ケンカ
俺は感情任せにそんな事を口にしてしまった。
言った後、ひどく自分の軽率な発言に悔いた。
周りは、俺をさっきの満ちた目つきで見てくる。
体が固まるような生暖かい嫌な空気がドッとこみ上げる。
やばい・・・。
小動物的本能が働いてる感じがする。
俺の頭には、逃げろの一文字が浮かぶ。
でも逃げるわけには行かなかった。
だって皆が間違ってるんだから。
「何だよお前?あいつの味方かよ?」
威圧的な態度で問いただしてくる。
俺は怯みながらも答える。
「ほら・・・さすがに言いすぎだと思うよ・・・」
みんなの怒りが俺に向かってくる。
どんどんとアンチ佐藤の攻撃が飛び出してくる。
「は?何言ってるの?向こうだって散々こっちを見下してるじゃん。」
「そうそう。能力をみんなのために使うことはせず、見下し自分は優越感に浸る。それを黙って見てるなんて、耐えられない。」
「大体ー」
そこまでアンチ組みが言ったところで、佐藤本人が遮る。
「大声でしかも大勢で人の悪口とかいくら能がないとはいえ、こりゃ幼稚園生となんら変わりないわね」
うわあはっきり言うな~・・・
これは相当みんなを・・・
みんなの目は鬼そのものだった。
ここから本人への直接放火が始まった。
「は?なんだコミュ障」
「コミュ障?あんたらみたいな奴らに言われたくないわ」
大勢の前でも堂々とした立ち姿。
全く怯む様子はない。
その姿に俺は、惚れた。
すげえ・・・・。
俺なんてもうかなりビビッてたのに・・・
「お前何言ってんの?お前は頭よくて運動出来てもこんな所にいるのはコミュ障だからだろ?」
「そうそう。」
「そんなお前より劣ってるわけねえだろ?」
「大体友達一人作れないやつがよく言う」
「笑わすなよ。お前なんかな将来は俺らに抜かれるんだよ。」
「孤独死する未来しかお前には 残されてねえんだよ」
さっきみたいにどんどんエスカレートしてきてるのを 感じ、俺は勇気を出して言う。
「もういいかげ・・」
そこまで言いかけたとき、佐藤に手でやめろという動作をされた。
大きく深呼吸すると・・・
佐藤は、決意のこもった声で言い放つ。
「私がここにいるのは、この高校に自分がやらなくてはいけない課題が残されてるからであって、そんな理由じゃない」
皆、首をかしげたしぐさを見せる。
「何がやらなくちゃいけない課題だよ?特別扱いでもしてもらうことか?」
嘲笑を浮かべて皮肉を言ってきた。
その後に皆の笑い声が聞こえてくる。
「さすが馬鹿は頭の悪い発言で笑えるなんてどこまでおめでたいんだ?」
「お前いい加減調子こいてんじゃねえよ」
一人の奴が 佐藤の胸倉を掴もうとした。
でもその手を佐藤は右手で掴んだ。
それで強く握り締めた。
「あああああああっ!!!いでえええ」
反対の手でそいつの頭を押し地面につける。
「お前らは、自分の価値を自分で下げてる。」
そういって、そいつの掴んでいた手を離す。
でも頭を抑えてる手はそのままだった。
「それはおまえだってそうだろ?」
「お前だって自分の能力の高さをいいことに俺たちを見下して、大いに笑ってるだろーが!!」
教師を呼んでこようとも思ったが、この空気の中そんなことできるわけもなかった。
誰もこの空気の中に入れるわけない
なんかそう思ってしまうほど異様な空気が漂っていた。
「それはそうだ。お前らは、陰口ばかり叩いて自分を高めることをしなかった。そんなやつを見下さないやつはいない。」