知り合い紹介
本日もよろしくお願いいたします。
「学園長のおっしゃったシステムは明日の放課後から適用される。本日はこれで学園は終了だ。全員すみやかに下校するように」
必要事項を告げた響子先生は、教室を後にした。
それを確認し、俺は前の席に座る零子に尋ねる。
「おい零子、どうゆうことだよ」
決闘システムの変更も気になるがとりあえずは目先の疑問を解決しよう。
「どうゆうことって何が?」
「生徒会長のことに決まってるだろ、なんで黙ってたんだよ」
零子は「ああ、そのことか」と呟くと説明を始めた。
「別に黙ってた訳じゃないわ、私も指名されたのが三学期の終わりで言い出すタイミングがなかったのよ」
うちの学校は、先代が指名する形で生徒会長が決まる。
その指名は前会長が三年になる直前にされ、忙しくなる三年生は補佐に回るというが本当だったらしい。
「たしかに、俺は春休み中は実家に帰っていなかったけどそれならメールとかくれてもよかったじゃないか」
「ふふっ、秘密にして少し驚かせようと思って」
「めちゃくちゃ驚いたよ。なぜか壇上に居るからなんかやらかして謝罪でもするのかと・・」
「天太と一緒にしないでよ」
零子が呆れた様子で言ってくる。
失礼な、いくら俺でも壇上で謝罪をしたことはない。
「そういえば去年、生徒会活動がんばってたもんな」
こいつは、去年から生徒会に所属しており大いに精を出していた。
そのせいで若干疎遠になってしまったのも事実だが。
「ええ、前会長にも同じことを言われたわ「人一倍頑張れるキミに生徒会長を任せたい」ですって、正直重荷に思わないこともないけど任された以上ベストを尽くすわ」
「そうか、なんかお前らしくてかっこいいよ」
「そ、そう、ありがとう」
俺が素直な感想を述べると零子は顔を赤くしてしまう。
ははっ、こういうのって直球で言われるとなんか照れるよな。
「うむっ、その心意気まことに感服するでござる」
幼馴染との語らいに水を差す服部忍が登場。
「え、えっとありがとう」
ほぼ初対面のものに話かけられ、少しうろたえつつもちゃんと返事を返す零子。
その様子に、俺は忍を軽く睨み突き放すように告げる。
「今、久しぶりの幼馴染との会話を楽しんでるんだ。今すぐ窓から帰れ」
「ここ三階でござるよ!?」
「お前なら三階ぐらい大丈夫だろ。というか本当に何しに来たんだ?」
「いやなに、親友として御堂殿の幼馴染である零子殿にも挨拶するのが筋というものでござろう?」
なるほど親友という部分には大いに意義を唱えたいが、おおむね理屈は通っている。
「で、本音は?」
「拙者をうじ虫を見るような目で見ない女子は貴重なので、ぜひお近づきになりたいのでござる」
うんまあ、そんな事だろうと思った。
俺はため息をひとつ吐き、さすがにこれ以上邪険にするのは可哀想だと思い直し了承することにする。
「はあ、分ったよ。紹介してやる」
「恩に着るでござる」
一応、本人にも確認を取らなくちゃな。こんなのに紹介されたくないかもしれないし。
「零子もいいか?」
「ええ、構わないわ」
どうせなら一斉に紹介しちまったほうがいいと思い自分の机で帰り支度をしていた日向と創に呼びかけた。二人はすぐにやってきた。
「フハハハ、我に何のようだ!?」
「お呼びっすかアニキ」
問いかける二人に簡潔に答える。
「いや、俺の知り合いを紹介しようと思ってな」
言葉と共に零子の方に視線を向け告げる。
「うむ、いいだろう!」
「生徒会長さんっすよね。そんな人を紹介してもらえるなんて光栄っす」
全員の了承を取った所で紹介を始める。
「では、みんな自己紹介で知ってると思うがこちらは間崎零子だ。俺の幼馴染で生徒会長、まあこれは俺も知らなかったんだが」
「よろしくね、同じクラスなんだし仲良くしてくれると嬉しいわ」
俺の紹介に模範的な挨拶を被せる零子。
うん、普通って素晴らしいね。
「続いて、こちら去年できた俺の友人、赤井日向、伊集院創、変態だ」
「拙者だけ、名前でなく代名詞でござる!?」
変態が代名詞とは初めて聞いたな。
というかそれじゃ自分が変態なの認めちゃってるじゃねえか。
俺の紹介が不満なのか、わめき散らす忍。
その姿がうっとうしかったので、仕方なく普通に紹介することにする
「しょうがねえな、服部忍だ。ほら、ちゃんと紹介してやったんだから感謝しろよ」
「うむ、もちろんでござ・・・あれっ、それって普通のことなんじゃ?」
釈然としないといった様子の忍を無視し二人は挨拶を始めた。
「いずれ日本を背負って立つ伊集院創だ!だが、緊張する必要はない!級友として親睦を深めようぞ!」
「アニキの舎弟、赤井日向っす。よろしくお願いするっす」
互いに紹介を終え、雑談を交わし始める三人をよそに忍はまだぶつぶつ言っている。
「おい、忍みんな話し始めちまったぞ。お前は挨拶しなくていいのか?」
その言葉に「はっ!」とようやく状況に気づいた忍。
三人の雑談に割り込むように自己紹介を始めた。
「始めまして零子殿、拙者は服部忍と申す。以後よろしくでござる」
「ええ、あなたは以前から知っていたわ」
「さ、左様でござるか」
まっすぐ見つめて返す零子に、どもりつつ顔をそらす忍。
忍の弱点その一、初対面の女子と目を見て話せない。
「そ、それでどうして拙者のことをご存知だったのでござる?」
「私でなくても知ってるわ。能力を使って女子更衣室に忍び込んだ下着泥棒、『見えざる変態』は有名だもの」
「なっ!誤解でござる!拙者泥棒ではござらん!ちゃんと洗って返したでござる!」
よどみなく答える零子、に慌てて反論する忍。
一度盗ったの認めちゃったよ・・・
「よし、紹介は終わったな。みんな忍以外は仲良くしていこうぜ」
「拙者とも仲良くしてほしいござるよ・・・」
頼み込むような忍の主張を華麗に無視し、締めにかかる。
「じゃあ、今日はこれで解散ってことで」
「せっかく早く終わったのに遊びに行ったりしないんすか?」
今日はホームルームと始業式だけだったので、まだ昼前だ。
たしかに、日向の言うように遊びに行く生徒も多いのだが・・・
「すまん、俺は実家から帰ったばかりだから食材の買い出しと部屋の掃除しないといけないんだ」
「あー、なるほどっす」
俺は学園の寮に住んで居るので、必要なものは自分で調達しなくてはならないのだ。
「あら、じゃあ一緒に行ってもいいかしら?私もちょうど家の食材が切れ掛かってたの」
「もちろんだ。じゃあ二人で行くか」
結果、俺と零子で買い物、遊びに行くのはまた今度ということになった。