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始業式

俺の評判を落とすだけ落とした自己紹介がようやく終了し、響子先生は教室を出て行った。


 ちなみに俺の自己紹介は「この学園でおまえを知らないものなどいない」などと言われ、騒いだ罰としてやらせてもらえなかった。


「いっつー」


 未だに痛む頭をさすりながら、呻き声をもらす。


「大丈夫でござるか?もし我慢できないのなら保健室まで着いていくでござるよ」


「いや、さすがにそこまでじゃねえよ。というかお前も同じの食らったのに平気そうだな」


「拙者にとってはご褒美でござる」


「ああ、そう・・・」


 さすが忍だ、わけがわからない。


「自業自得よ、ホームルームであんなに騒いだりしたら」


 友人に対して越えられない壁を感じていると、前に座る零子が椅子ごと体をこちらに向け呆れた様子で話かけてきた。


「それにしたって、あんなに強く叩くことないじゃないか。普通の学校なら大問題だ」


「この学園なら特に問題ないわね」


 そう、零子が言うようにこの才葉学園の教員は、危険な超能力者を指導するため多少厳しい罰が国により容認されている。


 つまり先ほど程度の体罰は、なんの問題にもならないということである。


 そうでなければ、物理的教育指導を行う響子先生が、教壇に立てるはずもない。


 それでも、理不尽を感じずにはいられないが・・・


「じゃあ、私は始業式の準備があるからもう行くわね。天太も遅れたりしないようにね。」


 準備ってなんの?と尋ねようとしたのだがそれより先に立ち上がった零子はさっさと教室から出て行ってしまった。


「まあ、後で聞けばいいか」


 それにしても始業式か・・・面倒だな。


 しかし、さぼってこれ以上に響子先生の心象を悪くするわけにはいかない。


 俺と忍は、離れた席に座る創と日向と合流し始業式の行われる体育館へと足を運ぶことにした。


 体育館に向かうついでに、校舎について少し解説するとしよう。俺達の今居る本校舎は四階建ての建物であり、一階に職員室と各授業で使われる教室(理科室など)があり、二階に一年生、三階に二年生、四階に三年生の教室があり、しいて変わった点を上げるとすれば廊下が異様に広いということだろうか。


 あれ?俺は誰に向けて解説してるんだ?


 不思議に思いつつも一階に下りた後、渡り廊下を渡り目的である体育館に到着していた。


 体育館を見渡すとすでに多くの者が着席しているようだ、俺達も二のEと書かれた看板が置いてある位置から自分の席を見つけ腰を掛ける。


 これも名前の順で並べてあるらしく俺の席は一番端だったのだが、本来なら隣になるはずの零子の席はなく、替わりにもう一つ前の本田と自己紹介で名乗った生徒が座っている。


 それもそのはずで、今意識を向けた張本人は壇上の上に設けられた席に背筋を伸ばした堂々とした様子で座っていた。


 あれ?なんであんなところに居るんだ?そんな俺の疑問には当然誰も答えず始業式が始まってしまった。


 司会の体育教師の武田先生が開会宣言し、式が始まる。


「まず始めに新しい生徒会長から挨拶をもらおう。では間崎零子、前に」


「はい」


 先生の呼びかけに、しっかりと答え演台の前に毅然とした様子で立つ零子。


 生徒会長?どういうことだ?


 自体が飲み込めず混乱する俺をよそに零子は一礼してから、挨拶を始める。


「皆さん、始めまして。ただいまご紹介に預かりました間崎零子です。今回始めて大勢の方に向けて話すので非常に緊張しております。このようにまだ未熟な面も多いですが、皆さんの学園生活をより良いものにするため精一杯、尽力していきますので、みなさんよろしくお願いいたします。」


 最後にもう一度頭を下げ元いた席に戻る。


 初めてとは思えぬほど堂々としたその立ち振る舞いに、先ほど浮かんだ疑問も忘れ思わず見とれてしまった。


 そんな俺に影響を受けるはずもなく、式は続いていく。


「続いて学園長挨拶、学園長お願いいたします」


 司会に促され次に、演台に立ったのは若い男性で色鮮やかな金髪をオールバックにしている。


 この人こそが俺達の学園の学園長、神無月優介だった。


 神無月学園長は穏やかな笑みを浮かべながら話し始める。


「諸君、久しぶりだね。こうしてまた諸君の元気な顔を見られて嬉しいよ。春休みはどうだったかな?この式が終わったら友と語らうのもいいだろう。学生時代のそういった思いでは後で宝になったりするものだからね」


 うーん、いい事言ってるんだけどやっぱり退屈なことになりそうだな。


 そんな俺の予想はものの見事に打ち破られることになる。


「・・・さて、前置きはここまでにして本題に入ろうか」


 そこで学園長はひと呼吸置き、不適な笑みに表情を変えながら驚愕の内容を話し始めた。


「生徒個人の諍いの決着を着けるためにたびたび利用さていた、決闘システムは諸君も知っているね?」


 決闘システムそれは、教師立会いの下で互いの超能力を交えながら競い合い勝負を行えるという校則のひとつだ。


 俺も去年何回か利用させてもらった。


「これを今年から諸君らにはレート戦として行ってもらう」


 レート戦どういうことだ?と考えているとその疑問に答えるように学園長は続ける。


「まず始めに諸君らに全員1000ポイントを与えるこれを互いに奪い合うってもらう。例えば戦闘で決闘し勝った方は負けた方からポイントをいくらか貰うといった感じだね。どれくらい分け与えるかは立会いの教師が決めるよ」


 つまり、どれだけ決闘で勝ったか分り易くなったということだろうか。


「競技の内容は何でもいい、どんなくだらないことでも互い能力が生かせるものだと立会いの教師が判断すれば決闘可能だ。まあ、大抵は戦闘になるのだろうけど。ただ、注意してはほしいのはレート戦の性質だね」


 レート戦の性質?


「例えば、レートの高いものが低いものと決闘し勝ってもポイントはほとんど貰えない、逆に低いほうが勝てば大量に貰えるといった具合だ。」


 なるほど、弱い奴によってたかって勝負を挑むことにあまりメリットはないと。


「ただこれも、立会い教師のさじ加減だ。戦闘ばかりでレートを上げた者が手芸で負けてレートを大きく吸われるのはさすがに理不尽だろう?」


 たしかに、まあそんな奴は手芸の決闘なんてなんて受けないと思うが・・・


「ハンデも設ける、レートの低い者が決闘を申し込んだ場合高いものは断れない。ゆえに先ほどのルールが生きるという訳だ。」


 理屈は分るが、だいぶややこしくなってきたぞ・・・


「戦闘に向かない能力を持つものは、いかにして自分の得意で相手を巻き込むことができる競技を考えるかが鍵だね。足の速くなる能力を持つものが火を操る能力者にただの100メートル走を挑むのはさすがに却下だ」


 片方が能力をまったく生かせそうにないものでは、駄目ということか。


「説明は以上だが、あくまでこれは暫定的な案だ。今日の職員会議で最終決定を行い明日には正式なルールを発表する」


 最後に付け足すように学園長は、締めにかかる。


「このレートは内心点に関わる上、三学期の終了時トップだったものにはとっておきの褒美をあげよう。野心のあるものは積極的に狙ってくれ」


 学園長は最後に悪戯っぽい笑みを浮かべ演台から去っていった。


 零子が生徒会長だということ、決闘システムの変更、俺に多大な衝撃を残し始業式は終了した。

本日はこれで終了です。


あと2話ほどで主人公の能力の一部をお披露目予定です。

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