他の事に費やす。人間関係なんてある程度人と話せれば何の問題もない。」
「そんなの悲しすぎるよ・・・」
俺はなんか自分の事ではないのに辛かった。
俺みたいな努力してない人間、いや努力できない人間だからわかる。
なんで人の何十倍も頑張ってる人間が、こんな冷たくて悲しい事を言わなくちゃならないんだよ・・・・
それがなんか腹が立つ。
「どうしてそ うなんだよ」
それがほんとに本心なのか?
佐藤は、あきれた顔をしていった。
「あんた、いちいち馴れ馴れしい。ヒーロー気分にでも浸ってー」
そこまでで俺は遮った
「違うよ。本心だよ」
「嘘ね。」
「嘘じゃない」
「じゃあ証拠は?」
強気にそう言われ、一瞬怯むが俺は包み隠さず言った。
「俺が努力できない人間だからだよ」
「は?それが何?」
「努力する難しさを嫌というほど知っている」
「それで?」
「だからすごいなって思ったよ。何でもできる佐藤に」
少し戸惑った様子を見せる佐藤だが、すぐに冷静な顔つきに戻り言った。
「私は、人に負けたくないだけ。」
「それで誰にも負けないくらい努力できる 人なんて滅多にいない。」
「そ・・それは・・」
口ごもる佐藤。
俺は自分の思ってることをぶつける。
「だから純粋に尊敬したよ。優輝のときのことを聞いたとき」
「へえ~」
「だからー」
ここで一回深呼吸していった。
「だからもうそんな悲しい事言わないでくれよ」
俺は強くそう想い、その言葉を口にした。
いろんな思いがこみ上げてきた。
今まで、いろんな事があって、努力して、調子のいいときもあったし、不調なときもあった。
それらが俺の脳内で、再生されている。
全てが、懐かしいし、思い出せば出すほど、情けなさのあるものばかりだった・・・