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3

ところが食堂を出たところで、黙ってもいられなくなった。

今日の俺の寝る部屋についてだ。


「クーは今日、私と眠る約束なんだ」

「俺が兄貴分として、クーの面倒を見ますよ。今日はひとりで、ゆっくりと休んでください」

「君こそ旅の疲れがあるだろう。ひとりで休んだほうがいい」


…なんの言い合いをしているんだ。

俺は呆れた目でふたりを見た。宿泊者が3人で、部屋は2部屋。俺がどちらに行くかで揉めているのだ。


「クー、今日の夜は私と眠ると約束したよね」

「そんなの申し訳ないよな、クー。クーも俺と一緒の方が、気兼ねなく休めるだろ?」

「どっちでもいいよ…」


俺ははぁ、と溜息をついた。



結局”公平を期すため”という理由で、今日はジェナと一緒の部屋で寝ることになった。もう1部屋空きはなかったのかな…とちらっと思ったが、滞在費を出してもらう側がそんな贅沢を言うわけにはいかない。ジェナも、いつも泊まっている宿の10倍以上良い宿だと言っていた。それが具体的にいくらくらいになるかはわからないが…俺は黙って、どちらかと一緒の部屋で寝るしかないのだろう。


昨日の頭痛を訴えるイーヴを思い出すと良心が痛んだが、ジェナを蔑ろにするのも気が引ける。結局、これが一番いい結論だという気もした。


「クー、ワガママ言って悪かった。でも、イーヴさんに内緒で話したいことがあったんだ」


部屋に戻ると、ジェナは真剣な顔で言った。俺は無意識に、ぴし、と背筋を伸ばす。

ジェナは基本的にはいつも緩い雰囲気だが、大事な時にはびしっとしめる。


「イーヴさんって、本当に信用できる人なのか?」

「え?」

「俺のいない2日でずいぶん仲良くなったみたいだけど…」


あぁ、心配してくれてるんだ。ジェナにとって、多分俺はいつまでたっても手のかかる小さな子供なんだろう。

少し鬱陶しさもあるけど、無条件な優しさはありがたくもある。


「イーヴが父さんの知り合いだったのは、確実なんだ。言っただろ?俺の名前知ってたって」

「それは、そうだけど」

「それに、俺なんかだましてどうするんだよ。俺たちの宿代出してくれて、あの人損しかしてないよ」

「そりゃ…そうだけど。でも親父さんの資料って、かなり貴重なんじゃないのか」

「そこは、学園の人と相談しながらにするよ。何にしても、俺がひとりで決めたりはしないから」

「……そうか?」


ジェナはそれでも心配そうに俺を見ている。一応、俺を尊重してくれているのだろう。それでもやっぱり心配…というところか。


「クーを疑うわけじゃないけど…本当に親父さんの知り合いだとして、あんなふうに偶然出会うなんてできすぎてる」

「それは…でも、俺たちが出会ったのは馬車が壊れてたからだろ?俺たちは村から馬車で来たんだから、どうしようもないよ」

「そうだけど…、」


理屈ではわかっていても、納得できないのだろう。これは、いつまでも頼りない俺にも原因がある。


「ずっと村にいた俺が世間知らずのは本当だし、心配しないでなんて言っても無理だよな。俺、ジェナに心配かけないような大人になったって証明できるようにがんばるから」

「まぁ…それもさみしいけどな」


ジェナは苦笑して、俺の頭をぽんぽんとたたいた。


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