MのBOX
M氏は二十年の歳月をかけ物質転送機をついに完成させた。元々は資材運搬用に研究がされたものだが完成した機械の使い道はM氏が想像したものとは少し違ったものだった。
当時この星では増え続ける「ゴミといらなくなった人間」であふれかえっていた。そんな時にこの発明が生まれたのだ。この装置に世界中が飛びついた。
つまり資材を転送するのではなく、いらなくなったゴミをどこかに転送しようというのだ。いつの時代も科学者の意図したものと使い道はかけ離れるものだ。
「ゴミをどこに捨てるか?」もっともらしく学者が協議をしたがその答えはすでに出ていた。なぜならとっくの昔にM星にはゴミを捨てるスペースが無くなっていていたからだ。
当然ゴミは他の星へ捨てるのだ。その前提の元で世界会議が開かれた。長い意味のない会議のすえ知的生命体のいない星を選びそこに「ゴミ」を転送することで意見は一致した。
世界はこの物質転送機をまさか「ゴミ箱」とも呼べず発明者のM氏の名前からひともじ取って「MのBOX」と呼んだ。
長いリサーチのすえひとつの原始的な星が選ばれそこに「ゴミ」を転送することになった。その星にはさまざまな「ゴミ」が捨てられた。
使わなくなったロケットの部品、核廃棄物、時代遅れの科学知識そして……いらなくなった人間……などさまざまであった。
そのゴミの星、正確には「太陽系第三惑星・地球」から三千年後捨てられた「ゴミ」を使って作られた巨大な核ミサイルが「捨てられた人間」の手によってM氏の星に向かって発射された。